桜の開花の便りが道内にも届き始める。
好きな人とお花見に行く夢が、28年目にしてようやく叶う時が来た。


「翼ー、お弁当のおかず何がいい?」


お花見に持っていくお弁当を、お母さんと作りながら翼に訊いた。
重箱を持って行くのが私の憧れ。

今日はいつに増して気合いが入り、大量に作ってしまう。
私、翼、お父さん、お母さんの四人でお花見。

家族でお花見なんて、小学生以来かも。


「卵焼きー!後、亜衣の好きなやつ」


リビングで、翼とお父さんが男同士の会話をしている。
飲み仲間だったこともあり、すごく仲がいい。
もはや親子みたいな関係。


「分かったよー!お父さんは?」


「酒のつまみに合うやつ」


「お父さん、そればっかじゃん」


私は笑いながら、重箱にできたおかずを詰めていった。


「できたー!」


「お疲れ様!」


お弁当が完成した横で、お母さんが洗い物をしている。


「お母さんがいてくれたから、早く終わった!
一人だったら絶対できなかったよ」


「お花見楽しみだね。
今年も綺麗に咲いてるといいわね。」


「そうだね!楽しみ!」




翼の運転で、お花見で有名スポットでもある、咲ら(サクラ)公園に到着した。

公園の中に入ると桜の周りには、レジャーシートを敷いた人達で埋まっている。


「どこにする?」


「あ!あの場所がいいんじゃないか?」


導くようにして私の手を引く翼。
着いた先には、ポツンとたたずむ大きな桜の木があった。

私達を待ちわびていたかのように、風に揺られ、桜の花びらがそっと舞う。


「俺達が先客みたいだな」


レジャーシートを広げ、四人仲良く座った。
重箱を開けると、美味しそうなおかずがぎっしり入っている。

私の好物といえば、ミートボールとから揚げと卵焼き。

お弁当ではこの三つが欠かせない。


「「いただきまーす!!」」


取り皿におかずを取って乗せる。
あれもこれもと乗せていたら、いつの間にか山盛りになった。


「どんだけ食うんだよ。」


「だって、食べるの好きなんだもん」


「翼だって私と同じく山盛りじゃん」


翼の取り皿を見ると、私と同じく山盛りではあるが、私と違い偏りがなく、色々なおかずが入っていた。


「そりゃ美味しいからね」


私の作った卵焼きをパクパク食べている姿が、見ていてとても微笑ましい。



「幸せ」




私はボソッと声に出した。