◆
201.とある呪術の暗殺者‐イーヴィルアイ‐
◆
魔術と科学と技能
三者が絡み合う街
法律が追い付かないせいで
魔法が横行している
対抗する為に
頭脳を駆使して科学反応を起こした
先人が傍観者を気取る事で
世界の歯車が狂いだす
そんな街を人知れず訪れたのは
呪われた邪眼を持って
闇に染まった者
災厄のオッドアイが映し出すは
ザッピングする幾多の景色
いつになったら止まるのか
繰り返される光景の果ては
世界の破滅か
人類の堕落か
終焉まで
見届ける為に、いざ行かん
◆
202.力と感情が織り成すラブストーリー
◆
破壊神と恐れられる男がいる街
不良やヤクザさえも恐怖する
強すぎる男
電信柱や標識をいとも簡単に引っこ抜いたりへし折ったり
自販機や車を投げ飛ばしたり
沸点が低く力を制御出来ぬ男に
近寄る者など誰一人いなかった
今日もまた、何かを破壊する
爆発した力が、側にあった自販機で
怒りの元凶を静めようと振りかざした
「あの、それ取ってもいいですか?」
男の背から投げ掛けられた声は、ひどく落ち着いていた
振り向いた先にいた
男の母校の学生服を着た少女
指先したのは自販機
よく見ると受け取り口にはジュースが1本
目を合わせて話したのは、
話しかけられたのは、
いつぶりか
そんなことを考えながら、差し出したジュース
「ありがとうございます。」
受け取りお礼を言って、何事もなく去った少女
少女は終始無表情だったが、男には違って見えた
第六感で見抜く少女と
偽りのない素直な男の
ほんの些細な、なれそめ話
◆
203.未必の故意は、結局故意ではないか?
◆
パパが寝ている。
手元には火のついた小さな筒。
ママも寝ている。
小さな筒はだんだん短くなって、落ちちゃった。
緑色の床が、黒色に変わっていく。
パパを起こす?
ママを起こす?
だけど………、
ゆらゆら揺れる目の前の
綺麗な赤色を見ていたいな。
このまま、ずっと。
だから、起こさなくて大丈夫。
あなたも、そう思うよね?
◆
204.失声症~手段は1つじゃない~
◆
私は声が出ない。
声帯には問題ないの。
あの出来事があってから、喋れなくなった。
周りはカワイソウって言うの。
でもね、不自由しないよ。
話せなくったって、コミュニケーションは取れるの。
私は、声以外を使ってめいいっぱい伝えるから。
ありがとうも、だいすきも。
◆
205.価値はあっても値段はない
◆
巷では、横行しているらしいわね。
援助交際に、
売春に、
買春に、
美人局まで。
フォルムだって次々と変えていたちごっこ
犯罪だって、判ってるのかしら?
私ならどれだけお金積まれたって、願い下げね。
一言で追い出してやるわ。
私のからだ、
そんなに安くない!ってね。
◆
206.反対も賛成も、時に無責任
◆
全身全霊を懸けて
頑張っているものが彼にはある
だけど、辞めたいと彼は言った
疲れているの?
しんどくなった?
投げ出したくなった?
でも、私は反対しないよ
けれど、賛成もしない
だって、貴方の人生だから
だから私は、
「貴方の好きにすればいい。だけど、私はいつでも味方だよ。」
そう言って傍に寄り添う。
◆
207.命に従い任務遂行
◆
ある人を守って助けた命
引き換えに失ったのは感情
大勢に救いを求められても
伸ばされた手ごと奪っていく
必要なのは労力
不要なのは自己
◆
208.ルフラン the 暴食
◆
ああ、
食べても食べても
食べ足りない
全ての食べ物を
食べ尽くしても
奪うは他の生命線
◆
209.ルフラン the 色欲
◆
ああ、
愉しい愉しい
愉し過ぎる
溢れて溺れて
堕ちていく
崩壊したのは
蓋か底か、どちら?
◆
210.ルフラン the 強欲
◆
ああ、
欲しい欲しい
あれもこれも全部
この世の物は自分の為にある
◆
211.ルフラン the 憤怒
◆
ああ、
イライラ、ムカムカ
誰を見ても
何を聞いても
私を苛立たせるものばかり
◆
212.ルフラン the 怠惰
◆
ああ、
ダルイし
やる気が起きない
仕事も
恋も
家事も
何もかもが面倒くさい
◆
213.ルフラン the 嫉妬
◆
ああ、
なんであいつばっかり
私の方が上手なのに
私の方が凄いのに
私の方が偉いのに
誰も褒めてなんてくれない
◆
214.ルフラン the 傲慢
◆
ああ、
最高だ気分が良い
あいつは私に媚びへつらう
あの子は私を褒め称える
私は偉大な人間なのだから
当然といえよう
◆
215.0円はタダって事じゃない
◆
テレビドラマでよくある
子供を返して欲しければ、身代金を用意しろ
身代金の額はお前が決めろ
子供に値段をつけるんだ
なんて会話
でもね、良い答え思い付いたの
身代金は出せません
0円です
子供に値段なんてありません
命はお金で代えられない
どうかな?
◆
216.伏せ目から見据える目へ
◆
改めて思ったの
過去に縛られてたら駄目だって
失うことを恐れて
前に進まないのもね
背負っていた重い荷物は
お土産(スーベニール)として
軌跡に置いていくわ
◆
217.ただし、傍観者でもいられない
◆
対峙する敵でも
支援する味方でもない
私はただ
貴方と居たいだけ
◆
218.リマインダーは心の中に
◆
例え
貴方がいなくなっても
独りにはならない
何故なら
私と貴方を
大切に思ってくれる人達が
傍にいるから
◆
219.貴方の仲間は私の家族も同然だから
◆
貴方に向けた凶器
貴方の仲間は
私を止めようとした
それは私に
まだ好意があるってこと
貴方を守ろうとしたならば
私に敵意があるってことだから
試す様な真似をしたのは
貴方と仲間と
茨の道を進む為
◆
220.誰も知らない、誰も分からない
◆
幸せかは分からない
でも
不幸だと思ったことはない
◆
221.幸福二乗
◆
自分が幸せになって
初めて人を幸せにできる
幸せがどういうものか分からないと
伝えることなんて出来ないから
◆
222.猪突猛進と大和撫子の事件簿
◆
18歳の新人プロサッカー選手
美術部エースの14歳
2人は恋人同士で秘密の恋愛真っ最中
しかし、心無い週刊誌にスクープされてしまった
彼女は彼の選手生命に傷を付けない様に
受け入れないと言った彼に
強引に別れを告げた
そんな最中、彼女が何者かに階段から突き落とされた
怪我も大したことは無く、警察のおかげで犯人も無事に逮捕された
彼のファンで嫉妬の末に犯行に及んだとの事だ
そして、彼はフィールドに立ち番狂わせ
仲間と共にゲームを制した
ヒーローインタビューを受けていた彼は、記者からマイクを奪い彼女を見ながら笑顔で叫んだ
彼女は俺のめっちゃ大事な人や
ファンやったら俺と同じ様に
愛したってや
◆
223.無色透明虚数空間
◆
美しきノイズに魅せられ
香しき花は咲き乱れる
身の程知らずが口にした
優美なその実は毒(カンタレラ)
広がり侵食する闇は
全ての光を吸収してゆく
信じていた世界は
信じたかった世界は
一瞬で音もなく消え無と化した
◆
224.非効率だって時には有益だ
◆
例え
結果が駄目でも
駄目だったという成果は
得られる
だから無駄じゃない
◆
225.絶望が教えてくれていた希望
◆
叶わないと思っていたのは
貴方との未来を描いた
遠い夢
叶えようと思ったのは
貴方の隣で日々を過ごす
近い未来
◆
226.勝手に責任を感じてもらっても困る
◆
死にたいのならそうしてやる
お前が死ぬ理由は
私が殺した時だけだ
でも私はお前と生きたい
それじゃ不満か?
◆
227.その時から信じると決めたの
◆
私の父はプロテニスプレーヤー
でも、私を庇って死んでしまった
今はライバル選手だった人の家族と暮らしてる
世間的には、その人の息子と双子の兄弟ってことになってる
その息子と娘もテニスをしていると聞き、貴方は学校へ取材をしに来ていた
長年スポーツ誌に連載を持っていて、父も今の父も、貴方はファンだと言った
穏やかに流れていた時間を切り裂く様に、
私の過去がバレてしまった
きっと大騒ぎね
スクープだって言っても
苦い顔のままの貴方に
私は書いて欲しい
あることないこと書き立てる他のマスコミとは違う貴方に
真実を書いていた貴方に
マスコミ嫌いだった父の葬儀に、取材などせずお焼香をしただけで帰っていったマスコミの貴方に
私は書いて欲しいから
真実を書く貴方に
◆
228.そもそも私がいなければ良かったのでしょうか
◆
望まれて生まれてきた
それは分かってる
大切な人達に囲まれて幸せ
毎日が楽しいわ
でも
生きてきたことだけは
後悔しているの
◆
229.死なんかで償える訳が無いから
◆
あの時助けられなかった
哀れだと
同情している訳じゃない
ただ手が出せなかったことを
後悔しているだけ
失った悲しみは
痛いほど分かるから
どれだけ罪の意識に苛まれても
私は私を殺さない
◆
230.暗躍者の闇破壊
◆
絆が深い私の家族(マフィア)
闇とも深い繋がり
知っているのは私だけ
矢面に立っているのが私だけだから
ボス以外の家族は知らない真っ黒い秘密
ボスの直系血族である私
体質により継承権のない私
でも実権を握っているのは私
真実を知っているのも私
ボスの言うことはきかなくちゃね
遺言だもの
全てを打ち明けた今
闇を壊しに行きましょうか
◆
231.下克上御伽草子(クーデターストーリー)
◆
ポリグラフさえも惑わす
華麗なポーカーフェイス
世界を欺き
迷宮を脱け出す鍵(パスワード)
手に入れたのは
反逆の契約者(テスタメント)
果てに輝くは
何千年も越えたアスタリスク
揺るぎない野望を宿し
大胆不敵に微笑んだ
◆
232.戦国絵巻
◆
当事者だけが解る
幾重にも造り上げられた暗号
間際に残した僅かなそれを
解読したのは継承者
使命の如く無意識に
精巧な理論を繋ぎ合わせ構築
甦ったのは迷子の記憶
思い出したのは生きた証
◆
233.大怪盗は名探偵
◆
難解な謎
誰もが探し求め
狙う解答を
人知れず解き明かす
奪った真実で
ばらまいた嘘
差し出した掌には
偽りの正義を乗せ
変幻自在にまやかし
秘密を掻き消した
◆
234.予言アンバサダー
◆
変わり果てた世界で
思い知った運命の脆さ
ディテール良く書き込まれた
分厚い黙示録
黒い罠が囁いた
偽の白い光を追い掛けて
エコーするメーデーに
即興劇(インプロブ)を演じるのは
漆黒に輝く黒猫(シャノワール)
◆
235.本物はなにものにも劣らない
◆
僕の部屋にはね、
君の写真がいっぱいあるんだ
恥ずかしがりやの君は
どれも目線は違う方向を向いているんだけれど
まあ正面じゃなくても君は美しいよ
さあ、メランコリックな時間は終わりにしようか
もう恥ずかしがらなくていいんだよ
その目は開かなくていいんだから
最期に見たのが僕で良かったでしょう
見開く君の瞳には幸せそうな僕が映って
君の声と僕の声がハミングした
◆
236.幸せとか不幸とか関係ない
◆
貴方に幸せにしてもらいたいと思ってた
だけどね、だんだん、幸せにしたいと思うようになったの
その後は、貴方となら不幸になっても構わない、そう感じるようになった
でも今は、不幸から守る為に2人で全力を尽くそうね
最悪の日にならないように
最良の日を過ごす為に
◆
237.カリギュラ効果の災厄
◆
笑ったのは強がりじゃない
最後の最期で
泣き顔なんて見せたくないから
一番良い顔の私を
覚えていて欲しいから
心配される自身か
心配してくれる相手か
どちらを守れれば
こんな悲劇にはならなかった?
◆
238.優しい嘘でもきっと付かない
◆
私の言うことを
聞いてくれる人なんていなかった
だから私は本音を言わなくなった
反応を予測して答えたり
望む解答を示したり
無意味に返したり
何も言わなかったり
けど貴方達は聞いてくれる
会話をしてくれる
だから私は貴方達には
本音しか言わない
◆
239.アウトローリバース
◆
真実はアナグラム化して
ガバメントが造り出した事実になった
ずっと信じてきたものが幻でも信じた想いは嘘じゃない
ハウリングする表と裏
偽りだらけの世の中を
嘲笑いながら引っくり返す
◆
240.狩人はララバイを奏でる
◆
Ready or not?(もういいかい?)
―――網を張って策を講じるは
Here i come(探しに行くよ)
―――此度の謀(ハカリゴト)
I see you(見ぃつけた)
―――全ては神の御ために
◆
241.偽りの逃避行、鍵を握るはモールス信号
◆
解読して見つけ出して?
貴方が迎えに来てくれるのを
ずっと待ってるから
◆
242.それも貴方を構成する一部だから
◆
怪物並みの力を押さえなくても
壊れそうなものだって守れる
私がその証拠
私がいる限りその証明
だから貴方は貴方のままでいい
◆
243.そこに価値など存在しない
◆
裏切るつもりはない
だが利益を生むつもりもない
足枷などにもしない
ただの踏み台だ
◆
244.買い被った殺意と見誤った愛情
◆
凶器を向けた私に
貴方は私を見据えて言う
確かに貴女は誰であろうと殺せるでしょう
ですがいきなりこんな事はしない
まずは経緯や動機を聞き
様々な事を考慮し総合的に判断する
それが貴女だ
まぁ僕は貴女になら殺されても構いませんよ
寧ろ、貴女以外には殺されたくありませんね
私の真意は分からなくても
微笑みながらそう言う貴方
本気の殺気を漂わせ
仲間でさえも凍り付いている状況なのにね
闇に堕ちた貴方と
闇に染まった私
愛を知った貴方と
愛を感じた私
狂気を笑顔に隠し
偽りの言葉を並べ
抗いましょう
運命とやらに
◆
245.恋って言うから愛に行く
◆
敵の組の若頭
潰す為に仕掛けられた罠
餌は私
最初は疑っていた若頭も
私の言動で次第に信頼を置き
事は順調に進んだ
最後に下った命は
誘拐されたフリをして
若頭を始末する
でも来るはずが無い
私が仄めかしたから
敵だと、罠だと
でも貴方は来た
舎弟を引き連れ
怒りに満ちた顔で
私を助けに
怒号と銃弾が飛び交う攻防戦
銃弾に倒れるは貴方を庇った私
目を覚まして一番に見たのは貴方
見たこともない心配そうな悔しそうな顔
絶対安静と言う医者を無視して出ていく
何故庇ったと疑問を投げ掛ける貴方に背を向けて
奴等の道具でしかなかった私も
やきがまわったみたいね
ターゲットだと見せられた写真の貴方は
寂しい瞳をしていたから
突き放す言葉を吐く私に
ぶっきらぼうに貴方は言う
「傍にいろ。俺が良いって言ってんだ!」
私は死ね無かった
壊れるしか出来ない
借金の形に両親に差し出された奴等の所有物‐コマ‐だから
でも私はいつでも死ねる
だってもう人間なんだから
だから、貴方が生きていて良かったと感じれるのね
◆
246.嬉しい誤算
◆
幼い頃に居なくなった両親
拾われて過ごす裏の世界
自作プログラムを組み立て
表の世界の金持ちから自分と同じ環境の子供へ回す
だけど真実を知った子供に恨まれて嵌められた
私腹を肥やす為ではないけど、
命を差し出すくらいの覚悟はある
哀れまれているのと同じだと叫ぶその人に
犯罪は似合わない
だから凶器を己に向けたのに
阻止したのは
その人と同じ表の人間
咄嗟だったのか利き手を真っ赤に染めた
知り合いを追ってる刑事
治療の後に、
悪態を付いて刑事に渡そうとした
自作プログラムの入ったUSB
漁夫の利の如く奪ったのは
刑事の同僚
意気揚々と去っていく同僚に
作戦成功と知り合いと笑う
金庫の金に手を出して
補填の為に裏の世界からお金を盗んだ
裏の世界の指名手配犯
これで白日の下に晒されるだろう
同僚の悪事が
表でも裏でも抹殺されること間違いなし
同僚に唆されたその人を救い
同僚を嵌める為の大芝居
でも刑事の行動は想定外
利害関係だけの世界で
助けられたことも
純粋に守られたこともなかった
嬉しかったよ
ありがとう
◆
247.星が繋ぐ軌跡
◆
親友とダブルデート
プラネタリウムへ繰り出した
暗闇に次々と映し出される星々
彼が見つけた彦星
その姿があの時と重なる
あの時ってね、数年前の話
入学してすぐに一目惚れしたの
片想い中に初めての校外学習
行き先はプラネタリウム
彼は彦星見付けられずに
友達と騒いでいて
先生に怒られ更に騒いでいた
そんな声が響く暗がりの中
私の目線は一つ前の彼ばかり
あの時は、
貴方と付き合えるなんて
貴方と想い合えるなんて
思ってもみなかった
幸せに、涙が溢れたよ
◆
248.ウロボロスを見下して
◆
空狐は均衡を見守り調節する
下界へ降りるは
金色の瞳に銀色の衣を纏った
禁忌の子
何千年もの間
人間と妖怪の狭間に生き
煙たがられてきた
奴の興味を惹いたのは
妖怪と人間の間に産まれた
幼き一人の半妖
人の世に生き
百鬼夜行を率いて
陰陽師が同級生にいる
風変わりな奴
奴等がピンチの時も
決して手は出さない
いや、出せない
善狐である空狐が手を出しては
力の差がありすぎて均衡が崩れてしまう
でも均衡を崩す野狐が現れ
天狐の命に従い野狐を退けた
命に従っただけだが、
奴は礼の言葉を口にした
律儀な奴の表情を見て
空狐も口にした
野狐は退けただけで消滅してはおらん
野狐とは因縁があるであろう
お前がケリを付けろ
我が行動を起こして
礼を言われたのは初めてだ
天狐の命に背き野狐を逃がした
その罪は計り知れない
少なくとも妖力の大半は
差し出さなければならないだろう
でも空狐は構わないと思った
幾年、虚無に過ごした刻
寿命が縮むだけなら
意味を為すなら
奴等の顔が曇らなければ
それでいいと
◆
249.独り立つ大地に広がるのは屍でも惨劇でもなく「無」だった
◆
失うものなんてない
孤独にも慣れた
信じられるものなんて己だけだ
なんて、
自分の事を
粗末にして
「何」を
守れた?
◆
250.微睡みは底無し沼
◆
見えもしないのに
何処からか聞こえてくる
耳障り極まりない音色
紛れて歪みだすのは
悪夢だと思い込んだ現実
消滅させたハズの愛情
砕き壊した生きる理由
存在を主張するように
破片が包み込んで纏わりつく
目を閉じても
耳を塞いでも
息を止めても
気配は消えない
あれ?
どうやって、
息をするんだっけ……?
◆
251.作り話はまだまだ続く
◆
狼少年は言った
もう二度と嘘なんて付かないよ
少年以外はこう思った
それこそ嘘だと
◆
252.使用方法は正しいはず
◆
人の命を奪うのではない
ただ武器を使っているだけ
引き金を引くだけ
刃を降り下ろすだけ
ただ、それだけ
◆
253.ジェンダー論争
◆
男ってなに?
女ってなに?
分からない
理解したくもない
同じ人なんて要らない
私は、
自分自身‐わたし‐、だから
◆
254.こんな理由じゃ駄目か?
◆
私を押し倒したお前
お前が手にして私の首元に突き付けたのは凶器
大戦が勃発し、追い詰めた敵が苦し紛れにした攻撃がお前を襲い庇った私
そのせいで片腕を無くした私を問い詰めるかのように
主の命に従い死ぬことを前提として行動する私を何とか生かそうとしてきたお前
反発するようにはぐらかしてきた
けど大戦も終わりを迎えた
無理をして生死の境を彷徨い目覚めた私が向かった先はお前だった
なのに、この仕打ちはなんだ
凶器も震えていて、お前が怯えている理由も分かるがな
なあ。
私は疲れたんだ。
感情を偽るのは。
お前になら殺されてもいいが、
私はお前の子供を産みたい。
この先の未来、
一緒に生きていきたい。
だから、
もう大丈夫だ。
◆
255.金か野心か。いや、ただの衝動だ。
◆
機械のような正確性
人形のような非情性
欲望を感じる人間性
理性を解放する野生性
パーソナルスペースを侵し
本能のままに動く
◆
256.Need not to know
◆
悪い奴を捕まえる
勇敢な英雄
皆が憧れる
格好いいヒーロー
勧善懲悪の
そんな絶対的正義
だけど、現実は醜い
蔓延るのは
穢れた奴等ばかり
知る必要が無いと
勝手に判断を下し
ねじ曲げた
不公平な事実
真実なんて、
もう、
何処にも無い
囁いた奴等は
今日も何処かで
正義を振りかざしている
◆
257.ICPO
◆
地球の何処へ
例え宇宙だろうと
逃げたとしても
見つけ出す
情報は必ず付きまとう
逃しはしない
嘗めないでくれる?
◆
258.Nシステム
◆
複雑なシステムと膨大なカメラ
駆使して埠頭に追い詰める
安全も危険も
纏めてマネージメント
◆
259.歩容認証
◆
顔を隠しても
服装を偽っても
後ろ姿でも
そんなものは関係ない
見逃しはしない
◆
260.身分秘匿捜査
◆
事件に大きいも小さいもない
良く聞く言葉だけど
結局被害は出てしまう
だから、
そうなる前に食い止める
危険を侵してでも
偽り騙してでも
事件になる前に
◆
261.最初から分かっていた解答
◆
掴まれた手を振りほどき
伸ばされた手を拒んだ
けれど、
行き場を無くした手で
私を引き戻そうと
もがく姿から
その必死さから
目を離すことはできなかった
真逆の感情が入り交じり
答えを
貴方ごと
抱き締めた
◆
262.身体の自覚と心の自覚
◆
血を見ると吐き気がして
肉を切り裂く感触が消えない
恐怖に歪んだ顔が焼き付いて
最期の声が耳から離れない
泣き顔が苦手になって
笑顔が見たくて
一緒にいたくなって
既に壊れた身体を無理矢理起こし
まだ一緒にいたいと
まだ一緒にいられると
貴方の元へ行きたいと思うようになったのは
一体いつからだろうか?
◆
263.それでも逆らいたくは無かったんだ
◆
どれだけの未来を奪ってきた?
大義の為ではなく
守る為でもなく
主の命令に従いたい、
主の役に立ちたいという、
私利私欲の為に
◆
264.択一ではなく唯一
◆
死の淵で問い掛けたのは
天使か悪魔か
救いの神か不幸の死神か
奪われた片腕を元に戻すか
片腕の生命力を命に代えるか
選んだ答えに貴方はどう思うだろうか?
自分のせいでと嘆くだろうか?
けれど、それは違うと否定する
死にたくないと祈ったことなんてなかったはずだ
生きたいと願ったことなんてなかったはずだ
一緒にいたいと求めたことなんてなかったはずだ
それでも問い掛けられた瞬間、
何故など愚問だと思考を切り捨て、
それら全てを肯定した
片腕なんて無くても構わない
と。
◆
265.生が地獄で死が天国なのか
◆
いつも他人のことばかり
自分の気持ちに気付かないフリをして
感情を封じ込めて
理解ぐらい出来ているはずなのに
許されないなら
許せないなら
一緒に地獄にだって堕ちてやるから
だから、
俺の前から消えてくれるな
◆
266.現在はすぐに過去に変わる
◆
震える声で謳ったのは希望
並べたてた未来
単語の羅列にしかならないそれは
何故か全て過去形で
解りきった結末に
少しでも抗いたかったのか
鈍くなっていく思考回路を必死で繋ぎ止め
かき集めた言葉
意味をなさないかも知れない言葉
ぼやけていく視界に映る貴方には
理解して欲しいなんて
都合が良すぎるかな
◆
267.自覚が終焉
◆
何時もの日常
でも何かが可笑しい
何時もの風景
でも何かが足りない
何時もの笑顔
でもどこか違う
ああ、
居ないからだ
そこに、
居ないからだ
もう、
居られないんだ
私は、
貴方とは
生きられないんだ
◆
268.矛先さえ無くして
◆
公表出来ない真実なら
光で塗り固めて
闇で覆い隠して
秘密を鈍い痛みで封じて
原因の
私ごと
存在を
消し去って
◆
269.それが最善の策なのか?
◆
兵器として育った私が
人間の感情を取り戻しても
兵器で居続けたのは
最前線で戦う貴方に
会いに行けるから
◆
270.臆する必要は無い
◆
闇に囚われても
夜明けを呼んで?
過去が背中を押すから
未来が引っ張るから
現在と共に行け
◆
271.グレードは加速する
◆
秘めたアンクレットに
誇りを詰めて
他人から得た評価を
マントの様に纏い
自信を結果に変える
◆
272.7が7回来た日
◆
バレンタインデーって外国じゃ男からプレゼントだし、
そもそもチョコレートはお菓子メーカーの策略だし、
なんて、ぶつくさ言いながら私の目の前の台所にはバレンタイン用の材料が広がっている
ちゃっかり一目惚れで買ったお気に入りのエプロン付きで
結局自分が食べるのに
意味が無いと分かっているのに
毎年毎年作ってたんだ
作らずにはいられない
――そんなことはないよ
突然聞こえた声に辺りを見回す
つい最近借りたワンルーム
誰も居ない
居るはずがない
けど、確かに聞こえたよ
大丈夫
来年も再来年もその次も
絶対作るから
あの日から49日目の出来事
◆
273.総てが偽物で本物
◆
それが本性か
凶器を突き付けたターゲットは
いつも同じ言葉を口にする
本性?
暗殺者‐わたし‐に本性なんて存在しない
状況を鑑みて合理的にただ処理をする
それがレゾンデートルとインプットされている
◆
274.結果がたとえ実現しないとしても
◆
待ってるよ
行く先が危険な状況で
帰ってくる保証は何処にもなくたって
全滅かもしれなくて
だけど、待ってる
見送ることしか出来ないから
帰る場所も
帰ってくる場所も
ちゃんとあるから
だから、
そんな顔をしなくても
私は大丈夫
死にに行く為じゃない
仲間と共に立ち向かって
守りに行くのでしょ?
だから、悲しい顔なんて
この状況には似合わない
私のこの笑顔を思い出して
ありったけの幸せを込めた顔を
頭の隅でいい
それだけでいいから
◆
275.裏に隠れた支配者は駒にさえ見放される
◆
蚊帳の外で嘲笑ってるんじゃない
手のひらで思い通りに転がしてるんじゃない
アナタが蚊帳の外に追い出されただけ
自ら離れて孤独の言い訳をしているだけ
アナタなんて関係ない
元から必要ない
認識すらしていないのだから
蚊帳の中では楽しくやっているから
せいぜい傍観者でいなよ
独りでだけどね
◆
276.悲しい事は半分こ、嬉しい事は無限大
◆
自分の身体の一部を取って君にあげる
こんな嬉しいことはないんだよ
君は僕の身体に傷を入れることを嫌がるけれど
僕が君を助けることが出来る
僕にしか出来ない
見守ることしか出来なかった僕にとって朗報なんだよ?
◆
277.雨の中走るより歩く方が濡れないって言うじゃない?
◆
予想外のことが起きた時
時間が迫っている時
何かで焦っている時
パニックになるよね
何とかしなきゃ、って
落ち着いて、なんて聞こえないだろうから
深呼吸を一度だけしてみて?
ほら、もう落ち着いた
ほら、もう大丈夫
冷静に動くのが一番早いんだよ
◆
278.誤解されやすい兄と弟を理解出来るのは唯一の妹で姉の私だけ
◆
兄上は完璧な妖怪
私は妖怪よりの半妖
弟は人間よりの半妖
兄上は弟が嫌い
人間が嫌い
一匹狼の兄と
仲間と旅をしている弟
兄弟喧嘩は激しく弟の仲間も迷惑を被っている
兄上の付き人の妖怪は言う
兄様と一緒に行かれなくていいのか
と
私は断った
だって私は兄上を探せないけれど
兄上は私を気配で見付けてくれる
だから私はそれでいい
どんなに兄上と弟の仲が悪くても
私は兄上の妹で弟の姉
気高き一族の
私の
誇りだ
◆
279.透明な挑戦でハッキリ成長
◆
上からは見下されて
同レベルからは見放されて
下からは無関心
天に登っても地に潜っても
誰も気付きやしない
それでいい
己を貫いて
目指すは誰にも出来ないこと
周りが認識する頃には
超越をなし得た後
◆
280.コントロールドデリバリー
◆
かき集めた頭脳
駆使した情報網
何百日にも及ぶ内偵
掴み撮った幾つもの証拠
張り巡らした罠
さぁ、突入だ
言い逃れも言い訳も許さない
◆
281.ねずみ色が青色に、白色が桃色に、無色が赤色に、総て混ざれば虹色に
◆
昨日までのどしゃ降りとはうって変わった
雨上がりの今日
雲一つない青空が広がる晴天に
掛かるは次の扉への橋
七分咲きの桜の下で
学生生活最初で最後の逢瀬
少しぬかるんだ地面に残る水溜まり
映るはちょっと先の夢見る未来
◆
282.男と女だけじゃないのに
◆
人を好きになるってどういうことですか?
付き合いたい?
キスしたい?
それ以上?
結婚したい?
確かにそれらもしたい
けど、法律は感情では作られてはいない
人間が作ったのに
人間の為のものではないの?
我々は、人間ではないの?
ねえ。
教えて下さい。
どうしたら、
愛する人を好きと法律は認めてくれますか?
◆
283.主従関係なんて言わせない
◆
従ってる訳じゃない
同じ考えなだけ
だから好きにしたらいい
間違ってると思ったら止めるから
苦しまないで
悲しまないで
独りじゃないから
◆
284.原因も解決法も僕ならば
◆
失うことに怖がって逃げ出したとしても
幸せに怯えて手を振り払っても
探して掴まえに行けばいい
何度君が未来に臆病になっても
何度君が闇に迷っても
僕の為にそうなるなら
僕がそうすればいい
それだけだ
◆
285.変化は幸か不幸か
◆
自分で輝いていた
懐かしいと思うあの頃に
見えていた景色が
少しずつ見えなくなってきたのではないか?
ふと、そんな感覚に襲われる時がある
確実に目に見えるのに
不確かなもの
目に見えないのに
確実なもの
変わったのは、
変わってしまったのは、
周囲か
それとも
自分か
◆
286.純粋無垢故ならば悪逆非道さえ免責か?
◆
愛し方って人それぞれじゃない?
だったら
世間の価値観とか
他人から理解とか
必要ないでしょ
これだけ私を振り回して
私だって気が済むまで満足したいのよ
言いたいだけ言わしてあげる
だけど、周りの戯れ言なんて
貴方と愛しあえればどうだっていいわ
本当はプロポーズしたいのでしょう
そんなに焦らさなくてもいいのに
一体何が貴方を押し留めているのかしら?
私が貴方を解放してアゲル
◆
287.フロンティアチョイス
◆
流行が悪いとは言わないさ
だけど、
みんなが、
という理由だけで流されるのはどうかな?
果たしてそれは自分に必要かな?
一度考えてみようよ
自分に必要だったら手に入れようか
不要な理由をこじつけるより
必要な理由を確実にしよう
◆
288.証明には証拠が必要不可欠
◆
存在しないと
証明することが出来ないから
いないとは言えない
しかし
存在するとも
証明することが出来ないから
いるとも言えない
どちらも嘘とは言えない
◆
289.この世でもあの世でも離れはせぬ
◆
死ぬことは別れとは言わぬ
一緒に死ねぬのが別れ
それならば
一緒に逝こうか
◆
290.失敗は成功のもと
◆
成功例だけ取り上げて
採り入れたって無理
失敗例も考慮しないと
上手くはいかない
◆
291.全ての物事において
◆
土台を隙間無く固め
基礎を使いこなして
応用でトドメをさす
それが一番肝心要さ
◆
292.向き不向きなんて表向き
◆
向いてるとか
向いていないとか
そんなんじゃなくて
向くように努力する
◆
293.去り行く者が残す願‐モノ‐
◆
復讐なんて自己満足だ
当事者がそれを望むなら
それは仲間なんかじゃない
仲間なら自分のことより
相手を気遣うから
だから復讐なんて望まない
だから復讐なんてさせない
◆
294.宿命に追われて、運命に逃げられる
◆
逃げるのは至極簡単だ
けど
追いかけるのは難しい
何を
何処で
間違ったのか
回ってしまった歯車は
止めることも
戻すことも
出来やしない
◆
295.一心不乱貴方思考
◆
目を開けたら白を基調とした部屋
寝ていたらしくベッドの上
混乱する私の頭を過ったのは
貴方が刺された場面
ハッとして駆け出し
向かうは捜査本部
走って走って走って
息切れしながら開けた扉の先
捜査員の中に見つけた貴方
驚く貴方を尻目に
スーツをまくり傷を確かめる
傷が無いことに安堵する私とは対照的に
それはこっちのセリフだと焦る貴方
ああ、だから私は病院にいたのか
けれど良かった
貴方が無事で…
私の意識はそこで途切れた
無茶して
上司に怒られるのと
仲間から冷やかされるのは
これから少しだけ先の話
◆
296.だから自分を責めないで
◆
私の死の瀬戸際に
貴方は仕事を選んだ
だけど悲しくはないわ
苦しんでいるの分かってたから
ただ、悔しいだけ
貴方が頑張っているのに
私は頑張れなかったから
◆
297.もどかしいくてもあたっかくなれる
◆
態度だけじゃ伝わらない時がある
言葉だって傷付ける時がある
けれど超能力者でもない限り
人間は何か行動しなければ
伝えられない
傷付いて傷付けて
それでも分かり合いたいから
それでも大切だから
ぶつかり合うんだ
◆
298.幕を引いたのは諦めたからじゃない
◆
もういいんです!
そう私は叫んだ
真実を知りたかった
不正を暴きたかった
当事者である私とあの人は覚悟していた
けれど、あの人は殺された
証拠を持っている私は襲われ
庇った貴方は怪我をした
パニックを起こした私に
貴方はかすり傷だって笑う
けれど、もういいの
真実を知る為に
不正を暴く為に
今までしてきたけれど
無関係の
しかも貴方を
傷付けたくはない
だから、もういいんです
◆
299.諦めるのを諦める
◆
俺達が信じられないか
俺はそんなに信用がないか
叫ぶ男に女は悲しく微笑む
新聞社の社会部オカルト担当
そして事件の第一発見者
それが今の女の立場
一方、男は事件記者
事件を追う立場なのに
記事にもせずに女を問い詰める
殺されたのは女の元先輩
そして、女の家族に雇われていた元運転手
十数年前に
惨殺された政治家と妻
その娘と運転手は
戸籍も名前も変えさせられて
それでも息を潜めながら
集めた証拠の数々
しかし黒幕とおぼしき国家権力は
すぐそこに迫っている
女は諦めなければならなかった
男と会社は女と心中する気満々だったのだから
◆
300.ネゴシエーションなんて所詮騙し合い
◆
身内に無表情で
交渉対象者には表情豊か
暇さえあれば
捜査会議中であろうと
資料を読み漁り情報収集
交渉時以外は
周りが呆れる程の
やる気の無い言動
敏腕なのに
とても偏屈なネゴシエーター
ポリシーは
敵も味方も誰も
死なせないで傷付けないで
逮捕と保護をすること
そんなネゴシエーターが
押し問答を繰り返している身内同士に
一つの案を提案した
言うだけ言って出ていくネゴシエーターに
片方の身内は言う
さすがネゴシエーターだな、と
ネゴシエーターは振り返り
無表情で言う
交渉術を使わなくても
本音を言えば動いてくれる
だから嘘を付く必要はない
201.とある呪術の暗殺者‐イーヴィルアイ‐
◆
魔術と科学と技能
三者が絡み合う街
法律が追い付かないせいで
魔法が横行している
対抗する為に
頭脳を駆使して科学反応を起こした
先人が傍観者を気取る事で
世界の歯車が狂いだす
そんな街を人知れず訪れたのは
呪われた邪眼を持って
闇に染まった者
災厄のオッドアイが映し出すは
ザッピングする幾多の景色
いつになったら止まるのか
繰り返される光景の果ては
世界の破滅か
人類の堕落か
終焉まで
見届ける為に、いざ行かん
◆
202.力と感情が織り成すラブストーリー
◆
破壊神と恐れられる男がいる街
不良やヤクザさえも恐怖する
強すぎる男
電信柱や標識をいとも簡単に引っこ抜いたりへし折ったり
自販機や車を投げ飛ばしたり
沸点が低く力を制御出来ぬ男に
近寄る者など誰一人いなかった
今日もまた、何かを破壊する
爆発した力が、側にあった自販機で
怒りの元凶を静めようと振りかざした
「あの、それ取ってもいいですか?」
男の背から投げ掛けられた声は、ひどく落ち着いていた
振り向いた先にいた
男の母校の学生服を着た少女
指先したのは自販機
よく見ると受け取り口にはジュースが1本
目を合わせて話したのは、
話しかけられたのは、
いつぶりか
そんなことを考えながら、差し出したジュース
「ありがとうございます。」
受け取りお礼を言って、何事もなく去った少女
少女は終始無表情だったが、男には違って見えた
第六感で見抜く少女と
偽りのない素直な男の
ほんの些細な、なれそめ話
◆
203.未必の故意は、結局故意ではないか?
◆
パパが寝ている。
手元には火のついた小さな筒。
ママも寝ている。
小さな筒はだんだん短くなって、落ちちゃった。
緑色の床が、黒色に変わっていく。
パパを起こす?
ママを起こす?
だけど………、
ゆらゆら揺れる目の前の
綺麗な赤色を見ていたいな。
このまま、ずっと。
だから、起こさなくて大丈夫。
あなたも、そう思うよね?
◆
204.失声症~手段は1つじゃない~
◆
私は声が出ない。
声帯には問題ないの。
あの出来事があってから、喋れなくなった。
周りはカワイソウって言うの。
でもね、不自由しないよ。
話せなくったって、コミュニケーションは取れるの。
私は、声以外を使ってめいいっぱい伝えるから。
ありがとうも、だいすきも。
◆
205.価値はあっても値段はない
◆
巷では、横行しているらしいわね。
援助交際に、
売春に、
買春に、
美人局まで。
フォルムだって次々と変えていたちごっこ
犯罪だって、判ってるのかしら?
私ならどれだけお金積まれたって、願い下げね。
一言で追い出してやるわ。
私のからだ、
そんなに安くない!ってね。
◆
206.反対も賛成も、時に無責任
◆
全身全霊を懸けて
頑張っているものが彼にはある
だけど、辞めたいと彼は言った
疲れているの?
しんどくなった?
投げ出したくなった?
でも、私は反対しないよ
けれど、賛成もしない
だって、貴方の人生だから
だから私は、
「貴方の好きにすればいい。だけど、私はいつでも味方だよ。」
そう言って傍に寄り添う。
◆
207.命に従い任務遂行
◆
ある人を守って助けた命
引き換えに失ったのは感情
大勢に救いを求められても
伸ばされた手ごと奪っていく
必要なのは労力
不要なのは自己
◆
208.ルフラン the 暴食
◆
ああ、
食べても食べても
食べ足りない
全ての食べ物を
食べ尽くしても
奪うは他の生命線
◆
209.ルフラン the 色欲
◆
ああ、
愉しい愉しい
愉し過ぎる
溢れて溺れて
堕ちていく
崩壊したのは
蓋か底か、どちら?
◆
210.ルフラン the 強欲
◆
ああ、
欲しい欲しい
あれもこれも全部
この世の物は自分の為にある
◆
211.ルフラン the 憤怒
◆
ああ、
イライラ、ムカムカ
誰を見ても
何を聞いても
私を苛立たせるものばかり
◆
212.ルフラン the 怠惰
◆
ああ、
ダルイし
やる気が起きない
仕事も
恋も
家事も
何もかもが面倒くさい
◆
213.ルフラン the 嫉妬
◆
ああ、
なんであいつばっかり
私の方が上手なのに
私の方が凄いのに
私の方が偉いのに
誰も褒めてなんてくれない
◆
214.ルフラン the 傲慢
◆
ああ、
最高だ気分が良い
あいつは私に媚びへつらう
あの子は私を褒め称える
私は偉大な人間なのだから
当然といえよう
◆
215.0円はタダって事じゃない
◆
テレビドラマでよくある
子供を返して欲しければ、身代金を用意しろ
身代金の額はお前が決めろ
子供に値段をつけるんだ
なんて会話
でもね、良い答え思い付いたの
身代金は出せません
0円です
子供に値段なんてありません
命はお金で代えられない
どうかな?
◆
216.伏せ目から見据える目へ
◆
改めて思ったの
過去に縛られてたら駄目だって
失うことを恐れて
前に進まないのもね
背負っていた重い荷物は
お土産(スーベニール)として
軌跡に置いていくわ
◆
217.ただし、傍観者でもいられない
◆
対峙する敵でも
支援する味方でもない
私はただ
貴方と居たいだけ
◆
218.リマインダーは心の中に
◆
例え
貴方がいなくなっても
独りにはならない
何故なら
私と貴方を
大切に思ってくれる人達が
傍にいるから
◆
219.貴方の仲間は私の家族も同然だから
◆
貴方に向けた凶器
貴方の仲間は
私を止めようとした
それは私に
まだ好意があるってこと
貴方を守ろうとしたならば
私に敵意があるってことだから
試す様な真似をしたのは
貴方と仲間と
茨の道を進む為
◆
220.誰も知らない、誰も分からない
◆
幸せかは分からない
でも
不幸だと思ったことはない
◆
221.幸福二乗
◆
自分が幸せになって
初めて人を幸せにできる
幸せがどういうものか分からないと
伝えることなんて出来ないから
◆
222.猪突猛進と大和撫子の事件簿
◆
18歳の新人プロサッカー選手
美術部エースの14歳
2人は恋人同士で秘密の恋愛真っ最中
しかし、心無い週刊誌にスクープされてしまった
彼女は彼の選手生命に傷を付けない様に
受け入れないと言った彼に
強引に別れを告げた
そんな最中、彼女が何者かに階段から突き落とされた
怪我も大したことは無く、警察のおかげで犯人も無事に逮捕された
彼のファンで嫉妬の末に犯行に及んだとの事だ
そして、彼はフィールドに立ち番狂わせ
仲間と共にゲームを制した
ヒーローインタビューを受けていた彼は、記者からマイクを奪い彼女を見ながら笑顔で叫んだ
彼女は俺のめっちゃ大事な人や
ファンやったら俺と同じ様に
愛したってや
◆
223.無色透明虚数空間
◆
美しきノイズに魅せられ
香しき花は咲き乱れる
身の程知らずが口にした
優美なその実は毒(カンタレラ)
広がり侵食する闇は
全ての光を吸収してゆく
信じていた世界は
信じたかった世界は
一瞬で音もなく消え無と化した
◆
224.非効率だって時には有益だ
◆
例え
結果が駄目でも
駄目だったという成果は
得られる
だから無駄じゃない
◆
225.絶望が教えてくれていた希望
◆
叶わないと思っていたのは
貴方との未来を描いた
遠い夢
叶えようと思ったのは
貴方の隣で日々を過ごす
近い未来
◆
226.勝手に責任を感じてもらっても困る
◆
死にたいのならそうしてやる
お前が死ぬ理由は
私が殺した時だけだ
でも私はお前と生きたい
それじゃ不満か?
◆
227.その時から信じると決めたの
◆
私の父はプロテニスプレーヤー
でも、私を庇って死んでしまった
今はライバル選手だった人の家族と暮らしてる
世間的には、その人の息子と双子の兄弟ってことになってる
その息子と娘もテニスをしていると聞き、貴方は学校へ取材をしに来ていた
長年スポーツ誌に連載を持っていて、父も今の父も、貴方はファンだと言った
穏やかに流れていた時間を切り裂く様に、
私の過去がバレてしまった
きっと大騒ぎね
スクープだって言っても
苦い顔のままの貴方に
私は書いて欲しい
あることないこと書き立てる他のマスコミとは違う貴方に
真実を書いていた貴方に
マスコミ嫌いだった父の葬儀に、取材などせずお焼香をしただけで帰っていったマスコミの貴方に
私は書いて欲しいから
真実を書く貴方に
◆
228.そもそも私がいなければ良かったのでしょうか
◆
望まれて生まれてきた
それは分かってる
大切な人達に囲まれて幸せ
毎日が楽しいわ
でも
生きてきたことだけは
後悔しているの
◆
229.死なんかで償える訳が無いから
◆
あの時助けられなかった
哀れだと
同情している訳じゃない
ただ手が出せなかったことを
後悔しているだけ
失った悲しみは
痛いほど分かるから
どれだけ罪の意識に苛まれても
私は私を殺さない
◆
230.暗躍者の闇破壊
◆
絆が深い私の家族(マフィア)
闇とも深い繋がり
知っているのは私だけ
矢面に立っているのが私だけだから
ボス以外の家族は知らない真っ黒い秘密
ボスの直系血族である私
体質により継承権のない私
でも実権を握っているのは私
真実を知っているのも私
ボスの言うことはきかなくちゃね
遺言だもの
全てを打ち明けた今
闇を壊しに行きましょうか
◆
231.下克上御伽草子(クーデターストーリー)
◆
ポリグラフさえも惑わす
華麗なポーカーフェイス
世界を欺き
迷宮を脱け出す鍵(パスワード)
手に入れたのは
反逆の契約者(テスタメント)
果てに輝くは
何千年も越えたアスタリスク
揺るぎない野望を宿し
大胆不敵に微笑んだ
◆
232.戦国絵巻
◆
当事者だけが解る
幾重にも造り上げられた暗号
間際に残した僅かなそれを
解読したのは継承者
使命の如く無意識に
精巧な理論を繋ぎ合わせ構築
甦ったのは迷子の記憶
思い出したのは生きた証
◆
233.大怪盗は名探偵
◆
難解な謎
誰もが探し求め
狙う解答を
人知れず解き明かす
奪った真実で
ばらまいた嘘
差し出した掌には
偽りの正義を乗せ
変幻自在にまやかし
秘密を掻き消した
◆
234.予言アンバサダー
◆
変わり果てた世界で
思い知った運命の脆さ
ディテール良く書き込まれた
分厚い黙示録
黒い罠が囁いた
偽の白い光を追い掛けて
エコーするメーデーに
即興劇(インプロブ)を演じるのは
漆黒に輝く黒猫(シャノワール)
◆
235.本物はなにものにも劣らない
◆
僕の部屋にはね、
君の写真がいっぱいあるんだ
恥ずかしがりやの君は
どれも目線は違う方向を向いているんだけれど
まあ正面じゃなくても君は美しいよ
さあ、メランコリックな時間は終わりにしようか
もう恥ずかしがらなくていいんだよ
その目は開かなくていいんだから
最期に見たのが僕で良かったでしょう
見開く君の瞳には幸せそうな僕が映って
君の声と僕の声がハミングした
◆
236.幸せとか不幸とか関係ない
◆
貴方に幸せにしてもらいたいと思ってた
だけどね、だんだん、幸せにしたいと思うようになったの
その後は、貴方となら不幸になっても構わない、そう感じるようになった
でも今は、不幸から守る為に2人で全力を尽くそうね
最悪の日にならないように
最良の日を過ごす為に
◆
237.カリギュラ効果の災厄
◆
笑ったのは強がりじゃない
最後の最期で
泣き顔なんて見せたくないから
一番良い顔の私を
覚えていて欲しいから
心配される自身か
心配してくれる相手か
どちらを守れれば
こんな悲劇にはならなかった?
◆
238.優しい嘘でもきっと付かない
◆
私の言うことを
聞いてくれる人なんていなかった
だから私は本音を言わなくなった
反応を予測して答えたり
望む解答を示したり
無意味に返したり
何も言わなかったり
けど貴方達は聞いてくれる
会話をしてくれる
だから私は貴方達には
本音しか言わない
◆
239.アウトローリバース
◆
真実はアナグラム化して
ガバメントが造り出した事実になった
ずっと信じてきたものが幻でも信じた想いは嘘じゃない
ハウリングする表と裏
偽りだらけの世の中を
嘲笑いながら引っくり返す
◆
240.狩人はララバイを奏でる
◆
Ready or not?(もういいかい?)
―――網を張って策を講じるは
Here i come(探しに行くよ)
―――此度の謀(ハカリゴト)
I see you(見ぃつけた)
―――全ては神の御ために
◆
241.偽りの逃避行、鍵を握るはモールス信号
◆
解読して見つけ出して?
貴方が迎えに来てくれるのを
ずっと待ってるから
◆
242.それも貴方を構成する一部だから
◆
怪物並みの力を押さえなくても
壊れそうなものだって守れる
私がその証拠
私がいる限りその証明
だから貴方は貴方のままでいい
◆
243.そこに価値など存在しない
◆
裏切るつもりはない
だが利益を生むつもりもない
足枷などにもしない
ただの踏み台だ
◆
244.買い被った殺意と見誤った愛情
◆
凶器を向けた私に
貴方は私を見据えて言う
確かに貴女は誰であろうと殺せるでしょう
ですがいきなりこんな事はしない
まずは経緯や動機を聞き
様々な事を考慮し総合的に判断する
それが貴女だ
まぁ僕は貴女になら殺されても構いませんよ
寧ろ、貴女以外には殺されたくありませんね
私の真意は分からなくても
微笑みながらそう言う貴方
本気の殺気を漂わせ
仲間でさえも凍り付いている状況なのにね
闇に堕ちた貴方と
闇に染まった私
愛を知った貴方と
愛を感じた私
狂気を笑顔に隠し
偽りの言葉を並べ
抗いましょう
運命とやらに
◆
245.恋って言うから愛に行く
◆
敵の組の若頭
潰す為に仕掛けられた罠
餌は私
最初は疑っていた若頭も
私の言動で次第に信頼を置き
事は順調に進んだ
最後に下った命は
誘拐されたフリをして
若頭を始末する
でも来るはずが無い
私が仄めかしたから
敵だと、罠だと
でも貴方は来た
舎弟を引き連れ
怒りに満ちた顔で
私を助けに
怒号と銃弾が飛び交う攻防戦
銃弾に倒れるは貴方を庇った私
目を覚まして一番に見たのは貴方
見たこともない心配そうな悔しそうな顔
絶対安静と言う医者を無視して出ていく
何故庇ったと疑問を投げ掛ける貴方に背を向けて
奴等の道具でしかなかった私も
やきがまわったみたいね
ターゲットだと見せられた写真の貴方は
寂しい瞳をしていたから
突き放す言葉を吐く私に
ぶっきらぼうに貴方は言う
「傍にいろ。俺が良いって言ってんだ!」
私は死ね無かった
壊れるしか出来ない
借金の形に両親に差し出された奴等の所有物‐コマ‐だから
でも私はいつでも死ねる
だってもう人間なんだから
だから、貴方が生きていて良かったと感じれるのね
◆
246.嬉しい誤算
◆
幼い頃に居なくなった両親
拾われて過ごす裏の世界
自作プログラムを組み立て
表の世界の金持ちから自分と同じ環境の子供へ回す
だけど真実を知った子供に恨まれて嵌められた
私腹を肥やす為ではないけど、
命を差し出すくらいの覚悟はある
哀れまれているのと同じだと叫ぶその人に
犯罪は似合わない
だから凶器を己に向けたのに
阻止したのは
その人と同じ表の人間
咄嗟だったのか利き手を真っ赤に染めた
知り合いを追ってる刑事
治療の後に、
悪態を付いて刑事に渡そうとした
自作プログラムの入ったUSB
漁夫の利の如く奪ったのは
刑事の同僚
意気揚々と去っていく同僚に
作戦成功と知り合いと笑う
金庫の金に手を出して
補填の為に裏の世界からお金を盗んだ
裏の世界の指名手配犯
これで白日の下に晒されるだろう
同僚の悪事が
表でも裏でも抹殺されること間違いなし
同僚に唆されたその人を救い
同僚を嵌める為の大芝居
でも刑事の行動は想定外
利害関係だけの世界で
助けられたことも
純粋に守られたこともなかった
嬉しかったよ
ありがとう
◆
247.星が繋ぐ軌跡
◆
親友とダブルデート
プラネタリウムへ繰り出した
暗闇に次々と映し出される星々
彼が見つけた彦星
その姿があの時と重なる
あの時ってね、数年前の話
入学してすぐに一目惚れしたの
片想い中に初めての校外学習
行き先はプラネタリウム
彼は彦星見付けられずに
友達と騒いでいて
先生に怒られ更に騒いでいた
そんな声が響く暗がりの中
私の目線は一つ前の彼ばかり
あの時は、
貴方と付き合えるなんて
貴方と想い合えるなんて
思ってもみなかった
幸せに、涙が溢れたよ
◆
248.ウロボロスを見下して
◆
空狐は均衡を見守り調節する
下界へ降りるは
金色の瞳に銀色の衣を纏った
禁忌の子
何千年もの間
人間と妖怪の狭間に生き
煙たがられてきた
奴の興味を惹いたのは
妖怪と人間の間に産まれた
幼き一人の半妖
人の世に生き
百鬼夜行を率いて
陰陽師が同級生にいる
風変わりな奴
奴等がピンチの時も
決して手は出さない
いや、出せない
善狐である空狐が手を出しては
力の差がありすぎて均衡が崩れてしまう
でも均衡を崩す野狐が現れ
天狐の命に従い野狐を退けた
命に従っただけだが、
奴は礼の言葉を口にした
律儀な奴の表情を見て
空狐も口にした
野狐は退けただけで消滅してはおらん
野狐とは因縁があるであろう
お前がケリを付けろ
我が行動を起こして
礼を言われたのは初めてだ
天狐の命に背き野狐を逃がした
その罪は計り知れない
少なくとも妖力の大半は
差し出さなければならないだろう
でも空狐は構わないと思った
幾年、虚無に過ごした刻
寿命が縮むだけなら
意味を為すなら
奴等の顔が曇らなければ
それでいいと
◆
249.独り立つ大地に広がるのは屍でも惨劇でもなく「無」だった
◆
失うものなんてない
孤独にも慣れた
信じられるものなんて己だけだ
なんて、
自分の事を
粗末にして
「何」を
守れた?
◆
250.微睡みは底無し沼
◆
見えもしないのに
何処からか聞こえてくる
耳障り極まりない音色
紛れて歪みだすのは
悪夢だと思い込んだ現実
消滅させたハズの愛情
砕き壊した生きる理由
存在を主張するように
破片が包み込んで纏わりつく
目を閉じても
耳を塞いでも
息を止めても
気配は消えない
あれ?
どうやって、
息をするんだっけ……?
◆
251.作り話はまだまだ続く
◆
狼少年は言った
もう二度と嘘なんて付かないよ
少年以外はこう思った
それこそ嘘だと
◆
252.使用方法は正しいはず
◆
人の命を奪うのではない
ただ武器を使っているだけ
引き金を引くだけ
刃を降り下ろすだけ
ただ、それだけ
◆
253.ジェンダー論争
◆
男ってなに?
女ってなに?
分からない
理解したくもない
同じ人なんて要らない
私は、
自分自身‐わたし‐、だから
◆
254.こんな理由じゃ駄目か?
◆
私を押し倒したお前
お前が手にして私の首元に突き付けたのは凶器
大戦が勃発し、追い詰めた敵が苦し紛れにした攻撃がお前を襲い庇った私
そのせいで片腕を無くした私を問い詰めるかのように
主の命に従い死ぬことを前提として行動する私を何とか生かそうとしてきたお前
反発するようにはぐらかしてきた
けど大戦も終わりを迎えた
無理をして生死の境を彷徨い目覚めた私が向かった先はお前だった
なのに、この仕打ちはなんだ
凶器も震えていて、お前が怯えている理由も分かるがな
なあ。
私は疲れたんだ。
感情を偽るのは。
お前になら殺されてもいいが、
私はお前の子供を産みたい。
この先の未来、
一緒に生きていきたい。
だから、
もう大丈夫だ。
◆
255.金か野心か。いや、ただの衝動だ。
◆
機械のような正確性
人形のような非情性
欲望を感じる人間性
理性を解放する野生性
パーソナルスペースを侵し
本能のままに動く
◆
256.Need not to know
◆
悪い奴を捕まえる
勇敢な英雄
皆が憧れる
格好いいヒーロー
勧善懲悪の
そんな絶対的正義
だけど、現実は醜い
蔓延るのは
穢れた奴等ばかり
知る必要が無いと
勝手に判断を下し
ねじ曲げた
不公平な事実
真実なんて、
もう、
何処にも無い
囁いた奴等は
今日も何処かで
正義を振りかざしている
◆
257.ICPO
◆
地球の何処へ
例え宇宙だろうと
逃げたとしても
見つけ出す
情報は必ず付きまとう
逃しはしない
嘗めないでくれる?
◆
258.Nシステム
◆
複雑なシステムと膨大なカメラ
駆使して埠頭に追い詰める
安全も危険も
纏めてマネージメント
◆
259.歩容認証
◆
顔を隠しても
服装を偽っても
後ろ姿でも
そんなものは関係ない
見逃しはしない
◆
260.身分秘匿捜査
◆
事件に大きいも小さいもない
良く聞く言葉だけど
結局被害は出てしまう
だから、
そうなる前に食い止める
危険を侵してでも
偽り騙してでも
事件になる前に
◆
261.最初から分かっていた解答
◆
掴まれた手を振りほどき
伸ばされた手を拒んだ
けれど、
行き場を無くした手で
私を引き戻そうと
もがく姿から
その必死さから
目を離すことはできなかった
真逆の感情が入り交じり
答えを
貴方ごと
抱き締めた
◆
262.身体の自覚と心の自覚
◆
血を見ると吐き気がして
肉を切り裂く感触が消えない
恐怖に歪んだ顔が焼き付いて
最期の声が耳から離れない
泣き顔が苦手になって
笑顔が見たくて
一緒にいたくなって
既に壊れた身体を無理矢理起こし
まだ一緒にいたいと
まだ一緒にいられると
貴方の元へ行きたいと思うようになったのは
一体いつからだろうか?
◆
263.それでも逆らいたくは無かったんだ
◆
どれだけの未来を奪ってきた?
大義の為ではなく
守る為でもなく
主の命令に従いたい、
主の役に立ちたいという、
私利私欲の為に
◆
264.択一ではなく唯一
◆
死の淵で問い掛けたのは
天使か悪魔か
救いの神か不幸の死神か
奪われた片腕を元に戻すか
片腕の生命力を命に代えるか
選んだ答えに貴方はどう思うだろうか?
自分のせいでと嘆くだろうか?
けれど、それは違うと否定する
死にたくないと祈ったことなんてなかったはずだ
生きたいと願ったことなんてなかったはずだ
一緒にいたいと求めたことなんてなかったはずだ
それでも問い掛けられた瞬間、
何故など愚問だと思考を切り捨て、
それら全てを肯定した
片腕なんて無くても構わない
と。
◆
265.生が地獄で死が天国なのか
◆
いつも他人のことばかり
自分の気持ちに気付かないフリをして
感情を封じ込めて
理解ぐらい出来ているはずなのに
許されないなら
許せないなら
一緒に地獄にだって堕ちてやるから
だから、
俺の前から消えてくれるな
◆
266.現在はすぐに過去に変わる
◆
震える声で謳ったのは希望
並べたてた未来
単語の羅列にしかならないそれは
何故か全て過去形で
解りきった結末に
少しでも抗いたかったのか
鈍くなっていく思考回路を必死で繋ぎ止め
かき集めた言葉
意味をなさないかも知れない言葉
ぼやけていく視界に映る貴方には
理解して欲しいなんて
都合が良すぎるかな
◆
267.自覚が終焉
◆
何時もの日常
でも何かが可笑しい
何時もの風景
でも何かが足りない
何時もの笑顔
でもどこか違う
ああ、
居ないからだ
そこに、
居ないからだ
もう、
居られないんだ
私は、
貴方とは
生きられないんだ
◆
268.矛先さえ無くして
◆
公表出来ない真実なら
光で塗り固めて
闇で覆い隠して
秘密を鈍い痛みで封じて
原因の
私ごと
存在を
消し去って
◆
269.それが最善の策なのか?
◆
兵器として育った私が
人間の感情を取り戻しても
兵器で居続けたのは
最前線で戦う貴方に
会いに行けるから
◆
270.臆する必要は無い
◆
闇に囚われても
夜明けを呼んで?
過去が背中を押すから
未来が引っ張るから
現在と共に行け
◆
271.グレードは加速する
◆
秘めたアンクレットに
誇りを詰めて
他人から得た評価を
マントの様に纏い
自信を結果に変える
◆
272.7が7回来た日
◆
バレンタインデーって外国じゃ男からプレゼントだし、
そもそもチョコレートはお菓子メーカーの策略だし、
なんて、ぶつくさ言いながら私の目の前の台所にはバレンタイン用の材料が広がっている
ちゃっかり一目惚れで買ったお気に入りのエプロン付きで
結局自分が食べるのに
意味が無いと分かっているのに
毎年毎年作ってたんだ
作らずにはいられない
――そんなことはないよ
突然聞こえた声に辺りを見回す
つい最近借りたワンルーム
誰も居ない
居るはずがない
けど、確かに聞こえたよ
大丈夫
来年も再来年もその次も
絶対作るから
あの日から49日目の出来事
◆
273.総てが偽物で本物
◆
それが本性か
凶器を突き付けたターゲットは
いつも同じ言葉を口にする
本性?
暗殺者‐わたし‐に本性なんて存在しない
状況を鑑みて合理的にただ処理をする
それがレゾンデートルとインプットされている
◆
274.結果がたとえ実現しないとしても
◆
待ってるよ
行く先が危険な状況で
帰ってくる保証は何処にもなくたって
全滅かもしれなくて
だけど、待ってる
見送ることしか出来ないから
帰る場所も
帰ってくる場所も
ちゃんとあるから
だから、
そんな顔をしなくても
私は大丈夫
死にに行く為じゃない
仲間と共に立ち向かって
守りに行くのでしょ?
だから、悲しい顔なんて
この状況には似合わない
私のこの笑顔を思い出して
ありったけの幸せを込めた顔を
頭の隅でいい
それだけでいいから
◆
275.裏に隠れた支配者は駒にさえ見放される
◆
蚊帳の外で嘲笑ってるんじゃない
手のひらで思い通りに転がしてるんじゃない
アナタが蚊帳の外に追い出されただけ
自ら離れて孤独の言い訳をしているだけ
アナタなんて関係ない
元から必要ない
認識すらしていないのだから
蚊帳の中では楽しくやっているから
せいぜい傍観者でいなよ
独りでだけどね
◆
276.悲しい事は半分こ、嬉しい事は無限大
◆
自分の身体の一部を取って君にあげる
こんな嬉しいことはないんだよ
君は僕の身体に傷を入れることを嫌がるけれど
僕が君を助けることが出来る
僕にしか出来ない
見守ることしか出来なかった僕にとって朗報なんだよ?
◆
277.雨の中走るより歩く方が濡れないって言うじゃない?
◆
予想外のことが起きた時
時間が迫っている時
何かで焦っている時
パニックになるよね
何とかしなきゃ、って
落ち着いて、なんて聞こえないだろうから
深呼吸を一度だけしてみて?
ほら、もう落ち着いた
ほら、もう大丈夫
冷静に動くのが一番早いんだよ
◆
278.誤解されやすい兄と弟を理解出来るのは唯一の妹で姉の私だけ
◆
兄上は完璧な妖怪
私は妖怪よりの半妖
弟は人間よりの半妖
兄上は弟が嫌い
人間が嫌い
一匹狼の兄と
仲間と旅をしている弟
兄弟喧嘩は激しく弟の仲間も迷惑を被っている
兄上の付き人の妖怪は言う
兄様と一緒に行かれなくていいのか
と
私は断った
だって私は兄上を探せないけれど
兄上は私を気配で見付けてくれる
だから私はそれでいい
どんなに兄上と弟の仲が悪くても
私は兄上の妹で弟の姉
気高き一族の
私の
誇りだ
◆
279.透明な挑戦でハッキリ成長
◆
上からは見下されて
同レベルからは見放されて
下からは無関心
天に登っても地に潜っても
誰も気付きやしない
それでいい
己を貫いて
目指すは誰にも出来ないこと
周りが認識する頃には
超越をなし得た後
◆
280.コントロールドデリバリー
◆
かき集めた頭脳
駆使した情報網
何百日にも及ぶ内偵
掴み撮った幾つもの証拠
張り巡らした罠
さぁ、突入だ
言い逃れも言い訳も許さない
◆
281.ねずみ色が青色に、白色が桃色に、無色が赤色に、総て混ざれば虹色に
◆
昨日までのどしゃ降りとはうって変わった
雨上がりの今日
雲一つない青空が広がる晴天に
掛かるは次の扉への橋
七分咲きの桜の下で
学生生活最初で最後の逢瀬
少しぬかるんだ地面に残る水溜まり
映るはちょっと先の夢見る未来
◆
282.男と女だけじゃないのに
◆
人を好きになるってどういうことですか?
付き合いたい?
キスしたい?
それ以上?
結婚したい?
確かにそれらもしたい
けど、法律は感情では作られてはいない
人間が作ったのに
人間の為のものではないの?
我々は、人間ではないの?
ねえ。
教えて下さい。
どうしたら、
愛する人を好きと法律は認めてくれますか?
◆
283.主従関係なんて言わせない
◆
従ってる訳じゃない
同じ考えなだけ
だから好きにしたらいい
間違ってると思ったら止めるから
苦しまないで
悲しまないで
独りじゃないから
◆
284.原因も解決法も僕ならば
◆
失うことに怖がって逃げ出したとしても
幸せに怯えて手を振り払っても
探して掴まえに行けばいい
何度君が未来に臆病になっても
何度君が闇に迷っても
僕の為にそうなるなら
僕がそうすればいい
それだけだ
◆
285.変化は幸か不幸か
◆
自分で輝いていた
懐かしいと思うあの頃に
見えていた景色が
少しずつ見えなくなってきたのではないか?
ふと、そんな感覚に襲われる時がある
確実に目に見えるのに
不確かなもの
目に見えないのに
確実なもの
変わったのは、
変わってしまったのは、
周囲か
それとも
自分か
◆
286.純粋無垢故ならば悪逆非道さえ免責か?
◆
愛し方って人それぞれじゃない?
だったら
世間の価値観とか
他人から理解とか
必要ないでしょ
これだけ私を振り回して
私だって気が済むまで満足したいのよ
言いたいだけ言わしてあげる
だけど、周りの戯れ言なんて
貴方と愛しあえればどうだっていいわ
本当はプロポーズしたいのでしょう
そんなに焦らさなくてもいいのに
一体何が貴方を押し留めているのかしら?
私が貴方を解放してアゲル
◆
287.フロンティアチョイス
◆
流行が悪いとは言わないさ
だけど、
みんなが、
という理由だけで流されるのはどうかな?
果たしてそれは自分に必要かな?
一度考えてみようよ
自分に必要だったら手に入れようか
不要な理由をこじつけるより
必要な理由を確実にしよう
◆
288.証明には証拠が必要不可欠
◆
存在しないと
証明することが出来ないから
いないとは言えない
しかし
存在するとも
証明することが出来ないから
いるとも言えない
どちらも嘘とは言えない
◆
289.この世でもあの世でも離れはせぬ
◆
死ぬことは別れとは言わぬ
一緒に死ねぬのが別れ
それならば
一緒に逝こうか
◆
290.失敗は成功のもと
◆
成功例だけ取り上げて
採り入れたって無理
失敗例も考慮しないと
上手くはいかない
◆
291.全ての物事において
◆
土台を隙間無く固め
基礎を使いこなして
応用でトドメをさす
それが一番肝心要さ
◆
292.向き不向きなんて表向き
◆
向いてるとか
向いていないとか
そんなんじゃなくて
向くように努力する
◆
293.去り行く者が残す願‐モノ‐
◆
復讐なんて自己満足だ
当事者がそれを望むなら
それは仲間なんかじゃない
仲間なら自分のことより
相手を気遣うから
だから復讐なんて望まない
だから復讐なんてさせない
◆
294.宿命に追われて、運命に逃げられる
◆
逃げるのは至極簡単だ
けど
追いかけるのは難しい
何を
何処で
間違ったのか
回ってしまった歯車は
止めることも
戻すことも
出来やしない
◆
295.一心不乱貴方思考
◆
目を開けたら白を基調とした部屋
寝ていたらしくベッドの上
混乱する私の頭を過ったのは
貴方が刺された場面
ハッとして駆け出し
向かうは捜査本部
走って走って走って
息切れしながら開けた扉の先
捜査員の中に見つけた貴方
驚く貴方を尻目に
スーツをまくり傷を確かめる
傷が無いことに安堵する私とは対照的に
それはこっちのセリフだと焦る貴方
ああ、だから私は病院にいたのか
けれど良かった
貴方が無事で…
私の意識はそこで途切れた
無茶して
上司に怒られるのと
仲間から冷やかされるのは
これから少しだけ先の話
◆
296.だから自分を責めないで
◆
私の死の瀬戸際に
貴方は仕事を選んだ
だけど悲しくはないわ
苦しんでいるの分かってたから
ただ、悔しいだけ
貴方が頑張っているのに
私は頑張れなかったから
◆
297.もどかしいくてもあたっかくなれる
◆
態度だけじゃ伝わらない時がある
言葉だって傷付ける時がある
けれど超能力者でもない限り
人間は何か行動しなければ
伝えられない
傷付いて傷付けて
それでも分かり合いたいから
それでも大切だから
ぶつかり合うんだ
◆
298.幕を引いたのは諦めたからじゃない
◆
もういいんです!
そう私は叫んだ
真実を知りたかった
不正を暴きたかった
当事者である私とあの人は覚悟していた
けれど、あの人は殺された
証拠を持っている私は襲われ
庇った貴方は怪我をした
パニックを起こした私に
貴方はかすり傷だって笑う
けれど、もういいの
真実を知る為に
不正を暴く為に
今までしてきたけれど
無関係の
しかも貴方を
傷付けたくはない
だから、もういいんです
◆
299.諦めるのを諦める
◆
俺達が信じられないか
俺はそんなに信用がないか
叫ぶ男に女は悲しく微笑む
新聞社の社会部オカルト担当
そして事件の第一発見者
それが今の女の立場
一方、男は事件記者
事件を追う立場なのに
記事にもせずに女を問い詰める
殺されたのは女の元先輩
そして、女の家族に雇われていた元運転手
十数年前に
惨殺された政治家と妻
その娘と運転手は
戸籍も名前も変えさせられて
それでも息を潜めながら
集めた証拠の数々
しかし黒幕とおぼしき国家権力は
すぐそこに迫っている
女は諦めなければならなかった
男と会社は女と心中する気満々だったのだから
◆
300.ネゴシエーションなんて所詮騙し合い
◆
身内に無表情で
交渉対象者には表情豊か
暇さえあれば
捜査会議中であろうと
資料を読み漁り情報収集
交渉時以外は
周りが呆れる程の
やる気の無い言動
敏腕なのに
とても偏屈なネゴシエーター
ポリシーは
敵も味方も誰も
死なせないで傷付けないで
逮捕と保護をすること
そんなネゴシエーターが
押し問答を繰り返している身内同士に
一つの案を提案した
言うだけ言って出ていくネゴシエーターに
片方の身内は言う
さすがネゴシエーターだな、と
ネゴシエーターは振り返り
無表情で言う
交渉術を使わなくても
本音を言えば動いてくれる
だから嘘を付く必要はない