*
数日が経った今日、休みの日ということもあり、ソファーの上でゴロゴロしていると、珍しく沙智から電話が掛かってきた。
あの一件もあって、電話に出るのを少しためらった。
「もしもし…?沙智?」
「亜衣さんですか?今すぐテレビつけてください!」
沙智に言われ、私は急いでテレビのリモコンを操作する。
テレビがついた瞬間、私は目を疑った。
まさか、こんなことって・・・
私はその場で崩れ落ち、ソファーに座り込む。
テレビの画面に映し出される、武藤翼の名前。
武藤翼 24 【無職】
前に沙智が言っていた不審者の話。
夜一人で歩いてる女性をつけ回していたのが、翼だったんだ―――。
だから、しばらく会えないって言っていたんだね。
自首したとはいえ、絶対に犯してはいけないことに、彼は手を染めてしまった。
どうしてこうなってしまったのか…。
つい悩ましい表情になってしまう。
「亜衣さん?聞こえてますか?
大丈夫ですか?」
電話の先から亜衣さんと呼ぶ声が聞こえ、我に返った。
「沙智、聞こえてるよ!」
少し涙目になりながらも、気持ちが悟られないように平然を装う。
直接沙智に会ってたら、うまく笑えない。
「まさか犯罪者だったんですね。あのお客さん…
この際だから言います
私、亜衣さんに話したいことがあるんです」
「話したいことって何?」
「堀田さんから聞きました!私とあのお客さんが付き合ってるって話。
本当は付き合ってないんです
それ以前に、私もあの男に後をつけられて、私が店員だって気づいた瞬間、何もしないから、恋人の振りをしてほしいって頼まれたんです。」
私は相槌を打ちながら、その話を真剣に聞いていた。
「なんで、恋人の振りをする必要があったんだろうね?」
「それは………
亜衣さんのためですよ」
"亜衣さんのため"沙智にそう言われた瞬間、私の目が大きく見開いた。
コンタクトをしているためか、目が少し乾燥する。
「えっ?私のため?」
「亜衣さんに一目惚れしたって…
笑顔と優しい声が好きだって言ってました
自首したのだって、きっとその人の誠意だと思うんです
悪いことには変わりないですが…」
「私、自分でも不思議なくらい彼が好き
その気持ちに最近気づいた…
でも今はただ辛くて、泣きたくて
もー、歳をとると涙もろくてダメだね」
「無理しないでください!今はたくさん泣いて、嫌なこと全部吐き出しましょう!!」
沙智だって、後をつけられて怖かったはずなのに、声色を一切変えず慰めてくれた。
それなのに私は、沙智の気持ちを考えず、自分のことばかり考えていた。
勝手に決めつけて、後で後悔するなんて、それは自業自得。
なんであの時、すぐにでも沙智に確認しなかったのだろう。
次第に涙が溢れ、視界がぼんやりする。
想いを巡らせる。
翼…私、やっぱり翼のことが好きだよ。
例え嘘をつかれても、私を知らない人から助けてくれた時、これは偶然なんかじゃないと思った。
きっと翼が、優しく私の帰りを見守ってくれていたんじゃないかって、今になって思うの。
ミサンガをくれたのも、何か意味が隠されているんじゃないかって…。
翼への想いがどんどん込み上げてくる。
私はもう翼のトリコになっていた―――。
数日が経った今日、休みの日ということもあり、ソファーの上でゴロゴロしていると、珍しく沙智から電話が掛かってきた。
あの一件もあって、電話に出るのを少しためらった。
「もしもし…?沙智?」
「亜衣さんですか?今すぐテレビつけてください!」
沙智に言われ、私は急いでテレビのリモコンを操作する。
テレビがついた瞬間、私は目を疑った。
まさか、こんなことって・・・
私はその場で崩れ落ち、ソファーに座り込む。
テレビの画面に映し出される、武藤翼の名前。
武藤翼 24 【無職】
前に沙智が言っていた不審者の話。
夜一人で歩いてる女性をつけ回していたのが、翼だったんだ―――。
だから、しばらく会えないって言っていたんだね。
自首したとはいえ、絶対に犯してはいけないことに、彼は手を染めてしまった。
どうしてこうなってしまったのか…。
つい悩ましい表情になってしまう。
「亜衣さん?聞こえてますか?
大丈夫ですか?」
電話の先から亜衣さんと呼ぶ声が聞こえ、我に返った。
「沙智、聞こえてるよ!」
少し涙目になりながらも、気持ちが悟られないように平然を装う。
直接沙智に会ってたら、うまく笑えない。
「まさか犯罪者だったんですね。あのお客さん…
この際だから言います
私、亜衣さんに話したいことがあるんです」
「話したいことって何?」
「堀田さんから聞きました!私とあのお客さんが付き合ってるって話。
本当は付き合ってないんです
それ以前に、私もあの男に後をつけられて、私が店員だって気づいた瞬間、何もしないから、恋人の振りをしてほしいって頼まれたんです。」
私は相槌を打ちながら、その話を真剣に聞いていた。
「なんで、恋人の振りをする必要があったんだろうね?」
「それは………
亜衣さんのためですよ」
"亜衣さんのため"沙智にそう言われた瞬間、私の目が大きく見開いた。
コンタクトをしているためか、目が少し乾燥する。
「えっ?私のため?」
「亜衣さんに一目惚れしたって…
笑顔と優しい声が好きだって言ってました
自首したのだって、きっとその人の誠意だと思うんです
悪いことには変わりないですが…」
「私、自分でも不思議なくらい彼が好き
その気持ちに最近気づいた…
でも今はただ辛くて、泣きたくて
もー、歳をとると涙もろくてダメだね」
「無理しないでください!今はたくさん泣いて、嫌なこと全部吐き出しましょう!!」
沙智だって、後をつけられて怖かったはずなのに、声色を一切変えず慰めてくれた。
それなのに私は、沙智の気持ちを考えず、自分のことばかり考えていた。
勝手に決めつけて、後で後悔するなんて、それは自業自得。
なんであの時、すぐにでも沙智に確認しなかったのだろう。
次第に涙が溢れ、視界がぼんやりする。
想いを巡らせる。
翼…私、やっぱり翼のことが好きだよ。
例え嘘をつかれても、私を知らない人から助けてくれた時、これは偶然なんかじゃないと思った。
きっと翼が、優しく私の帰りを見守ってくれていたんじゃないかって、今になって思うの。
ミサンガをくれたのも、何か意味が隠されているんじゃないかって…。
翼への想いがどんどん込み上げてくる。
私はもう翼のトリコになっていた―――。