◆
301.逸脱した個でさえ透明であっては全には無意味である
◆
どれだけ有能な
人材でも
どれだけ優秀な
チームでも
それを使ってくれる
それを評価してくれる
そんな人間がいなければ
他の人々に成果を
認めさせることは出来ない
◆
302.火を見るよりも明らかに意識をすり替える
◆
不完全な力が
争いを生むなら
逆らう気すら
起きないぐらいの
絶対的な力を
見せ付ければいい
さぁ、
世界の終わりを始めよう
◆
303.形無き物語の最期
◆
守れなくていい
破壊でいい
何一つ間違ってはいけない
何一つ遺してはいけない
無限回に繰り返した
不都合も
ご都合主義も
巻き込み呑み込んで
全て壊せば何もかも終わる
交錯して絡まった思惑も
周りが傷付く戦いも
私の命という罪も
◆
304.死より恐ろしいのは貴方が居なくなること
◆
貴方は自分を責める
敵に操られたことに
味方を、私を
傷付けたことに
でも、そんなもの小さなこと
どんな貴方でも
貴方が貴方の意識ならばいい
私はあの時確かに
救われたのだから
◆
305.楽しみは後に取って置くタイプ
◆
トリックスターのコンフェッション
秘めたるその胸の内
素直になれずに欺き続けた
今更明かしても遅いかもしれない
けれどあえて言おう
世界の平和と破壊の為に
◆
306.だって、生きて貴方とまた会えたのだから
◆
護衛と称した潜入
貴方がふと漏らした言葉で勘づかれ
薬を盛られ私は対象者もろとも斬られた
幸い命は助かったけれど
利き手と利き足を失った
貴方は自分の責任だと責めた
そうだと認めた上で私は言う
貴方が自分を責めている限り
私はここには居られない
私が傍に居たいと言っても
貴方には義務にしかならない
手足を失ったのは不便だけど
そんなものどうでもいい
だって………――――
◆
307.絶望なんて役不足
◆
砂に描いた未来への地図
拒む様に風が吹き消しても
見上げた空に弱くも輝く道標
終わりの無い闇夜を壊して
叫びをかき集めた欠片で繋げる
涙は抗う武器へと変えて
大したこと無いと嘲笑う
◆
308.そして世界はサヨナラを告げた
◆
曇りの無い純粋な目で見透かして
真実に近付く君を遠ざけることでしか守れない
正解の無い選択肢しか残されていないのなら
君の優しさを痛みに変えて
君の叫びを切り捨てて
思い描いた夢を壊しても
狂った予定調和に無慈悲に従って誘おう
歪みに耐えきれなくなって
堕ちた世界は
残酷なほどに美しかった
◆
309.遊戯リバル
◆
他を見下して排除して
ああはなりたくないと盲信する
ライバルを蹴落として
トップを往くならそれでいい
だけどそんな人間に
何かを守れるとは思えない
崇められるよりも
語り継がれる存在に
そんでもって特に頂点に立ちたい訳じゃない
人知れず世界を救ってみたいだけさ
◆
310.死などでは許されないのだから
◆
一人の復讐者と一人の当事者
国の命を受け
許されないことをした当事者
だが、
復讐者だけが一人で許すべきではない
当事者が一人で責任を感じる必要もない
だから、お互いに生きてどうするか考えようか
◆
311.絶対零度の激昂
◆
仲間がやられた
そう、他の仲間がいきり立っている
けれど、私は冷静だ
他の仲間は言う、いつも通りの私に
恋人がやられたのに随分冷めている、と
私はそれに返す
無駄なことはしない
今から全滅させる相手に
持つ感情などありはしないのだから
◆
312.見えないものにこそ価値がある
◆
生きる意味を失っていた
いや、
生きる意味が分からなかった
ただ、
たった一人の家族の為に働いた
たった一人の家族が見せる
生きる希望に満ち溢れた笑顔
だけど、
白い部屋に
たった一人の家族はもういない
ああ、
生きる意味はあったんだ
白い部屋の中に
その中にいたたった一人の家族に
ただ、
気付かなかっただけ
ただ、
気付こうとしなかっただけ
感じようとしなかった幸せと
手に入れていた満たされた日々
もう二度と掴むことは出来ない
◆
313.離れる意味が分からない
◆
人殺しとか
裏切った仲間を制裁したとか
血も涙もない冷徹とか
揶揄される貴方
けれど、周りが言うだけで私と貴方の関係は何も変わらないよ
貴方が悩んで悩んで出した答えを、実行した後も悩んで自分を卑下して
けれど、それが何か問題なの?
私と貴方との間に
問題ないでしょ?
だったらいいじゃない
私が貴方と居ても
◆
314.類似点は想う気持ちだけ
◆
20年以上前に星になった幼馴染み
に瓜二つな高校生
性格は真反対
けど、気になった
似てるからじゃないよ
けど、傍にはいられない
いたくない
気持ちは嬉しいけどね
年の差とかじゃないよ
私が傍にいたら
幼馴染みの様になってしまうんじゃないか
って怖いから
そう勇気を出して言った私に
貴方はあっさり返した
大丈夫ですよ
似てないんだから
◆
315.ブラックホールが笑う
◆
証拠(エビデンス)も
課題(アジェンダ)も
保留(ペンディング)して
逃げ出した
徘徊者(クローラー)が
密かに狙うは
社会の闇の相乗効果(シナジー)
◆
316.甘い蜜(テトロドトキシン)
◆
合意(コンセンサス)は君と
けれどそれは決定事項(フィックス)
何故ならそれが
君との約束(コミットメント)
◆
317.反吐が出る様な
◆
人工的な光が照らす世界
頭上を見上げても
眩い光は見えなくて
音にならない声で叫んでいる
誰かに見付けて欲しくて
貴方に見付けて欲しくて
夜明けを望んで
夜更けを拒絶して
届かない願いと知りながら
手を伸ばしても届かない闇と
手を触れたくない光との間で
見下げた視線の先で
美しい蝶に見せ掛けた
蜘蛛が舞い踊っている
貴方が綺麗と言った
有りもしない翼は
今しがたへし折って
その中にいるであろう貴方めがけて飛び込んだ
翼の欠片を撒き散らしながら
◆
318.消音脅迫(サイレント エクストーション)
◆
影は重なり響き合い
次々と覚醒する痛み
けれど、
譲れない未来がつきまとい
打ち砕いても消えてはくれない
ならば、
手繰り寄せた孤独の渦へ
手始めに溺れてみせようじゃないか
そうすれば、
ベストなタイミングで解き放たれた想いが
全てを裁いてゆくから
あえて、
放置した無数の傷痕が力に変わり
完封なきまでに叩き潰れてくれるさ
◆
319.垣間見たのは確変の片鱗
◆
知らない人間が
行き交う雑踏
波に呑まれ立ち尽くす
けれど、
苦しくても俯いたままじゃ
変わらないよ
手を伸ばしてくれているのに
怖くても震えてるだけじゃ
気付かないよ
心まで温めてくれるような体温に
ちら見でいいから、こっちを向いて?
そしたら、一秒先が変わるから
◆
320.掴める、取り零す事も無く
◆
君が話す未来に
当たり前に
最初からそうであるように
そこに存在している僕
煌めいている君の瞳
その中に描く未来を
探して捜して
2人分の手なら、必ず――――
◆
321.皆無だってきっと不幸
◆
不幸のない世界って幸せ?
悲しいことも無くて
怒ることも無くて
だったら、
喜ぶことだけ?
褒められることだけ?
けれど、
何がなかったら喜びになる?
何がなかったら褒められる?
不幸が判らなければ
幸せの基準が判らない
死だってそう
想いを託して死を選んだ人は不幸なの?
満足だったって死を受け入れた人は不幸なの?
泣けるから笑えて
悲しみがあるから喜べて
怒れるから楽しめて
それが感情じゃん
それが人生じゃん
◆
322.器こそ重要なれど
◆
崇め祭り上げられる
神として
存在理由を決め付けられた
高みを奪われる
最高位に就かされた僕は
それ以上になれない
続きすらなく繰り返す
僕がいるから平穏だ
僕がいないから災厄だ
僕は、
見える玉座を彩るただの装飾品
見えない声で縛り上げられがんじがらめ
僕は、要らない
ボクの、ナカミは
ぼくでなくても、
さして問題は無いんだ
◆
323.呼吸困難、認識したって止まらない
◆
貴女が恥ずかしくないように
貴女が偉くなるように
貴女が困らないように
貴女は出来る子だから
貴女が、
貴女の、
貴女は、
全ては私の為、と。
差し出す手に
差し伸べる手に
掴む手に
あの人が握っているのは
あの人の言葉で創った
私をがんじがらめに縛る
私専用の鎖
その先に繋がるのは
首を締める輪っかだった
◆
324.給料3ヶ月分なんて私には勿体無いかもね
◆
大きい大きい
誰もが羨む様な
きらびやかな箱より
小さい小さい
誰もが見落としそうな
色の無い箱に
私の幸福はある
◆
325.ナニカの意思によって
◆
現在に下された
作為的な罰
償うべき過去の
悪意的な罪
全ては人為的な
未来の為に
◆
326.意図せず霞んだ景色
◆
重く閉じようとする瞼を開けて
生きててよかったと思うのは
最初に見えた景色のせいだろうか?
◆
327.とどのつまり、当たらずと雖も遠からず
◆
私を守ろうとして
誰かが傷付くなら
奴が向けた刃に
自ら飛び込んで
奴の罪の枷を私が増やして
全てを終わらせる
私の大切な人達と
二度と会わないように
望まれてなかったのだから
産まれてこなければよかった
そうすれば
私は奴に会わなかった
奴も私に会わなかった
そうすれば
誰かを傷付けることは無かった
誰も傷付くことは無かった
失うだけの世界なら
最初から無い方がいい
◆
328.嘘を付く程でも無い、ただほんの少し事実を歪ませる、それだけ
◆
弱いと言えるほど強くなくて
強がりを言えるほど弱さを見せれなくて
だから
惚けて知らないフリをして
誰にも分からないように終わらせるんだ
◆
329.招かれざる○○
◆
終わりが無いからと
行き先を消した
分かるはずが無いと
笑顔を拒んだ
飾りモノなんだと自覚して
見える景色を引き裂いた
不要だと世界から破棄された
だから、
吐き出した衝動で
砕き潰してやった
◆
330.赤色灯が光だった
◆
壊れた心で戻れば奈落
奪われた権利を主張しても転落
消された存在だから堕落
目を開けても
閉じても
同じ色しか見えないのは
狂いかけた脳が
嘘をついてるだけ
アカイユメを魅ているだけなんだ
◆
331.さしずめ僕は君の王子様
◆
君とかくれんぼ
鬼は僕
探し彷徨い歩くけれど
手掛かりが無いわけじゃないんだ
鬼さんこちらと
君の密やかな息遣いが手招きする
横恋慕されたって問題ないさ
君を見つけ出せるのは僕だけだから
ほら、見付けたよ
イケナイ子だね、
見つかったら素直に鬼のモノにならなきゃ
遊びは終わったんだと
僕は君の行く手を通せんぼ
◆
332.裏革命の常套手段
◆
強がりの君が言う
仕方がない変わってあげると
そして僕は言う
ありがとうと
すり替えた、すり代わった
誰にも分からないのだから
天誅など僕らには下らない
◆
333.貴女達のおかげで産まれてきて良かったと思えるようになったんだ
◆
父親も母親も母親の弟も
泣き叫んだって
手を伸ばしたって
こちらを見ようとしなかったのに
母親の弟の奥さんだけは
私の姪だと
私の家族だと
私を見てくれた
血の繋がりなんて全く無いのに
だから、医者の同僚で親友が叔母さんを助けられなくても
叔父さんが命懸けで産まれた我が子に会いに来なくても
私は笑うんだ
叔母さんが言ったから
他愛ない日常会話だとしても
好きだと言ったから
叔父さんが再婚して
その奥さんが運び込まれたのは運命の悪戯か
我が子が居なくなって厄介払い出来たと言いたそうな顔をした
主治医を代えてくれと言った
そんな叔父さんでも
私は許そう
再婚相手の奥さんが言ったから
私の姪に当たる人でしょ
私の家族なんでしょ
代わる必要なんて無いと言ったから
だから私は全てを許すんだ
幾年分の涙を流しながら
忘れかけてた本当の笑顔で
そして言いたいんだ
貴女に
生きていてくれてありがとうと
貴女の赤ちゃんに
産まれてきてくれてありがとうと
その手伝いが出来て本当に良かったと
◆
334.俺とあいつは似て非なるもの
◆
落ち込む君へと伸ばした手を下ろし握り締めた
あいつと同じことは出来なかったから
あいつに頭を撫でられて
嬉しそうに微笑んでいた
君を見てしまっているから
励ましなんて軽くも出来ずに
君もあいつも
お互いを兄妹みたいなものと言う
同じ施設で育ったのだから
あながち間違ってはいないだろうけど
君とあいつの間に
割って入るだけの隙間も
無理矢理奪う勇気も
俺には無かったんだ
◆
335.知っていることが良いって訳じゃ無かった
◆
的外れな答えで
はぐらかしてるわけでもない
君の知り合いが気を使って
遠回しに言うけど気が付かない
けれど僕は分かったんだ
鈍感じゃなくて
両親に棄てられて
愛されたことが無いから
今まで誰かを
愛したことが無いから
分からないだけなんだと
だから教えていけばいいと思った
他でもない僕が
君のハジメテに
◆
336.優しい嘘は絵空事でいい
◆
彼女は一介の刑事
殺された彼はキャリア
何の接点も無さそうな2人なのに
頻繁に会っていたことが分かって
仲間にも彼の奥さんにも疑われているのに
彼女は話さない
実は彼女の正体は
彼と彼女の未婚の母との子供だった
無事、事件解決
奥さんは全てを許し
お線香をあげに会いにおいで
と言うが彼女は首を縦には振らなかった
刑事としての仕事を全うし
その場を去った
しかし一人になった
彼女の目からは
静かな雫が流れていた
◆
337.時に無情、刻は有情
◆
時計の針が
左へ回らないように
君と僕の過ごした時間が
増えることはあっても
減ることはないんだ
身体が消失しても
想いは消滅しないから
◆
338.所詮はお遊び、おままごと
◆
好きを散りばめて
愛していると着飾って
結婚という儀式で縛られて
理想という思い込みで塗り固め
君が望む様に物真似をしようか
◆
339.演者も観客も置き去りに舞台は続く
◆
遠く遠く離れた
太陽は
朝を演じるのだろう
月は
夜を演じるのだろう
地上の都合など全く構わずに
ちっぽけな地球は舞台となりて
広大な宇宙の隅っこで
繰り広げられるは
喜劇か
悲劇か
幕引きなどありはしないのだから
果たしてどちらなのかと
思考を巡らせるだけ無駄かもしれない
◆
340.微笑みを湛えた意味は、感謝か軽蔑か
◆
貴方が
あの子の親で良かった
貴方が
あの子を放置してくれていた
そのお陰で
私はあの子の傍にいられた
水入らずでいられた
最期まで一緒にいられた
◆
341.糸の様にか細く頼りない三日月でも私にとっては眩し過ぎる程とても明るい光だった
◆
復讐してくれた貴方と
こんな私へは
引き金を引けなくても
あいつになら躊躇いなく引ける
それが私の正義
警察官として
人間として
間違っているのは分かっている
けれど私は貴方に言うの
ありがとうと
守ってくれてありがとうと
◆
342.なんなら予告状でも出しましょうか?貴方の心を頂きに、私の心を奪われに参ります、と。
◆
貴方を送り出す時
お仕事頑張ってね
じゃなくて
お仕事気を付けてね
って私はいつも言う
何気なく交わす言葉
その裏側の意味を探るなんてこともなく
貴方は気の無い返事を返す
けれど、ふとした出来事で貴方と言い合いになった
仕事の都合で記念日は祝えなくて
恋人達のイベントも言われたって一緒にいられない
プレゼントだって
面倒くさがりやで世の中に疎い貴方から貰った物はない
付き合っていたら普通であろう望みすら叶えられないと
貴方は吐き捨てる様に言った
けれど私は、
貴方がいればそれでいいの
悩まなくていいの
私は毎日プレゼントを貰っているから
貴方が無事に帰って来るという
一番嬉しいプレゼント
◆
343.トロイメライが鳴り響く
◆
突然突き付けられる真実が
壊してゆく常識
逃れられない運命が覚醒め
静かな幕開けとなる
現実を歪めてでも
誰も望まぬ結末へと誘う
その導はあの日抱いた夢
◆
344.私の周りだけを避ける様にして、狂喜に満ちた黒いモノと穢らわしい赤い液体が蔓延している
◆
どれだけ
裏の世界を知っても
どれだけ
大人の事情を理解しても
どれだけ
子供らしくない子供でも
結局私は
何も出来ないガキなんだ
◆
345.全て知ることは出来なくても
◆
言えないことも
言いたくないことも
言わなくていい
分かりやすく
嘘を付いても構わない
だけど
我慢だけはするな
◆
346.鼻持ちならないのは結局全てだった
◆
アナタの愛の重さに
耐えきれなかっただけ
ワタシの愛が軽かっただけ
貴方と私が別れた理由は
たったそれだけ
それだけだった
◆
347.敬意を払って貰える人物になりたい
◆
ワタシにはリスペクトする人物がいない
こうだけはなりたくないと思う人物ならたくさんいるが
けれどそれでいい
これはワタシの人生なのだから
◆
348.されど四季があるのは素晴らしい
◆
私は秋冬が好きだ
春夏の方が温かく解放的だと言う人もいるかもしれないが
自分の誕生月が含まれているのを差し引いても
脱いでも涼しくはならない春夏より
着れば多少は温かくなる秋冬の方が
私は好きだ
◆
349.表裏蝉時雨
◆
英雄は蔓延る悪を根絶やしにしたいと吼える
しかし、悪を抹殺してしまっては裁きなんて出来やしない
ある程度の悪は必要なんだ
その他大勢が
善良な一般市民でいる為にはね
◆
350.向こう側から絡め取られてしまうのならば
◆
何も変わらなくていい
手が届かなくなるくらいなら
今のままでいい
変化を望むぐらいなら
退屈でいい
◆
351.無が希
◆
何も望まなければ
何も生まれない
悲しみも絶望も
だから私は
何も願わない
◆
352.空っぽな心には何でも入る、善も悪も、愛も憎しみも
◆
朝になったら、おはよう
夜になったら、おやすみ
毎時間、毎日、
その度に電話やメールをするのは
とても面倒なんだ
だから、毎時間、毎日、
隣で言わせてくれないかな?
◆
353.あの人にさえ君が必要な時代は終わったと突き付けられた
◆
あの人の命がけの物語を
下らない下らない
殺人ゲームに変えてしまったんだ
◆
354.自分を許してやっても、もういいんじゃない?
◆
そんな感じで
理解を示したふりをして監視する
ダ・カーポのように
最初に戻って繰り返すなんてこと
二度ないように
ホワイトライで創りあげたモックアップが
壊れることはあり得ない
◆
355.まるごとって、そういうことでしょ
◆
例えあなた達家族が近しい存在だからこそ
悩み苦しんだ結果見捨てても
私はあの人を愛している
例えあの人が愛の意味を理解出来なくて
あの人が言う好きが
単なる人としてでも構わない
介助でも介護でもない
明日を生きる為に
私はあの人と一緒にいたい
◆
356.貴方が必ず捜し出してくれるのだから、私は逃げ出したらその時まで隠れていればいいと思ったのよ。
◆
貴方と喧嘩して別れ話にまでなって、そしたら厄介な事件に巻き込まれた
犯人に差し出されてかけた電話の相手はもちろん貴方
最後だからと、日頃の鬱憤を並べ立てて大っ嫌いと言ってやった
だけど分かってくれるよね?
真実と嘘と手掛かりと
ありったけに散りばめた
貴方だけが解ける暗号なんだから
◆
357.上下と前後と左右
◆
立ちはだかって通せんぼをする前でも
のし掛かって押し潰す上でもなく
絡み取るように引き戻す後ろでもなく
奈落の底へ引きずり込む下でもない
気が付けば同じ方向を優しく見て隣にいる
◆
358.見るだけの夢はいつか夢に喰われる
◆
夢見たドラマチックな妄想でも
語った惨めな過失でもない
最低な人間が最低な事をしたという事実だけ
◆
359.夜が明ければ朝が来るなんて、決して日常ではない
◆
闘いを終わらせる為の犠牲ではなく
大切な人を守る為に死ぬのでもなく
1秒でも共に生きたいと願うなら
こんな非日常からいつもの平凡へ
きっと
◆
360.独りじゃなくて、1人だから
◆
他を全て制圧する支配者は強い
しかし、
支配者に全て劣っていても
勝つことは出来る
何故なら、
補ってくれる仲間がいるのだから
◆
361.相変わらずはどちらか
◆
空を見上げる
地面がどれだけ薄汚れようとも
空はいつだって綺麗なまま
◆
362.私の上には何も無い
◆
貴様ごときが
私と同じステージに立つなど
蹴り落とされる覚悟はあるのかい?
◆
363.お礼を言わなきゃいけないかしら、こんな寒い中待っててくれたのだから
◆
漆黒の闇夜に舞い散るは
穢れ無き純白の雪
それを一辺の隙間もなく染めるのは
溢れ出す緋色の鮮血
彼等の目を欺く為に用意した
死装束としては無様な衣装と
死に花を咲かせる為に構築した小細工
裏切り者の死に場所には上等かしらね
◆
364.犯人に分からない様に結構必死だったんだけどな
◆
私の暗号を解りづらいと文句を言う
けれど来てくれた
ちゃんと助けに来てくれたじゃない
貴方なら解けるって信じていたからだよ
◆
365.一緒にいて悪夢を見るか、守られて正夢を演じるか
◆
そこかしこに散らばった伏線を
ひとつひとつ繋ぎ
お馴染みの既視感に染まる
◆
366.言い知れぬ幸福
◆
逝った大切な人達が願った
私の幸せ
逝く大切な人達の幸せを
私は願うだけ
だから
残る自分が幸せになる術を
私は知らない
けれど
残った貴方に良かったと
思えるのだから
これはきっと
幸せなことなのだろう
◆
367.四月馬鹿
◆
エイプリルフールにかこつけて、言ってみた
貴方の事が好きだと
意外にも信じた貴方
だけど、今日がエイプリルフールだと気付いて怒ってしまう
だから、
騙されてやんの
と誤魔化してみた
それなのに、
仕方がねぇな
騙されてやるよ、一生
なんて笑って言って、貴方は私を抱き締めた
誤魔化しきれずに悲しく流した涙を嘘にしよう
◆
368.独り置いて逝かないでと私の最初で最後の我が儘に、絶対は無理だが努力すると貴方は応えてくれた。
◆
他人の幸せを願った
自分の居ない世界の平和を願った
けれどそれではダメらしい
逝ってしまった唯一無二が言ったから
だから
自分とあの人と、
みんなと過ごす平和な世界と幸せを願うことにした
◆
369.目に見えないものこそ
◆
題、「命」
それは私の作品
世界中から注目を集める作品展の一角
有名も無名も関係ない、飾られた絵達。
だけど、そこに私の「絵」は無く。
かける為のフックと題名のみで壁は丸見え。
しかし、絵は出来ていた。
今までで最高傑作と呼べるものが。
だが、もう無い。
子供達の不注意で燃えてしまった。
アトリエごと。
泣き謝る子供達を私は抱き締めた。
怪我が無くて、誰も被害に遭わなくて良かったと。
だって、私の絵は、絵のモデルは、
都会から遠く離れた、
生まれ育った小さな小さな村とあたたかい村民だから。
私が命を吹き込んだ絵が守ってくれた。
だから、「この」作品は私の最高傑作に変わりない。
◆
370.意味記憶もエピソード記憶も手続き記憶もあるのに。………………それとも、『あるから』なのか?
◆
楽しくはしゃげる友達も
言い合い出来る関係の好きな人も
どんな時も頼れる知り合いも
心配してくれる隣人もいるのに
何で私は孤独を感じるの?
何で私は一人なの?
何で私は一人ぼっちなの?
ねぇ、どうして?
◆
371.有象無象が未曾有の集約してタイムパラドックスを
◆
ありったけのイマジネーションを働かせて
散りばめられたモザイクアプローチを
自慢のオッドアイで繋ぎ合わす
今日はボタニガル柄のワンピース
マイクロエクスプレッションさえ見逃さない
一度だけの恋
二度と無い激情
三度目の正直
オーメンは既に
エコーロケーションで知る君の部屋の広さ
壁に反射する君の声の反響はとても心地いい
極彩色の如く、君で彩る僕の部屋
シュレーディンガーの猫と洒落込んで
クレイジーダイヤモンドの様に髑髏を並べよう
ブラックライトに照らされた
美しい君の髪とかして
経年変化に囚われない神と化そう
◆
372.新進気鋭と言われるまで
◆
目標を設定し
努力を重ねる
どんな困難も耐え抜き
目標を実現したい
迷わずに生けるなら
心砕けてもいい
夢を見たいが為に
夢の無い世界を選び
望んだ寂れた現実に身を置いた
◆
373.悪魔の証明にすらならない
◆
「何で信じてくれるの?」
「疑う理由が無いから。」
◆
374.それが例え有罪でも
◆
誰も呼んでくれないけど
貴方達は呼んでくれるでしょ
真っ直ぐ見てくれるでしょ
認識してくれるでしょ
調書という記録に残るでしょ
私がここにいるという証が
私の生きているという証が
私の中に刻まれた遺伝子を
分け与えてくれた人達には
一度だって呼んでもらえないとしても
『私』という証拠を
『それ』は証明してくれる
◆
375.僕(やつがれ)
◆
偽ってた訳じゃない
だけど素でもない
君に見せたのは
一人称が俺になる前の
私だったのかもしれない
◆
376.愛想が無いからと付けられた仮面が鏡の中で笑っていたから私も笑えると思った
◆
笑うことは良いこと?
私にとって笑うことは、
両親のご機嫌取りと
両親の世間体と
両親への評価の対価
両親と親子ごっこの手段
私にとって笑うことは、
筋肉の運動に過ぎない
◆
377.アンフェアは案外フェアなのかもしれない
◆
アンフェアなのは、
婚約者を殺した刑事でも
復讐を気取った仲間でも
地位に固執した組織でも
見て見ぬふりの傍観でも
無慈悲で残忍な犯人でも
不条理な世の中でも無い
アンフェアなのは、
おしどり夫婦と評判の両親が仮面を外し殺しあった時に
偽装工作をしなければならないと第一に考えてしまった
身勝手で利己的な愛を刷り込まれ
両親だけは絶対と植え付けられた
空っぽになるしか無かった幼い私
◆
378.結局後悔するとしても
◆
その他大勢はたくさんいる
その度に関わっていてはキリがない
全員を救うことなんて出来やしない
だけど、出会ったことに意味があるなら
私がいる意味があるなら
一人でも減るのなら
今、全力で
◆
379.ツマラナイ玩具、クダラナイ飼主
◆
貴方が遠退いてく姿だけは
何年前でも昨日?
いや、寧ろ何秒か前なくらいに想い描ける
路頭に迷ったのは
散々弄ばれて挙げ句に
棄てることさえ忘れられた消耗品の私
中身なんかどうでも良くて
少しずつ味わいたいだけで
新しいもの好きで流行りを追うくせに欲張りだから
捨て台詞はいつも
代わりはいくらでもある
自由な作り話は絡まって
溶けたら最後、解けた嘘に説けた心は
鏡に聞いても無表情を反すだけで
貴方が一時の気の迷いで付けた傷だって
私は一生背負い続ける
◆
380.こっち側にいたい理由
◆
守れないなら
壊すしか出来ないなら
全部壊してやる
向こう側に踏み出し掛けた
その一歩が着く前に
掴まれ引かれた手の強さ
絡み付く枷は
冷たい鎖ではなく
温かい赤い糸
◆
381.将来設計は机上の空論で
◆
希望に代われないなら
現状が変わらないなら
絶望に飼われよう
◆
382.独り善がりは誰だった?
◆
離れていくような気がしたのだけれど
初めから全部嘘だったのだから
一歩すら近付いていなかったのは当然
都合良く瞳に映されて脳が錯覚していただけ
自覚した途端に意味を失ったのは
何よりも大事な人と刻んだ大切な思い出
◆
383.それはきっと自分の為でしかない
◆
死にたい訳でも
生きたい訳でもない
ただどちらかしか出来ないなら生きたい
それも永遠に
それならば私が死ぬことで悲しむことは無い
誰かが死んで悲しいなら私が我慢すればいいだけ
私のことで誰も悲しまなくて済むから
◆
384.帰って居る場所ならいくつもある
◆
こっち側でもない
そっち側でもない
あっち側でもない
どっち側でもない
居場所なんて要らない
居たいところにいるだけだから
◆
385.私だけは待っていたい
◆
私は待っているだけしか出来ない
けどね
どこに行っても構わないよ
帰って来る場所なら
ここにあるから
◆
386.泥臭くとも
◆
高らかなガラスに四方を閉じ込められるより
綺麗なガラスのきらびやかな向こう側に行けなくても
誰に臆することなく自由でいたい
◆
387.命懸けなのだから
◆
産まれて来なければ良かったのか?
私を犠牲に産まれてきたと知ってそう叫ぶ貴方に言うわ
産まれて来てくれたから
産まれて来てくれて良かったと
私に思わせてくれたのよ
◆
388.それが条件
◆
私の命を使って賭けをするから
勝っても敗けても
自分のせいにしないで
◆
389.鈍感な俺でも気付くぐらいにな
◆
滲み溢れてるんだよ
意のままに操りたい
支配したいっていう
醜い思考がな
◆
390.見上げる空は青かった
◆
貴方の思ってるようになれてる?
ちゃんと出来てる?
ちゃんと生きているから
要らない心配はしなくていいよ
◆
391.握り締めた拳に赤が滲んでも
◆
掴む裾に込めた気持ちへ
離れるなと言ったくせに
涙を掬えないなら
心を救えないなら
自ら離れる理由なら作ってしまったから
傍に居れない理由なら貰ったから
◆
392.危険すら守って
◆
危険だと止められても
守りたくて飛び込んだ
けれど
止められることで守られていたのは
己の方だった
◆
393.この音さえ声に負けるかもしれない
◆
僕を殺した
期待とか
罵倒とか
そんな言葉を
文字の羅列を
聞こえないように
愉快な笑い声で塞いで
靴の踵を潰すように
それらを吐き出す奴らを
僕は、
◆
394.癒し空間に増えた心地好さ
◆
会ってしまった。
仲の悪い(と勝手に思われていると私は思っている)上司が、バーのカウンターに居たからだ。
馴染みの席でないと落ち着かないので、仕方がないから上司の隣へ座り。
いつものと頼んだものは、隣にもあったものだと頼んでから気付く。
だが、プライベートだ。
気にせず、だが一応一言断りを入れて、癒しの読書に浸る。
しかし何故か上司が覗き込んでくる。
嫌っているくせに何だと思いつつ。
読まないで下さい。
と言えば、何故だか気まずそうに悲しそうに視線を逸らす。
意味が分からないが、こちらが悪いみたいな空気なので、とりあえず弁解の意を込めて。
これは下巻ですから。
と昼休みに読み終わった上巻を差し出したら。
何故だか、嬉しそうに受け取った。
何だ、嫌われているんじゃないのか?
ヤメテクレ。
キタイシテシマウカラ。
◆
395.ムペンバ効果
◆
最初から冷たい水より
温かい湯を知ってしまったら
冷めてしまうのは早く
ついには凍ってしまう
だから、
水でいい
水がいい
湯を求め凍えてしまうよりは。
◆
396.プルースト効果
◆
大好きだったあの味
貴方も一緒だと知った瞬間から
もっと好きになった
けれど、今は、
貴方の居ない今は、
貴方が思い出の今は、
塩辛いだけの
大嫌いな味になってしまった
◆
397.プラシーボ効果
◆
誰に対しても笑顔で話す君が俺に気付く
綺麗な君に知られたくなくて
溢れ出しそうな醜い嫉妬心を
封じ込めるように君を抱き締めて
誤魔化し隠すは自分の為
普段は人の居る場所ではしない行動に
具合が悪い?大丈夫?と優しい君の顔が心配そうに歪む
倒れ込んだと的外れな心配する君に
思わず吹き出してしまい
君が拗ねてしまったので
大丈夫と言って謝った
君の存在は不安材料
けれど
君の言動は俺の安定剤
言葉に反して離れぬ身体に
怒る言葉とは裏腹に抱き締め返してくれる君に
君以外は無理だと悟る
◆
398.エキストラだってただのギミックではない
◆
情報を駆使して
完璧な計画を立てた
けれど見落としたんだ
使った駒が人間だということを
人の感情で狂わされ
オートメーション化が誤算を生んだ
思わぬ番狂わせは
まさにヒューマンエラー
◆
399.空中のファクトリーにてパレイドリア散歩
◆
すぐそこだから付き合えと
相棒が言うものだから
仕方がないと行ってみたのに
己の思慮の浅はかさを恨む
どこがすぐなんだと
しかしすぐさま撤回したのは
息抜きに誘ったのだと
薄赤に染まる耳が告げていたから
◆
400.見たいけど見せたくない、そんなガキな男心
◆
素敵な服でしょ、一目惚れしちゃって
パーティードレスを身に纏い一回転する君
馬子にも衣装だな、ドレスもお前にだけは着られたくなかったんじゃないのか
なんて毒づいてしまう
怒って去る君に、ごめんと呟く
いじめたいのは否定出来ないんだけどな、本当に傷付けて痛めつけたい訳じゃないんだと
言えれば。
似合っているも
無自覚に可愛い君に
言えれば。
だけど、
そんな君の魅力を知るのは僕だけでいいとは
まさか、言えない。
301.逸脱した個でさえ透明であっては全には無意味である
◆
どれだけ有能な
人材でも
どれだけ優秀な
チームでも
それを使ってくれる
それを評価してくれる
そんな人間がいなければ
他の人々に成果を
認めさせることは出来ない
◆
302.火を見るよりも明らかに意識をすり替える
◆
不完全な力が
争いを生むなら
逆らう気すら
起きないぐらいの
絶対的な力を
見せ付ければいい
さぁ、
世界の終わりを始めよう
◆
303.形無き物語の最期
◆
守れなくていい
破壊でいい
何一つ間違ってはいけない
何一つ遺してはいけない
無限回に繰り返した
不都合も
ご都合主義も
巻き込み呑み込んで
全て壊せば何もかも終わる
交錯して絡まった思惑も
周りが傷付く戦いも
私の命という罪も
◆
304.死より恐ろしいのは貴方が居なくなること
◆
貴方は自分を責める
敵に操られたことに
味方を、私を
傷付けたことに
でも、そんなもの小さなこと
どんな貴方でも
貴方が貴方の意識ならばいい
私はあの時確かに
救われたのだから
◆
305.楽しみは後に取って置くタイプ
◆
トリックスターのコンフェッション
秘めたるその胸の内
素直になれずに欺き続けた
今更明かしても遅いかもしれない
けれどあえて言おう
世界の平和と破壊の為に
◆
306.だって、生きて貴方とまた会えたのだから
◆
護衛と称した潜入
貴方がふと漏らした言葉で勘づかれ
薬を盛られ私は対象者もろとも斬られた
幸い命は助かったけれど
利き手と利き足を失った
貴方は自分の責任だと責めた
そうだと認めた上で私は言う
貴方が自分を責めている限り
私はここには居られない
私が傍に居たいと言っても
貴方には義務にしかならない
手足を失ったのは不便だけど
そんなものどうでもいい
だって………――――
◆
307.絶望なんて役不足
◆
砂に描いた未来への地図
拒む様に風が吹き消しても
見上げた空に弱くも輝く道標
終わりの無い闇夜を壊して
叫びをかき集めた欠片で繋げる
涙は抗う武器へと変えて
大したこと無いと嘲笑う
◆
308.そして世界はサヨナラを告げた
◆
曇りの無い純粋な目で見透かして
真実に近付く君を遠ざけることでしか守れない
正解の無い選択肢しか残されていないのなら
君の優しさを痛みに変えて
君の叫びを切り捨てて
思い描いた夢を壊しても
狂った予定調和に無慈悲に従って誘おう
歪みに耐えきれなくなって
堕ちた世界は
残酷なほどに美しかった
◆
309.遊戯リバル
◆
他を見下して排除して
ああはなりたくないと盲信する
ライバルを蹴落として
トップを往くならそれでいい
だけどそんな人間に
何かを守れるとは思えない
崇められるよりも
語り継がれる存在に
そんでもって特に頂点に立ちたい訳じゃない
人知れず世界を救ってみたいだけさ
◆
310.死などでは許されないのだから
◆
一人の復讐者と一人の当事者
国の命を受け
許されないことをした当事者
だが、
復讐者だけが一人で許すべきではない
当事者が一人で責任を感じる必要もない
だから、お互いに生きてどうするか考えようか
◆
311.絶対零度の激昂
◆
仲間がやられた
そう、他の仲間がいきり立っている
けれど、私は冷静だ
他の仲間は言う、いつも通りの私に
恋人がやられたのに随分冷めている、と
私はそれに返す
無駄なことはしない
今から全滅させる相手に
持つ感情などありはしないのだから
◆
312.見えないものにこそ価値がある
◆
生きる意味を失っていた
いや、
生きる意味が分からなかった
ただ、
たった一人の家族の為に働いた
たった一人の家族が見せる
生きる希望に満ち溢れた笑顔
だけど、
白い部屋に
たった一人の家族はもういない
ああ、
生きる意味はあったんだ
白い部屋の中に
その中にいたたった一人の家族に
ただ、
気付かなかっただけ
ただ、
気付こうとしなかっただけ
感じようとしなかった幸せと
手に入れていた満たされた日々
もう二度と掴むことは出来ない
◆
313.離れる意味が分からない
◆
人殺しとか
裏切った仲間を制裁したとか
血も涙もない冷徹とか
揶揄される貴方
けれど、周りが言うだけで私と貴方の関係は何も変わらないよ
貴方が悩んで悩んで出した答えを、実行した後も悩んで自分を卑下して
けれど、それが何か問題なの?
私と貴方との間に
問題ないでしょ?
だったらいいじゃない
私が貴方と居ても
◆
314.類似点は想う気持ちだけ
◆
20年以上前に星になった幼馴染み
に瓜二つな高校生
性格は真反対
けど、気になった
似てるからじゃないよ
けど、傍にはいられない
いたくない
気持ちは嬉しいけどね
年の差とかじゃないよ
私が傍にいたら
幼馴染みの様になってしまうんじゃないか
って怖いから
そう勇気を出して言った私に
貴方はあっさり返した
大丈夫ですよ
似てないんだから
◆
315.ブラックホールが笑う
◆
証拠(エビデンス)も
課題(アジェンダ)も
保留(ペンディング)して
逃げ出した
徘徊者(クローラー)が
密かに狙うは
社会の闇の相乗効果(シナジー)
◆
316.甘い蜜(テトロドトキシン)
◆
合意(コンセンサス)は君と
けれどそれは決定事項(フィックス)
何故ならそれが
君との約束(コミットメント)
◆
317.反吐が出る様な
◆
人工的な光が照らす世界
頭上を見上げても
眩い光は見えなくて
音にならない声で叫んでいる
誰かに見付けて欲しくて
貴方に見付けて欲しくて
夜明けを望んで
夜更けを拒絶して
届かない願いと知りながら
手を伸ばしても届かない闇と
手を触れたくない光との間で
見下げた視線の先で
美しい蝶に見せ掛けた
蜘蛛が舞い踊っている
貴方が綺麗と言った
有りもしない翼は
今しがたへし折って
その中にいるであろう貴方めがけて飛び込んだ
翼の欠片を撒き散らしながら
◆
318.消音脅迫(サイレント エクストーション)
◆
影は重なり響き合い
次々と覚醒する痛み
けれど、
譲れない未来がつきまとい
打ち砕いても消えてはくれない
ならば、
手繰り寄せた孤独の渦へ
手始めに溺れてみせようじゃないか
そうすれば、
ベストなタイミングで解き放たれた想いが
全てを裁いてゆくから
あえて、
放置した無数の傷痕が力に変わり
完封なきまでに叩き潰れてくれるさ
◆
319.垣間見たのは確変の片鱗
◆
知らない人間が
行き交う雑踏
波に呑まれ立ち尽くす
けれど、
苦しくても俯いたままじゃ
変わらないよ
手を伸ばしてくれているのに
怖くても震えてるだけじゃ
気付かないよ
心まで温めてくれるような体温に
ちら見でいいから、こっちを向いて?
そしたら、一秒先が変わるから
◆
320.掴める、取り零す事も無く
◆
君が話す未来に
当たり前に
最初からそうであるように
そこに存在している僕
煌めいている君の瞳
その中に描く未来を
探して捜して
2人分の手なら、必ず――――
◆
321.皆無だってきっと不幸
◆
不幸のない世界って幸せ?
悲しいことも無くて
怒ることも無くて
だったら、
喜ぶことだけ?
褒められることだけ?
けれど、
何がなかったら喜びになる?
何がなかったら褒められる?
不幸が判らなければ
幸せの基準が判らない
死だってそう
想いを託して死を選んだ人は不幸なの?
満足だったって死を受け入れた人は不幸なの?
泣けるから笑えて
悲しみがあるから喜べて
怒れるから楽しめて
それが感情じゃん
それが人生じゃん
◆
322.器こそ重要なれど
◆
崇め祭り上げられる
神として
存在理由を決め付けられた
高みを奪われる
最高位に就かされた僕は
それ以上になれない
続きすらなく繰り返す
僕がいるから平穏だ
僕がいないから災厄だ
僕は、
見える玉座を彩るただの装飾品
見えない声で縛り上げられがんじがらめ
僕は、要らない
ボクの、ナカミは
ぼくでなくても、
さして問題は無いんだ
◆
323.呼吸困難、認識したって止まらない
◆
貴女が恥ずかしくないように
貴女が偉くなるように
貴女が困らないように
貴女は出来る子だから
貴女が、
貴女の、
貴女は、
全ては私の為、と。
差し出す手に
差し伸べる手に
掴む手に
あの人が握っているのは
あの人の言葉で創った
私をがんじがらめに縛る
私専用の鎖
その先に繋がるのは
首を締める輪っかだった
◆
324.給料3ヶ月分なんて私には勿体無いかもね
◆
大きい大きい
誰もが羨む様な
きらびやかな箱より
小さい小さい
誰もが見落としそうな
色の無い箱に
私の幸福はある
◆
325.ナニカの意思によって
◆
現在に下された
作為的な罰
償うべき過去の
悪意的な罪
全ては人為的な
未来の為に
◆
326.意図せず霞んだ景色
◆
重く閉じようとする瞼を開けて
生きててよかったと思うのは
最初に見えた景色のせいだろうか?
◆
327.とどのつまり、当たらずと雖も遠からず
◆
私を守ろうとして
誰かが傷付くなら
奴が向けた刃に
自ら飛び込んで
奴の罪の枷を私が増やして
全てを終わらせる
私の大切な人達と
二度と会わないように
望まれてなかったのだから
産まれてこなければよかった
そうすれば
私は奴に会わなかった
奴も私に会わなかった
そうすれば
誰かを傷付けることは無かった
誰も傷付くことは無かった
失うだけの世界なら
最初から無い方がいい
◆
328.嘘を付く程でも無い、ただほんの少し事実を歪ませる、それだけ
◆
弱いと言えるほど強くなくて
強がりを言えるほど弱さを見せれなくて
だから
惚けて知らないフリをして
誰にも分からないように終わらせるんだ
◆
329.招かれざる○○
◆
終わりが無いからと
行き先を消した
分かるはずが無いと
笑顔を拒んだ
飾りモノなんだと自覚して
見える景色を引き裂いた
不要だと世界から破棄された
だから、
吐き出した衝動で
砕き潰してやった
◆
330.赤色灯が光だった
◆
壊れた心で戻れば奈落
奪われた権利を主張しても転落
消された存在だから堕落
目を開けても
閉じても
同じ色しか見えないのは
狂いかけた脳が
嘘をついてるだけ
アカイユメを魅ているだけなんだ
◆
331.さしずめ僕は君の王子様
◆
君とかくれんぼ
鬼は僕
探し彷徨い歩くけれど
手掛かりが無いわけじゃないんだ
鬼さんこちらと
君の密やかな息遣いが手招きする
横恋慕されたって問題ないさ
君を見つけ出せるのは僕だけだから
ほら、見付けたよ
イケナイ子だね、
見つかったら素直に鬼のモノにならなきゃ
遊びは終わったんだと
僕は君の行く手を通せんぼ
◆
332.裏革命の常套手段
◆
強がりの君が言う
仕方がない変わってあげると
そして僕は言う
ありがとうと
すり替えた、すり代わった
誰にも分からないのだから
天誅など僕らには下らない
◆
333.貴女達のおかげで産まれてきて良かったと思えるようになったんだ
◆
父親も母親も母親の弟も
泣き叫んだって
手を伸ばしたって
こちらを見ようとしなかったのに
母親の弟の奥さんだけは
私の姪だと
私の家族だと
私を見てくれた
血の繋がりなんて全く無いのに
だから、医者の同僚で親友が叔母さんを助けられなくても
叔父さんが命懸けで産まれた我が子に会いに来なくても
私は笑うんだ
叔母さんが言ったから
他愛ない日常会話だとしても
好きだと言ったから
叔父さんが再婚して
その奥さんが運び込まれたのは運命の悪戯か
我が子が居なくなって厄介払い出来たと言いたそうな顔をした
主治医を代えてくれと言った
そんな叔父さんでも
私は許そう
再婚相手の奥さんが言ったから
私の姪に当たる人でしょ
私の家族なんでしょ
代わる必要なんて無いと言ったから
だから私は全てを許すんだ
幾年分の涙を流しながら
忘れかけてた本当の笑顔で
そして言いたいんだ
貴女に
生きていてくれてありがとうと
貴女の赤ちゃんに
産まれてきてくれてありがとうと
その手伝いが出来て本当に良かったと
◆
334.俺とあいつは似て非なるもの
◆
落ち込む君へと伸ばした手を下ろし握り締めた
あいつと同じことは出来なかったから
あいつに頭を撫でられて
嬉しそうに微笑んでいた
君を見てしまっているから
励ましなんて軽くも出来ずに
君もあいつも
お互いを兄妹みたいなものと言う
同じ施設で育ったのだから
あながち間違ってはいないだろうけど
君とあいつの間に
割って入るだけの隙間も
無理矢理奪う勇気も
俺には無かったんだ
◆
335.知っていることが良いって訳じゃ無かった
◆
的外れな答えで
はぐらかしてるわけでもない
君の知り合いが気を使って
遠回しに言うけど気が付かない
けれど僕は分かったんだ
鈍感じゃなくて
両親に棄てられて
愛されたことが無いから
今まで誰かを
愛したことが無いから
分からないだけなんだと
だから教えていけばいいと思った
他でもない僕が
君のハジメテに
◆
336.優しい嘘は絵空事でいい
◆
彼女は一介の刑事
殺された彼はキャリア
何の接点も無さそうな2人なのに
頻繁に会っていたことが分かって
仲間にも彼の奥さんにも疑われているのに
彼女は話さない
実は彼女の正体は
彼と彼女の未婚の母との子供だった
無事、事件解決
奥さんは全てを許し
お線香をあげに会いにおいで
と言うが彼女は首を縦には振らなかった
刑事としての仕事を全うし
その場を去った
しかし一人になった
彼女の目からは
静かな雫が流れていた
◆
337.時に無情、刻は有情
◆
時計の針が
左へ回らないように
君と僕の過ごした時間が
増えることはあっても
減ることはないんだ
身体が消失しても
想いは消滅しないから
◆
338.所詮はお遊び、おままごと
◆
好きを散りばめて
愛していると着飾って
結婚という儀式で縛られて
理想という思い込みで塗り固め
君が望む様に物真似をしようか
◆
339.演者も観客も置き去りに舞台は続く
◆
遠く遠く離れた
太陽は
朝を演じるのだろう
月は
夜を演じるのだろう
地上の都合など全く構わずに
ちっぽけな地球は舞台となりて
広大な宇宙の隅っこで
繰り広げられるは
喜劇か
悲劇か
幕引きなどありはしないのだから
果たしてどちらなのかと
思考を巡らせるだけ無駄かもしれない
◆
340.微笑みを湛えた意味は、感謝か軽蔑か
◆
貴方が
あの子の親で良かった
貴方が
あの子を放置してくれていた
そのお陰で
私はあの子の傍にいられた
水入らずでいられた
最期まで一緒にいられた
◆
341.糸の様にか細く頼りない三日月でも私にとっては眩し過ぎる程とても明るい光だった
◆
復讐してくれた貴方と
こんな私へは
引き金を引けなくても
あいつになら躊躇いなく引ける
それが私の正義
警察官として
人間として
間違っているのは分かっている
けれど私は貴方に言うの
ありがとうと
守ってくれてありがとうと
◆
342.なんなら予告状でも出しましょうか?貴方の心を頂きに、私の心を奪われに参ります、と。
◆
貴方を送り出す時
お仕事頑張ってね
じゃなくて
お仕事気を付けてね
って私はいつも言う
何気なく交わす言葉
その裏側の意味を探るなんてこともなく
貴方は気の無い返事を返す
けれど、ふとした出来事で貴方と言い合いになった
仕事の都合で記念日は祝えなくて
恋人達のイベントも言われたって一緒にいられない
プレゼントだって
面倒くさがりやで世の中に疎い貴方から貰った物はない
付き合っていたら普通であろう望みすら叶えられないと
貴方は吐き捨てる様に言った
けれど私は、
貴方がいればそれでいいの
悩まなくていいの
私は毎日プレゼントを貰っているから
貴方が無事に帰って来るという
一番嬉しいプレゼント
◆
343.トロイメライが鳴り響く
◆
突然突き付けられる真実が
壊してゆく常識
逃れられない運命が覚醒め
静かな幕開けとなる
現実を歪めてでも
誰も望まぬ結末へと誘う
その導はあの日抱いた夢
◆
344.私の周りだけを避ける様にして、狂喜に満ちた黒いモノと穢らわしい赤い液体が蔓延している
◆
どれだけ
裏の世界を知っても
どれだけ
大人の事情を理解しても
どれだけ
子供らしくない子供でも
結局私は
何も出来ないガキなんだ
◆
345.全て知ることは出来なくても
◆
言えないことも
言いたくないことも
言わなくていい
分かりやすく
嘘を付いても構わない
だけど
我慢だけはするな
◆
346.鼻持ちならないのは結局全てだった
◆
アナタの愛の重さに
耐えきれなかっただけ
ワタシの愛が軽かっただけ
貴方と私が別れた理由は
たったそれだけ
それだけだった
◆
347.敬意を払って貰える人物になりたい
◆
ワタシにはリスペクトする人物がいない
こうだけはなりたくないと思う人物ならたくさんいるが
けれどそれでいい
これはワタシの人生なのだから
◆
348.されど四季があるのは素晴らしい
◆
私は秋冬が好きだ
春夏の方が温かく解放的だと言う人もいるかもしれないが
自分の誕生月が含まれているのを差し引いても
脱いでも涼しくはならない春夏より
着れば多少は温かくなる秋冬の方が
私は好きだ
◆
349.表裏蝉時雨
◆
英雄は蔓延る悪を根絶やしにしたいと吼える
しかし、悪を抹殺してしまっては裁きなんて出来やしない
ある程度の悪は必要なんだ
その他大勢が
善良な一般市民でいる為にはね
◆
350.向こう側から絡め取られてしまうのならば
◆
何も変わらなくていい
手が届かなくなるくらいなら
今のままでいい
変化を望むぐらいなら
退屈でいい
◆
351.無が希
◆
何も望まなければ
何も生まれない
悲しみも絶望も
だから私は
何も願わない
◆
352.空っぽな心には何でも入る、善も悪も、愛も憎しみも
◆
朝になったら、おはよう
夜になったら、おやすみ
毎時間、毎日、
その度に電話やメールをするのは
とても面倒なんだ
だから、毎時間、毎日、
隣で言わせてくれないかな?
◆
353.あの人にさえ君が必要な時代は終わったと突き付けられた
◆
あの人の命がけの物語を
下らない下らない
殺人ゲームに変えてしまったんだ
◆
354.自分を許してやっても、もういいんじゃない?
◆
そんな感じで
理解を示したふりをして監視する
ダ・カーポのように
最初に戻って繰り返すなんてこと
二度ないように
ホワイトライで創りあげたモックアップが
壊れることはあり得ない
◆
355.まるごとって、そういうことでしょ
◆
例えあなた達家族が近しい存在だからこそ
悩み苦しんだ結果見捨てても
私はあの人を愛している
例えあの人が愛の意味を理解出来なくて
あの人が言う好きが
単なる人としてでも構わない
介助でも介護でもない
明日を生きる為に
私はあの人と一緒にいたい
◆
356.貴方が必ず捜し出してくれるのだから、私は逃げ出したらその時まで隠れていればいいと思ったのよ。
◆
貴方と喧嘩して別れ話にまでなって、そしたら厄介な事件に巻き込まれた
犯人に差し出されてかけた電話の相手はもちろん貴方
最後だからと、日頃の鬱憤を並べ立てて大っ嫌いと言ってやった
だけど分かってくれるよね?
真実と嘘と手掛かりと
ありったけに散りばめた
貴方だけが解ける暗号なんだから
◆
357.上下と前後と左右
◆
立ちはだかって通せんぼをする前でも
のし掛かって押し潰す上でもなく
絡み取るように引き戻す後ろでもなく
奈落の底へ引きずり込む下でもない
気が付けば同じ方向を優しく見て隣にいる
◆
358.見るだけの夢はいつか夢に喰われる
◆
夢見たドラマチックな妄想でも
語った惨めな過失でもない
最低な人間が最低な事をしたという事実だけ
◆
359.夜が明ければ朝が来るなんて、決して日常ではない
◆
闘いを終わらせる為の犠牲ではなく
大切な人を守る為に死ぬのでもなく
1秒でも共に生きたいと願うなら
こんな非日常からいつもの平凡へ
きっと
◆
360.独りじゃなくて、1人だから
◆
他を全て制圧する支配者は強い
しかし、
支配者に全て劣っていても
勝つことは出来る
何故なら、
補ってくれる仲間がいるのだから
◆
361.相変わらずはどちらか
◆
空を見上げる
地面がどれだけ薄汚れようとも
空はいつだって綺麗なまま
◆
362.私の上には何も無い
◆
貴様ごときが
私と同じステージに立つなど
蹴り落とされる覚悟はあるのかい?
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363.お礼を言わなきゃいけないかしら、こんな寒い中待っててくれたのだから
◆
漆黒の闇夜に舞い散るは
穢れ無き純白の雪
それを一辺の隙間もなく染めるのは
溢れ出す緋色の鮮血
彼等の目を欺く為に用意した
死装束としては無様な衣装と
死に花を咲かせる為に構築した小細工
裏切り者の死に場所には上等かしらね
◆
364.犯人に分からない様に結構必死だったんだけどな
◆
私の暗号を解りづらいと文句を言う
けれど来てくれた
ちゃんと助けに来てくれたじゃない
貴方なら解けるって信じていたからだよ
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365.一緒にいて悪夢を見るか、守られて正夢を演じるか
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そこかしこに散らばった伏線を
ひとつひとつ繋ぎ
お馴染みの既視感に染まる
◆
366.言い知れぬ幸福
◆
逝った大切な人達が願った
私の幸せ
逝く大切な人達の幸せを
私は願うだけ
だから
残る自分が幸せになる術を
私は知らない
けれど
残った貴方に良かったと
思えるのだから
これはきっと
幸せなことなのだろう
◆
367.四月馬鹿
◆
エイプリルフールにかこつけて、言ってみた
貴方の事が好きだと
意外にも信じた貴方
だけど、今日がエイプリルフールだと気付いて怒ってしまう
だから、
騙されてやんの
と誤魔化してみた
それなのに、
仕方がねぇな
騙されてやるよ、一生
なんて笑って言って、貴方は私を抱き締めた
誤魔化しきれずに悲しく流した涙を嘘にしよう
◆
368.独り置いて逝かないでと私の最初で最後の我が儘に、絶対は無理だが努力すると貴方は応えてくれた。
◆
他人の幸せを願った
自分の居ない世界の平和を願った
けれどそれではダメらしい
逝ってしまった唯一無二が言ったから
だから
自分とあの人と、
みんなと過ごす平和な世界と幸せを願うことにした
◆
369.目に見えないものこそ
◆
題、「命」
それは私の作品
世界中から注目を集める作品展の一角
有名も無名も関係ない、飾られた絵達。
だけど、そこに私の「絵」は無く。
かける為のフックと題名のみで壁は丸見え。
しかし、絵は出来ていた。
今までで最高傑作と呼べるものが。
だが、もう無い。
子供達の不注意で燃えてしまった。
アトリエごと。
泣き謝る子供達を私は抱き締めた。
怪我が無くて、誰も被害に遭わなくて良かったと。
だって、私の絵は、絵のモデルは、
都会から遠く離れた、
生まれ育った小さな小さな村とあたたかい村民だから。
私が命を吹き込んだ絵が守ってくれた。
だから、「この」作品は私の最高傑作に変わりない。
◆
370.意味記憶もエピソード記憶も手続き記憶もあるのに。………………それとも、『あるから』なのか?
◆
楽しくはしゃげる友達も
言い合い出来る関係の好きな人も
どんな時も頼れる知り合いも
心配してくれる隣人もいるのに
何で私は孤独を感じるの?
何で私は一人なの?
何で私は一人ぼっちなの?
ねぇ、どうして?
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371.有象無象が未曾有の集約してタイムパラドックスを
◆
ありったけのイマジネーションを働かせて
散りばめられたモザイクアプローチを
自慢のオッドアイで繋ぎ合わす
今日はボタニガル柄のワンピース
マイクロエクスプレッションさえ見逃さない
一度だけの恋
二度と無い激情
三度目の正直
オーメンは既に
エコーロケーションで知る君の部屋の広さ
壁に反射する君の声の反響はとても心地いい
極彩色の如く、君で彩る僕の部屋
シュレーディンガーの猫と洒落込んで
クレイジーダイヤモンドの様に髑髏を並べよう
ブラックライトに照らされた
美しい君の髪とかして
経年変化に囚われない神と化そう
◆
372.新進気鋭と言われるまで
◆
目標を設定し
努力を重ねる
どんな困難も耐え抜き
目標を実現したい
迷わずに生けるなら
心砕けてもいい
夢を見たいが為に
夢の無い世界を選び
望んだ寂れた現実に身を置いた
◆
373.悪魔の証明にすらならない
◆
「何で信じてくれるの?」
「疑う理由が無いから。」
◆
374.それが例え有罪でも
◆
誰も呼んでくれないけど
貴方達は呼んでくれるでしょ
真っ直ぐ見てくれるでしょ
認識してくれるでしょ
調書という記録に残るでしょ
私がここにいるという証が
私の生きているという証が
私の中に刻まれた遺伝子を
分け与えてくれた人達には
一度だって呼んでもらえないとしても
『私』という証拠を
『それ』は証明してくれる
◆
375.僕(やつがれ)
◆
偽ってた訳じゃない
だけど素でもない
君に見せたのは
一人称が俺になる前の
私だったのかもしれない
◆
376.愛想が無いからと付けられた仮面が鏡の中で笑っていたから私も笑えると思った
◆
笑うことは良いこと?
私にとって笑うことは、
両親のご機嫌取りと
両親の世間体と
両親への評価の対価
両親と親子ごっこの手段
私にとって笑うことは、
筋肉の運動に過ぎない
◆
377.アンフェアは案外フェアなのかもしれない
◆
アンフェアなのは、
婚約者を殺した刑事でも
復讐を気取った仲間でも
地位に固執した組織でも
見て見ぬふりの傍観でも
無慈悲で残忍な犯人でも
不条理な世の中でも無い
アンフェアなのは、
おしどり夫婦と評判の両親が仮面を外し殺しあった時に
偽装工作をしなければならないと第一に考えてしまった
身勝手で利己的な愛を刷り込まれ
両親だけは絶対と植え付けられた
空っぽになるしか無かった幼い私
◆
378.結局後悔するとしても
◆
その他大勢はたくさんいる
その度に関わっていてはキリがない
全員を救うことなんて出来やしない
だけど、出会ったことに意味があるなら
私がいる意味があるなら
一人でも減るのなら
今、全力で
◆
379.ツマラナイ玩具、クダラナイ飼主
◆
貴方が遠退いてく姿だけは
何年前でも昨日?
いや、寧ろ何秒か前なくらいに想い描ける
路頭に迷ったのは
散々弄ばれて挙げ句に
棄てることさえ忘れられた消耗品の私
中身なんかどうでも良くて
少しずつ味わいたいだけで
新しいもの好きで流行りを追うくせに欲張りだから
捨て台詞はいつも
代わりはいくらでもある
自由な作り話は絡まって
溶けたら最後、解けた嘘に説けた心は
鏡に聞いても無表情を反すだけで
貴方が一時の気の迷いで付けた傷だって
私は一生背負い続ける
◆
380.こっち側にいたい理由
◆
守れないなら
壊すしか出来ないなら
全部壊してやる
向こう側に踏み出し掛けた
その一歩が着く前に
掴まれ引かれた手の強さ
絡み付く枷は
冷たい鎖ではなく
温かい赤い糸
◆
381.将来設計は机上の空論で
◆
希望に代われないなら
現状が変わらないなら
絶望に飼われよう
◆
382.独り善がりは誰だった?
◆
離れていくような気がしたのだけれど
初めから全部嘘だったのだから
一歩すら近付いていなかったのは当然
都合良く瞳に映されて脳が錯覚していただけ
自覚した途端に意味を失ったのは
何よりも大事な人と刻んだ大切な思い出
◆
383.それはきっと自分の為でしかない
◆
死にたい訳でも
生きたい訳でもない
ただどちらかしか出来ないなら生きたい
それも永遠に
それならば私が死ぬことで悲しむことは無い
誰かが死んで悲しいなら私が我慢すればいいだけ
私のことで誰も悲しまなくて済むから
◆
384.帰って居る場所ならいくつもある
◆
こっち側でもない
そっち側でもない
あっち側でもない
どっち側でもない
居場所なんて要らない
居たいところにいるだけだから
◆
385.私だけは待っていたい
◆
私は待っているだけしか出来ない
けどね
どこに行っても構わないよ
帰って来る場所なら
ここにあるから
◆
386.泥臭くとも
◆
高らかなガラスに四方を閉じ込められるより
綺麗なガラスのきらびやかな向こう側に行けなくても
誰に臆することなく自由でいたい
◆
387.命懸けなのだから
◆
産まれて来なければ良かったのか?
私を犠牲に産まれてきたと知ってそう叫ぶ貴方に言うわ
産まれて来てくれたから
産まれて来てくれて良かったと
私に思わせてくれたのよ
◆
388.それが条件
◆
私の命を使って賭けをするから
勝っても敗けても
自分のせいにしないで
◆
389.鈍感な俺でも気付くぐらいにな
◆
滲み溢れてるんだよ
意のままに操りたい
支配したいっていう
醜い思考がな
◆
390.見上げる空は青かった
◆
貴方の思ってるようになれてる?
ちゃんと出来てる?
ちゃんと生きているから
要らない心配はしなくていいよ
◆
391.握り締めた拳に赤が滲んでも
◆
掴む裾に込めた気持ちへ
離れるなと言ったくせに
涙を掬えないなら
心を救えないなら
自ら離れる理由なら作ってしまったから
傍に居れない理由なら貰ったから
◆
392.危険すら守って
◆
危険だと止められても
守りたくて飛び込んだ
けれど
止められることで守られていたのは
己の方だった
◆
393.この音さえ声に負けるかもしれない
◆
僕を殺した
期待とか
罵倒とか
そんな言葉を
文字の羅列を
聞こえないように
愉快な笑い声で塞いで
靴の踵を潰すように
それらを吐き出す奴らを
僕は、
◆
394.癒し空間に増えた心地好さ
◆
会ってしまった。
仲の悪い(と勝手に思われていると私は思っている)上司が、バーのカウンターに居たからだ。
馴染みの席でないと落ち着かないので、仕方がないから上司の隣へ座り。
いつものと頼んだものは、隣にもあったものだと頼んでから気付く。
だが、プライベートだ。
気にせず、だが一応一言断りを入れて、癒しの読書に浸る。
しかし何故か上司が覗き込んでくる。
嫌っているくせに何だと思いつつ。
読まないで下さい。
と言えば、何故だか気まずそうに悲しそうに視線を逸らす。
意味が分からないが、こちらが悪いみたいな空気なので、とりあえず弁解の意を込めて。
これは下巻ですから。
と昼休みに読み終わった上巻を差し出したら。
何故だか、嬉しそうに受け取った。
何だ、嫌われているんじゃないのか?
ヤメテクレ。
キタイシテシマウカラ。
◆
395.ムペンバ効果
◆
最初から冷たい水より
温かい湯を知ってしまったら
冷めてしまうのは早く
ついには凍ってしまう
だから、
水でいい
水がいい
湯を求め凍えてしまうよりは。
◆
396.プルースト効果
◆
大好きだったあの味
貴方も一緒だと知った瞬間から
もっと好きになった
けれど、今は、
貴方の居ない今は、
貴方が思い出の今は、
塩辛いだけの
大嫌いな味になってしまった
◆
397.プラシーボ効果
◆
誰に対しても笑顔で話す君が俺に気付く
綺麗な君に知られたくなくて
溢れ出しそうな醜い嫉妬心を
封じ込めるように君を抱き締めて
誤魔化し隠すは自分の為
普段は人の居る場所ではしない行動に
具合が悪い?大丈夫?と優しい君の顔が心配そうに歪む
倒れ込んだと的外れな心配する君に
思わず吹き出してしまい
君が拗ねてしまったので
大丈夫と言って謝った
君の存在は不安材料
けれど
君の言動は俺の安定剤
言葉に反して離れぬ身体に
怒る言葉とは裏腹に抱き締め返してくれる君に
君以外は無理だと悟る
◆
398.エキストラだってただのギミックではない
◆
情報を駆使して
完璧な計画を立てた
けれど見落としたんだ
使った駒が人間だということを
人の感情で狂わされ
オートメーション化が誤算を生んだ
思わぬ番狂わせは
まさにヒューマンエラー
◆
399.空中のファクトリーにてパレイドリア散歩
◆
すぐそこだから付き合えと
相棒が言うものだから
仕方がないと行ってみたのに
己の思慮の浅はかさを恨む
どこがすぐなんだと
しかしすぐさま撤回したのは
息抜きに誘ったのだと
薄赤に染まる耳が告げていたから
◆
400.見たいけど見せたくない、そんなガキな男心
◆
素敵な服でしょ、一目惚れしちゃって
パーティードレスを身に纏い一回転する君
馬子にも衣装だな、ドレスもお前にだけは着られたくなかったんじゃないのか
なんて毒づいてしまう
怒って去る君に、ごめんと呟く
いじめたいのは否定出来ないんだけどな、本当に傷付けて痛めつけたい訳じゃないんだと
言えれば。
似合っているも
無自覚に可愛い君に
言えれば。
だけど、
そんな君の魅力を知るのは僕だけでいいとは
まさか、言えない。