俺が部屋の中に戻り、円と徹の間に座ろうとすると、円が慌てて制止した。

「何?」

こいつの前でいい人キャラやるのムズいんだよな。
今もつい、「何だよ」と冷たい声で言いそうに
なるのをとっさに抑えた。


「宮はこっち。」

服の裾を引っ張られ、
徹側ではない円の隣に座らされた。

「あ…宮くん、こんばんは。」

右隣を見ると、クラスの佐藤さん。
俺にいつも熱い視線を送ってくる女の一人だ。


「こんばんは。
来る途中平気だった?見つかったりしてない?」

「うん…!ここ階段のそばだったし…」

「良かった。」

俺が笑いかけると、佐藤さんは嬉しそうに
はにかんだ。

円の方を横目で見ると、真顔だけど嬉しそうに
している。

こいつ、どういうつもりだ…?
何たくらんでる…。


「じゃあ…大富豪でもしながら恋ばなしちゃう?」

「えー!」
「マジかよ。」
「徹、女子の気になるやつ知りたいだけだろ。」

「あはっ、バレた?」

「おい!」
「アハハハ…!」


あーーーーー、
下らね。

恋だの愛だの、よく飽きもせず話せるな。


「俺のタイプ、黒髪ショート!」

あーそ、お前のタイプとかどうでもいいわ。

「私、レディファーストしてくれる大人な男の人!」

お前がレディになってから言え。

「円ちゃんは?」


徹が円に問いかけ、
みんなの視線が俺の左隣に集中する。

円は一瞬驚いたあと、うーんと考えた。


コイツは気づいてないんだろうな。
自分の魅力も。
男たちの姿勢が前のめりなことも。