「初めまして!森永亜衣です
今日は来てくれてありがとー!
皆さんの応援のおかげで、今日という日を迎えられました!」


私はマイクを持って、周りを見渡しながら話す。
人がたくさんいて、中々見つけられない。

やっぱり今日は来ていないのかも…
そう思っていた時だった。

皆が拍手してる中、拍手していない男性を前列で見つける。
ライトが眩しく顔が見えない。

やがてライトが消え、だんだん顔がはっきりする。


やっぱりそうだ―――。
翼だ。翼がこっちを見てる。

名前を今すぐにでも呼びたいけど、今は我慢しておこう。


歌い終わり、笑顔で観客に手を振った。
この晴れ舞台に立てた今日は、記念すべき日。
そして翼と再会できた日。



それなのに、それなのに…。


そこにはもう翼の姿はなかった―――。