「写真撮るから、二人とももっとくっついて!」


お弁当を家族で見事平らげ、お父さんがカメラを手にする。

私の腰に手を回しピースする翼。
真似して、恥ずかしがりながらもピースした。


「よく撮れてる」


自分で撮った写真を見て、自画自賛するお父さん。
どんな感じに撮れたんだろう?と思い、カメラを覗いた。

確かによく撮れてるけど、私の頬がチーク塗りすぎたみたいに赤い。

桜色のチークにすればよかった―――。



両親が私達に気を利かせ、向こうの桜を見てくると言いながら、場を離れていった。

今私と翼の二人っきり。


「もっと近くで桜を見ようか。」


翼と桜の木の真下に向かう。


「綺麗だね。今年も満開に咲いてる」


翼が私の手を握ってきた。
私も優しく握り返す。

一瞬強い風が吹き、桜吹雪のように舞い散る。


「あのさ………」


「うん、なに?」


「いい感じになった時に悪いんだけど、トイレ行きたくなった」


「え!今?」


「だからちょっと行ってくるわ」


私のことをお構い無しに、翼が走り去って行く。
来る前に済ませておけばいいのに…。



そんな私の想いは届かず、翼の背中がだんだん小さくなっていく―――。