朝自然と目が覚めた時、第一にポツポツと雨が降る音が聞こえた。

また今日も雨だ―――。


雨が降る日は心がブルーな気持ちになる。
それに、雨が降る日に限ってシフトが入っており、やるせない。

ふと頭によぎる。

そういえば、沙智が不審者の話してたっけ…?
忘れていた頃に思い出し、胸がざわめいた。


少しでも気分を紛らわすために、大好きな音楽を携帯で流す。

音楽を聴くと、不思議なくらい嫌なことを忘れられる。
今日も頑張ろう!って楽天的な気持ちになれる。



早く私も、歌で人を元気にさせてあげたい。
歌で人々に幸せになってもらうことが、私の小さな幸せ。

稀にお菓子の中にハートが入っているだけでも、それは私にとって小さな幸せ。

その小さな幸せ一つ一つが、やがて大きな幸せに変貌する。



その日がきっといつか訪れるだろう。


音楽を止め携帯を充電し、私はリビングに向かった。
今日は土曜日だから、お父さんは仕事が休み。


「おはよー!」


「おはよう!今日は早いんだな」


案の定、寝間着姿のお父さんはダイニングテーブルの椅子に座り、新聞を読んでいる。


「あれ、お母さんは?」


「まだ寝てるんじゃないか?」


「いや、まだ寝てるってもう10時過ぎてるけど…」


「今日は土曜日なんだし、ゆっくりさせてあげよう!」


「私、お父さんみたいな人が結婚したいランキング一位なの。
こんな素敵な人にいつか出会えるのかな」


「出会えるよ!亜衣の人生はまだまだこれからなんだから
今は思う存分楽しみなさい」


お父さんが私の方を見て微笑んでいる。
私もお父さんの笑顔を見て、朝から幸せな気分。

私の家は朝に弱くて、いつも休みの日はダラダラするのが日課みたいなもの。

一番朝に強いっていったら、やっぱりお父さんかな。

お父さんはとてもお母さん想い。
喧嘩もたまにするけど、私にとっては憧れの夫婦。

でも…私のお父さんは初婚ではなく、バツイチ。
私と3つ年の離れた息子がいる。