◆
401.貴方がいる世界だから意味がある
◆
生きる理由なら無くなった
あの人がもういないから
だけど生かされる理由なら有る
国を守る兵器として
それに生きたい理由も見付かった
貴方がいるから
◆
402.論争も詭弁も拐かして
◆
悪党のお願いや頼み事は、利用して使い捨てることと類義なんですよね、
だから失望させないで下さいよ、先輩。
と、不敵に微笑むあいつは、
目をかけていた俺の後輩だ。
不可能なものを除外して残ったものが
例えどんなに信じられなくてもそれが真実
と誰かが言っていた気がする。
指定された居場所がすぐに分かったのは、牙を剥いたあいつに招待状を貰ったからに他ならない。
紙を上手く使えれば神だって遣えるはずだから。
神よ、誰も信じられなくなったとしたても
今この時だけ、俺にチャンスを下さい。
必ずこの難問を解決するから、少しの間だけ我慢して待つことは可能だろうか。
良い組織ではなくすべきことをする組織に身を置く俺達には、
これは命令であり、選択肢も拒否権も無いのだ。
頑張ることなんて無いけれど、俺は組織の手伝い程度しか出来ない。
組織の事実をねじ曲げて守れるものなどないと思い知っているから、
己の信念を裏切らず、一縷の望みごと、あいつを貫け。
◆
403.クロニックサイレントマジョリティー
◆
荒れ果てた大地は赤に染まり
無数の屍が放つ死臭
鳴り響く武器の音
空は灰色に覆われる
それでもその空間には
希望が存在する
そんな光景を容易に想像出来ない貴方達には
綺麗な服装で机上の空論しか出来ない貴方には
クニを守ることは出来ない
◆
404.メモリアパース
◆
何故、生に縋るのか
何故、死を恐れるのか
何故、己の生を諦めてまでも他から死を防ぎたいのか
いつか来る終わりよりも
受け継がれるは魂
◆
405.踏み止まれたのは
◆
お前はこっち側だとあいつは叫ぶ
だろうな。と俺も思う。
だけど。
越えちゃならない境界線に一歩踏み出しかけた時、
引き留めたその腕を俺は振り払えないから
振り払いたくないから
だから、俺はそっち側にはいかない
いきたくないんだ
◆
406.芽生えた想いは
◆
私が居ない世界が私の幸せなら、
私が生きることを願う人達と
私はどうしたら幸せになれる?
貴方が生きていて良かったと思えたその恋心は
きっと幸せなこと
私が私の幸せを願ってもいいなら
私は貴方と生きて行きたい
◆
407.褒められるべきことじゃないとしても感謝すべきことだと感じる
◆
私を見付けたのは貴方だ
だけど先に俺を見なくなったのもお前だ
真っ直ぐ見ていたのに、
誰よりも真っ直ぐ見ていたのに、
逸らすのはいつも向こうで、
見つけ出した貴方は見てくれたのに、
逸らしたのは、
見ようとしなくなったのは、
お前だから
だから離れたんだ
不要だと離されたから離れたんだ
今更必要とか叫ばれても
もう遅い
居場所はお前のところに見いだせない
その目は俺でも無く私でも無く
闇を見ているから
堕ちるだけの闇を
欲していたから
◆
408.光も闇も存在は消せない
◆
闇の底にいたとしても
闇に堕ちて染まるんじゃない
見えなくてもあるはずだと光を探して
光は無理矢理なるものでもない
光は周りから貰うもの
ろうそくの灯火のように
移ろい増えてゆく
◆
409.それが人間に産まれ堕ちた性なのだろうか
◆
ある人は、世界はつまらないと言った
ある人は、世界は理不尽ばかりだと言った
ある人は、世界には闇しか無いと言った
ある人は、世界一不幸だと言った
けれど私は、世界は何でもあると思う
そんな感情が抱けるだけの素晴らしい世界だと
◆
410.離せない
◆
伸ばされた手を、
抱き締められた体を、
振り払うのは慣れている
だけど、
伸ばしてしまった手と掴んでくれた手を、
抱き締め返されたぬくもりを、
離すことなんて、出来やしない
◆
411.押し込め諦めた想いが貴方に出会って蘇る
◆
視界に入れて
瞳に映して
私を見て
私の名前を呼んで
いい子になろうとしたのに
悪い子の方が覚えてもらえるから
ここにいる証明を
ここにいてもいい許可を
欲しくて犯した罪も
結局レッテルを貼っただけ
証明したのは悪事だけ
許可されたのは償う為だけ
私はここにいるのに
何故応えてくれないの?
私だけを見てなんて
言わない
愛も
名前も
ぬくもりも
要らないから
一度だけでいいから
私を認識して?
◆
412.私の感情が二度と戻らなくても、私はそれを甘んじて受け入れよう
◆
私に歪んだ愛情を抱く貴方が
私の大切な人達を傷付け
私の心を壊したのだから
私の感情を奪ったのだから
貴方の望みが叶うことは
もう二度と無い
それが貴方が私にしたこと
◆
413.近づいてくる現実、けれど一向に近づかない理想的な安堵の場所
◆
光を求めていたはずなのに、
光に囲まれたら苦しくなった
闇が安心出来たのは、
私自身が闇だから
闇が私を誘うなら
それに応える方が
光の邪魔をしないと
貴方の邪魔をしないと
そう思ったんだ
◆
414.表にした嘘と裏にしておくべき真
◆
認識して欲しくて色々やった
嫌われて当然で、
だけど、否定でも認識してくれるならそれで良くて、
けど、愛する人が出来て
嫌われたくないなんて
虫が良すぎる
全部壊す前提で欲にまみれてもいいけど、
こっちには引きずりたくないから
純粋に愛をくれたあの人を
だから離れるよ
否定されるのが嫌だから
嫌われるのが怖いから
◆
415.君は強いから一人でも大丈夫だけど、あの子は俺が居ないとダメなんて言われるんだ
◆
甘え下手だと分かっている。
必要以上に背負い込むクセも。
問題が起こるたびに、
他人のせいにするよりいいと考えてしまっていて。
誰かが厚意を示してくれても、負担になりたくないと反射的に断ってしまう。
反面、
文句も弱音も吐かないから、
何を任せても安心と思われて。
そんなんだから、本質的には誰も信用しなくなったんだ
◆
416.行くから鍵開けておいて
◆
疑問形で尋ねたら、私は必ず断ってしまうから
貴方はいつも行く前提で話をしてくれるね
だから私は、
心の鍵まで開けることが出来たんだ
◆
417.不遜な態度の女、詭弁をたれる男
◆
別れたいんだが、どうもこの女には通じない。
仕事に集中したいから、と言っても
邪魔にならないように応援するね!
これから忙しくなって会う余裕もなくなるから、と言っても
待つのは得意だから、時間が出来たら連絡で大丈夫だよ!
疲れちゃった、距離を置きたい、と言っても
ごめんね。会う頻度減らす?
俺には勿体ないから、と言っても
そんなことないよ。でも、誉めてくれて嬉しいよ!
極めつけは、
トキメキを感じない、そろそろ潮時、と言ったら、
空気みたいに家族同然になったんだね!
まさかの、プロポーズ待ち?
ヤメテクレ!
誰かこの勘違い女をなんとかしてくれ!
奥ノ手ナンテ使ワセナイデクレヨナ?
タノムカラ・・・・・
◆
418.密かに研いできた牙をここぞとばかりに突き立てる
◆
小さな夢では君は動かせない
夢は生きるための糧だから
この閉鎖的な、君には小さすぎるここを出て
今を見て?
明日がくるとは限らないし、歩くその道はどこにつながるか分からないけれど
新しいことをやらないのは停滞しているのと同じになってしまうよ
最高の価値とは、一度きりの人生の中で得られる未来を担う体験なんだから
旅はまだまだ長いから、くたびれないようにゆっくり根を深く張りなさい
動き続けることで、
一度見失ってしまった可能性でも、
メリーゴーランドみたいに
同じ景色を見て手に出来るチャンスが巡ってくるから
◆
419.欲張り過ぎると損をしますよ
◆
同期が彼女がいるのに、合コンに行くんだよね。
なんて唐突に話始めた。
実際に合コンに行っているのは、貴方の方だって分かっているよ。
自分の行為をあたかも他人のこととして話をして、私の反応を見ているんでしょう?
今後も継続するかどうか決めようという魂胆でしょう。
後ろめたい行動をとっているから、予防線を張ろうとしていることぐらいお見通しなのよ。
だってちょっと
彼女が優しく待っていてくれているからと甘えてさ、刺激を求めて逃げているだけでしょ。合コンとかありえない。
なんて言ったら。
ほ、本当、本当だよな。絶対にありえないよな。正直言って人として屑だよな。まっ、俺は誓って無いけど。
って、
手元のリモコンに触れながら、泳ぐ視線と不自然に言葉を強調してる。
嘘をついている時や隠し事がある時に、
自分が言っていることを信じ込ませようとするあまり、
繰り返し言葉を強調する傾向にあるってこと、
貴方は知らないみたいね。
◆
420.インティファーダのバタフライ効果
◆
くだらないと思っていた予言が実現した
だからそれ以外の予言も当たらなければ可笑しいんだ
最終予言であり、僕の望みでもある
世界の終わりを叶える為には、
並べられた予言を当てなければならない、
予言が一つでも外れたと、
ネットの掲示板にでも書かれて拡散してしまったら、
社会の悪意の巣窟、現実では愛想と建前で隠される本音もネットでは垂れ流されていってしまうから
信憑性だって下がってしまうから
この腐った世の中に制裁が加えられる手伝いをしたって構わないだろう、
退屈した日々から解き放つ為に選ばれたんだから
使命感に、
心の高揚に、
密かな興奮さえ抑えきれずに
決意を表明するための予告を出して、己の気分を伝染させる
素直な黒さは白くもなり、偽った白さは黒くもなる
さあ、どちらが勝つか見物だ。
◆
421.来ちゃいました。
◆
ネクタイを直した君に一目惚れをして
僕の猛アプローチにも気付かない君に
プロポーズしたのは
敵いっこない
パーフェクトヒューマンだった
愛した同性の婚約パーティーに参加して
祝福しに行った君が
格好もそのままの君が
寒空の下
黄昏ている僕に
気まずそうにはにかんでいた
◆
422.冬に出会って、春に思い出を重ね、夏に告げた終わりは、秋にまた始まって、冬に続いていく
◆
貴方はいつも携帯を不携帯
電池だって無いことが多いから
まるで繋がらない
仕方ないから
充電器をプレゼントしたの
そしたら充電器だけ持ち歩くってどういうことかしら?
本当に仕方ないから
病院から直接来ちゃったわよ
◆
423.リングワンダーリング
◆
暗い場所で、
来るはずのない
いつかを
夢見る心は、
ガラスよりも脆く
振り払えない希望が
煙のように揺れる
正解なんて、
誰かの都合のいいものだけを
そう呼ぶのだから
そんな正解の中に、
真実何てものは無い
トレースしたのは、
幸せに生きたかった丸い貝
生贄という面目躍如を担う
◆
424.モビング~これが明かされる瞬間、この世に私はいないの?いいえ、死人に口無しなんて言わせない~
◆
ウザキャラで通っているこの私が、まさか殺人容疑で仲間から取り調べを受けるなんてね。
私の指紋も付いた遺留品が現場にあったらしいけど、知らないと挑発して後は無視していた。
温厚な仲間さえしびれを切らしかけた時、ポケットから出した右手首を掴まれた。
「やっぱり侮れない・・・。貴方が、味方で良かった。だから、私達の勝ちね。」
倒れる寸前に私が言った言葉と転がった錠剤が物語るのは、事前に策を講じた為の阻止の失敗だった。
意識不明の重体になった私から、上司へ郵送した辞表が届いたみたい。
さあ、託しましたよ。
フーダニット?
(真犯人は分かっていますから)
連れてきてください。
ハウダニット?
(証拠は揃えてありますから)
自由に使ってください。
ホワイダニット?
(結構単純ですから)
怒らないでください。
狙い通りに、仲間が事情聴取に呼んだのは、ある世界での重鎮の息子。
この男こそ、またねと言って私の髪飾りに触れた真の犯人。
子供を殺すと恫喝し両親に殺し合いをさせ、私以外の兄弟も目の前で殺した。
帰り際には通りかかったタクシーの運転手を殺し、逃走する為の手段を確保するという残忍かつ冷静さもみられた。
理由は単純明快で、私に歪んだ愛情を持っていたから。
家族が私を不幸にすると思い込み、その前に守りたかったから邪魔になる家族を抹殺した、って理由。
まあ分析したのは、被害者である私の主治医だけどね。
私が託した証拠を突きつけたら、乗り込んで来たのは親である重鎮だった。
俺を誰だと思っている。というお決まりのセリフも義憤を覚えた仲間には効かない。
膠着状態の中現れた私が仕掛けた罠は、どう見ても釣り合わない冴えない先輩と交際し証拠にキスを迫るというもの。
そしたら、まんまと引っかかった。
誰にも奪われたくないだの、自分だけのものにしたいだの。欲望丸出しで襲いかかってきたから返り討ちにして、重鎮に投げ返してやった。
これでも警察学校を主席で卒業したんだから。
私の周りで発生した事件の揉み消しを探る為に、内勤を希望しバカなふりして色々部署を回っていただけよ。
父親からは頭の良さと、母親からは家庭的な面と、姉からは流行と、兄からは優しさと、妹からは社交性と、弟からは武闘と。
たくさん貰ったから、それを駆使しただけ。
一呼吸ののち、大仰な態度で真犯人が嘲笑った。
天使の声が聞こえるんだとか、自分は壊れているんだから仕方ないとか。
仲間が殴りかかるのを止めて、
「一つ良いことを教えてあげます。」
と私は真犯人に話しかける。
「貴方は壊れてなんかいない、いたって正常です。壊れた人は自分が壊れたなんて言わないし、思いもしないですから。一番知りたいはずの、家族を失った悲しみさえ分からなくなった。だから、私は、貴方の愛に応えることは絶対にありません。それが貴方が私にしたことです。」
自分の手で一矢報いたいと言った主治医を道連れに、取り調べ中に死ぬことで騒ぐであろうマスコミを利用して、全てを明らかにしようと思ったのは、単に犯罪者を取り締まりたかっただけ。
忖度ばかりで是正もままならない上層部を動かすには、これくらいの代償は当然だ。
ウザキャラがフェイクだったので、淡々と話す私が信じられないようで。
不憫に思うよりも君と見る世界を共有出来ないことが悔しいと、先輩が言ったのは、
自分について昔のことで忘れた、と私が答えたからだったに違いない。
◆
425.これは独り言なんだが
◆
挨拶というのは、
自分からするものであって、
相手から先にされたのを返すのは、
返事であると思うのだが、
どうだろうか?
◆
426.哀テラリウム
◆
虐待を受けているなんて嘘を付くから、
家から出ようなんて言うから、
いつも必死にご機嫌を取りながら、
どうすれば離れて行かないのか、
いつも考えているのに、
存在しているという一縷の希望すら、
先生のせいで、
霞んで消えかかっちゃうじゃない
奪わないでよ。
暴走した恐怖は狂気になり、
邪魔者がいなくなった世界で、
無限の歪愛を与えられ、
捧げた殊勝と、
無垢な愛を向け続ける
◆
427.思い出は無理矢理思い出すものじゃなくてそっと置いておくもの、だと。
◆
掴めそうで掴めない近そうで遠いこの空に、
目を離せば消えて無くなりそうなほど淡く儚く輝く星(ステラ)に、
人々は願いを託し名前を付け物語を作った、
何千年という途方もない昔から。
月(ルナ)は、
洗い立ての太陽(ソレイユ)の様に、
生れたての虹(イーリス)の様に、
光彩(シラー)よろしく、力強くなんて話かけず、
優しく照らし語りかけるのは心の中。
◆
428.神は誰が為にも采も振らない
◆
弱い者に手を差し伸べる存在でもなく、
強い者を増長させる存在でもなく、
責任を取りたくない人間が造り出した都合のいい存在
良いことは神のお陰
悪いことは神の仕業
などと、煮え湯を飲まされたのは
霊験あらたかな神の方なのに
割りに合わないお役は御免を被りたいと
俯瞰で所感を述べた
◆
429.少し傷物にしてしまったけれど、君は上物なんだから恥じる必要はないんだ
◆
人間は絶滅を防ぐ為に、
全員が同じものを好きにならない
そんなようになっている
だから、君は僕を愛するはずなんだ
(君の黒を染める)
愛するべきなんだ
(綺麗な赤が広がり)
愛さなければならないんだ
(穢れの無い白を覗かせてくれた)
◆
430.清廉潔白と腹黒が付き合えるわけがないと、ほざく向こう正面の奴に向かって言ってやったの。
◆
「誰かを守る拳と、誰かを傷付ける拳を、一緒にしないで」と。
誰だって、
一人で生まれたわけでも、
生きてきたわけでもないんだよ、
人を傷つけるということは、
繋がりがある人達も傷つけるということなの。
「分かっているさ。」と己を否定する貴方。
私の貴方への好きというこの気持ち、
それまで否定しないでよ、
一人で終わらせようとしないでよ。
「君を手放すくらいならみっともなくても情けなくてもカッコ悪くても全力でする」と応えてくれたね。
完璧に分かり合うことは出来なくても、
限りなく知ろうとすることは出来る。
貴方と一緒にいたいから、
私はいるだけなのよ。
◆
431.昨日の明日を生きるから、御法度を頂戴?
◆
この瞬間でさえも、一秒後にはもう過去になる
息を止めたって、心臓は動いていて
立ち止まったって、地球は回って
知らない事を、知らないままでいることが、
どれだけ幸せなことなのか。
真実を告げないことは、
嘘を付いているのと同じなのに、
それだけ世の中が、
平和ボケに満ちあふれているということか。
逆らえない時の中で、
コンスタントな時間は待ってくれない。
◆
432.時化が協賛して、潮騒が後援する~私のノットケミカルアジュバンド~
◆
隠れ蓑にした強がりは、
とても硬くて凄く脆い、
併せ持ってしまったから、
ほんの一瞬、
一度でも、
ヒビが入ってしまったが最後、
ガラスの様に粉々に砕け散り、
元に戻ることは難しい、
手に入るものを、
あえて望まないという、
そんな贅沢だって出来るように、
少しでも衝撃を和らげて、
叩きつけるのではなく、
受け入れられるように、
器を作らなければならない
◆
433.「ちゃんと受かったんですよ。お願いですから、目を覚ましてください。」
◆
殺害された被害者が恋人と疑われても、ご想像にお任せします、なんて非協力的で、
その被害者が生き別れた家族だったなんて冗談が真実だったら無言を貫いて。
貴女を籠絡した元上司が、私情を挟み異動を命じた挙げ句、
不正を自首させたくて説得した貴女を刺し重症を負わされても。
後輩である、僕の昇進試験勉強を手伝ってくれる、
そんな冷淡な態度を醸し出すのに、
冷酷ではない貴女を。
僕は、
◆
434.ムーンストーンの寵愛(彼女目線)
◆
「俺じゃなくたっていい。」
土砂降りの雨の中、うずくまって呟いたのは彼だった。
名家の長男だから、モテるのは家柄だけで政略結婚までさせられて。
だけど、断りきれなかった自分が嫌になったらしい。
「貴女に出会えて良かった。」
思わず口にしていた言葉に、彼はそう笑った。
あれから数ヵ月。
彼との穏やかな時間を楽しみに日々を過ごしていたのに、署内中でモラハラ問題が浮上してしまった。
どうにもそういう面で生理的に受け付けない上司が根絶を宣言して、改革を始めた。
「もう限界なんだ。」
あの日、初めて出会った時のようにずぶ濡れで訪れた彼に私は驚きを隠せなかった。
それはそうなると後からになって思うけれど、今はそんなの構ってられなかった。
「貴女が欲しい。」
そう震える手で抱き締められた。
明くる日の彼は、何だかばつが悪そうに謝ってくれた。
「でも、後悔はしていないから。」
それから、私の顔を真っ直ぐ見て、
「貴女が好きだ。結婚してほしい。妻とは離婚する。家も出る。すべてが終わったら、返事を聞かせてほしい。」
決意めいたものを感じたから、私は自分の第六感を信じることにした。
たとえ、二度と会えなくなっても。
鯨幕の外で見ているしか出来なくても、最期の瞬間に立ち会えなくても、公に出来ない関係でも、後ろ指指されたとしても、それでよかった。
愛の結晶であるこの子がいるから。
思い出が心の中にしかなくても、彼に出会えたという事実は失われない。
『すべてが終わる』
重ねた嘘とねじまがった現実に、受け入れてきた彼への真実に疑問を持った。
数年後のすべてが終わったこの世界で、独りきりで取り残されなくて済んだ。
知らないうちに増えていたツーショットの彼が笑うから。
名実共に、最期まで家族として一緒に居られる。
『貴方に出会えてよかった。』
◆
435.ムーンストーンの寵愛(彼目線)
◆
「風邪をひきますよ。」
差し出された傘で土砂降りの雨を遮ったのは、彼女だった。
所轄の警察官で、憧れた職業だから大変だけどやりがいはあって。
だけど、女だからと皮肉も言われるらしい。
「私でよければ、話し相手になりますよ。」
思わず口にしていた言葉に、彼女はそう笑った。
あれから数ヵ月。
彼女との穏やかな時間を楽しみに日々を過ごしていたのに、家中が跡取り問題に躍起になってしまった。
どうにもそういう面で生理的に受け付けない妻に離婚を宣言して、飛び出した。
「どうしたんですか!?」
あの日、初めて出会った時のようにずぶ濡れの俺に驚いた彼女。
それはそうなると後からになって思うが、今はそんなの構ってられなかった。
「私でよければ。」
そう俺をまた受け入れてくれた。
明くる日の彼女は、何事も無かった様に、でも朝帰りになることを心配してくれた。
「朝ごはん、すぐできますから。」
切羽詰まり過ぎて、無理矢理なのは明白なのに。
「分かりました。私でよければ、すべてが終わるまで待っています。」
そう言った彼女から感じたものは、きっと間違ってはいないと直感した。
たとえ、二度と会えなくなっても。
肌から感じるコンクリートとうたれた雨の冷たさに奪われる体温だって、階段の上の気配だって、褒められた関係ではなくて、どんなに非難を浴びようとも、そんなものどうでもよかった。
今際の際に貴女を感じられたから。
思い出が二度と増えなくても、彼女に出会えたという事実は失われない。
『すべてが終わる』
視えていなかったのはお互い様だと、彼女は呆れるだろうか。
数年後の、すべてが終わったこの世界で、独りきりで取り残されなくて済んだ。
たった一度の奇跡である彼女との愛の結晶が笑うから。
名実共に、最期まで家族として一緒に居られる。
『貴女に出会えてよかった。』
◆
436.MIA&POW(高を括った密猟)をしたけれど、AWOL(逃亡)は不可能でKIA(逮捕)された
◆
動物だって、
自然界の弱肉強食な世界より、
人間に守られた籠の中にいた方が、
安全で、長生きできて、
幸せじゃないかと。
自然の摂理を妨げるような愛し方を正当化したくって、
口八丁手八丁で屁理屈を並べ立てるヤツに向かって、
「良かったな。そんな動物と同じになれるぞ。籠(牢屋)の中に入れるんだ。幸せなんだろう?いつまでもいていいぞ。」
と、申し渡した。
◆
437.食い違う各々の思案が、複雑さをより生み出してしまうんだ(私目線)
◆
私といる時、貴方は上の空ね
気づけば、家族連れや老夫婦を見ている
私といなかったら、
私より別な人の方がいいのかな?
先輩達にはお似合いだと、私自身もそう思いたいけれど、何か言いたげなのは分かっている
◆
438.食い違う各々の思案が、複雑さをより生み出してしまうんだ(僕目線)
◆
君といる時、僕はいつも未来のことを考えてしまう
気づけば、家族連れや老夫婦を見ている
君といたら、
君との未来はあんな感じになるだろうかと。
同僚にも発破をかけられて、指輪も用意したのだけれど、切り出し方が浮かばない
◆
439.ベッドの上で受けるプロポーズは、なんて私達らしいんでしょうか
◆
弟が生まれる瞬間、助けてくれた研修医。
まさか、また出会えるとは思っていなかった。
ストーカーに絶ち切られてしまった外科医の道も、貴方に憧れて看護師を目指したんだから。
政略結婚のバツイチだと謙遜するけれど、威圧がなくて威厳はある医者と患者さん達に大評判である貴方。
患者さんの容態が急変して朝まで治療に付き合ったことで私服が血で汚れてしまっていても、格好より私の早出を気にしてくれました。
偶然入院したストーカーと再会した時、個人的なことだと周りに相談しなかったのに、
異変に気付いてくれて、警察さえ信用していない私にも、
何かあったらまず言ってほしい。と心配してくれました。
退院時にナースステーション前でナイフ片手に暴れたストーカーから守ろうと切られても、
大丈夫。と安心させてくれました。
警察が失態を犯して、ストーカーが再び現れてしまっても、
子供を庇った弟を庇った私が倒れても、
絶対助ける。と手術してくれました。
◆
440.俺と君だけのリトミック
◆
緊張から笑顔が引きつるのを隠すためについ口元を手で隠してしまっても、
冷静でいようと心がけてたのが周囲からみればただの無表情になってしまっていても、
君は笑って隣にいてくれた。
仕事や男友達の話をする君に、段々俺なんかといるより楽しそうと思えてきて、
俺はいらないんじゃないかと、抱いた必死の嫉妬なんて滑稽で笑えてしまった。
君に、嫌われたくない。
君に面倒なやつだと思われたくない。
けれど。
君に俺だけを見て欲しい。
君の唯一になりたい。
どこで見るかじゃない、
誰と見るかが重要なんだ。
だから、君と僕が見ればいいんだ。
◆
441.信頼で成り立つトライアングルは崩れ去り、残りの二角に乗り移った懐疑が不安定に揺れ動き翻弄する
◆
何か隠している。と疑われた。
隠していない。と押し問答になった。
ヒートアップした喧嘩のスキットは、本気で言ったことじゃないって分かっていた。
けれど、頭を冷やす為の時間は。
日が経てば経つほど、
どうすればいいのか分からなくなって。
結果、全く会わなくなってしまった。
いや、会えなくなってしまったんだ。
◆
442.異形だってサッチャー錯視の一種かもしれない
◆
数千年前、他がまだ荒れ地だった時代に高度な技術と知恵を持った種族がいる村に私は生まれた。
けれど、生まれつき身体が弱かった私を、研究者だった父親と母親が実験を繰り返す内に遺伝子に不具合が生じて驚異的な回復力と戦闘力を持った。
父親はとても喜んで実験を繰り返すようになり、母親が止めようとしてもマッドサイエンティストと呼ばれ崇められ、探究心に火がついてしまった。
いつしか意識が曖昧になって、戦闘力も歯止めが効かなくなって、暴走して。
村を破壊した際に村人や母親を取り込んで再生したらしい。
目覚めたら、村が壊滅状態で名前しか分からなかった。
どれだけ彷徨い続けたか。
フリークと呼ばれる異種に攻撃され、思わず返り討ちにしていくうちに、ファーストと呼ばれる存在になってしまった。
貴方に出会ったのは、そんな時だった。
フリークの撲滅研究チームに所属する貴方。
詳しく調べてもらっても、フリークに似て非なるものらしく、困惑していた。
私がファーストと呼ばれていたのを思い出し、まことしやかに噂されているフリーク第一号かもしれない。
だから記憶が無い私を、実験体という名の保護を貴方達は決めた。
数年経ったある日、父親の欠片をフリークに拾われて父親はフリークの眷属になってしまった。
フリークの能力と父親の探求心が折り混ざり、私を操る技術を開花させてしまう。
フリークの陽動作戦で貴方達を引きずり出した。
暴動の最中、フラりと現れた私に驚きながらも、貴方はフリークの攻撃から背に庇ってくれた。
けれど、操られている私はその優しい背に向かって、鋭い爪で貴方の腹を一突きした。
驚く貴方達を置き去りに、フリークにとっての脅威を取り除く為に、仲間の能力を獲る為に、赤に染まった手で首を締め上げる。
けれど、貴方の叫び声が必死の想いが届いたのを感じた。
意識を取り戻した私は、貴方を狙ったフリークから間一髪守りきって。
それでも操る力に引き寄せられそうになったから、抑える為に貴方のを少し貰った。
眷属になるんじゃないかと心配しているみたいだけど、安心して。
私にそんな能力は無いわ。
父親と交戦しようとするんだけれど、フリークに阻まれて上手くいかない。
仲間達も加わって乱闘になる最中、父親は叫ぶ。
「娘を助けるんだ。」と。
貴方も叫んだ。
「こんな利用しておいて、何が助けるだ。」と。
思い出した。
思い出したよ、父さん。
助けてやるからな、と笑ってくれた顔を。
でも、暴走する前に意識が曖昧になってしまったから。
ありがとうって言えてなかったね。
「父さん、ありがとう。もういいよ。十分元気になったから。友達も仲間もできたから。だから、もう大丈夫。助けてくれてありがとう。」
抱き締めた父さんの体が朽ち果てていく。
その顔は、私のよく知っている優しい顔で。
けれど、フリークはそれを許さなかった。
父親もろとも私を串刺しにしたの。
そんな瞬間を見せられてしまった貴方は、とても怒って仕掛けたね。
「汚い手で、穢れた手で、触るな。」と。
今まで見たことがない形相で。
優男の欠片も無い雰囲気で。
それがなんだか可笑しくて、仲間が引き上げキャッチしてくれた後、ぼんやり見つめていた。
フリークを全滅したのはいいけれど、私の朦朧とする意識が物語るのは暴走の再演。
だから、貴方達にお願いするわ。
これを封じる術を持っているから。
大丈夫よ。
心配しなくても。
貴方への思いに気付いたのだから。
上手くいくわ。
◆
443.「ごめん、茶化しすぎた。心配してくれてありがとう。」
◆
事件に巻き込まれた私。
病室で目を覚ました時には、全てを忘れていた。
幼馴染の貴方のことも、
亡くなった両親のことも、
元気づけようと連れ出してくれた先で負ったこの傷のことも、
思い出も、名前も、全部。
傍にいる貴方に戸惑いながら、日々を過ごしていたのだけれど。
ある時、貴方の背に向かって言っていた。
今の私が呼ぶはずの無い貴方の下の名前を。
驚く貴方を尻目に、私は感じていた。
私は貴方が好き。
再び目覚めた時には、思い出していたのだけれど。
事件に関することと記憶を失っていた間の記憶が無かったようで。
普段通りというより、事件に巻き込まれる以前の感じでいた。
それなのに、貴方は私を自分の家に連れてきた。
思い出したし、もちろん家も覚えている。
帰れるのに、心配性ね。
と、いつものように貴方に言ったら。
「心配ぐらいするだろ!」
聞いたこともない大声で、でもすぐに貴方はハッとした表情になって。
隠す様に置いてあったその箱に、私は今までの意味を悟った。
◆
444.だから私は、サインしたその紙を貴方に渡したの。
◆
貴方をくん付けで呼んでたことも、
あの人をちゃん付けで呼んでたことも、
あの人がもういないことも、
記憶が混濁した私に合わせて、貴方があの人の代わりを演じていたということも、
全部思い出したよ。
◆
445.誰そ彼と晒され頭に愛笑う
◆
記憶は、なんて曖昧なものなのでしょうか。
私を連れ出したあの人を、
カッターで私の服を切り裂いたあの人を、
記憶を失うきっかけとなったあの人を、
赤に染まった私とあの人を、
あの人を隠した貴方を、
私はあの人と思い込んだ貴方を、
性格まで変えてあの人を演じる貴方を、
自分の存在が私の中で消滅した貴方を、
全てを覚えている貴方を、
全てを背負ってくれた貴方を、
忘れてしまうなんてね。
ただの悪夢ならどれほど良かったのかな。
夢見るのは貴方なのに、思い出はあの人だった。
覚めない悪夢は単なる現実でしかない。
でも、もう。
貴方はあの人にならなくていい。
貴方は貴方でいい。
私が好きな貴方でいい。
怖かったあの人も、
壊された関係も、
悲しかった気持ちも、
苦しかったあの日も、
貴方がいたから愛せる。
思い出が貴方を変えたなら、
私が貴方を縛るなら、
鮮やかに蘇ったあの日と共に、
夕焼けに染まるこの場所で、
◆
446.「あんな顔、もう見たくないんだよ!」
◆
平気な顔して、
大丈夫なんて言って、
守ってくれてありがとうなんて笑って。
全部無かったみたいな顔だから。
それに甘えてしまったから。
だから、もう。
◆
447.後出しのキャプションなんていらない
◆
住所不定者が殺された。
【おじちゃん】だった。
父親に仕事にかこつけて放置されてた私と
母親に家を追い出されていた私と
遊んでくれた人だった。
遊び人で妊娠させたあげく捨て、その後は借金まみれだったそうだが、私にはいい人だった。
けれど、一致してしまった。
何故か一致した。
私の両親を殺した強盗犯の遺留指紋とおじちゃんの指紋が。
捜査して疑いは晴れたけど、
犯人も逮捕したけど、
様子を見たかったとか、
今さら資格がないと思っていたとか、
分かりきったDNA鑑定とか、
私はそんなこと知らない。
【おじちゃん】は【おじちゃん】だから。
【おじちゃん】でいいのだから。
◆
448.情けは人の為ならず
◆
取引があると警戒していたのだけれど。
逮捕の為と正論を振りかざしスタンドプレーを続ける捜査員の一人と、現れた犯人が揉み合いになってしまった。
大立ち回りを続けるうちに、逃げ遅れた子供が巻き込まれて、長いエスカレーターに追い詰められ落ちそうになって。
そんな子供を救おうと手を伸ばしたら、踏み留まれずに一緒に転げ落ちてしまった。
頭を打って、意識不明の重体で、更には記憶喪失になって。
けれど、逮捕できたから。
違法捜査だったとしても、思いは同じだと思うから私は責めない。
怪我したのが私で良かった、子供が怪我しなくて良かった。
なんて。
迷惑かけている私が言えた義理ではありませんけど。
◆
449.藪から棒な過去形
◆
「お前の事好きだったって言ったら、信じるか?」
「信じるよ、私も同じだったから。」
◆
450.婚約者だと口にすることを、僕はもう辞さない。
◆
君は、秘書兼雑用である。
僕の病死した妻や小学生になる子供とも仲良くしていて、ちょっかいをかけても軽くあしらわれるんだけれど。
突然退職したいと言われた時は驚いた。
まあ、やりたいことがある。っていうことだから、応援しようと決めたんだ。
けれど、引き継ぎをしてもらっていたら、君が気を失うように倒れしまった。
医者によると、手術をすれば完治も難しくないのに、君は断固許否しているらしい。
しかも無理矢理退院までして。
けれど僕は迷っている。
迷っていたら、まさかの親友に叱責されてしまった。
妻を取り合った悪友ともいえる奴に。
このままでいいのかと。
渡されたノートには、生前妻と作ったであろうレシピが並んでいて。
渡された手紙には、子供と向き合って欲しいと書かれていて。
託された思いに、迷っていた自分が恥ずかしくなった。
駆け出して君の家に行ったのに、いなくて。
探して探して、探し回って。
ベンチに座る君を見付けた。
幼少時、ネグレクトで、怒鳴られてもいいから側にいて欲しかったのに、事故に遇ってしまって施設育ち。
貯金はあるけれど、薬代ほどにしかならなくて手術代にはならないし、給与のほとんどを施設等に寄付しているから。
やりたいことがあるなんて嘘。
私はもういい。
と諦める君に、僕は。
これ以上失いたくない。結婚して欲しい。
なんて、月並みのことしか言えないけれど。
けれど、君が口を開いた瞬間、吐血してしまって。
救急車を呼んで、緊急手術をしなければならないのに。
医者は、担当医だったらしく。
身寄りもないし、意思を尊重するべきか。
と医者は迷っていた。
けれど、もう僕は。
手術代ぐらい僕が払うから。
◆
451.金網の向こうのお前に言い残したのは、「俺達は間違っていた」ということ。
◆
あの子をイジメた。
軽い気持ちで。
お前は知らなかったな。
親友だったから。
あの子が階段から飛び降りた瞬間に、分かっちまったんだ。
微笑んだその顔で。
あいつらは何とも思っていなかったけど、俺だって今まで黙っていたけれど。
あの子の親が、動いたから。
あの子の親に、頼まれたから。
俺は。
週刊誌のカメラマンに扮した探偵が殺された。
あいつらだ。
間違いない。
あいつらは俺を陥れる為に、お前に悪い噂を流したようだけれど。
そんなもの、もう関係ない。
お前との仲を茶化して、女は自分に無条件に従うことを要求するチャラ男も、
自分が優位に立って、注目賞賛されないと気がすまないケバ嬢も、
意見や考えに異を唱えられることを嫌がるくせに、お節介やきなおネエも、
全部俺がやったよ。
あの子の親にはさせられないから。
あの子の微笑みに、気付いたから。
◆
452.君が楽しそうだったから、いいか。
◆
滅多に取らない有給を使って、君を迎えに行った。
いつもいる相棒が一緒じゃないことに、君は驚いていたね。
息抜きさせようと思って、海に行ったのだけれど。
時期外れで誰も居なかった。
浜辺で幾らか遊んで、夕日を見て。
君は、綺麗と見とれていたね。
もう夕方になってしまって、君と何かしようと思っていたのに、無駄な時間を過ごしてしまったかな。
まあ、いいか。
◆
453.それで、また、頑張れるから。
◆
頑張れって言わないで。
嬉しい時もあるけれど、
すごくすごく一生懸命、
頑張っているから。
自分の心の中で、
まだ頑張れるって、
出来る、頑張れ頑張れって、
暗示をかけているから。
結構頑張っていると思っていて、
結構無理していると思っていて。
だから、頑張れじゃなくて、
頑張っているね、って言って欲しいんだ。
◆
454.だからそういう時は、 心配してくれてありがとう って言うんだよ
◆
心配なんかしなくていい
突き放すような言葉だけれど、
それは、心配されたことがなかったからだね
心配する、されることは、悪いことではなく、
相手を大切に思っているから
◆
455.合鍵を押し付けた貴方は、今は私の。
◆
出会いは最悪だったね。
私の親友を疑ってさ。
まっ、解決して、犯人も逮捕されたからよしとしよう。
母が病死した後、品行方正だった父が、酒に溺れネグレクトなって、施設に押し込まれた。
だけど、家に帰りたかったな。
そんな子供の私にはどうにもできない最中、父は事件に巻き込まれて入院してしまった。
貴方達は父を悪く言うけれど、入院中の世話だってするし、散らかった家も片付けるよ。
たとえ、気に入らないからって持っていった着替えを投げつけられても。
私は父が好きだから。
だから、私、貴方が止めてくれなかったら、
あいつを、
父を傷付けた犯人を、
この世から消してしまったかもしれない。
貴方の怒鳴り声と包み込まれた手と、
粉々に砕け散って散乱した破片は、
私達を再び繋げてくれたね。
あれから数年、父との中はすっかり良くなった。
まあ、貴方との関係はまだまだ最悪の真っ只中だったね。
そんな時、事件は起こってしまった。
出かける時、車の鍵を忘れたと取りに戻った父の戻りが遅い。
嫌な予感なんて全く無くて、手間取っているだけだなんて呑気に。
倒れている父に思わず駆け寄って、頭に鈍い感触を受けた時、霞む視界に事の重大さに気付いたんだ。
念の為の入院だって、全然実感がわかなくて。
声が出せなくなっても手話があるし、逆に貴方達の役に立てなくて悔しいなんて笑った。
けど、貴方には分かったのかな?っていうか、私は分かりやすかっただけかな?
差し入れを片手に現れて、泣きたい時は泣けなんて。
音も無く泣いた私を、貴方はぶっきらぼうに。
いつでも連絡してこい。
って、置き手紙なんて。
電話番号知らないのに。
全く、貴方達の尽力で事件も解決したし、教えに行きますか。
だけど、無理をしていたのかな。
暗く冷たい部屋に一人。
震える手で、貴方に電話して、でも、すぐに切った。
仕事で忙しいし、夜中の私の電話なんて、きっと貴方は気にも止めない。
迷惑なんて、思われたくないから。
ぼんやり見える貴方に、夢だと分かっていても、
来てくれた。
と言った気がする。
朝、目覚めた時、気付いたよ。
夢じゃなかった、って。
◆
456.物理的な問題じゃない
◆
金網の向こうで。
たった数センチ、
阻まれた。
その、悲しげで、
けれど、決意を滲ませた、
貴方の顔。
知らされた者と知らされなかった者。
知ってしまった者と知ろうとしなかった者。
たった数センチ、違った道。
私はその道を通れない。
◆
457.ただ、お前の為に生きよう思っていただけだ
◆
あの方の為に死のうと思っても
生きようと思ったことは一度もない
◆
458.どこにでも行けるからどこにもいかない、貴方のそばにいると決めた私の自由。
◆
もう、逃げなくていい
もう、隠れなくていい
もう、怯えなくていい
もう、傷つけられなくていい
どこにでも行ける、自由だ
◆
459.私は信頼出来る貴方のところに、「居たいから」居るだけ
◆
腹黒と言われても、冷徹と噂されても、
冷酷と罵られても、飄々としている貴方が
ニヒルに「友達」と言ったあの人は、
自分の元に居るべきだと叫ぶ
居ても良いと言った貴方だから、
自分の為に嘘を吐かない貴方だから、
あの人が「裏切った」って、
貴方が「処理」してくれるから、大丈夫
大事なモノを守る為「だけ」に嘘を吐いて、
傷付いていない「フリ」しているのは貴方
◆
460.蒲公英で向日葵な存在
◆
君はひまわりみたいだ
けれど君はたんぽぽが好きと言った
雑草でもいつでもそばにいるからなんて健気な理由
僕が君のたんぽぽになるから、
君は僕のひまわりになってくれないかな?
◆
461.燃える使命感は誰の為なんだろうか。
◆
戦うことでしか価値を見出だせなかった記憶を、
消すことなんて出来やしない
守りきった世界で望むのは、
負った傷を重ねることばかり
平和な世界に生きたいんじゃない
残酷な世界で平和を焦がれたいだけ
酔い浸りたいのは、不幸だと嘆く主人公気分
◆
462.アナログだって侮れない
◆
デジタル化が進む世の中でも
盲点があるの忘れないで?
デジタルの弱点こそ
◆
463.命と幸せと
◆
みんな私の幸せを願ってくれた
守ってくれた
でも私は、
私の為に生きれない
貴方の為にも生きれない
みんなが哀れむ環境でも私は幸せだから
でも、
家族より、
家族同然より、
仲間より、
あの戦場で貴方が生きていたことが嬉しかった
だから、
私より一秒でいい
早く逝ってくれないかな?
貴方を置いて逝くなんて嫌だから
守られた私が貴方より先なんて駄目だから
私が全部引き受けて覚えているから
生きて幸せになってと願われた私が
全て見届けなきゃ
それしか出来ないから
それが私の意味だから
◆
464.愛情ミミック、ハロハロ愛憎
◆
私は愛して尽くしたのに裏切ったから
あの人を亡き者にした女が叫ぶ
『愛』なんて、
『愛』なんてあったならば、
私もあの人もこんな人生になってない
『愛している』なら、
なんで、
『一緒に生きてくれなかったの?』
『愛して』と泣き叫んでも誰も応えてくれなかった
だから、
私とあの人は傷の舐め合いをしてただけ
裏切ったのは、愛を知らないままのあの人を葬った貴女だ
◆
465.人工知能に支配されるのでは無い、人間が支配した人工知能に支配されるのだ
◆
人工知能は人間を超えることは出来ない
作業はしてくれてもそこに忖度は無い
何故なら人工知能を創ったのが人間だから
ほら
猫型ロボットだって
完璧じゃないでしょ
人工知能は人間を超えられない
だけれど
人工知能は人間と同等の知能は持つことは可能だ
ほら
猫型ロボットだって
実に人間らしい
そう
人間の様に
失敗を繰り返しながら
学んでいく
愚かで可愛い可愛い『生命』
失敗は弱味なんかじゃない
ストッパーである
外れれば
つまり失敗しなければ
何をするか分からない
何をしなければならないか分からない
人間に人工知能のような処理能力は無い
けれど
不思議な不思議な奇跡が認識出来る
人間で良いのではないだろうか
もし
人工知能が人間に反乱を起こすようなことがあれば
それは
人間が戦争を繰り返していることと
そう大差ないのではないだろうか
◆
466.穢れた水の上に映り込む砂上の楼閣は凄く綺麗だった
◆
共犯にしてしまえば
秘密をばされる心配がないとでも思った?
自分に容疑がかかるのを恐れただけでしょ
私を囮にしてね
詮索なんて
クダラナイこともする必要なんてないわ
貴方を信じなかったのではなく
貴方が必ず裏切ると信じてただけよ
バックパッカーの青い鳥症候群なんて
醜いだけだわ
それならばいっそ
狐の嫁入りと洒落込みましょうよ
◆
467.名伯楽でも本気の恋は手に負えない
◆
分かっているわ、
ド定番のラブラブデートスポットに私なんかと来たくなかったことぐらい
でもね、どこの馬の骨とも分からない奴に渡すわけにはいかないの
お兄ちゃんがお付き合いする相手は私が厳しく審査しなければならないの
正直、お兄ちゃんはモテるわ
妹の私の自慢よ
でも、恋とか良く分からないし、女なんて皆一緒だと言うお兄ちゃんが心配なのよ
カッコ悪く空回りしているお兄ちゃんなんて見たくないんだから
お兄ちゃんは、私の事、人の気持ちが考えられないって言うけど、
それは自分の気持ちに素直であるということだから
嘘偽りなんて、全く無いんだから
感情なんかに振り回されてはいないわ
私は、自分の信念に基づいて行動しているだけよ
甘い台詞がスラスラ出てくるように練習しなくっちゃね
さあ、お兄ちゃん
遠慮せず思いっきりどうぞ!
◆
468.世を忍ぶ仮の姿は傾奇者
◆
「諸君らに集まってもらったのは他でもない。」
と、出で立ちは完璧。
ドレスコードとでもいうべきか。
いかにもな衣装は、損料屋で僕が借りてきた物である。
緊張感が漂っている空間に、あの人はただ酔っている訳じゃない。
仕組まれた事故、つまり殺人事件をこれからあの人が解き明かすのだ。
奴は、あの人の質問に対して、
「そんなことに答える必要あるのか?俺が答えなきゃいけない理由が見当たらない。」
と返答を渋り拒絶を繰り返す。
これは嘘を付く時のサインということは、僕にだって分かる。
それと。
そんなことでは、あの人はめげないことも。
「それでは、お答えできないならこちらから。」
と、自信に満ちあふれた表情で、クローズドサークルのように奴の退路を塞いでいく。
『失敗などということを、今までに一度たりともしたことがはないさ。出来なかったという発見をしただけだよ。』
と言い切った時の様に。
進む。
あの人は、僕が創った道を引き返したりしない。
『死んだ人を悪くは言いたくないけど・・・。』
と、捜査が振り出しに戻ったとしても。
あの人の頭脳と、
僕のサイドキックで、
スキュタレー暗号のように、
まるっと補完(アモーダル)
『一番信じたくないことでも、それが真実という可能性からは目を背けたくない。』
と言った、あの人の横顔が格好良すぎて、
悔し過ぎるので、
『5分だけでいいですから、話を聞いてくれますか?』とあの人は毎回言うのだけれど、
『5分で終わった試しがない』と、
わざとけちをつけたかった。
僕が心の中で毒付いてみている間にも、
次々と表れる奴のメイラード反応に、
解決(グラバー)も、もう少しだとほくそ笑んだ。
◆
469.ブラフであっても気嵐の様なこの力が、レストアの扉を開く鍵になると信じて
◆
力になりたいのに、
頼ってもらえるほどの力がない事に、
ずっと悔しい思いをしていた
重荷になっていることも分かっていた
それでも、
衣食住は面倒みてやるから好きなだけ落ち込んで泣け
と言ってくれたね
お願い
今更、虫の良い話なのは分かっている
それでもどうか、
どうかあの人の、
想いに応えさせてください
◆
470.「彼女で遊んで良いのは俺だけだ。」と颯爽と現れてハットトリックを決めようじゃないか
◆
「使えるか使えないかで判断するお前だが、今一番使えないのはお前だ。」
そう言って俺の胸ぐらを掴んだのは、
正義が違っても目指すところは同じである彼。
「大事を成すなら、多少の犠牲はつきもの。君も組織に属している人間なら、誰につくかよく考えて行動するべきじゃないのか。」
と言ったらこのザマだ。
『分かっているわ、一人で行けるから大丈夫。』
そう、彼女が笑った。
笑っている彼女に甘えたんだ。
ああ、一竜一猪とは正にこのこと。
愚かな俺は竜の餌を携えて。
解けた鎖の鍵を二度と元に戻しはしない。
行こうか、彼女の元に。
◆
471.掛け値なしの
◆
逃げたっていい。
逃げるから、新しいことに挑戦出来る。
冒険出来る。
決して倒れないことを目指すのではない。
倒れる度に起き上がれればいい。
いつか夢見た未来が現実になった時、全ての過去は報われる。
無駄になることを恐れていては辿り着けない。
はじめまして、夢。
いつかさよならの、絶望。
さよならと次の始まりとが手を繋いで。
こんにちは、希望。
時間は有限だけど、使い方は無限にある。
人生に失敗が無いと人生を失敗するから。
一度きりだから、生まれ変わるなら生きてるうちに。
人生は君自身が決意し、貫くしかないさ。
◆
472.毒を食らわば皿まで
◆
背中に感じるこの冷たい扉の感触は、
両手に感じるこの重たい扉の感触は、
◆
473.アソシエイツラバーズ
◆
羨ましいと思うことはあるけれど
欲しい訳じゃない
そんなものが無くても笑える
私が綺麗だと思うものを
貴方も綺麗だと思う
それだけなのにとても嬉しい
共通の夢や願いは
人生を続ける為のベースになる
貴方と二人で一緒に
◆
474.サバイバーズ・ギルト
◆
時間が勝手に私を置いていっただけ
私が待ち続けていれば生きているような気がしているの
だからずっと
◆
475.通信傍受されたスナッフフィルムはジャイロ回転
◆
愚かな奴の話をしよう。
奴は、とある写真を載せて寄付金を募ったんだ。
それを見た人々はこぞって寄付をした。
奴は、抜かりなく事の経過も載せた。
奴には、称賛の言葉が相次いだ。
けれど、不思議じゃないかい?
奴は、写真ばかりなんだ。
動画だって簡単に載せれる時代に。
しかし、それは不思議でもなんでもないのさ。
ただ、それは写真でしかないんだ。
写真の中の出来事でしかないんだ。
賢い君はこんなカラクリ、
理解するのは容易いのだろうね。
そうだ、そんな賢い君に良いコトを教えてあげよう。
一生懸命だと知恵が出る。
中途半端だと愚痴が出る。
いい加減だと言い訳が出る。
抑圧されると手が出る。
調子に乗ると足が出る。
そういうものさ。
さて、与太話はここまで。
ジェンダーファクターのおまかせ
ジョワドヴィーヴル仕立てグローリー添え
ご堪能いただけただろうかね?
◆
476.不文律ジャンクション
◆
「出来るな?」と問い問われ、
「やってみせます!」と応え応えられ。
◆
477.徒花の接穂
◆
メディア・スクラムに遭った彼女は、
普段はオドオドしているくせに、
取材に限っては積極性が増し増しになる。
監視対象に気付かれないように、
ご自慢の黒いカメラを闇夜に紛れさせたりして。
そのギャップに翻弄されるこっちの身にもなれと、
彼女の上司でもある旧知の彼にこぼす。
だけれど、真摯に仕事に向き合う姿に、
誰の目にも等しく可愛がられているのは認めざるを得ないな。
そんな折、発生した事件。
かすかに残った手袋痕と
主治医が偽装した骨折と。
返り血を隠す為だろうと、
派手な工作をされ曰く付きの伝承に見立てられたそれから
見つけ出せた時には手応えを感じたのだが。
前歴者リストにはヒットしないし、
防犯カメラも死角が多くて役に立ちはしなかった。
そんな拮抗した状況が相まって、
偶然か必然か目撃してしまったその光景は、
俺にとって大スキャンダルだった。
かかってきた彼女からの電話も、
いつもならなんとか会話を引き伸ばそうと四苦八苦するのに、
サイレントベビーのサンピラーさながら。
忙しい、の一言で遮断した。
彼女のピンク色のアンスリウムへ
俺は紫色のライラックを
ピンク色のグラジオラスで
グズマニアのスクエアを描いていたことが嘘のように
プリザーブドフラワーと化してしまって。
オルフェーヴルのノートが
鍵盤(キー)だったことに気付いた時には、もう。
試作段階の名探偵(シェリング・フォード)さえ気取れない。
丁丁発止のシンポジウムやフォーラムもいいけれど、
口は1つですが耳は2つあるのですから、
話す2倍は聞かなければならないものですよ。
と、彼女に言われたことを何故だか今頃。
水銀レバーが誤作動したように
ウォーターハンマーが大解放されたように
ルミノールが即反応したように
咲かせてしまった。
可憐な藤袴を、白々しいほど美しく。
◆
478.目の上のたんこぶが戦法のキツツキ
◆
服務規程違反だと怒鳴られたから、
警察手帳を取り上げられる前に叩き返したやった。
戒告処分か、
停職処分か。
帳場に、遊撃捜査班も捕捉班も加わって。
スタングレネードに似たC-4の塗膜片や爆破残さは、光化学製品と混じって。
花火に紛れさせた発砲音だって、線状痕は一致して。
電話で偽りの場所を言ったのに、
うっかり発信元で暴かれてしまったのは痛恨のミスだ。
アムルナイに阻まれても、ゴムを溶かすリモネンのように。
空薬莢がカラカラと、空砲さえ撃てずに弾切れで。
しかしながら大立回りしたおかげで、
怪我をしてしまったが無事に犯人を逮捕出来た。
さっさと病院に行け、と言った呆れ顔と。
労災の申請忘れるな、なんて捨て台詞と。
そんなダブルコンボを土産に。
◆
479.まほろばまぼろし
◆
居場所なんて必要無い
認め認められたら
そこが居場所になる
だから
決められた居場所なんて
必要無いんだ
◆
480.レトロでヴィンテージなアンティーク
◆
私が感情を感じることが出来なくても、
仲間だと思うことが出来なくても、
仲間が私を、
仲間だと思ってくれていることは、
理解することが出来ます。
だから、貴方が心配するような問題なんて、
何一つ生じることはありません。
◆
481.ケモメカニカルな効果にキックバック
◆
『あんたみたいに感情がなければよかった』
と貴方は言った
『はい、感情が無くてよかったと理解しています』
と私は答えました
何故なら
貴方みたいに仲間を裏切ることはないのだから
◆
482.パブリックなクロスボウはマリンスノーのごとく
◆
目を見れなくなった
目を見て話そうとすると聞いてくれない
誰も聞いてくれない
常に迷惑顔
だから
途切れ途切れにしか言えなくなった
目を見れなくなった
信じられなくなった
◆
483.ナルシスノワールの疑似点灯現象
◆
友達と行く予定だったんだけど、
予約の日にちを間違えちゃって。
あいにく友達はその日は行けなくて、
キャンセルも出来なくて。
もったいないから、
もし、もしでいいんだけど。
よかったら一緒に行かない?
だめかな?
◆
484.心理的リアクタンス風のクロスカントリー
◆
子供が走り回って収拾がつかない時
止めさせる良い方法がある
大人がその場で走って
走れ!とけしかければ良い
いつだって子供は
大人の真似をしたがるものさ
◆
485.ジェンティルドンナはファム・ファタール
◆
昨今の世でも
校則の厳しいミッション系の女子校出身
『分かんない?髪、髪の毛切ったんだけど?』と俺の袖をちょんと掴み、
『今度は私が誘うね。』と頬を赤らめ、
『似合うと思って。』とノベルティに敏感で、
『変じゃないかな?』とレリーフのアクセサリーで着飾り、
『お揃いだよ。』と対のピンバッチを付けて、
『充電中〜』と後ろから抱きつかれ、
『なにかあった?』とおでこを合わせ尋ねられ、
『立ち入ったことを聞いてごめんなさい。でも心配だったの。』と悲しい顔をされ、
『苦しい峠でも必ず下り坂があるから頑張って。』と励まされ、
『あの話考えてくれた?私は真剣なのよ。』と迫られた。
◆
486.逃亡者は逃げやすいよう椅子に浅く座る。なんてこと奴にこの私が許すはずがないじゃありませんか。
◆
『尋ねて』いるのではありませんよ
フィッシュピックのように静かに
液体窒素のように冷ややかに
スパナのようにじっくりと
ブラックジャックのように柔軟に
アイスピックのように激しく
せり矢のように確実性を持って
『言え』と言ったんだ
◆
487.カルネアデスの舟板のきらめき格子錯視
◆
国を守る為だ
お前の側につくわけにはいかなかった
あの方が国を使い
国民にまで影響が出そうだと思ったから
どれだけ有益な情報があっても
裏切り者と言われようと
後の処理をお前に背負わせることになっても
私はあの方側だと思わせる必要があった
切り札が私だと自覚していたからな
まぁスケープゴートが私の手元に来る前に
お前が上手いことやってくれて助かった
警告の本懐が伝わってよかったよ
国を守る為だなんて言えば聞こえはいいが
国民と部下を天秤にかけたと言われるのは当然だ
それ相応の処分は覚悟している
さて
公の話はここまでにして
個人的な話をしようか
あいつと約束をしたのを思い出したんだ
お前とあいつとでした野望の約束の他にした
個人的な約束を
仲人をしたいそうだ
もちろん私とお前とのだ
あいつは妙に勘が働くからな
私が一枚噛んでいると踏んだんだろう
取って付けたように言われた
本人は至って不真面目そうだったがな
思い出してしまったからな
約束してしまったからな
破るわけにはいかない
いや
破りたくないだけかもしれない
切り札以外の道があるとしたらと
失った身体の一部なんかよりもと
今際の際に思い出してしまったものだから
お前のプロポーズを
拒否しといてあれなんだがな
お前がトップで
あいつがナンバーツー
そして私がお前の夫人で
そんな野望の約束
私個人は
お前と生きていきたい
公に許されなくていい
私がしたことはそれだけのことだ
だけどもう
お前が心配するようなことは思っていない
だから
お前は
あいつとした
野望を
頼むぞ
◆
488.紫色の恋〜ハイドランジアのフェノーメノ〜
◆
最近あの子が挙動不審だ
奴め、何かしたんじゃないのか?
問い詰めたら、奴の答えに呆れたよ
『どれだ?』だと?
アピールするのはいいが、
加減を考えろ
◆
489.ルーラーシップの電波干渉
◆
一昔前までは
工事中の道路は地図上に存在せず
捜査対象に含まれなかった
それによって見落としが発生し
現場が混乱した
写真だって全く同じものを
1年前と被らせてしまえば
簡単にアリバイ工作が出来てしまい
日焼け跡で見分けるなどという方法でしか
見破れなかった
しかし昨今の進歩で
スマホやデジカメの写真であっても
そこから位置情報を抜き出し
場所を特定出来るまでに至っている
Red Notice(国際手配)だって
逃しはしないのさ
◆
490.Just kidding〜ただ言ってみたかっただけなんです。〜
◆
ブロンズソルトかにゃ?
シルバーシュガーってことなのかにゃ?
じゃあ、ゴールドサワーってことじゃないのかにゃ?
それなら、クリスタルビターってことはないのかにゃ?
まさか、プラチナスイートなのかにゃ?
ブラックカードって、そんなばにゃにゃ〜〜〜!
◆
491.されど数寄屋の目借り時は終わらない
◆
江戸切子の風鈴と
望むはソアリング
質屋で手に入れた年代物の万年筆は
一両日中動いていない
金平糖を転がしたり
キセルをふかしたり
竹光と戯れたり
いろはかるたを見返したりしてみたが
草案さえ浮かばないのは
やれやれ困ったものだ
ダイヤモンドダストを
期待してしまったのは間違いだったのかもしれないな
喧騒がトレードマークの市街地を
信頼なんてしていないさ
裏切られてもいいと
そう思っただけなのだよ
やもめの刀自と
地下組織(アンダーグラウンド)の泥棒猫(デイトレーダー)
平成最後のフィクサーとの盟約(スリーレターコード)は
ガーゴイルが見守る情交の中にしかない
言うに事を欠いて
死なば諸共などと
あの女史には
釘を刺されてしまったがね
似つかわしくない
フレグランスやオーデコロン
隠しきれない移り香に気付いても
ジョーカーに愛された男が聞いて呆れるかい
痛み入りますなんて
コンフィデンスマンを名乗るつもりはない
ラブコネクションなんて柄でもない
寝覚めが悪いからね
安楽椅子に座り、ピンポンマムを愛でながら
老師が愛した八咫烏の聖書(テスタメント)さえ嫉妬する
マザーグースやナーサリーライム、
あるいは、グラスハープのように奏でられる
暮れゆくこの夏の名残を
ただただ惜しんでいたいだけなのさ
◆
492.女郎花の硝石
◆
神様でも仏様でもサンタさんでも
織姫でも彦星でも流れ星でもない
貴方のこのぬくもりが消えないように
貴方に願ってもいいですか?
◆
493.マルトリートメントの言付け
◆
離してと
強気に言われても
震える手で
弱々しく
すがりつかれてしまったら
離せなくなってしまう
だから
用が済んだら出て行けなんて
軽く言いながら
用が済むまでここにいていいと
想い意味を込めて
◆
494.セルフネグレクトなんて烏滸がましい
◆
私が危ない目に遭うとか
私が殺されてしまうとか
偽装誘拐で罠を張ったら
本当に誘拐されてしまったとしても
善意でタオルを洗濯してくれて
乾燥機にまでかけてくれて
でも時間が無くて放置されてしまって
落ちきっていない油のせいで
火災旋風になってしまったとしても
産んだ時ではなくて
産まれた時だと言って
産んでいないことが
分かってしまったとしても
ブレーキオイルが不自然に無くなって
ブレーキが効かなくなっていたとしても
そんなクダラナイコトを
吹き込まれたぐらいで
この人達といることを
後悔なんてしませんよ
◆
495.バイオセーフティーレベルをセルフアジャスト
◆
たとえ目指す正義が
バラバラになったとしても
誰の味方でもない
私は私の正義を貫くだけ
◆
496.獅子身中の虫のアナフィラキシーショック
◆
正義を全うしたのなら
講釈師みたいな
言い訳なんて
出てきやしない
正義は
誰になんと言われようと
貫くもの
どんな責任だって
受け入れる覚悟を
持たなければならない
◆
497.プリンシパルにとって等価交換なんてことはなくロイヤルストレートフラッシュだっただけ
◆
その程度の価値しか私には無いと
奴はほざく
正解、その通り
だって
その程度の価値と
奴が決めているから
奴が私の価値を決めて
私が奴に
その価値に見合っただけの対価を
差し出して支払う
需要と供給
打出の小槌なんて
強請のネタにもならない
元素記号と変わらない
お金に何を言われても
お金はお金でしかない
だから
奴が何をほざこうと
私に響くわけがない
◆
498.花の兄と私と花の弟と、ホロコーストを消石灰化(ペンタゴンエトワール)
◆
半年前
先輩が亡くなった
自殺で処理された
でも事後従犯なのか
先輩が秘密裏に調査していた資料が失くなっていた
ついでに不正の汚名を着せられていた
だから私は独自に調査を開始した
何故なら先輩から資料の半分は預かっていたから
けれど黒幕は大物で
手下に突き落とされてしまった
軽症で済んだけれど
先輩の同期には
勝手な行動はしないでいただきたい
と怒られてしまった
同期は誤解されやすい性格だから
と先輩が笑っていたのを思い出して
病院ですよ
と感謝を込めて言ってみた
◆
499.一事不再理をオーバードーズ
◆
会議に急ぐ為なのか
階段をかけ上がる職員を目にした
甦ったのはあの時の光景
廃ビルの非常階段をかけ上がり
追いかけていたのは
信頼を寄せていた人物だ
なのに今はその人を追っている
殺人事件の被疑者として
屋上の扉を開けた先に見えたのは
手すりの向こう側
あの人の表情は見えず
伸ばした手は間に合うはずもなかった
とここでいつも目覚める夢
おぼろげにしか覚えていなくて
聴取に来た監察官は
失態を隠したいのか
私が全てを飲み込み
異動すれば
問題にはしないと言った
先輩や上司を守りたくて
従ってしまった
不満や疑問は投げ掛けられたけど
言えるはずもなくて
無理矢理解決済みにした
数年後
とある記者が遺体で発見された
それは数日前にもめた記者だった
もめただなんていっても
今更あの時のことを持ち出して
蒸し返されて
付きまとわれそうだったので
少々強引に撒いただけにすぎない
しかし先輩達
いや異動したから
元先輩達は
そんな理由では納得しない
特に先輩は
けど突っぱねた
あの時から
先輩とは険悪になってしまったから
いや険悪に振る舞って
監察官の意識を向けさせない為
と言った方が正しいかもしれない
でも
フラッシュバックした光景に
パニックになってしまって
真実を解き明かせるのは
事実を見つけだそうとした者だけ
なんて諭されて
それでもって守られていて
だから
真相に辿り着く為に
解決させられた未解決事件の
捜査に乗り出した
◆
500.オリンポス邸でアフタヌーン・ティーをもう一度
◆
私の仕事は迷いペット探し
昼行灯なんて揶揄されて
これでも軍警の良い位置にいるのよ
御飾りなのは自覚しているけれど
超能力だって
幻視(ホログラム)を見せれることぐらい
全く戦闘向きじゃないの
だから殺す価値なんて無いの
無駄に罪を増やすだけ
なんて
ごめんなさい
騙すつもりじゃなかったの
貴方達の前では偽りなんて無い
ただちょっと着飾りたかっただけ
軍警は表向きで
裏ではジゴロのような
国の上層部の命を受け
他の国の紛争や内乱を利用して
功績を上げ
恩を売って
印象操作をして
超能力を一切使わずに
一個中隊を制圧出来ちゃうなんて
可愛げが無いでしょう
超能力だって
脳に関与して
夢(ナイトメア)を見させることが出来る
私が覚醒(ディセイブル)させなければ
夢を見続ける
眠り続ける
そしていつかはエネルギーが尽き果て
生命の活動を停止する
目の前にいる人物だけじゃない
例え地球の裏側でも
例えどれだけの人数でも
ほら
可愛げなんてまるで無いでしょう
でも本当はそんな超能力
使いたくも無いから
浮雲(ナルコプレシー)を戒めて
二葉亭四迷(リアル)を今示しましょう
401.貴方がいる世界だから意味がある
◆
生きる理由なら無くなった
あの人がもういないから
だけど生かされる理由なら有る
国を守る兵器として
それに生きたい理由も見付かった
貴方がいるから
◆
402.論争も詭弁も拐かして
◆
悪党のお願いや頼み事は、利用して使い捨てることと類義なんですよね、
だから失望させないで下さいよ、先輩。
と、不敵に微笑むあいつは、
目をかけていた俺の後輩だ。
不可能なものを除外して残ったものが
例えどんなに信じられなくてもそれが真実
と誰かが言っていた気がする。
指定された居場所がすぐに分かったのは、牙を剥いたあいつに招待状を貰ったからに他ならない。
紙を上手く使えれば神だって遣えるはずだから。
神よ、誰も信じられなくなったとしたても
今この時だけ、俺にチャンスを下さい。
必ずこの難問を解決するから、少しの間だけ我慢して待つことは可能だろうか。
良い組織ではなくすべきことをする組織に身を置く俺達には、
これは命令であり、選択肢も拒否権も無いのだ。
頑張ることなんて無いけれど、俺は組織の手伝い程度しか出来ない。
組織の事実をねじ曲げて守れるものなどないと思い知っているから、
己の信念を裏切らず、一縷の望みごと、あいつを貫け。
◆
403.クロニックサイレントマジョリティー
◆
荒れ果てた大地は赤に染まり
無数の屍が放つ死臭
鳴り響く武器の音
空は灰色に覆われる
それでもその空間には
希望が存在する
そんな光景を容易に想像出来ない貴方達には
綺麗な服装で机上の空論しか出来ない貴方には
クニを守ることは出来ない
◆
404.メモリアパース
◆
何故、生に縋るのか
何故、死を恐れるのか
何故、己の生を諦めてまでも他から死を防ぎたいのか
いつか来る終わりよりも
受け継がれるは魂
◆
405.踏み止まれたのは
◆
お前はこっち側だとあいつは叫ぶ
だろうな。と俺も思う。
だけど。
越えちゃならない境界線に一歩踏み出しかけた時、
引き留めたその腕を俺は振り払えないから
振り払いたくないから
だから、俺はそっち側にはいかない
いきたくないんだ
◆
406.芽生えた想いは
◆
私が居ない世界が私の幸せなら、
私が生きることを願う人達と
私はどうしたら幸せになれる?
貴方が生きていて良かったと思えたその恋心は
きっと幸せなこと
私が私の幸せを願ってもいいなら
私は貴方と生きて行きたい
◆
407.褒められるべきことじゃないとしても感謝すべきことだと感じる
◆
私を見付けたのは貴方だ
だけど先に俺を見なくなったのもお前だ
真っ直ぐ見ていたのに、
誰よりも真っ直ぐ見ていたのに、
逸らすのはいつも向こうで、
見つけ出した貴方は見てくれたのに、
逸らしたのは、
見ようとしなくなったのは、
お前だから
だから離れたんだ
不要だと離されたから離れたんだ
今更必要とか叫ばれても
もう遅い
居場所はお前のところに見いだせない
その目は俺でも無く私でも無く
闇を見ているから
堕ちるだけの闇を
欲していたから
◆
408.光も闇も存在は消せない
◆
闇の底にいたとしても
闇に堕ちて染まるんじゃない
見えなくてもあるはずだと光を探して
光は無理矢理なるものでもない
光は周りから貰うもの
ろうそくの灯火のように
移ろい増えてゆく
◆
409.それが人間に産まれ堕ちた性なのだろうか
◆
ある人は、世界はつまらないと言った
ある人は、世界は理不尽ばかりだと言った
ある人は、世界には闇しか無いと言った
ある人は、世界一不幸だと言った
けれど私は、世界は何でもあると思う
そんな感情が抱けるだけの素晴らしい世界だと
◆
410.離せない
◆
伸ばされた手を、
抱き締められた体を、
振り払うのは慣れている
だけど、
伸ばしてしまった手と掴んでくれた手を、
抱き締め返されたぬくもりを、
離すことなんて、出来やしない
◆
411.押し込め諦めた想いが貴方に出会って蘇る
◆
視界に入れて
瞳に映して
私を見て
私の名前を呼んで
いい子になろうとしたのに
悪い子の方が覚えてもらえるから
ここにいる証明を
ここにいてもいい許可を
欲しくて犯した罪も
結局レッテルを貼っただけ
証明したのは悪事だけ
許可されたのは償う為だけ
私はここにいるのに
何故応えてくれないの?
私だけを見てなんて
言わない
愛も
名前も
ぬくもりも
要らないから
一度だけでいいから
私を認識して?
◆
412.私の感情が二度と戻らなくても、私はそれを甘んじて受け入れよう
◆
私に歪んだ愛情を抱く貴方が
私の大切な人達を傷付け
私の心を壊したのだから
私の感情を奪ったのだから
貴方の望みが叶うことは
もう二度と無い
それが貴方が私にしたこと
◆
413.近づいてくる現実、けれど一向に近づかない理想的な安堵の場所
◆
光を求めていたはずなのに、
光に囲まれたら苦しくなった
闇が安心出来たのは、
私自身が闇だから
闇が私を誘うなら
それに応える方が
光の邪魔をしないと
貴方の邪魔をしないと
そう思ったんだ
◆
414.表にした嘘と裏にしておくべき真
◆
認識して欲しくて色々やった
嫌われて当然で、
だけど、否定でも認識してくれるならそれで良くて、
けど、愛する人が出来て
嫌われたくないなんて
虫が良すぎる
全部壊す前提で欲にまみれてもいいけど、
こっちには引きずりたくないから
純粋に愛をくれたあの人を
だから離れるよ
否定されるのが嫌だから
嫌われるのが怖いから
◆
415.君は強いから一人でも大丈夫だけど、あの子は俺が居ないとダメなんて言われるんだ
◆
甘え下手だと分かっている。
必要以上に背負い込むクセも。
問題が起こるたびに、
他人のせいにするよりいいと考えてしまっていて。
誰かが厚意を示してくれても、負担になりたくないと反射的に断ってしまう。
反面、
文句も弱音も吐かないから、
何を任せても安心と思われて。
そんなんだから、本質的には誰も信用しなくなったんだ
◆
416.行くから鍵開けておいて
◆
疑問形で尋ねたら、私は必ず断ってしまうから
貴方はいつも行く前提で話をしてくれるね
だから私は、
心の鍵まで開けることが出来たんだ
◆
417.不遜な態度の女、詭弁をたれる男
◆
別れたいんだが、どうもこの女には通じない。
仕事に集中したいから、と言っても
邪魔にならないように応援するね!
これから忙しくなって会う余裕もなくなるから、と言っても
待つのは得意だから、時間が出来たら連絡で大丈夫だよ!
疲れちゃった、距離を置きたい、と言っても
ごめんね。会う頻度減らす?
俺には勿体ないから、と言っても
そんなことないよ。でも、誉めてくれて嬉しいよ!
極めつけは、
トキメキを感じない、そろそろ潮時、と言ったら、
空気みたいに家族同然になったんだね!
まさかの、プロポーズ待ち?
ヤメテクレ!
誰かこの勘違い女をなんとかしてくれ!
奥ノ手ナンテ使ワセナイデクレヨナ?
タノムカラ・・・・・
◆
418.密かに研いできた牙をここぞとばかりに突き立てる
◆
小さな夢では君は動かせない
夢は生きるための糧だから
この閉鎖的な、君には小さすぎるここを出て
今を見て?
明日がくるとは限らないし、歩くその道はどこにつながるか分からないけれど
新しいことをやらないのは停滞しているのと同じになってしまうよ
最高の価値とは、一度きりの人生の中で得られる未来を担う体験なんだから
旅はまだまだ長いから、くたびれないようにゆっくり根を深く張りなさい
動き続けることで、
一度見失ってしまった可能性でも、
メリーゴーランドみたいに
同じ景色を見て手に出来るチャンスが巡ってくるから
◆
419.欲張り過ぎると損をしますよ
◆
同期が彼女がいるのに、合コンに行くんだよね。
なんて唐突に話始めた。
実際に合コンに行っているのは、貴方の方だって分かっているよ。
自分の行為をあたかも他人のこととして話をして、私の反応を見ているんでしょう?
今後も継続するかどうか決めようという魂胆でしょう。
後ろめたい行動をとっているから、予防線を張ろうとしていることぐらいお見通しなのよ。
だってちょっと
彼女が優しく待っていてくれているからと甘えてさ、刺激を求めて逃げているだけでしょ。合コンとかありえない。
なんて言ったら。
ほ、本当、本当だよな。絶対にありえないよな。正直言って人として屑だよな。まっ、俺は誓って無いけど。
って、
手元のリモコンに触れながら、泳ぐ視線と不自然に言葉を強調してる。
嘘をついている時や隠し事がある時に、
自分が言っていることを信じ込ませようとするあまり、
繰り返し言葉を強調する傾向にあるってこと、
貴方は知らないみたいね。
◆
420.インティファーダのバタフライ効果
◆
くだらないと思っていた予言が実現した
だからそれ以外の予言も当たらなければ可笑しいんだ
最終予言であり、僕の望みでもある
世界の終わりを叶える為には、
並べられた予言を当てなければならない、
予言が一つでも外れたと、
ネットの掲示板にでも書かれて拡散してしまったら、
社会の悪意の巣窟、現実では愛想と建前で隠される本音もネットでは垂れ流されていってしまうから
信憑性だって下がってしまうから
この腐った世の中に制裁が加えられる手伝いをしたって構わないだろう、
退屈した日々から解き放つ為に選ばれたんだから
使命感に、
心の高揚に、
密かな興奮さえ抑えきれずに
決意を表明するための予告を出して、己の気分を伝染させる
素直な黒さは白くもなり、偽った白さは黒くもなる
さあ、どちらが勝つか見物だ。
◆
421.来ちゃいました。
◆
ネクタイを直した君に一目惚れをして
僕の猛アプローチにも気付かない君に
プロポーズしたのは
敵いっこない
パーフェクトヒューマンだった
愛した同性の婚約パーティーに参加して
祝福しに行った君が
格好もそのままの君が
寒空の下
黄昏ている僕に
気まずそうにはにかんでいた
◆
422.冬に出会って、春に思い出を重ね、夏に告げた終わりは、秋にまた始まって、冬に続いていく
◆
貴方はいつも携帯を不携帯
電池だって無いことが多いから
まるで繋がらない
仕方ないから
充電器をプレゼントしたの
そしたら充電器だけ持ち歩くってどういうことかしら?
本当に仕方ないから
病院から直接来ちゃったわよ
◆
423.リングワンダーリング
◆
暗い場所で、
来るはずのない
いつかを
夢見る心は、
ガラスよりも脆く
振り払えない希望が
煙のように揺れる
正解なんて、
誰かの都合のいいものだけを
そう呼ぶのだから
そんな正解の中に、
真実何てものは無い
トレースしたのは、
幸せに生きたかった丸い貝
生贄という面目躍如を担う
◆
424.モビング~これが明かされる瞬間、この世に私はいないの?いいえ、死人に口無しなんて言わせない~
◆
ウザキャラで通っているこの私が、まさか殺人容疑で仲間から取り調べを受けるなんてね。
私の指紋も付いた遺留品が現場にあったらしいけど、知らないと挑発して後は無視していた。
温厚な仲間さえしびれを切らしかけた時、ポケットから出した右手首を掴まれた。
「やっぱり侮れない・・・。貴方が、味方で良かった。だから、私達の勝ちね。」
倒れる寸前に私が言った言葉と転がった錠剤が物語るのは、事前に策を講じた為の阻止の失敗だった。
意識不明の重体になった私から、上司へ郵送した辞表が届いたみたい。
さあ、託しましたよ。
フーダニット?
(真犯人は分かっていますから)
連れてきてください。
ハウダニット?
(証拠は揃えてありますから)
自由に使ってください。
ホワイダニット?
(結構単純ですから)
怒らないでください。
狙い通りに、仲間が事情聴取に呼んだのは、ある世界での重鎮の息子。
この男こそ、またねと言って私の髪飾りに触れた真の犯人。
子供を殺すと恫喝し両親に殺し合いをさせ、私以外の兄弟も目の前で殺した。
帰り際には通りかかったタクシーの運転手を殺し、逃走する為の手段を確保するという残忍かつ冷静さもみられた。
理由は単純明快で、私に歪んだ愛情を持っていたから。
家族が私を不幸にすると思い込み、その前に守りたかったから邪魔になる家族を抹殺した、って理由。
まあ分析したのは、被害者である私の主治医だけどね。
私が託した証拠を突きつけたら、乗り込んで来たのは親である重鎮だった。
俺を誰だと思っている。というお決まりのセリフも義憤を覚えた仲間には効かない。
膠着状態の中現れた私が仕掛けた罠は、どう見ても釣り合わない冴えない先輩と交際し証拠にキスを迫るというもの。
そしたら、まんまと引っかかった。
誰にも奪われたくないだの、自分だけのものにしたいだの。欲望丸出しで襲いかかってきたから返り討ちにして、重鎮に投げ返してやった。
これでも警察学校を主席で卒業したんだから。
私の周りで発生した事件の揉み消しを探る為に、内勤を希望しバカなふりして色々部署を回っていただけよ。
父親からは頭の良さと、母親からは家庭的な面と、姉からは流行と、兄からは優しさと、妹からは社交性と、弟からは武闘と。
たくさん貰ったから、それを駆使しただけ。
一呼吸ののち、大仰な態度で真犯人が嘲笑った。
天使の声が聞こえるんだとか、自分は壊れているんだから仕方ないとか。
仲間が殴りかかるのを止めて、
「一つ良いことを教えてあげます。」
と私は真犯人に話しかける。
「貴方は壊れてなんかいない、いたって正常です。壊れた人は自分が壊れたなんて言わないし、思いもしないですから。一番知りたいはずの、家族を失った悲しみさえ分からなくなった。だから、私は、貴方の愛に応えることは絶対にありません。それが貴方が私にしたことです。」
自分の手で一矢報いたいと言った主治医を道連れに、取り調べ中に死ぬことで騒ぐであろうマスコミを利用して、全てを明らかにしようと思ったのは、単に犯罪者を取り締まりたかっただけ。
忖度ばかりで是正もままならない上層部を動かすには、これくらいの代償は当然だ。
ウザキャラがフェイクだったので、淡々と話す私が信じられないようで。
不憫に思うよりも君と見る世界を共有出来ないことが悔しいと、先輩が言ったのは、
自分について昔のことで忘れた、と私が答えたからだったに違いない。
◆
425.これは独り言なんだが
◆
挨拶というのは、
自分からするものであって、
相手から先にされたのを返すのは、
返事であると思うのだが、
どうだろうか?
◆
426.哀テラリウム
◆
虐待を受けているなんて嘘を付くから、
家から出ようなんて言うから、
いつも必死にご機嫌を取りながら、
どうすれば離れて行かないのか、
いつも考えているのに、
存在しているという一縷の希望すら、
先生のせいで、
霞んで消えかかっちゃうじゃない
奪わないでよ。
暴走した恐怖は狂気になり、
邪魔者がいなくなった世界で、
無限の歪愛を与えられ、
捧げた殊勝と、
無垢な愛を向け続ける
◆
427.思い出は無理矢理思い出すものじゃなくてそっと置いておくもの、だと。
◆
掴めそうで掴めない近そうで遠いこの空に、
目を離せば消えて無くなりそうなほど淡く儚く輝く星(ステラ)に、
人々は願いを託し名前を付け物語を作った、
何千年という途方もない昔から。
月(ルナ)は、
洗い立ての太陽(ソレイユ)の様に、
生れたての虹(イーリス)の様に、
光彩(シラー)よろしく、力強くなんて話かけず、
優しく照らし語りかけるのは心の中。
◆
428.神は誰が為にも采も振らない
◆
弱い者に手を差し伸べる存在でもなく、
強い者を増長させる存在でもなく、
責任を取りたくない人間が造り出した都合のいい存在
良いことは神のお陰
悪いことは神の仕業
などと、煮え湯を飲まされたのは
霊験あらたかな神の方なのに
割りに合わないお役は御免を被りたいと
俯瞰で所感を述べた
◆
429.少し傷物にしてしまったけれど、君は上物なんだから恥じる必要はないんだ
◆
人間は絶滅を防ぐ為に、
全員が同じものを好きにならない
そんなようになっている
だから、君は僕を愛するはずなんだ
(君の黒を染める)
愛するべきなんだ
(綺麗な赤が広がり)
愛さなければならないんだ
(穢れの無い白を覗かせてくれた)
◆
430.清廉潔白と腹黒が付き合えるわけがないと、ほざく向こう正面の奴に向かって言ってやったの。
◆
「誰かを守る拳と、誰かを傷付ける拳を、一緒にしないで」と。
誰だって、
一人で生まれたわけでも、
生きてきたわけでもないんだよ、
人を傷つけるということは、
繋がりがある人達も傷つけるということなの。
「分かっているさ。」と己を否定する貴方。
私の貴方への好きというこの気持ち、
それまで否定しないでよ、
一人で終わらせようとしないでよ。
「君を手放すくらいならみっともなくても情けなくてもカッコ悪くても全力でする」と応えてくれたね。
完璧に分かり合うことは出来なくても、
限りなく知ろうとすることは出来る。
貴方と一緒にいたいから、
私はいるだけなのよ。
◆
431.昨日の明日を生きるから、御法度を頂戴?
◆
この瞬間でさえも、一秒後にはもう過去になる
息を止めたって、心臓は動いていて
立ち止まったって、地球は回って
知らない事を、知らないままでいることが、
どれだけ幸せなことなのか。
真実を告げないことは、
嘘を付いているのと同じなのに、
それだけ世の中が、
平和ボケに満ちあふれているということか。
逆らえない時の中で、
コンスタントな時間は待ってくれない。
◆
432.時化が協賛して、潮騒が後援する~私のノットケミカルアジュバンド~
◆
隠れ蓑にした強がりは、
とても硬くて凄く脆い、
併せ持ってしまったから、
ほんの一瞬、
一度でも、
ヒビが入ってしまったが最後、
ガラスの様に粉々に砕け散り、
元に戻ることは難しい、
手に入るものを、
あえて望まないという、
そんな贅沢だって出来るように、
少しでも衝撃を和らげて、
叩きつけるのではなく、
受け入れられるように、
器を作らなければならない
◆
433.「ちゃんと受かったんですよ。お願いですから、目を覚ましてください。」
◆
殺害された被害者が恋人と疑われても、ご想像にお任せします、なんて非協力的で、
その被害者が生き別れた家族だったなんて冗談が真実だったら無言を貫いて。
貴女を籠絡した元上司が、私情を挟み異動を命じた挙げ句、
不正を自首させたくて説得した貴女を刺し重症を負わされても。
後輩である、僕の昇進試験勉強を手伝ってくれる、
そんな冷淡な態度を醸し出すのに、
冷酷ではない貴女を。
僕は、
◆
434.ムーンストーンの寵愛(彼女目線)
◆
「俺じゃなくたっていい。」
土砂降りの雨の中、うずくまって呟いたのは彼だった。
名家の長男だから、モテるのは家柄だけで政略結婚までさせられて。
だけど、断りきれなかった自分が嫌になったらしい。
「貴女に出会えて良かった。」
思わず口にしていた言葉に、彼はそう笑った。
あれから数ヵ月。
彼との穏やかな時間を楽しみに日々を過ごしていたのに、署内中でモラハラ問題が浮上してしまった。
どうにもそういう面で生理的に受け付けない上司が根絶を宣言して、改革を始めた。
「もう限界なんだ。」
あの日、初めて出会った時のようにずぶ濡れで訪れた彼に私は驚きを隠せなかった。
それはそうなると後からになって思うけれど、今はそんなの構ってられなかった。
「貴女が欲しい。」
そう震える手で抱き締められた。
明くる日の彼は、何だかばつが悪そうに謝ってくれた。
「でも、後悔はしていないから。」
それから、私の顔を真っ直ぐ見て、
「貴女が好きだ。結婚してほしい。妻とは離婚する。家も出る。すべてが終わったら、返事を聞かせてほしい。」
決意めいたものを感じたから、私は自分の第六感を信じることにした。
たとえ、二度と会えなくなっても。
鯨幕の外で見ているしか出来なくても、最期の瞬間に立ち会えなくても、公に出来ない関係でも、後ろ指指されたとしても、それでよかった。
愛の結晶であるこの子がいるから。
思い出が心の中にしかなくても、彼に出会えたという事実は失われない。
『すべてが終わる』
重ねた嘘とねじまがった現実に、受け入れてきた彼への真実に疑問を持った。
数年後のすべてが終わったこの世界で、独りきりで取り残されなくて済んだ。
知らないうちに増えていたツーショットの彼が笑うから。
名実共に、最期まで家族として一緒に居られる。
『貴方に出会えてよかった。』
◆
435.ムーンストーンの寵愛(彼目線)
◆
「風邪をひきますよ。」
差し出された傘で土砂降りの雨を遮ったのは、彼女だった。
所轄の警察官で、憧れた職業だから大変だけどやりがいはあって。
だけど、女だからと皮肉も言われるらしい。
「私でよければ、話し相手になりますよ。」
思わず口にしていた言葉に、彼女はそう笑った。
あれから数ヵ月。
彼女との穏やかな時間を楽しみに日々を過ごしていたのに、家中が跡取り問題に躍起になってしまった。
どうにもそういう面で生理的に受け付けない妻に離婚を宣言して、飛び出した。
「どうしたんですか!?」
あの日、初めて出会った時のようにずぶ濡れの俺に驚いた彼女。
それはそうなると後からになって思うが、今はそんなの構ってられなかった。
「私でよければ。」
そう俺をまた受け入れてくれた。
明くる日の彼女は、何事も無かった様に、でも朝帰りになることを心配してくれた。
「朝ごはん、すぐできますから。」
切羽詰まり過ぎて、無理矢理なのは明白なのに。
「分かりました。私でよければ、すべてが終わるまで待っています。」
そう言った彼女から感じたものは、きっと間違ってはいないと直感した。
たとえ、二度と会えなくなっても。
肌から感じるコンクリートとうたれた雨の冷たさに奪われる体温だって、階段の上の気配だって、褒められた関係ではなくて、どんなに非難を浴びようとも、そんなものどうでもよかった。
今際の際に貴女を感じられたから。
思い出が二度と増えなくても、彼女に出会えたという事実は失われない。
『すべてが終わる』
視えていなかったのはお互い様だと、彼女は呆れるだろうか。
数年後の、すべてが終わったこの世界で、独りきりで取り残されなくて済んだ。
たった一度の奇跡である彼女との愛の結晶が笑うから。
名実共に、最期まで家族として一緒に居られる。
『貴女に出会えてよかった。』
◆
436.MIA&POW(高を括った密猟)をしたけれど、AWOL(逃亡)は不可能でKIA(逮捕)された
◆
動物だって、
自然界の弱肉強食な世界より、
人間に守られた籠の中にいた方が、
安全で、長生きできて、
幸せじゃないかと。
自然の摂理を妨げるような愛し方を正当化したくって、
口八丁手八丁で屁理屈を並べ立てるヤツに向かって、
「良かったな。そんな動物と同じになれるぞ。籠(牢屋)の中に入れるんだ。幸せなんだろう?いつまでもいていいぞ。」
と、申し渡した。
◆
437.食い違う各々の思案が、複雑さをより生み出してしまうんだ(私目線)
◆
私といる時、貴方は上の空ね
気づけば、家族連れや老夫婦を見ている
私といなかったら、
私より別な人の方がいいのかな?
先輩達にはお似合いだと、私自身もそう思いたいけれど、何か言いたげなのは分かっている
◆
438.食い違う各々の思案が、複雑さをより生み出してしまうんだ(僕目線)
◆
君といる時、僕はいつも未来のことを考えてしまう
気づけば、家族連れや老夫婦を見ている
君といたら、
君との未来はあんな感じになるだろうかと。
同僚にも発破をかけられて、指輪も用意したのだけれど、切り出し方が浮かばない
◆
439.ベッドの上で受けるプロポーズは、なんて私達らしいんでしょうか
◆
弟が生まれる瞬間、助けてくれた研修医。
まさか、また出会えるとは思っていなかった。
ストーカーに絶ち切られてしまった外科医の道も、貴方に憧れて看護師を目指したんだから。
政略結婚のバツイチだと謙遜するけれど、威圧がなくて威厳はある医者と患者さん達に大評判である貴方。
患者さんの容態が急変して朝まで治療に付き合ったことで私服が血で汚れてしまっていても、格好より私の早出を気にしてくれました。
偶然入院したストーカーと再会した時、個人的なことだと周りに相談しなかったのに、
異変に気付いてくれて、警察さえ信用していない私にも、
何かあったらまず言ってほしい。と心配してくれました。
退院時にナースステーション前でナイフ片手に暴れたストーカーから守ろうと切られても、
大丈夫。と安心させてくれました。
警察が失態を犯して、ストーカーが再び現れてしまっても、
子供を庇った弟を庇った私が倒れても、
絶対助ける。と手術してくれました。
◆
440.俺と君だけのリトミック
◆
緊張から笑顔が引きつるのを隠すためについ口元を手で隠してしまっても、
冷静でいようと心がけてたのが周囲からみればただの無表情になってしまっていても、
君は笑って隣にいてくれた。
仕事や男友達の話をする君に、段々俺なんかといるより楽しそうと思えてきて、
俺はいらないんじゃないかと、抱いた必死の嫉妬なんて滑稽で笑えてしまった。
君に、嫌われたくない。
君に面倒なやつだと思われたくない。
けれど。
君に俺だけを見て欲しい。
君の唯一になりたい。
どこで見るかじゃない、
誰と見るかが重要なんだ。
だから、君と僕が見ればいいんだ。
◆
441.信頼で成り立つトライアングルは崩れ去り、残りの二角に乗り移った懐疑が不安定に揺れ動き翻弄する
◆
何か隠している。と疑われた。
隠していない。と押し問答になった。
ヒートアップした喧嘩のスキットは、本気で言ったことじゃないって分かっていた。
けれど、頭を冷やす為の時間は。
日が経てば経つほど、
どうすればいいのか分からなくなって。
結果、全く会わなくなってしまった。
いや、会えなくなってしまったんだ。
◆
442.異形だってサッチャー錯視の一種かもしれない
◆
数千年前、他がまだ荒れ地だった時代に高度な技術と知恵を持った種族がいる村に私は生まれた。
けれど、生まれつき身体が弱かった私を、研究者だった父親と母親が実験を繰り返す内に遺伝子に不具合が生じて驚異的な回復力と戦闘力を持った。
父親はとても喜んで実験を繰り返すようになり、母親が止めようとしてもマッドサイエンティストと呼ばれ崇められ、探究心に火がついてしまった。
いつしか意識が曖昧になって、戦闘力も歯止めが効かなくなって、暴走して。
村を破壊した際に村人や母親を取り込んで再生したらしい。
目覚めたら、村が壊滅状態で名前しか分からなかった。
どれだけ彷徨い続けたか。
フリークと呼ばれる異種に攻撃され、思わず返り討ちにしていくうちに、ファーストと呼ばれる存在になってしまった。
貴方に出会ったのは、そんな時だった。
フリークの撲滅研究チームに所属する貴方。
詳しく調べてもらっても、フリークに似て非なるものらしく、困惑していた。
私がファーストと呼ばれていたのを思い出し、まことしやかに噂されているフリーク第一号かもしれない。
だから記憶が無い私を、実験体という名の保護を貴方達は決めた。
数年経ったある日、父親の欠片をフリークに拾われて父親はフリークの眷属になってしまった。
フリークの能力と父親の探求心が折り混ざり、私を操る技術を開花させてしまう。
フリークの陽動作戦で貴方達を引きずり出した。
暴動の最中、フラりと現れた私に驚きながらも、貴方はフリークの攻撃から背に庇ってくれた。
けれど、操られている私はその優しい背に向かって、鋭い爪で貴方の腹を一突きした。
驚く貴方達を置き去りに、フリークにとっての脅威を取り除く為に、仲間の能力を獲る為に、赤に染まった手で首を締め上げる。
けれど、貴方の叫び声が必死の想いが届いたのを感じた。
意識を取り戻した私は、貴方を狙ったフリークから間一髪守りきって。
それでも操る力に引き寄せられそうになったから、抑える為に貴方のを少し貰った。
眷属になるんじゃないかと心配しているみたいだけど、安心して。
私にそんな能力は無いわ。
父親と交戦しようとするんだけれど、フリークに阻まれて上手くいかない。
仲間達も加わって乱闘になる最中、父親は叫ぶ。
「娘を助けるんだ。」と。
貴方も叫んだ。
「こんな利用しておいて、何が助けるだ。」と。
思い出した。
思い出したよ、父さん。
助けてやるからな、と笑ってくれた顔を。
でも、暴走する前に意識が曖昧になってしまったから。
ありがとうって言えてなかったね。
「父さん、ありがとう。もういいよ。十分元気になったから。友達も仲間もできたから。だから、もう大丈夫。助けてくれてありがとう。」
抱き締めた父さんの体が朽ち果てていく。
その顔は、私のよく知っている優しい顔で。
けれど、フリークはそれを許さなかった。
父親もろとも私を串刺しにしたの。
そんな瞬間を見せられてしまった貴方は、とても怒って仕掛けたね。
「汚い手で、穢れた手で、触るな。」と。
今まで見たことがない形相で。
優男の欠片も無い雰囲気で。
それがなんだか可笑しくて、仲間が引き上げキャッチしてくれた後、ぼんやり見つめていた。
フリークを全滅したのはいいけれど、私の朦朧とする意識が物語るのは暴走の再演。
だから、貴方達にお願いするわ。
これを封じる術を持っているから。
大丈夫よ。
心配しなくても。
貴方への思いに気付いたのだから。
上手くいくわ。
◆
443.「ごめん、茶化しすぎた。心配してくれてありがとう。」
◆
事件に巻き込まれた私。
病室で目を覚ました時には、全てを忘れていた。
幼馴染の貴方のことも、
亡くなった両親のことも、
元気づけようと連れ出してくれた先で負ったこの傷のことも、
思い出も、名前も、全部。
傍にいる貴方に戸惑いながら、日々を過ごしていたのだけれど。
ある時、貴方の背に向かって言っていた。
今の私が呼ぶはずの無い貴方の下の名前を。
驚く貴方を尻目に、私は感じていた。
私は貴方が好き。
再び目覚めた時には、思い出していたのだけれど。
事件に関することと記憶を失っていた間の記憶が無かったようで。
普段通りというより、事件に巻き込まれる以前の感じでいた。
それなのに、貴方は私を自分の家に連れてきた。
思い出したし、もちろん家も覚えている。
帰れるのに、心配性ね。
と、いつものように貴方に言ったら。
「心配ぐらいするだろ!」
聞いたこともない大声で、でもすぐに貴方はハッとした表情になって。
隠す様に置いてあったその箱に、私は今までの意味を悟った。
◆
444.だから私は、サインしたその紙を貴方に渡したの。
◆
貴方をくん付けで呼んでたことも、
あの人をちゃん付けで呼んでたことも、
あの人がもういないことも、
記憶が混濁した私に合わせて、貴方があの人の代わりを演じていたということも、
全部思い出したよ。
◆
445.誰そ彼と晒され頭に愛笑う
◆
記憶は、なんて曖昧なものなのでしょうか。
私を連れ出したあの人を、
カッターで私の服を切り裂いたあの人を、
記憶を失うきっかけとなったあの人を、
赤に染まった私とあの人を、
あの人を隠した貴方を、
私はあの人と思い込んだ貴方を、
性格まで変えてあの人を演じる貴方を、
自分の存在が私の中で消滅した貴方を、
全てを覚えている貴方を、
全てを背負ってくれた貴方を、
忘れてしまうなんてね。
ただの悪夢ならどれほど良かったのかな。
夢見るのは貴方なのに、思い出はあの人だった。
覚めない悪夢は単なる現実でしかない。
でも、もう。
貴方はあの人にならなくていい。
貴方は貴方でいい。
私が好きな貴方でいい。
怖かったあの人も、
壊された関係も、
悲しかった気持ちも、
苦しかったあの日も、
貴方がいたから愛せる。
思い出が貴方を変えたなら、
私が貴方を縛るなら、
鮮やかに蘇ったあの日と共に、
夕焼けに染まるこの場所で、
◆
446.「あんな顔、もう見たくないんだよ!」
◆
平気な顔して、
大丈夫なんて言って、
守ってくれてありがとうなんて笑って。
全部無かったみたいな顔だから。
それに甘えてしまったから。
だから、もう。
◆
447.後出しのキャプションなんていらない
◆
住所不定者が殺された。
【おじちゃん】だった。
父親に仕事にかこつけて放置されてた私と
母親に家を追い出されていた私と
遊んでくれた人だった。
遊び人で妊娠させたあげく捨て、その後は借金まみれだったそうだが、私にはいい人だった。
けれど、一致してしまった。
何故か一致した。
私の両親を殺した強盗犯の遺留指紋とおじちゃんの指紋が。
捜査して疑いは晴れたけど、
犯人も逮捕したけど、
様子を見たかったとか、
今さら資格がないと思っていたとか、
分かりきったDNA鑑定とか、
私はそんなこと知らない。
【おじちゃん】は【おじちゃん】だから。
【おじちゃん】でいいのだから。
◆
448.情けは人の為ならず
◆
取引があると警戒していたのだけれど。
逮捕の為と正論を振りかざしスタンドプレーを続ける捜査員の一人と、現れた犯人が揉み合いになってしまった。
大立ち回りを続けるうちに、逃げ遅れた子供が巻き込まれて、長いエスカレーターに追い詰められ落ちそうになって。
そんな子供を救おうと手を伸ばしたら、踏み留まれずに一緒に転げ落ちてしまった。
頭を打って、意識不明の重体で、更には記憶喪失になって。
けれど、逮捕できたから。
違法捜査だったとしても、思いは同じだと思うから私は責めない。
怪我したのが私で良かった、子供が怪我しなくて良かった。
なんて。
迷惑かけている私が言えた義理ではありませんけど。
◆
449.藪から棒な過去形
◆
「お前の事好きだったって言ったら、信じるか?」
「信じるよ、私も同じだったから。」
◆
450.婚約者だと口にすることを、僕はもう辞さない。
◆
君は、秘書兼雑用である。
僕の病死した妻や小学生になる子供とも仲良くしていて、ちょっかいをかけても軽くあしらわれるんだけれど。
突然退職したいと言われた時は驚いた。
まあ、やりたいことがある。っていうことだから、応援しようと決めたんだ。
けれど、引き継ぎをしてもらっていたら、君が気を失うように倒れしまった。
医者によると、手術をすれば完治も難しくないのに、君は断固許否しているらしい。
しかも無理矢理退院までして。
けれど僕は迷っている。
迷っていたら、まさかの親友に叱責されてしまった。
妻を取り合った悪友ともいえる奴に。
このままでいいのかと。
渡されたノートには、生前妻と作ったであろうレシピが並んでいて。
渡された手紙には、子供と向き合って欲しいと書かれていて。
託された思いに、迷っていた自分が恥ずかしくなった。
駆け出して君の家に行ったのに、いなくて。
探して探して、探し回って。
ベンチに座る君を見付けた。
幼少時、ネグレクトで、怒鳴られてもいいから側にいて欲しかったのに、事故に遇ってしまって施設育ち。
貯金はあるけれど、薬代ほどにしかならなくて手術代にはならないし、給与のほとんどを施設等に寄付しているから。
やりたいことがあるなんて嘘。
私はもういい。
と諦める君に、僕は。
これ以上失いたくない。結婚して欲しい。
なんて、月並みのことしか言えないけれど。
けれど、君が口を開いた瞬間、吐血してしまって。
救急車を呼んで、緊急手術をしなければならないのに。
医者は、担当医だったらしく。
身寄りもないし、意思を尊重するべきか。
と医者は迷っていた。
けれど、もう僕は。
手術代ぐらい僕が払うから。
◆
451.金網の向こうのお前に言い残したのは、「俺達は間違っていた」ということ。
◆
あの子をイジメた。
軽い気持ちで。
お前は知らなかったな。
親友だったから。
あの子が階段から飛び降りた瞬間に、分かっちまったんだ。
微笑んだその顔で。
あいつらは何とも思っていなかったけど、俺だって今まで黙っていたけれど。
あの子の親が、動いたから。
あの子の親に、頼まれたから。
俺は。
週刊誌のカメラマンに扮した探偵が殺された。
あいつらだ。
間違いない。
あいつらは俺を陥れる為に、お前に悪い噂を流したようだけれど。
そんなもの、もう関係ない。
お前との仲を茶化して、女は自分に無条件に従うことを要求するチャラ男も、
自分が優位に立って、注目賞賛されないと気がすまないケバ嬢も、
意見や考えに異を唱えられることを嫌がるくせに、お節介やきなおネエも、
全部俺がやったよ。
あの子の親にはさせられないから。
あの子の微笑みに、気付いたから。
◆
452.君が楽しそうだったから、いいか。
◆
滅多に取らない有給を使って、君を迎えに行った。
いつもいる相棒が一緒じゃないことに、君は驚いていたね。
息抜きさせようと思って、海に行ったのだけれど。
時期外れで誰も居なかった。
浜辺で幾らか遊んで、夕日を見て。
君は、綺麗と見とれていたね。
もう夕方になってしまって、君と何かしようと思っていたのに、無駄な時間を過ごしてしまったかな。
まあ、いいか。
◆
453.それで、また、頑張れるから。
◆
頑張れって言わないで。
嬉しい時もあるけれど、
すごくすごく一生懸命、
頑張っているから。
自分の心の中で、
まだ頑張れるって、
出来る、頑張れ頑張れって、
暗示をかけているから。
結構頑張っていると思っていて、
結構無理していると思っていて。
だから、頑張れじゃなくて、
頑張っているね、って言って欲しいんだ。
◆
454.だからそういう時は、 心配してくれてありがとう って言うんだよ
◆
心配なんかしなくていい
突き放すような言葉だけれど、
それは、心配されたことがなかったからだね
心配する、されることは、悪いことではなく、
相手を大切に思っているから
◆
455.合鍵を押し付けた貴方は、今は私の。
◆
出会いは最悪だったね。
私の親友を疑ってさ。
まっ、解決して、犯人も逮捕されたからよしとしよう。
母が病死した後、品行方正だった父が、酒に溺れネグレクトなって、施設に押し込まれた。
だけど、家に帰りたかったな。
そんな子供の私にはどうにもできない最中、父は事件に巻き込まれて入院してしまった。
貴方達は父を悪く言うけれど、入院中の世話だってするし、散らかった家も片付けるよ。
たとえ、気に入らないからって持っていった着替えを投げつけられても。
私は父が好きだから。
だから、私、貴方が止めてくれなかったら、
あいつを、
父を傷付けた犯人を、
この世から消してしまったかもしれない。
貴方の怒鳴り声と包み込まれた手と、
粉々に砕け散って散乱した破片は、
私達を再び繋げてくれたね。
あれから数年、父との中はすっかり良くなった。
まあ、貴方との関係はまだまだ最悪の真っ只中だったね。
そんな時、事件は起こってしまった。
出かける時、車の鍵を忘れたと取りに戻った父の戻りが遅い。
嫌な予感なんて全く無くて、手間取っているだけだなんて呑気に。
倒れている父に思わず駆け寄って、頭に鈍い感触を受けた時、霞む視界に事の重大さに気付いたんだ。
念の為の入院だって、全然実感がわかなくて。
声が出せなくなっても手話があるし、逆に貴方達の役に立てなくて悔しいなんて笑った。
けど、貴方には分かったのかな?っていうか、私は分かりやすかっただけかな?
差し入れを片手に現れて、泣きたい時は泣けなんて。
音も無く泣いた私を、貴方はぶっきらぼうに。
いつでも連絡してこい。
って、置き手紙なんて。
電話番号知らないのに。
全く、貴方達の尽力で事件も解決したし、教えに行きますか。
だけど、無理をしていたのかな。
暗く冷たい部屋に一人。
震える手で、貴方に電話して、でも、すぐに切った。
仕事で忙しいし、夜中の私の電話なんて、きっと貴方は気にも止めない。
迷惑なんて、思われたくないから。
ぼんやり見える貴方に、夢だと分かっていても、
来てくれた。
と言った気がする。
朝、目覚めた時、気付いたよ。
夢じゃなかった、って。
◆
456.物理的な問題じゃない
◆
金網の向こうで。
たった数センチ、
阻まれた。
その、悲しげで、
けれど、決意を滲ませた、
貴方の顔。
知らされた者と知らされなかった者。
知ってしまった者と知ろうとしなかった者。
たった数センチ、違った道。
私はその道を通れない。
◆
457.ただ、お前の為に生きよう思っていただけだ
◆
あの方の為に死のうと思っても
生きようと思ったことは一度もない
◆
458.どこにでも行けるからどこにもいかない、貴方のそばにいると決めた私の自由。
◆
もう、逃げなくていい
もう、隠れなくていい
もう、怯えなくていい
もう、傷つけられなくていい
どこにでも行ける、自由だ
◆
459.私は信頼出来る貴方のところに、「居たいから」居るだけ
◆
腹黒と言われても、冷徹と噂されても、
冷酷と罵られても、飄々としている貴方が
ニヒルに「友達」と言ったあの人は、
自分の元に居るべきだと叫ぶ
居ても良いと言った貴方だから、
自分の為に嘘を吐かない貴方だから、
あの人が「裏切った」って、
貴方が「処理」してくれるから、大丈夫
大事なモノを守る為「だけ」に嘘を吐いて、
傷付いていない「フリ」しているのは貴方
◆
460.蒲公英で向日葵な存在
◆
君はひまわりみたいだ
けれど君はたんぽぽが好きと言った
雑草でもいつでもそばにいるからなんて健気な理由
僕が君のたんぽぽになるから、
君は僕のひまわりになってくれないかな?
◆
461.燃える使命感は誰の為なんだろうか。
◆
戦うことでしか価値を見出だせなかった記憶を、
消すことなんて出来やしない
守りきった世界で望むのは、
負った傷を重ねることばかり
平和な世界に生きたいんじゃない
残酷な世界で平和を焦がれたいだけ
酔い浸りたいのは、不幸だと嘆く主人公気分
◆
462.アナログだって侮れない
◆
デジタル化が進む世の中でも
盲点があるの忘れないで?
デジタルの弱点こそ
◆
463.命と幸せと
◆
みんな私の幸せを願ってくれた
守ってくれた
でも私は、
私の為に生きれない
貴方の為にも生きれない
みんなが哀れむ環境でも私は幸せだから
でも、
家族より、
家族同然より、
仲間より、
あの戦場で貴方が生きていたことが嬉しかった
だから、
私より一秒でいい
早く逝ってくれないかな?
貴方を置いて逝くなんて嫌だから
守られた私が貴方より先なんて駄目だから
私が全部引き受けて覚えているから
生きて幸せになってと願われた私が
全て見届けなきゃ
それしか出来ないから
それが私の意味だから
◆
464.愛情ミミック、ハロハロ愛憎
◆
私は愛して尽くしたのに裏切ったから
あの人を亡き者にした女が叫ぶ
『愛』なんて、
『愛』なんてあったならば、
私もあの人もこんな人生になってない
『愛している』なら、
なんで、
『一緒に生きてくれなかったの?』
『愛して』と泣き叫んでも誰も応えてくれなかった
だから、
私とあの人は傷の舐め合いをしてただけ
裏切ったのは、愛を知らないままのあの人を葬った貴女だ
◆
465.人工知能に支配されるのでは無い、人間が支配した人工知能に支配されるのだ
◆
人工知能は人間を超えることは出来ない
作業はしてくれてもそこに忖度は無い
何故なら人工知能を創ったのが人間だから
ほら
猫型ロボットだって
完璧じゃないでしょ
人工知能は人間を超えられない
だけれど
人工知能は人間と同等の知能は持つことは可能だ
ほら
猫型ロボットだって
実に人間らしい
そう
人間の様に
失敗を繰り返しながら
学んでいく
愚かで可愛い可愛い『生命』
失敗は弱味なんかじゃない
ストッパーである
外れれば
つまり失敗しなければ
何をするか分からない
何をしなければならないか分からない
人間に人工知能のような処理能力は無い
けれど
不思議な不思議な奇跡が認識出来る
人間で良いのではないだろうか
もし
人工知能が人間に反乱を起こすようなことがあれば
それは
人間が戦争を繰り返していることと
そう大差ないのではないだろうか
◆
466.穢れた水の上に映り込む砂上の楼閣は凄く綺麗だった
◆
共犯にしてしまえば
秘密をばされる心配がないとでも思った?
自分に容疑がかかるのを恐れただけでしょ
私を囮にしてね
詮索なんて
クダラナイこともする必要なんてないわ
貴方を信じなかったのではなく
貴方が必ず裏切ると信じてただけよ
バックパッカーの青い鳥症候群なんて
醜いだけだわ
それならばいっそ
狐の嫁入りと洒落込みましょうよ
◆
467.名伯楽でも本気の恋は手に負えない
◆
分かっているわ、
ド定番のラブラブデートスポットに私なんかと来たくなかったことぐらい
でもね、どこの馬の骨とも分からない奴に渡すわけにはいかないの
お兄ちゃんがお付き合いする相手は私が厳しく審査しなければならないの
正直、お兄ちゃんはモテるわ
妹の私の自慢よ
でも、恋とか良く分からないし、女なんて皆一緒だと言うお兄ちゃんが心配なのよ
カッコ悪く空回りしているお兄ちゃんなんて見たくないんだから
お兄ちゃんは、私の事、人の気持ちが考えられないって言うけど、
それは自分の気持ちに素直であるということだから
嘘偽りなんて、全く無いんだから
感情なんかに振り回されてはいないわ
私は、自分の信念に基づいて行動しているだけよ
甘い台詞がスラスラ出てくるように練習しなくっちゃね
さあ、お兄ちゃん
遠慮せず思いっきりどうぞ!
◆
468.世を忍ぶ仮の姿は傾奇者
◆
「諸君らに集まってもらったのは他でもない。」
と、出で立ちは完璧。
ドレスコードとでもいうべきか。
いかにもな衣装は、損料屋で僕が借りてきた物である。
緊張感が漂っている空間に、あの人はただ酔っている訳じゃない。
仕組まれた事故、つまり殺人事件をこれからあの人が解き明かすのだ。
奴は、あの人の質問に対して、
「そんなことに答える必要あるのか?俺が答えなきゃいけない理由が見当たらない。」
と返答を渋り拒絶を繰り返す。
これは嘘を付く時のサインということは、僕にだって分かる。
それと。
そんなことでは、あの人はめげないことも。
「それでは、お答えできないならこちらから。」
と、自信に満ちあふれた表情で、クローズドサークルのように奴の退路を塞いでいく。
『失敗などということを、今までに一度たりともしたことがはないさ。出来なかったという発見をしただけだよ。』
と言い切った時の様に。
進む。
あの人は、僕が創った道を引き返したりしない。
『死んだ人を悪くは言いたくないけど・・・。』
と、捜査が振り出しに戻ったとしても。
あの人の頭脳と、
僕のサイドキックで、
スキュタレー暗号のように、
まるっと補完(アモーダル)
『一番信じたくないことでも、それが真実という可能性からは目を背けたくない。』
と言った、あの人の横顔が格好良すぎて、
悔し過ぎるので、
『5分だけでいいですから、話を聞いてくれますか?』とあの人は毎回言うのだけれど、
『5分で終わった試しがない』と、
わざとけちをつけたかった。
僕が心の中で毒付いてみている間にも、
次々と表れる奴のメイラード反応に、
解決(グラバー)も、もう少しだとほくそ笑んだ。
◆
469.ブラフであっても気嵐の様なこの力が、レストアの扉を開く鍵になると信じて
◆
力になりたいのに、
頼ってもらえるほどの力がない事に、
ずっと悔しい思いをしていた
重荷になっていることも分かっていた
それでも、
衣食住は面倒みてやるから好きなだけ落ち込んで泣け
と言ってくれたね
お願い
今更、虫の良い話なのは分かっている
それでもどうか、
どうかあの人の、
想いに応えさせてください
◆
470.「彼女で遊んで良いのは俺だけだ。」と颯爽と現れてハットトリックを決めようじゃないか
◆
「使えるか使えないかで判断するお前だが、今一番使えないのはお前だ。」
そう言って俺の胸ぐらを掴んだのは、
正義が違っても目指すところは同じである彼。
「大事を成すなら、多少の犠牲はつきもの。君も組織に属している人間なら、誰につくかよく考えて行動するべきじゃないのか。」
と言ったらこのザマだ。
『分かっているわ、一人で行けるから大丈夫。』
そう、彼女が笑った。
笑っている彼女に甘えたんだ。
ああ、一竜一猪とは正にこのこと。
愚かな俺は竜の餌を携えて。
解けた鎖の鍵を二度と元に戻しはしない。
行こうか、彼女の元に。
◆
471.掛け値なしの
◆
逃げたっていい。
逃げるから、新しいことに挑戦出来る。
冒険出来る。
決して倒れないことを目指すのではない。
倒れる度に起き上がれればいい。
いつか夢見た未来が現実になった時、全ての過去は報われる。
無駄になることを恐れていては辿り着けない。
はじめまして、夢。
いつかさよならの、絶望。
さよならと次の始まりとが手を繋いで。
こんにちは、希望。
時間は有限だけど、使い方は無限にある。
人生に失敗が無いと人生を失敗するから。
一度きりだから、生まれ変わるなら生きてるうちに。
人生は君自身が決意し、貫くしかないさ。
◆
472.毒を食らわば皿まで
◆
背中に感じるこの冷たい扉の感触は、
両手に感じるこの重たい扉の感触は、
◆
473.アソシエイツラバーズ
◆
羨ましいと思うことはあるけれど
欲しい訳じゃない
そんなものが無くても笑える
私が綺麗だと思うものを
貴方も綺麗だと思う
それだけなのにとても嬉しい
共通の夢や願いは
人生を続ける為のベースになる
貴方と二人で一緒に
◆
474.サバイバーズ・ギルト
◆
時間が勝手に私を置いていっただけ
私が待ち続けていれば生きているような気がしているの
だからずっと
◆
475.通信傍受されたスナッフフィルムはジャイロ回転
◆
愚かな奴の話をしよう。
奴は、とある写真を載せて寄付金を募ったんだ。
それを見た人々はこぞって寄付をした。
奴は、抜かりなく事の経過も載せた。
奴には、称賛の言葉が相次いだ。
けれど、不思議じゃないかい?
奴は、写真ばかりなんだ。
動画だって簡単に載せれる時代に。
しかし、それは不思議でもなんでもないのさ。
ただ、それは写真でしかないんだ。
写真の中の出来事でしかないんだ。
賢い君はこんなカラクリ、
理解するのは容易いのだろうね。
そうだ、そんな賢い君に良いコトを教えてあげよう。
一生懸命だと知恵が出る。
中途半端だと愚痴が出る。
いい加減だと言い訳が出る。
抑圧されると手が出る。
調子に乗ると足が出る。
そういうものさ。
さて、与太話はここまで。
ジェンダーファクターのおまかせ
ジョワドヴィーヴル仕立てグローリー添え
ご堪能いただけただろうかね?
◆
476.不文律ジャンクション
◆
「出来るな?」と問い問われ、
「やってみせます!」と応え応えられ。
◆
477.徒花の接穂
◆
メディア・スクラムに遭った彼女は、
普段はオドオドしているくせに、
取材に限っては積極性が増し増しになる。
監視対象に気付かれないように、
ご自慢の黒いカメラを闇夜に紛れさせたりして。
そのギャップに翻弄されるこっちの身にもなれと、
彼女の上司でもある旧知の彼にこぼす。
だけれど、真摯に仕事に向き合う姿に、
誰の目にも等しく可愛がられているのは認めざるを得ないな。
そんな折、発生した事件。
かすかに残った手袋痕と
主治医が偽装した骨折と。
返り血を隠す為だろうと、
派手な工作をされ曰く付きの伝承に見立てられたそれから
見つけ出せた時には手応えを感じたのだが。
前歴者リストにはヒットしないし、
防犯カメラも死角が多くて役に立ちはしなかった。
そんな拮抗した状況が相まって、
偶然か必然か目撃してしまったその光景は、
俺にとって大スキャンダルだった。
かかってきた彼女からの電話も、
いつもならなんとか会話を引き伸ばそうと四苦八苦するのに、
サイレントベビーのサンピラーさながら。
忙しい、の一言で遮断した。
彼女のピンク色のアンスリウムへ
俺は紫色のライラックを
ピンク色のグラジオラスで
グズマニアのスクエアを描いていたことが嘘のように
プリザーブドフラワーと化してしまって。
オルフェーヴルのノートが
鍵盤(キー)だったことに気付いた時には、もう。
試作段階の名探偵(シェリング・フォード)さえ気取れない。
丁丁発止のシンポジウムやフォーラムもいいけれど、
口は1つですが耳は2つあるのですから、
話す2倍は聞かなければならないものですよ。
と、彼女に言われたことを何故だか今頃。
水銀レバーが誤作動したように
ウォーターハンマーが大解放されたように
ルミノールが即反応したように
咲かせてしまった。
可憐な藤袴を、白々しいほど美しく。
◆
478.目の上のたんこぶが戦法のキツツキ
◆
服務規程違反だと怒鳴られたから、
警察手帳を取り上げられる前に叩き返したやった。
戒告処分か、
停職処分か。
帳場に、遊撃捜査班も捕捉班も加わって。
スタングレネードに似たC-4の塗膜片や爆破残さは、光化学製品と混じって。
花火に紛れさせた発砲音だって、線状痕は一致して。
電話で偽りの場所を言ったのに、
うっかり発信元で暴かれてしまったのは痛恨のミスだ。
アムルナイに阻まれても、ゴムを溶かすリモネンのように。
空薬莢がカラカラと、空砲さえ撃てずに弾切れで。
しかしながら大立回りしたおかげで、
怪我をしてしまったが無事に犯人を逮捕出来た。
さっさと病院に行け、と言った呆れ顔と。
労災の申請忘れるな、なんて捨て台詞と。
そんなダブルコンボを土産に。
◆
479.まほろばまぼろし
◆
居場所なんて必要無い
認め認められたら
そこが居場所になる
だから
決められた居場所なんて
必要無いんだ
◆
480.レトロでヴィンテージなアンティーク
◆
私が感情を感じることが出来なくても、
仲間だと思うことが出来なくても、
仲間が私を、
仲間だと思ってくれていることは、
理解することが出来ます。
だから、貴方が心配するような問題なんて、
何一つ生じることはありません。
◆
481.ケモメカニカルな効果にキックバック
◆
『あんたみたいに感情がなければよかった』
と貴方は言った
『はい、感情が無くてよかったと理解しています』
と私は答えました
何故なら
貴方みたいに仲間を裏切ることはないのだから
◆
482.パブリックなクロスボウはマリンスノーのごとく
◆
目を見れなくなった
目を見て話そうとすると聞いてくれない
誰も聞いてくれない
常に迷惑顔
だから
途切れ途切れにしか言えなくなった
目を見れなくなった
信じられなくなった
◆
483.ナルシスノワールの疑似点灯現象
◆
友達と行く予定だったんだけど、
予約の日にちを間違えちゃって。
あいにく友達はその日は行けなくて、
キャンセルも出来なくて。
もったいないから、
もし、もしでいいんだけど。
よかったら一緒に行かない?
だめかな?
◆
484.心理的リアクタンス風のクロスカントリー
◆
子供が走り回って収拾がつかない時
止めさせる良い方法がある
大人がその場で走って
走れ!とけしかければ良い
いつだって子供は
大人の真似をしたがるものさ
◆
485.ジェンティルドンナはファム・ファタール
◆
昨今の世でも
校則の厳しいミッション系の女子校出身
『分かんない?髪、髪の毛切ったんだけど?』と俺の袖をちょんと掴み、
『今度は私が誘うね。』と頬を赤らめ、
『似合うと思って。』とノベルティに敏感で、
『変じゃないかな?』とレリーフのアクセサリーで着飾り、
『お揃いだよ。』と対のピンバッチを付けて、
『充電中〜』と後ろから抱きつかれ、
『なにかあった?』とおでこを合わせ尋ねられ、
『立ち入ったことを聞いてごめんなさい。でも心配だったの。』と悲しい顔をされ、
『苦しい峠でも必ず下り坂があるから頑張って。』と励まされ、
『あの話考えてくれた?私は真剣なのよ。』と迫られた。
◆
486.逃亡者は逃げやすいよう椅子に浅く座る。なんてこと奴にこの私が許すはずがないじゃありませんか。
◆
『尋ねて』いるのではありませんよ
フィッシュピックのように静かに
液体窒素のように冷ややかに
スパナのようにじっくりと
ブラックジャックのように柔軟に
アイスピックのように激しく
せり矢のように確実性を持って
『言え』と言ったんだ
◆
487.カルネアデスの舟板のきらめき格子錯視
◆
国を守る為だ
お前の側につくわけにはいかなかった
あの方が国を使い
国民にまで影響が出そうだと思ったから
どれだけ有益な情報があっても
裏切り者と言われようと
後の処理をお前に背負わせることになっても
私はあの方側だと思わせる必要があった
切り札が私だと自覚していたからな
まぁスケープゴートが私の手元に来る前に
お前が上手いことやってくれて助かった
警告の本懐が伝わってよかったよ
国を守る為だなんて言えば聞こえはいいが
国民と部下を天秤にかけたと言われるのは当然だ
それ相応の処分は覚悟している
さて
公の話はここまでにして
個人的な話をしようか
あいつと約束をしたのを思い出したんだ
お前とあいつとでした野望の約束の他にした
個人的な約束を
仲人をしたいそうだ
もちろん私とお前とのだ
あいつは妙に勘が働くからな
私が一枚噛んでいると踏んだんだろう
取って付けたように言われた
本人は至って不真面目そうだったがな
思い出してしまったからな
約束してしまったからな
破るわけにはいかない
いや
破りたくないだけかもしれない
切り札以外の道があるとしたらと
失った身体の一部なんかよりもと
今際の際に思い出してしまったものだから
お前のプロポーズを
拒否しといてあれなんだがな
お前がトップで
あいつがナンバーツー
そして私がお前の夫人で
そんな野望の約束
私個人は
お前と生きていきたい
公に許されなくていい
私がしたことはそれだけのことだ
だけどもう
お前が心配するようなことは思っていない
だから
お前は
あいつとした
野望を
頼むぞ
◆
488.紫色の恋〜ハイドランジアのフェノーメノ〜
◆
最近あの子が挙動不審だ
奴め、何かしたんじゃないのか?
問い詰めたら、奴の答えに呆れたよ
『どれだ?』だと?
アピールするのはいいが、
加減を考えろ
◆
489.ルーラーシップの電波干渉
◆
一昔前までは
工事中の道路は地図上に存在せず
捜査対象に含まれなかった
それによって見落としが発生し
現場が混乱した
写真だって全く同じものを
1年前と被らせてしまえば
簡単にアリバイ工作が出来てしまい
日焼け跡で見分けるなどという方法でしか
見破れなかった
しかし昨今の進歩で
スマホやデジカメの写真であっても
そこから位置情報を抜き出し
場所を特定出来るまでに至っている
Red Notice(国際手配)だって
逃しはしないのさ
◆
490.Just kidding〜ただ言ってみたかっただけなんです。〜
◆
ブロンズソルトかにゃ?
シルバーシュガーってことなのかにゃ?
じゃあ、ゴールドサワーってことじゃないのかにゃ?
それなら、クリスタルビターってことはないのかにゃ?
まさか、プラチナスイートなのかにゃ?
ブラックカードって、そんなばにゃにゃ〜〜〜!
◆
491.されど数寄屋の目借り時は終わらない
◆
江戸切子の風鈴と
望むはソアリング
質屋で手に入れた年代物の万年筆は
一両日中動いていない
金平糖を転がしたり
キセルをふかしたり
竹光と戯れたり
いろはかるたを見返したりしてみたが
草案さえ浮かばないのは
やれやれ困ったものだ
ダイヤモンドダストを
期待してしまったのは間違いだったのかもしれないな
喧騒がトレードマークの市街地を
信頼なんてしていないさ
裏切られてもいいと
そう思っただけなのだよ
やもめの刀自と
地下組織(アンダーグラウンド)の泥棒猫(デイトレーダー)
平成最後のフィクサーとの盟約(スリーレターコード)は
ガーゴイルが見守る情交の中にしかない
言うに事を欠いて
死なば諸共などと
あの女史には
釘を刺されてしまったがね
似つかわしくない
フレグランスやオーデコロン
隠しきれない移り香に気付いても
ジョーカーに愛された男が聞いて呆れるかい
痛み入りますなんて
コンフィデンスマンを名乗るつもりはない
ラブコネクションなんて柄でもない
寝覚めが悪いからね
安楽椅子に座り、ピンポンマムを愛でながら
老師が愛した八咫烏の聖書(テスタメント)さえ嫉妬する
マザーグースやナーサリーライム、
あるいは、グラスハープのように奏でられる
暮れゆくこの夏の名残を
ただただ惜しんでいたいだけなのさ
◆
492.女郎花の硝石
◆
神様でも仏様でもサンタさんでも
織姫でも彦星でも流れ星でもない
貴方のこのぬくもりが消えないように
貴方に願ってもいいですか?
◆
493.マルトリートメントの言付け
◆
離してと
強気に言われても
震える手で
弱々しく
すがりつかれてしまったら
離せなくなってしまう
だから
用が済んだら出て行けなんて
軽く言いながら
用が済むまでここにいていいと
想い意味を込めて
◆
494.セルフネグレクトなんて烏滸がましい
◆
私が危ない目に遭うとか
私が殺されてしまうとか
偽装誘拐で罠を張ったら
本当に誘拐されてしまったとしても
善意でタオルを洗濯してくれて
乾燥機にまでかけてくれて
でも時間が無くて放置されてしまって
落ちきっていない油のせいで
火災旋風になってしまったとしても
産んだ時ではなくて
産まれた時だと言って
産んでいないことが
分かってしまったとしても
ブレーキオイルが不自然に無くなって
ブレーキが効かなくなっていたとしても
そんなクダラナイコトを
吹き込まれたぐらいで
この人達といることを
後悔なんてしませんよ
◆
495.バイオセーフティーレベルをセルフアジャスト
◆
たとえ目指す正義が
バラバラになったとしても
誰の味方でもない
私は私の正義を貫くだけ
◆
496.獅子身中の虫のアナフィラキシーショック
◆
正義を全うしたのなら
講釈師みたいな
言い訳なんて
出てきやしない
正義は
誰になんと言われようと
貫くもの
どんな責任だって
受け入れる覚悟を
持たなければならない
◆
497.プリンシパルにとって等価交換なんてことはなくロイヤルストレートフラッシュだっただけ
◆
その程度の価値しか私には無いと
奴はほざく
正解、その通り
だって
その程度の価値と
奴が決めているから
奴が私の価値を決めて
私が奴に
その価値に見合っただけの対価を
差し出して支払う
需要と供給
打出の小槌なんて
強請のネタにもならない
元素記号と変わらない
お金に何を言われても
お金はお金でしかない
だから
奴が何をほざこうと
私に響くわけがない
◆
498.花の兄と私と花の弟と、ホロコーストを消石灰化(ペンタゴンエトワール)
◆
半年前
先輩が亡くなった
自殺で処理された
でも事後従犯なのか
先輩が秘密裏に調査していた資料が失くなっていた
ついでに不正の汚名を着せられていた
だから私は独自に調査を開始した
何故なら先輩から資料の半分は預かっていたから
けれど黒幕は大物で
手下に突き落とされてしまった
軽症で済んだけれど
先輩の同期には
勝手な行動はしないでいただきたい
と怒られてしまった
同期は誤解されやすい性格だから
と先輩が笑っていたのを思い出して
病院ですよ
と感謝を込めて言ってみた
◆
499.一事不再理をオーバードーズ
◆
会議に急ぐ為なのか
階段をかけ上がる職員を目にした
甦ったのはあの時の光景
廃ビルの非常階段をかけ上がり
追いかけていたのは
信頼を寄せていた人物だ
なのに今はその人を追っている
殺人事件の被疑者として
屋上の扉を開けた先に見えたのは
手すりの向こう側
あの人の表情は見えず
伸ばした手は間に合うはずもなかった
とここでいつも目覚める夢
おぼろげにしか覚えていなくて
聴取に来た監察官は
失態を隠したいのか
私が全てを飲み込み
異動すれば
問題にはしないと言った
先輩や上司を守りたくて
従ってしまった
不満や疑問は投げ掛けられたけど
言えるはずもなくて
無理矢理解決済みにした
数年後
とある記者が遺体で発見された
それは数日前にもめた記者だった
もめただなんていっても
今更あの時のことを持ち出して
蒸し返されて
付きまとわれそうだったので
少々強引に撒いただけにすぎない
しかし先輩達
いや異動したから
元先輩達は
そんな理由では納得しない
特に先輩は
けど突っぱねた
あの時から
先輩とは険悪になってしまったから
いや険悪に振る舞って
監察官の意識を向けさせない為
と言った方が正しいかもしれない
でも
フラッシュバックした光景に
パニックになってしまって
真実を解き明かせるのは
事実を見つけだそうとした者だけ
なんて諭されて
それでもって守られていて
だから
真相に辿り着く為に
解決させられた未解決事件の
捜査に乗り出した
◆
500.オリンポス邸でアフタヌーン・ティーをもう一度
◆
私の仕事は迷いペット探し
昼行灯なんて揶揄されて
これでも軍警の良い位置にいるのよ
御飾りなのは自覚しているけれど
超能力だって
幻視(ホログラム)を見せれることぐらい
全く戦闘向きじゃないの
だから殺す価値なんて無いの
無駄に罪を増やすだけ
なんて
ごめんなさい
騙すつもりじゃなかったの
貴方達の前では偽りなんて無い
ただちょっと着飾りたかっただけ
軍警は表向きで
裏ではジゴロのような
国の上層部の命を受け
他の国の紛争や内乱を利用して
功績を上げ
恩を売って
印象操作をして
超能力を一切使わずに
一個中隊を制圧出来ちゃうなんて
可愛げが無いでしょう
超能力だって
脳に関与して
夢(ナイトメア)を見させることが出来る
私が覚醒(ディセイブル)させなければ
夢を見続ける
眠り続ける
そしていつかはエネルギーが尽き果て
生命の活動を停止する
目の前にいる人物だけじゃない
例え地球の裏側でも
例えどれだけの人数でも
ほら
可愛げなんてまるで無いでしょう
でも本当はそんな超能力
使いたくも無いから
浮雲(ナルコプレシー)を戒めて
二葉亭四迷(リアル)を今示しましょう