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671.カレイドスコープ
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夢を見た
なんてことない昔の夢だ
優秀だと言って連れて来られて白衣を着た奴等が俺に実験をさせる
誰もやったことがないことは失敗のしようがないんだとか
失敗かどうかも分からないから繰り返すんだとか
君の全てを知っているのは世界に僕等だけなんだとか
僕等の中の君を永遠にする為に殺したくなるんだとか
気色悪い戯言を聞きながら天狗になる暇もなく
ただムシャクシャする時があったから毎日毎日喧嘩をしていたけれど
もう今はしなくなったのは全て諦めたから
そんでもって何の実験かももう忘れた
どんな理由でもどんな実験でも
俺がやらされるのだから考えるだけ無駄だ
夢を見る
何度も何度も同じ夢
研究所だか研究者だかを壊滅させたのは
モルモットにされていた実験対象の大元の誰かさんらしい
その大元の誰かさんは俺にも怒りを向けて今ここで絶賛入院生活というわけだが
別に罪悪感も謝罪も必要ない
ただ無になっただけだ
なのに
夢を見てしまう
何度も何度も白衣を着た奴等との実験風景
息が苦しくてぼんやり目を開ける
空気が澄んでいてまた夢かと視線を彷徨わせたら
目の端に白衣が居て
驚いて反射的に能力で吹き飛ばしたら壁に何かが打ちつける音がした
胸を抑えて荒く呼吸していると
物音を聞いたのかドタバタと駆け込んで来たのは
見舞いに来たらしい実験対象の最終個体と保護者を自称する警察官
落ち着けと言われても取り乱してはいない
ここまでになるまでに何で何も言ってくれなかったとか
自分達には言う必要が無いからかとか
怒鳴り声がやけに遠くに聞こえる
最終個体は俺を見てオロオロとしているが
警察官は壁に吹っ飛ばした何かに声をかけている
「ああ、大丈夫ですよ。大きな物音でびっくりさせて申し訳ありませんね。」
立ち上がったのは俺の主治医
点滴台と一緒に吹っ飛ばしてしまったのは白衣を着た俺の主治医だったらしい
「脈を測りたいのだけれど、いい?」
なんともなさそうに近付いて来てしゃがんで俺の脈を測る
「まだ落ち着かないか。嫌な夢でも見た?」
淡々としているけれど目線を合わせてゆっくり問いかける声に
答えることは出来ないけれど次第に呼吸が落ち着いてくる
騒ぎを聞きつけて他の看護師達もやって来た
「イルリガードル台の交換と診察の予定変更をお願いできますか。流石に利き腕が骨折していたら外来の診察は出来ないので。」
至極問題無さそうに軽めのトーンで言う俺の主治医
確かに利き腕はダランとしていて力が入っていないように見える
脈を測る時も点滴台を動かそうとしている今も
利き腕とは逆の方しか動かしていない
俺が吹っ飛ばしてしまった時に腕が壁と点滴台に挟まれてしまったようだ
「ごめん。」
「ん?ああ、予備ならあるから気にしなくていいよ。」
「そ、それもそうだけど、それだけじゃなくて・・・」
「ん?」
「腕、ごめん、俺・・・」
悪いことをしたと思った
点滴台を壊したことも骨折させてしまったことも
けれどどうすればいいのか分からない
目が見れなくて俯いて握った手の震えが全身に伝わって
ごめんと繰り返すことしか出来ない
「何を怖がっているのか分からないけれど、ここは安全な場所だよ。」
しゃがんで言い聞かせるように
「治療して元気になる場所だから。」
優しく頭を撫でる
「怖いことはない。」
いつも無表情で小さいガキに対してしか笑わない
俺の主治医の優しく笑った顔を初めて見た
「医者って自分で自分を治せないのが難点ですね。
でも大先生はとても凄い先生なので大丈夫ですよ。
医者の不養生ですね、気を付けます。」
外来の診察に来たガキ連中にそう言って笑いかける主治医は
師匠的な先輩である大先生を得意気に自慢する主治医は
俺の主治医だ
どこまでドライブしてもブレーキ痕を付けてもベイエリアをレーシング
焼き入れで奥行きのある合金にならされた俺の性質は変わらないだろう
最終個体を守ろうとは決めたけれどそのやり方に違いはあまりない
最強の最恐じゃなくなっても俺の主治医は俺の主治医だ
いや最強の最恐じゃなくなったからこそ俺の主治医になったんだけど
夢は見る
同じ夢だ
けれどこれはもう夢だと夢の中で思える
この夢は過去だ
消せない過去だけれど
夢‐ここ‐には俺の主治医が居ないから
捕らわれて囚われる必要はない
取られたくない大事なものが出来て初めて命というものに執着が生まれた
行ってらっしゃいとまた戻って来るよなと見送るだけだったのに
行ってきますと待っているからと見送られるのも何だか良いもので
俺の主治医から俺だけの主治医になって欲しいと言ったら
どんな顔をするのだろうか受け入れてくれるのだろうか
そんなことを考えられるようになれたのは現実‐ここ‐に俺の主治医が居るから
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672.終わりにしたいのなら忘れてあげる
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捜査のために近付いて仲良くなった少し気弱い彼女がクロであると判明
彼女に自分の本当の身分と近付いた理由の起源が知られてしまうことに
仕事とはいえ世の中のためとはいえ感じてしまう活性化したこの悲しさ
ターンテーブルがスクランブルされて煮え切らない心持ちのせいなのか
特殊簡易公衆電話やルーレット式おみくじ器なんかの小物が置いてある
レトロ調を売りとしている店にガサ入れしても悪びれる様子もない奴等
レコードがかかった店内で御当地の書付を入れ込んだプチパースを探す
ふと視線を感じそちらに向けば彼女と目が合ったけれど逸らしてしまう
この期に及んで後悔先に立たずであるならこの仕事に向いていないのか
答えの出ている自問自答に落ち着きなさいと言う捜査員の声が重なって
その方向へと振り向けば彼女がカッターナイフの刃先を捜査員の一人に
向けながら持っているその手は大きく震えていて私が全部やったのだと
奴等の罪を全て被るようなことを言ってちんちくりんな注目を集めれば
だってさ刑事さん俺達は全く悪くないさあいつが全部悪いんだからさと
奴等はニヤニヤと笑いながら自供した彼女に全てを押し付けようとする
そんな逃げ得などはさせないと思っているのは自分だけではないけれど
しかし彼女の興奮は収まらないからとりあえず彼女の言葉を肯定すれば
彼女はホッとした様子を見せて手の震えも止まり緊迫した空気も和らぎ
カッターナイフをこちらへと渡してもらえるように手を伸ばそうとした
その瞬間に彼女の手が動いた先には会心の一撃でも痛恨の一撃でもない
今まで負った上に付けた傷は隠し通し隠し通したかった言葉のすべてか
彼女はなんの躊躇いもなく自分の白い首をカッターナイフで切り裂いた
ディフューザー薫り慌ただしい中で彼女が流した涙の意味はもう闇の現
◆
673.ヒートショックは誰のせい?
◆
彼が奴を人質にし再現をして
駆け込み寺の貴女に撃たれた
復讐を果たした彼は満足気で
助け出された奴は被害者面で
追われる事後処理ランウェイ
私は貴女へと銃を突き付けて
訪れる静寂の中暴露するのは
彼とあの人は昔からの親友で
私と二人はと古い知り合いで
私とあの人とは公認の恋人で
奴を守る為にあの人を貴女が
私の眼の前で射殺してしまう
彼はあの人の復讐の炎を灯し
貴女に近付いて誓った計画を
惜しみなく全て実行し続けて
あの時と同じ結末を選ぶ貴女
彼はあの人と同じ最期を迎え
今現在に至るわけだけれども
あの人は乱暴された私の為に
単純に奴を殺そうとしただけ
貴女は人質の生命を最優先し
安全を守った仕事をしただけ
彼は殺されたあの人の復讐を
死を持ち果たそうとしただけ
あの人も彼も貴女も何もかも
原因の私に巻き込まれただけ
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674.ナンデというハッキリクッキリしたリユウなんてナイこともある
◆
いつから付き合っていたかなんて言う必要性が全く見付からない
報告は必要でしたかと質問すれば必要ないと返答をもらったので
無視を決め込もうと興味津々に聞かれても冷めた目線を送るけど
あんな朴訥な人を何で好きになったんだとか散々纏わり付かれて
デレデレベタベタとボディタッチを繰り返され鬱陶しかったから
そっちの恋愛遍歴を産まれてから今日までを語ってくれるのなら
こっちも包み隠さず言ってもいいと言ったらサッと表情が変わり
途端に湯冷めしたように狼狽えてどこかへ消えて行ってしまった
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675.意外性の無いくだりで登壇するドアノッカー
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受話口からはコマ撮りの衝撃音
途端に通話が途切れるクランプ
緊急連絡が入ったと騒いで主流
状況はニアリーイコールで派生
松竹梅の千成瓢箪で押し掛けて
フカして執り成した僻地の垣内
選出されダシに使われた居留地
穴の開くほど見るFossil
押し掛け女房でも打ち解ければ
その気にさせて身重に狂喜乱舞
入知恵の灌漑にディスペンサー
かさ増しの替え玉は打って付け
試練かもしれんファイトマネー
書生に免許皆伝はミドルネーム
色々な出来事を元手に因数分解
都合の良い部分だけを継ぎ接ぎ
繋げて貼り付けペレストロイカ
小町算のストーリーを作り上げ
獅子舞に幸せになればなるほど
消えない罪の重さを実感すれば
バタフライクラッチ並の苦しさ
罰になってもバイオメカニクス
変わっていく誰かを置き去りに
思い残すことはないとばかりに
ジュークボックスに詰め込んで
皆どんどん先へホワイトアウト
誰かは皆とずっと一緒に居たい
前までみたいに今までみたいに
楽しい事をして過ごしたいのに
涙を堪えて歯を食いしばっても
名付けて頭を垂れる希死念慮で
誰かだけはこの先もここに居る
ヘコむ誰かのせいにしたいのか
誰かさんならやりかねないのか
誰かなら何とかしてくれるから
ウトウトとしてそう思ったのか
それやこれやどれでもないのか
地上波などレイク・エフェクト
旅籠は最早ペーパーカンパニー
遊覧船は廃線と化すペンネーム
パンフレットかリーフレットか
公訴時効のテイストで締め括り
秘密裏に任務を実行部隊が遂行
でっち上げたモノに審判が下る
実るほど頭を垂れる稲穂かなと
震撼した続報で万事休すなのか
漁火さえ天使のささやきの花弁
硝煙の臭いか起爆装置の雑音か
オリジナルのフォトグラメトリ
続きは不通になった向こう側で
◆
676.家主が去っても草木は生き続けるから。
◆
事件の捜査で関係者として元カノに会った。
背が高くてイケメンだったから付き合ったけれども、真面目過ぎてつまらないと一方的に捨てられた。
仲間に囃し立てられても彼女は素知らぬ顔で。
傷付けたいわけではないけれど嫉妬の片鱗も可愛いヤキモチも見せてくれないから、少々意地悪もしたくなる。
当て付けに元カノの言動に付き合ったけれど、ワガママな買い物に振り回されただけで。
結局ストーカーはでっち上げらしく、嘘を付かれたからと喧嘩を切り上げて元カノから離れた。
それから少し経って彼女が非番の日、身を潜めていたストーカーに元カノが襲われているところにたまたま居合わせて、持っていた鞄で振り回された刃物から庇ってくれた。
幸い彼女にも元カノにも大した怪我は無く、ストーカーも無事逮捕出来た。
ストーカーは本物で本当だったのに信じてもらえなかったと、ぶつくさ切れ切れにふてぶてしい態度で鞄ぐらいと言った元カノに、この鞄は彼女の母親の形見だと反射的に怒鳴ってしまう。
廊下まで響いていた大声にどうしたの?と、不思議そうな彼女に説明を兼ねて謝れば。
父親が母親に結婚記念日のプレゼントとして贈った鞄だから、母親の形見か父親の形見か難しいところだけれど、どちらにしても守ってくれたみたいで良かった、と。
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677.ししおどしの雨宿り
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猫なで声で俺しかいないとか甘い声で助かるとか、あの手この手の熱狂的な密命の千三つ、良き頃合いに事あるごとの手拍子、有り余る王道パターンのよくできた話。
いつでも相談してとニュートラルな立場で出向き、やっかみも流線型で優雅に、洒落臭く声を掛けて、勇ましく自腹を切って就任、いそいそと引き受けてしまうグレートな雑務。
大漁旗で落ち合い、建て付けを通り過ぎ、ひと煮立ちで渡り歩き、集大成もお目通しも鎹、連結した話の流れで、無造作に渡り合う、トンネル微気圧波の空気鉄砲は、兵(つわもの)の士気。
ゴッドハンド並に頼られているっていうよりは、いいように利用されて使われていることは、ショボい俺の頭であっても手に取るように、負けが込んだ見込み違いであると、いくらなんでも分かりきっている。
けれども、男たるもの女の子のお願いならば何事も謹んで受けて、鉢巻巻いて稼働を躍動して、約束を果たすのが鉄則であり、表彰ものの名場面のスピーチが出鱈目でも、きゃあきゃあ言われて悪い気はしない。
そんな下心見え見えの場面を彼女に確と見られているとも知らず、同僚がデレデレ鼻の下を伸ばしてと怒り心頭の鬼の形相で、ぐうの音も出ないコテンパンな苦情を言っても、頼られているのは良いことだと、人間関係を円滑にするのは大事なことだと、本人が楽しそうなのだからいいのだと、俺の経歴に傷を付けないように、彼女が宥めていたことも知らないまま。
五十日(ごとうび)に踏ん切りをしようとするのっけから、いっちょかみのタスクシェアを起点として、破局することなく伐採してもすぐに投入されて復縁の門出、ちょっぴりどころか壮大に膨れ上がる、体感的にも広範囲なムーブメントで、行きがかり上もサービスも含めた、世も末な残業。
そんな時に限って部署の都合上いつも俺より残業が多い彼女が早上がり、送られてきたメールに気付かないまま、彼女は待っていてくれたのかうたた寝をして、真心を込め腕に縒りを掛けてくれた、俺の好物ばかりの料理は冷めきっていて。
風邪を引くといけないからと起こして謝れば、そんなことは構わないから食事か風呂かと聞いてくれて、優しくスローインしてくれる彼女に、それ以上言えなくなって、無下に出来なくて、食べるとしか言えなかった。
家宅捜索の応援とか、在宅起訴の裏取りとか、違法水商売の摘発とか、デジタルタトゥーの保全とか、有識者風情の仲裁とか、オンエアのリハーサルとか、虐待サバイバーのすり合わせとか、経済効果の試みとか、世紀の大発見の汚染とか、反乱分子の身の潔白とか、射掛けたルーキーへのご祝儀とか、閻魔帳の深堀りとか、けちょんけちょんなトップニュースの倹約とか、企業秘密の遮蔽措置とか、御霊信仰の史料探しとか、悪どい拠点の内偵とか、廃墟化した別荘の封鎖とか、チェックインの延期とか、不届き者を削ぎ落とすとか、コテージを彷徨く奴の阻止とか、仇討ちする間取りのベッドメイキングとか、討ち入りの解任とか、ブランドの名刀が怨霊になってしまったという相談とか、秘境の警備とか、駐在の赴任とか、プレ体験の滞在とか、武力行使の無力化とか、抵当の清算とか、トライアルの訪問とか、邸宅への案内とか、古文書の抜粋とか、特需の図面を描くとか、経費精算の下地とか、スタジアムの忘れ物をフロントに届けるとか、天下分け目の戦いの両成敗とか、縁起を担ぐテーマを決めるとか、里帰りする要人の警護とか、ハプニングの応急処置とか、押収品の整理とか。
彼女と付き合う前からの八方美人ぶりは相変わらずで、俺のネイティブな日課みたいなもので、彼女を待たせてしまっても何も言わないから、言われないから、あるがままのナチュラルな俺の肩を持ってくれていると、勝手に思い込んで毒されていた。
そんなことが三度(みたび)続けば、こまめな連絡を取り合っていたのに、メールのやり取りは徐々に続かなくなって、それでも彼女は拗らせずに、俺の帰りを待っていてくれた。
ある日、帰れば食事の支度がしてあって、仕事が入ったからと置き手紙がおいてあって、夜郎自大に染み渡る冷たい静寂と温かい食事、その挟み撃ちは堪ったもんじゃない。
有難味に浸っていれば、そこからはお互いに忙しくなって、俺の方が落ち着いても彼女の方は忙しいままで、仕事柄こんなスムーズに経過が順調なのは珍しいのに、今まで以上にすれ違って法雨の刃紋が毟り取られていく。
そのせいでただでさえ短い彼女との時間が、めっきりくっきり減っていることに、部屋に明かりの付いている回数が負け越していることに、彼女と会えない寂しさに今更ながら気付いて。
加速度的に後味の悪い、成れの果てに成り果てたくはないから。
気が早いかもしれないけれど、いつもの河岸に誘うよりはリフレッシュとリラックスを兼ねて、二人三脚の一石二鳥に出掛けようと、彼女の非番に合わせて休みを取って、寝坊しないようにと準備を整える。
そして待ち焦がれた非番の日、久々に会えた彼女とのデートに俺は浮かれていて、ランキング上位の名物を食べ、ギャラリーを回り、出店で目利きを楽しみ、逸材のライブペインティングを鑑賞、湖畔からの眺望を堪能、鉦でバラードを奏で、逸品のティータイムと、立て続けのアウトプットは左手法の多彩な爆走。
煽りを受けさせてしまった彼女との時間の空白を埋めるかのように、熾烈な還元‐カムバック‐を滑り込ませても、特殊な生業だから丈夫だと、サドンデスの警報‐タイムアウト‐を感知しても、オールインした最終コーナーさえ、通例としてシカトしてしまったようで。
要は彼女が疲れていることに、具合が悪いことに、すってんてんと倒れるまで、気付かなかった、気付けなかった、服毒させてしまった過労の輪郭に、気付きたくなかったのかもしれない。
何で言ってくれなかったのと言えば、頼られるのはいいけれど残業はセーブしないととか、俺がデートを楽しみにしているからとか、裸一貫さえ爪弾きにして全体像をクリアにしたところで、その配合は俺のことばかり。
戦斧でのっこみのあの子達にとっては、俺なんて満場一致で逆転サヨナラを狙える、大勢の中の一人でしかないけれども、腹心の片腕のように圧勝で、俺にとっては代わりがいない、誰の代わりでもない彼女だから。
危殆に瀕する彼女の譜面のコンプライアンスは、俺が然る可き可変をして自決すればいいから、ここが天王山と発奮してトライ、ロータス効果のミックスを狙った、彼女の加湿器‐スタイリスト‐になろう。
今度からはちゃんと彼女のことを見るよと言えば、特に変わり映えしないし今更見るところなんてないと、なんて可愛いことを言ってくれるけれど、俺がしっかりと丹念に見なければならないのは、容姿でも体面でもなくて、ハザードに敬礼してしまうような体調だ。
どこにもいかせないから、彼女を死に追いやるスベテノモノを取り除き、郭清する為に闘い続ける。
お詫びにといってはなんだが何でも言ってと言ったら、視線を彷徨わせ少しの間の後、手を繋ぎたいと言われて、繋いではみたけれどもなんだか違う気がして、本当に何でも言ってともう一度言えば、今度はそのまま動かないでと言われて。
ソファーに座ったまま固まって成り行きを見守っていたら、膝に跨るようにして座ってそのまま抱き締められた。
顔が近すぎて照れくさい上に、この体勢はそうでなくとも理性が揺らいで、か細い糸がプツンと切れてしまいそうになるから、ラストストローを腐敗させないように、ガッチリと団結させてバッチリと化粧直し。
抱き締め返していいものか分からなかったけれど、取り敢えず包み込むようにすれば、あったかいと言って暫くしたらそのまま寝てしまった。
手は冷たくなかったけれども寒かったのかとか、そりゃ生きているのだから温かいだろうとか、思ったところで気付く、というかこんな簡単なことにも気付かなかった。
直々に身につまされる動きを止めた心電計は、御神木を以ってしてもはみ出してしまって、ストレッチャーさえ時差無く差し強る。
彼女の周りを経由する巡り合せは、寸分違わず冷たいだらけだったことに、成仏出来なくてももう体温さえ持ち去られて無いから、寄る辺無く命拾いして生長らえてきた、ヌードな心の筥にお悔やみだけが残って逝く。
押っ被さる殺伐は次元を超えて、粋がる発狂は未公開のラベリングで、厳正に一線を画してきた彼女が欲しいモノは、金でも物でも地位でも名誉でもない。
ギョッとするような、魂消るような、度肝を抜くような、鳥肌が立つような、バチバチとしてドスの効いた、そんな硬質なモノではない。
彼女の望みが命だったことに、生きていて欲しかったことに、風通しの良い吹き抜けで、泣く泣く手元に残るのは、天邪鬼に屈曲した存生。
彼女自らインストにした彼女の本望は、傍らに共存共栄する人のぬくもりだけ。
◆
678.果報は寝て待てなど程なく死に至らしめることだろう
◆
よそはよそうちはうちの習わしの掟の後遺症
そう言うなら高低差ありまくりの周りと比べんなや
好都合な隣接した近況報告だけ死ぬ気で取り出して
マブダチと絶好調で選抜したオンオフの話を広げ
部外者を入札して終売の告知は屯する集中豪雨
趣旨は言ったもん勝ちのイヤらしいオーディション
大台に乗った売れ筋の配列はハイテクな品揃え
リストアップしたコレクションはこの場を借りて
エッジの効いた屈指の最先端な社交場で即時披露
別条の僅差な差異をあーだこーだあきまへんと
下戸の晩酌は噛み応えのあるお品書きで角打ちの分布は
不適格に極度の落ちこぼれとシバくカットイン
歯ごたえのあるダメ出しの付箋をペタペタ貼りまくり
取り柄はアイデンティティの書き直し‐リニューアル‐
歴とした国際原子時にうるう秒で協定世界時の
肉眼の本編ではトップバッターになれないから
直訳し考案した自分達のみの基準の天文時で
凝ったパラレルワールドを妄想するしかない
つかこっちを比べる前にお前らはどうなんだよ
周りと比べれば赤点にすらならない内申の引責
自分達に都合の良いことは当てはめて前半戦に着陸
自分達に都合の悪いことは受け流して後半戦に離陸
結局自分達の思い通りの道楽にしているってだけ
こっちのことなんかこれっぽっちも考えていない
リスキリングのパシリで残留する老朽化に合掌
在るのはその手が有ると間口の広いお手軽な僭称の体現
自分達が受ける世間体自分達の変えない常識自分達が得る幸せ
◆
679.昨日の敵は今日の友
◆
貴方はくん付けであの人はちゃん付けで
貴方があの人の代わりを演じていて
あの人だと思っている貴方をちゃん付けで私が呼んでいて
貴方の存在は奉安して無かったことになっていて
一瞬で激変したのに一夜漬けにもならない貴方の役作りは
銀幕のスターよりもナイスショットと完璧で脱帽するよ
気付かないまま終わらせられたらどんなに楽だっただろうか
深刻で緊密なデブリを弱腰にもたもた風化させることなく
なんのなんのと舌の根の乾かぬうちに引っ括めて寸断させた悪路
手を取り合い執り行った死に目すら全部思い出したから
舗装されていない山道を杣人の居ない獣道をぼちぼちと進む
しくしくと梢が渡りはためく露払いのバリア
尾根を一望出来る憩いの場の御敷地に灯る龕灯
私を襲ったあの人と私を助けた貴方のダイアリー
あの人が眠る山頂で白いあの人を抱いて胸を詰まらせ
降りしきる雪を羽織って円やかな眠りに就こう
◆
680.オペラグラスにぐい呑みを双眼鏡にお猪口を
◆
奥が深い御料地の道の奥は陸奥で未知の苦(みちのく)の記紀であるかもしれない
燃え尽き症候群でも我慢してきたからこの日を迎えることが出来たのかもしれない
幸せの虎の巻が売っているとしても売っている物ではスカッと満足などしないから
幸せを取り込むのではなく幸せに取り込まれるある種の闇取引なのかもしれなくて
今この瞬間とても幸せでこのままこの幸せのまま終われたら良いなと思ってしまう
◆
681.真面目な不謹慎には猛反発を
◆
私はあの子を助けたかっただけと一念発起しただけだと
あの子が助かれば私はどうなってもいいって言うけれど
自分を犠牲にしている感をおいおいと出しているけれど
その行いの相手にとって全くもってどうでもいい訳ない
これまでにやってきた小癪な摩擦の負のスパイラルにも
これからやろうとしている空気が一変する大捕り物にも
その行いの相手にはまるきり関係のないことなのだから
◆
682.注意も指導もそこに感情が伴えばそれはもう自己中心的な自己満足でしかない
◆
臨機応変を求めるならばどんな結果であろうとも受け入れなければならない
自分の思い描いた結果通りにならないからといって否定してはならない
原因や説明を求めてはならない
それが出来ないならば
する気もないのならば
自分の思い描いた通りの結果になるように事細かに指示を出さなければならない
自分が完璧な指示が出来ないのに他人に完璧を求めてはならない
自分の言ったことも忘れるのに他人に言ったか言わないかを求めてはならない
自分が間違っている証拠を他人が示せないからといって自分が正しいとは限らない
他人が正しいことを認めなければならない
自分が間違っていることを認めなければならない
◆
683.君という名のスパイス
◆
君は僕の父親の無実を信じてくれた
君は僕が言うなら無実だと信じると
君が卑劣なストーカーに遭ってしまった時も
君が思い出してしまいパニックになった時も
誰も信じてくれないと言った君の言葉を僕は信じるよ
変わり種と言われる僕だけれど君だから頼ってくれた
だからかな
ホームパーティでも店でも自宅でもどこでも
どんな料理でも自分好みの味付けにしたくて
マイ調味料を持参しいつでも使えるようにしているけれど
君の作ってくれる料理ならどんなものも美味しく感じるよ
◆
684.相対するのはウォーミングアップ、想定外からが本番なのだから
◆
君にヤキモキ色々言われたところで、この関係が壊れるなんてことはない
嘘をつかれるよりも、秘密を暴かれるよりも、本当を信じてもらえない方が嫌だから
ダムのように堰き止めていないで、むしろ心の内を思いっきり見せて欲しい
これからも末永く心躍って、一緒にいるためにはどうしていけばいいか
簡単過ぎず難し過ぎずが、簡単なようで難しいけれども
話し合いながら生き方を尊重した上で、寄り添っていきたいと思っている
◆
685.原状回復の死活問題‐コード・ブルー‐
◆
私には姉がいる
血の繋がらない姉の家は所謂危険にカテゴリーされる家業を営んでいて
姉の祖父と数人の弟子達と一緒に住んでいる
私の母が早くに亡くなり男で一つで私を育ててきた父は
家業の弟子とその敵対する人達が起こした諍いを止めようとして巻き込まれて
私の眼の前で亡くなってしまった
身寄りの無くなってしまった私を姉の祖父は引き取り育ててくれた
だから私は姉をお嬢ではなくお姉ちゃんと呼んで
門前の小僧習わぬ経を読むかの如く怒らせると一番怖いとカテゴライズされるまでになった
姉は一人娘だったけれども夢があって姉の祖父を含めた家業全員が応援してくれていて勿論私も応援していて
だから姉は家業を継がないことは皆知っているから
私は出来るならば私が継ぎたいと思っている
こんなことでは恩返しにはならないだろうけれども
骨を埋めたいと思わせてくれた家族以上の家族だから
怪我を頻繁にしてくる弟子達の為に医者になりたいけれども
進学するお金よりも二足のわらじは到底無理だから
私が決められない継ぐ継がないは別にして進路を家業の手伝いに決めた
だけど捨てたはずのパンフレットを見られてしまって
お金は出すと言うけれど家業のことは考えなくていいと言うけれど
本音で医者になるより家業を継ぎたいと言っても隆盛な遠慮だと思われてしまう
「実の姉妹ではないのだから」
姉が滑らかに言った言葉に気が立っていたその場は静まり返る
きっと血が繋がっていないのだから家業のことは気にしないでという良い意味なのだろう
けれどその切り口は今の私にとって悪い意味にしか聞こえず額面通りに受け取ってしまう
「そうですねお嬢」
久しぶりにというか初対面以来口にした敬語とお嬢という敬称
ごもっともであって併呑する好悪なんてものはないけれど
姉ではない家族でもない世継ぎにもなれない私の真価は値崩れたただの居候
次の日口を噤む気まずい朝食を終えて学校も終えて足取り重く公園のベンチに座って
ぼんやりしていたら気付いた時には暗くなってしまっていた
帰ろうと思って立ち上がってふと思う
「どこに帰る?」
どこに帰ればいいのだろうか
郷里なんてものはとっくにない
勝手知ったるシュプールはかき消えて
思考はドミノ倒しで座礁する
私の帰りたい場所はどこにもなくなった
帰る場所も辿り着く先もないお手上げ状態の当ての無い旅
痛切に活路を見出して向かった先は両親が眠る遺構の野辺
人っ子一人いない空間で傍らに座ってもたれ掛かり一緒に眠りにつこう
◆
686.優しい人の落とし穴
◆
例えば体調不良の時
無理しないで休んで良いよとか明日すればいいから早く寝なとか言ってくれる人はとても優しい人だ
だけど言うだけ言ってその人はいつも通りではないか?
いつも通り何もしないでオヤスミと寝てしまわないか?
しかも食事に至っては代案で簡単なモノで良いと言っても作らせて自分では何一つやらず片付けず
寧ろ簡単なモノで済ませた自分偉いとか相手を気遣える自分優しいとか自画自賛のオンパレードではないか?
相手を気遣うように見せてその実治ってからで構わないから全部やってもらう前提ではないか?
優しい言葉を言ってくれるだけで十分?
相手が自分の思い通りに動いてくれるのを期待するのではなくして欲しいことがあればちゃんと言葉にして伝えた方がいい?
家事ややることが溜まってしまっていてもそう言える?
しんどくても治っても元気でも結局全て自分がしなければならないんだよ?
仕事なら残業続きに大変だねと言いながら仕事を積み上げて先に帰るようなもの
口ではいくらでも綺麗な言葉で寄り添えるよね
言うだけの口先ばかりで行動が伴わない人はこちらが期待も何もしなくても言いっ放しがストレス
因みにその人が体調不良の時は優しい言葉をかければ鬱陶しがり気遣って行動してもお礼も言わない
察してと言っているわけではない
ただ自分ならば相手の為に何かしたいとか何か出来ないかとか思わないのだろうかと思うだけだ
今の体調は?
何か変化は?
水分はとれているか?
食べられるものは?
汗はかいていないか?
着替えは必要か?
室温は適温か?
薬は?
病院は?
仕事場には連絡したか?
優しいだけの人ではなく思いやりのある人は相手の立場になって行動しようとする人
顔面蒼白のグロッキー状態では慰めにも励ましにもならない
言葉の顔ぶれは変わらず行動には移さない
溝を埋めるどころか蟠りを未来永劫広げる一方
柔らかな風合いのイメージに騙されるな
全くもって似て非なるものだ
結局はどれだけしてもらえるのかということかもしれないけれども
してもらえなかったのに自分が相手にしてあげたいとも思えない
何故ならそういう時に人間の本質が出るからだ
人に優しい言葉を掛けれるのは素晴らしいことだけれど
的外れが怖いなら聞けばいいから
相手の負担を減らしたり肩代わりしたり
どうすればいいかと行動出来る人であって欲しい
◆
687.オリジナルブレンド
◆
はみ出た毛色の規格を認めてくれないから
由々しき事態だと受け入れてくれないなら
玉手箱は真空パックして自ら外に作るまで
戦意喪失‐アゲインスト‐の輩を悟っても
私を度外視して二人だけの世界へ逝こうと
慰謝を手早くゲリラを興起した訳ではない
オーラルな他人の意見に流される柔軟性で
手荒に扱われ撃墜させられ偏重した風聞に
幽閉‐クリーニング‐されるぐらいならば
三人にとっては好き勝手にルビを振られる
この粘着質な世界はただのトランジットで
過去を責める必要も未来を嘆く必要も無い
違和感を我慢して軛の歪みが生まれる前に
私を引率し招致すれば未知数でも練り直し
風向きが変わって手厚い市民権を得られる
激アツな闘志を燃やして風の噂にも総力戦
超絶稀覯本の孤立効果をリカバリーすれば
天寿を全うしなくても併記してリスタート
べらぼうな利器で興じる人殺と言われても
扱いやすい遜色な引き立て役と言われても
相対ズケズケといちゃもんをつけられても
二人が愛し合っていて完全無欠だったこと
私しか知らないから私が貫き通した手記を
認めて(したためて)創刊し伝えなくては
本当は私も後追いしたかったのではないか
いや私なら分かってくれると掛目を考えた
だから何も言わずとも一足先に逝っただけ
二人の幸せそうな死顔が最期に見れたから
土被り道草途中の束の間の別れなのだから
心中お察しせず悲しくはない寂しくもない
誰も信じてくれないと荒み怒りがわくのに
涙が止まらない理由が分からず仕舞いでも
怯むことなくサブリミナルなシンパシーを
込み入った入江にかまくら風の秘密基地は
懐石料理が並ぶ宴会の宴席にガンを飛ばし
粒ぞろいである二人の親友で居て良かった
術中にはまったように惹きつけてやまない
沸き立った雨音の子守唄‐リサイタル‐は
雑念が削がれるほど根強くインフィニート
赤い糸を手編みでペアリングへ結んだ二人
画廊には去り際のカット割の絵面が出展し
刃毀れした偏愛の功罪が混在する死屍累々
門外漢な通説は天敵であり廃絶に止を刺す
賽の河原に良心の呵責など愚にも付かない
点描の不法投棄で失踪宣告‐ミッシング‐
◆
688.晴間の乱気流+波間の乱反射=体内時計は規則正しく
◆
お正月
バレンタインデー
ホワイトデー
春休み
ゴールデンウィーク
七夕
夏休み
お盆
夏祭り
花火大会
ハロウィン
シルバーウィーク
冬休み
クリスマス
大晦日
誕生日
入学式
卒業式
成人式
結婚式
新婚旅行
結婚記念日
出産
子育て
陽気な予期でせっかちハイペースに増えていき
イベントや記念日には貴方の仕事は忙しくなる
出来ることならば貴方と一緒に居たいのは山々
けれども同じ時間を過ごせないのは仕方がない
ダイエットでスレンダーになりイメチェンして
人相のアップデートと体形のアップロードは済
プロテウス効果でパーソナリティはリバウンド
出入り業者に注意を引き付け現生を荒業で盗品
ワイドショーはゴージャスな設備のお立ち台で
しゃがれ声をハスキーボイスとしてピットイン
ガタがきている形態模写であっけらかんと出題
コンテンツのキャッシュは行列していい気味と
焼け太りを連取したらハイソな栄華で人心掌握
たんまりと再開発されて株価は急落して御用命
たたき上げの屋号はエリートより現役の手捌き
蜘蛛の子を散らす様でも昔取った杵柄の離れ業
出オチからチェーンソー片手に確信に迫る寸劇
陣頭指揮のシュミレーションは完璧な御一行様
その時期に貴方と一緒に居られるということは
事なきを得て世の中が平和だということだから
望んだ幸せをあげられないと先般来悩む貴方へ
少しの嘘と多くの誠のアシンメトリーでよろし
一日だけの記念日より一時だけのイベントより
毎日貴方のこの手がこの身体が温かい方が良い
◆
689.氷瀑の焚き火
◆
転けそうになった女性を助けようとして
奇しくも抱き締める形になってしまった
そんな姿をバッチリ君に見られてしまった
女性とともに慌てて事情を説明したけれど
君は表情の一切を変えることはなく
そうですかの一言だけで済まされた
モラルのデューディリジェンスは社会の窓みたく迂闊なハメ手のフィニッシュで
情夫‐イロ‐を彷彿とさせるダブルブッキングな状況‐デモンストレーション‐
怒っているかどうかなんて確かめる勇気もなく
怒っているだろうからと謝るタイミングもなく
恐る恐る怒っているよねごめんと謝れば
なんのことですか?と一糸乱れぬ表情で
あの時の件だとあの時以上にドギマギしながら言えば
助けただけですよね?あの時そう言いましたよね?と
文学的なレポートのような教育が行き届いた返答
レジリエンスなどではない別段変わらない表情だ
それはそうだけれど・・・それをそのまま信じてくれたの?
なんで貴方の言った言葉を疑う必要性があるの?と相見える
革新的なトリビアやオリエントなジンクスまでを
何事も疑うことを仕事にしているのにも関わらず
モダンに嫉妬をするわけでもコンサバに浮気を疑うわけでもこれしきと陳情するわけでもない
鶴の一声のように俺の言った言葉を君が疑わずに信じてくれたことに一目散に歓呼したくなる
◆
690.黄金株は一日の長を気取り大黒柱である秘仏を衛視する
◆
そろそろ終わる頃かと思って
出迎えに行けば酷く驚いた顔
迎えの約束なんてしていないと言われたけれど
約束なんてしていなくても迎えくらい来ますよ
私が祓い屋になった理由は特に無い
窶れて辞めたいと思ったことも無い
強いて言うなら彼が祓い屋を生業にしていたからかもしれない
誘われて傍に居たくて彼の為に祓い屋になったのかもしれない
遊び駒を活用し浮き駒に手ありの邪魔駒を弾き出して
離れ駒を引き寄せ不動駒をくすねて死に駒を虜にする
一樹の陰一河の流れも他生の縁でも祓うのは仕事で妖とは対等
彼から私への暗号資産ほどの手解きから私から彼へは温故知新
憎むことが戒めであり警策であるから決して馴れ合わない
世代交代の目安には刺客や賂(まいない)の拍子木が伴う
のらりくらりと嘘を信じ込ませることは得意だけれど
いざ真の本当を信じてもらうことは不得意で滅法弱い
本当のことを言っても端から信じてもらえないなら
最初から嘘でも嘘から出た実でも構わないと諦めて
相手によって態度を変えているのではなく
相手に合わせて態度を変化させているだけ
見る方向によっていくらでも別人に見えてしまうのは
囮となり相手の罠に嵌まらなければ誘き出せないから
人から信じてもらえないから人を信じなくなって
けれど信じてもらって初めて信じることが出来る
縁を作って掟を守って契を引き渡して後はよろしくしよしと託せる人がいるから
見えなくなって先駆けて廃業に追い込まれても報復に怯えずに千切って散蒔こう
彼が祓い屋でいる限り祓い屋は私の天職だから私にその能力があって良かった
実証実験のような獅子奮迅の能力提供の対価を頂けるとしたら彼が居ればいい
私が彼を好きでも彼から私と同じ気持ちが返ってくるとは限らないと分かっている
一門の為にヒトリで全てを背負う当主の彼は私の想いには応えられないだろうから
破る可能性があるような約束なんてものは彼とはしたくなくて
そのように決めたということだけは格言的に決まっているから
彼と約束なんてしないし彼と約束などしていなくても
私は彼の傍に居ますからと彼の緊張をほぐすかように
それではまるで彼のことが好きみたいだと確信を持たれたとしても
そうですよといくらなんでも好きではない人に好きなんて言わない
年の瀬にぎゅうぎゅう詰めにした特典に釣られてしまうような
沿道の往来の人垣で判断するようなそんな不誠実ではないから
私が彼を想っているだけだから
私が彼の傍に居たいだけだから
◆
691.癒合剤の分泌‐プラットフォーム‐
◆
彼へ恋人っぽいことをしたいと思ってバイト仲間に相談すれば
内緒でサプライズプレゼントをあげたらいいと提案してくれた
誰かにましてや恋人にプレゼントをあげるなんて初めてのことだから
選ぶのを手伝って欲しいと言えばトラディショナルだけれども
ステップアップにアミューズがバージョンアップする私を喜んでくれる
たくさん悩んでバイト仲間を付き合わせて買ったプレゼントを
彼に見付からないように隠して催すその時を待っていれば
得も言われぬ感情が増殖してバレないようにと気を引き締める
彼が帰って来て開口一番に今日何をしていたのか問われてしまう
まさか複合して態度に出てしまっていたのかと思ったけれども
サプライズだからと思い直してバイトをしていたと嘘を付いた
短時間のバイトをしてからバイト仲間と落ち合ったので完全な嘘でもない
それなのに彼は確信を持っているかのように壁際へと迫られて
取り調べのように追い詰められて普段の彼とは別人のようで
エキサイティングしていく彼に怖さを感じて振り払い出て来てしまった
必要が無いから退化したのか不必要を削ぎ落としたから進化したのか
そんな暗い箱庭の中で光を探して歩き続けることも諦めて
差し込む光が無いまま一生が終わると思っていたのに彼が現れてくれた
迷惑でも厄介でもないけれどあんな箱庭へは帰りたがっていないのに
忌み枝を白い目で見るような人のところへ探していたとしても帰せない
未来に前に進みたくても過去が足に絡まって重くてもつれて
結局現在に留まるしかないのに勇気ある後戻りは前進だという
正しいことをするなら本当のことを知るしかないから
正直になってもらわないと守れないとホーダーの銃口を
人質になった私から自分に向けて字面さえ限定させる
手柄だって損せぬ人に儲けなしと利点にはならない
闇の世界に居て散々迷惑かけて勝手だけれど無理矢理は嫌だと思った
出会ってから今まで私のことをアーケードのように守ってくれたけれど
アメニティに心地良く寝転んで永久指名を望んでしまったから
気宇壮大‐アナキズム‐な彼も呆れてしまったのだろう
同棲していたけれど帰りたくはなかったしこれ以上彼に甘えるのは
きょうだい児に半球睡眠させてエクイティを望むに等しい
彼が居ない仕事の時間を見計らって置いていた私物をすべて引き払う
すべてと言っても中型のキャリーケース一つ分で元々持ってきたものが多い
そして分化する前のアンフォラな固有‐ルーツ‐へと戻る
合鍵を持ってきてしまったのはプレゼントをどうするか決め兼ねているから
私からのプレゼントなんて迷惑なだけだと分かっている
けれど彼の為のものだからあげないまま捨てる気にはなれなかった
ホテルの清掃のバイトをしていたらホテルから出てきた彼と鉢合わせ
見知らぬ女と居るようで邪魔しては悪いと思い知らないフリをして
タイミング良くバイト仲間が私を呼ぶからその場を立ち去ることが出来た
彼の元へ行ってから接触の無かった闇の世界のメッセンジャー
情報‐ドキュメント‐をホワイトペーパーのようにしなければ
基本的に表の世界や裏の世界には非干渉で放置してくれる
たとえ知らずに開削して領域を侵したとしても悪質でなければ
駄弁るようなサテライトでクロージングを貫いてくれる
私に会いに来たということはそうとは出来ない事態らしい
どうやらある女が首を突っ込むどころかあまつさえ利用しようと
ゴミ屋敷はオールマイティなゴミ捨て場ではないのにも関わらず
簡単すぎるとつまらないし難しすぎるとやる気にならないと反復し
借金をチャラに出来なくても置きに行って完済してもお釣りがくる
まるで歩行者天国のように犇めく移民を格安で隊列を組ませ縦断
人の行く裏に道あり花の山のセルフスターターを気取り画策して
戦わざる者は勝たずと高飛び込みさせて無用で不要な苦難を生む
おっと合点承知の助とはいかないけれどもノータッチというわけにもいかない
しかもその女が彼と共にホテルで鉢合わせした彼の同僚だったら尚更
彼が担当している事件の裏で糸を引いている黒幕が同僚の女でもあるから
岩肌のアトラクションにぞっこんでドットのフレイルに気付かない
見慣れ過ぎていて感じ取れないということを指の関節を鳴らして
ガルウィングのスライス並ではあるものの警告する為に
カーボンニュートラルのミストを買って出て事件解決のお手伝い
彼は私が介入していたことに驚いていたけれど事件は無事に解決して
同僚の女にも卵は一つのカゴに盛るなということは伝わっただろうから
プライスレスなファンファーレの区切りもつけないといけないだろう
日の目を見たプレゼントといらなかったら捨ててという置き手紙を残して
お揃いのチャームごと合鍵を返して再びスリップストリームでも始めようか
キャリーケースを引きながら今晩の宿を探していると
人気のない裏路地にも関わらずヒールの甲高い足音が足早に
振り返ると同時に勢い良くフェンスに押し付けられ
あんたのせいでと逆ギレした香油香る同僚の女に刺されたようで
どうやらカンペのようにナイスシュートとはならなかったらしい
指紋の付いた凶器も放り投げてそのままに逃げてしまったから
闇の世界のメッセンジャーに連絡をして通話記録などからは辿れないように
デバイスのコールドウォレットをパスコードでデイトレードする
病院で意識を取り戻せば知り合いの裏の人間が通りかかって
意識を失って血塗れの私を見付けて救急車を呼んでくれたらしい
彼にも連絡したようで病室に居るけれど経緯を聞いている間も
気まずそうに視線をあっちこっちに向けるだけで終始無言の状態
おやおや随分と賑やかでと闇の世界のメッセンジャーが現れる
災難でしたねとお茶目に感情をシャッフルして喧嘩を売る話し方
知り合いの裏の人間よりも先に彼が飛び出しそうだったから
手で制しながら後始末に手を貸さなくてもいいのかと聞けば
後処理と後片付けはこちらでするのでゆっくりとお休みください
知り合いの裏の人間と彼の分のケーキをお見舞いとして置いて帰って行った
あの話しぶりなら同僚の女は消されることが決定したようだ
命だけではなく世の中からその存在‐バーコード‐ごと消される
バリアフリーの導火線を持ち合わせている闇の世界はそれだけ恐ろしい
見向きもしないなら見向きもされないなら何をしたって構わないだろう
などと考えてはいけないそっくりそのまま返されるどころではなく
外戚の機構‐パビリオン‐なんかよりもドキュメンタリーはノーミス
ケーキの数を見てもどこから情報を得ているか分からないのにノミネート
お礼とケーキを差し上げて知り合いの裏の人間は帰り彼にも帰ることを促す
帰るどころか置いてきたプレゼントを差し出されてやはりと
わざわざ返しに持ってきてくれたのかと思って受け取り
そのままゴミ箱に捨てれば彼は慌てて取り出して謝られる
プレゼントであるネクタイを嬉しそうに楽しそうに選んで
見知らぬ男もといバイト仲間と笑っているところを見てしまい
誰なのかと聞くつもりで問いただせば嘘を付かれて
答えになっていなくて否定もしてくれなくて
嘘が分かるということは本当が分かるということで
火花を散らす嫉妬で迫って滅茶苦茶にしてしまいたくて
そんな感情がリバイバルしながら焙煎‐キャラメリゼ‐
同僚の女にホテルに誘われてよさないかとも思ったけれど
心細いならと絶対に大丈夫だからと寄り添ってくれて
無責任でも一番欲しい言葉をくれるから思い余ってしまって
あの場面がちらついて離れれば楽になれると思ったけれども
自身の息子は役立たずで所謂朝チュンにはならなくて
もっと好きになるだけでそれを自覚するだけだった
事件が解決して家に帰れば机に置かれたプレゼントと手紙
理由が分かって目から鱗が落ちながら誤解が解ければ
周りを見渡す余裕が出たのかキャリーケースごと私の私物が無くなっていることに気付いて
急いで探しに出たのはいいけれど行くところが分からなくて
あちらこちら走り回っていれば知り合いの裏の人間から連絡が来て
病院に直行して経緯を説明されて現在に至るようだ
警察や探偵でもないから犯された罪を暴く必要はない
ただこちらのちょっとしたお願いをきいてくれるだけでいい
なんてリテラシーを利用するだけ利用する語呂合わせ
都合の良い玩具にしたいから強引な引き止めもする
転換性障害へ心を込めて嘘を付かなければならなくなるのは
思い通りになってはくれない自分の心へ思い通りにする為
ガラスのハートが粉々に砕け散って破片が更に傷付けても
命じられれば何でもするからと言って続けたいと打診したのに
拒否出来ない立場だからこそ自由にしたくて解雇したのはそっちと
用心深い子が懐くなら見ず知らずでも信用にたる人物で
支えていると思っていたら背中を押されていたようだ
俺の傍に居てくれてありがとう
貴方が傍に居させてくれたから
私はここに居てもいい?
俺がどこにも行かせない
◆
692.お先真っ暗の塩梅は木漏れ日の蓄光‐ホリゾント‐
◆
遠距離恋愛で今週末も会う予定だったのに運悪く風邪をひいてしまった
伝染ってしまったらいけないし言えば心配をかけてしまうから
用事が出来たからと言って会えないことをメールで伝えるしかなかった
上がっていく熱に浮かされながら会いたかったなと呟かずにはいられない
気が付けばいつの間にか眠っていたようで時計を見ればもうすぐ昼になろうとしていた
食欲なんてあまりないけれど薬の為にも何か食べなければと
働かない頭で体を起こせばリビングからカタっと音がした気がして
扉を開ければ居ないはずの彼女が居るからああこれは夢なんだろうと思い至る
こんな都合の良い夢を見れているならば現実には出来ないことをしたい
もっとベタベタと引っ付いていたいけれどそんなことを言って引かれたらと思うと
そんなのは絶対に嫌だから言えなくてもちろん態度にも出せなくて
スキンシップに対して非常に淡白であると思われている現状
格好悪いと思われるような情けないと思われるようなそんな欲望も
自分が見るだけの夢の中ならば思いっきり甘えてもいいだろうと飛びついた
パァッと花が咲いたような笑顔のまま抱き付けば会いたかった寂しかったと零れ落ちる本音
受け止めてくれて抱き締め返してくれて優しく背中も撫でてくれる
温かいお粥を作ってくれていて少しでも食べられますかなんて
子供みたいに食べさせてと我儘を言えば食べさせてくれる至れり尽くせり
誰も居ない人恋しく寒々しい空間に彼女が居るだけでこんなにも暖かい
水分をとって薬も飲んで眠りにつけば現実に戻っても我慢出来るだろう
目を開ければ日が傾き始めていて熱は下がったし現実にも戻ってきたようだ
起き上がろうとしてふらついた拍子に時計にぶつかり落としてしまう
大きな音と増えてしまった動作に溜息を付いて仕方がないと拾おうとすれば
扉を開けて現れた居るはずのない彼女とばっちり目が合って
なんでと驚き過ぎて固まってしまった俺に彼女は少し言いにくそうに
用事なんかではなく浮気ではないかと疑った同僚が面白がって
溜まった有給を消化していいと上司まで許可を出したから
断りきれなくてというか最早上司命令でこちらに来たらしい
用事が出来たわけでも浮気していたわけでもなく俺が風邪だったから結果的に来て良かったと
おでこに手を当てて熱は下がっていそうですねお粥まだありますけど食べられますかなんて
まだという単語に加えて夢の中と同じ聞き方をされて夢は夢ではなかったことに我に返る
色々変なことを言ったと思いますけど風邪のせいですから忘れてください
なんて女々しいことを言って蒸し返すことも出来ずに食べられますと返事しか出来なかった
それからというもの彼女からチラチラと視線を感じることが増えた
気になって尋ねてみても何でもないと気にしないでと繰り返すから
俺には相談出来ないことですかと聞けば仕事のことだからと言葉を濁される
普段仕事のことであればはっきりと断ってくるから彼女らしくない
俺からの視線を十二分に気にしつつも彼女からは本音を隠した言葉の数々
やっぱり風邪で弱っていたとはいえ熱に浮かされていたことを差し引いても
あり得ない夢の続きだと勘違いして我を忘れた態度に引いてしまったに違いない
このままの状態は精神衛生上よろしくないからきっちり鎮火しなければならない
気持ち悪いと言われるのを覚悟して言えば気にしていませんからなんて気遣い
全くもって気にしていないと言い張りながら醸し出す雰囲気はすごく気にしていて
繕うことに失敗してしまったと動揺していることが手に取るように分かる姿に
こっちまで動揺してしまって語気が強くなって言い合い寸前
黙ってしまった彼女は言葉を探すように無言のまま視線を巡らせる
視線を落として小さく言われたのはあの時みたいに笑って欲しい笑いかけて欲しいと
どうやら夢だと勘違いした時に会えた嬉しさを爆発させたあの笑顔のことらしい
彼女への言葉が足りない俺と俺への気持ちに鈍感な彼女
お互いにもう少し甘えて寄り掛かってもいいのかもしれない
◆
693.執念がブール・ノワゼット
◆
私と約束した貴方とあの人
あの人をサポートするという名の目的を阻止する為に貴方が作った部署に異動する
キャリア組の彼の経歴に傷が付かないように巻き添えになって累が及ばないように
同じキャリア組でありながら仕事には理解がありながら不満なんて無いに等しいのに
仕事仕事で家庭を顧みなくなって結婚生活が破綻してしまったと嘘を付いて
対外的には降格処分の異動となってしまうからその前に切り出して彼とは別れた
あの人の暴走を止められない貴方に依頼された関連する事件が発生して
秘密裏に部署から離れて行動していたら捜査をする中で彼が負傷して輸血が必要に
何も知らされていない部署の仲間から緊急を要すると何十件も留守電が入っていた
急いで病院に向かって看護師に同じ型だから問題ないと言って最大限に輸血を
驚く仲間は彼と私が夫婦だったことも幼馴染であることもまったく知らない
小さい頃に白血病なった私へ彼から骨髄移植を受けたことさえ話したことはない
輸血が済んで彼の容体が安定したら目覚める前に仲間と会うことなく消える
その足で捜査本部へ彼の上司にあたる指揮官に前もって準備していた退職届を提出
懐かしい写真が並ぶ捜査資料を横目に説明することなく立ち去ろうとすれば
「貴女は何を知っているの?」と背中に問いかけられても「私は何も」と言うしかない
「何も知らされなかったから」あの人に約束をさせてしまったのは小さな私だ
鬼退治をした桃太郎はクーデターでも反逆者でもなく私にとってはヒーローだから
キャンピングカーを乗り回して延焼させながらの鬼退治は私が願ってしまったこと
保管員を油断させ気絶させて保管庫から拳銃を持ち出してあの人の下へと向かう
庫裏へと乗り込めば捜査の別働隊として動いていた仲間の一人が撃たれていて
あの人に銃口を向ける私に大丈夫だからと宥めるようにもう一人の仲間が言っている
仲間を撃ったのはあの人ではなくあの人と争っていた事件の渦中にある鬼だ
脈々とマンスプレイニングする鬼を逮捕したのは駆け付けた部署の他の仲間と捜査員
貴方はあの人を庇い私に撃たせないようにするけれど私は銃口をあの人から決して逸らさない
良い家族になれるかなと抱かれた疑問に良いか悪いかは私が証明になるよと抱いた希望
私から家族を奪った悪い奴を絶対に捕まえてと私が言ったから貴方もあの人も約束してくれた
法を守らせる人が法を犯してでも証拠を捏造してでもあの人は逮捕することを優先してしまった
貴方は私のせいではないと言ってあの人は自分のせいだから私に殺してもらえることを願う
それでも向けた銃口が震えて引き金を引けずに撃つことが出来ない理由は何よりも簡単明瞭である
◆
694.ほろ苦くも芳醇な浸透圧
◆
俺は華道の宗家の長男でたとえ構想を練ることもなくやっつけにしたとしても副産物並に数々の賞を取ってしまって天才的な才能だと釣り広告同様の健筆に持て囃されてはいるものの順にいては逆を忘れず逆にいては己を捨てずと出来栄えのフィット感の差別化が日進月歩したところで俺自身は華道というものがそもそも好きにはなれなかった
冒頭から改定も改修も無い歴史にしがみついて凝り固まったプライドの塊である宗家とイケメンでありモテてメディア受けする弁舌とプロデュース力があるものの華道の才能そのものが無い次男と華道の才能はそこそこあるものの努力はしないし伸び代も興味も無い気触れて金食い虫の三男では腹の中が見れないならば外側に見えるものだけを信じていればいいなんて思えない
周囲の期待に応える為に溢れ出す気持ちを押し殺して稽古や修行に励んで応えようとし続けて政略結婚じみたお見合い結婚をして数年は良かったものの金を取るなんてがめついと文句を言うのにタダでしてもらう厚かましさには都合良く気付かず口だけは出すお嬢様な妻の奔放ぶりと日に日に増してかけられる跡継ぎの繁殖‐プレッシャー‐が段々と重荷になって有症を言い出せないのにハッキリと拒む勇気もなくて妻とはそういう気持ちにならないのに仕事を言い訳にして避ける回数が増えていく
そんな折に肩を回すコミューターの息抜きと称して型破りに対抗意識を燃やすお稽古場の超低周波な監視から抜け出して着流しのままの散歩の途中で自動販売機に寄り掛かって帰りたくないと座り込んでいたところへ声を掛けられたのが私服ではあるけれども警察官だというハイグレードな厚情を持った一品一様である彼女との出会い
それから時々話をするようになったけれども決して浮気などではなくあくまでも散歩のついでに東屋に立ち寄るだけで意味のない他愛ない話でも俺にとっては意味はあるから彼女と過ごす時間に意味があるから味方になってくれていると思えたからこそ普段素直に感情を態度に表したり出来なくてこぼせない愚痴を言えたのかもしれなくて俺が求めているのは安息の地で自分を理解してくれる特別な存在なのだろうか
周りの誰かにとっては立ち止まって見えていても貴方の中では高い壁や長い坂を登っているのだから引っ張ることは出来ていないかもしれないけれど慕われていることは分かりますから自分を卑下しないでくださいと疲れて果てている時に干渉されすぎると口煩いと感じてしまうからこそ聞き役に回ってそっと寄り添ってくれる彼女には何もかも取っ払った本音を話しやすい
会えば時間がくれば別れてしまうから嫌だけれど会いたいから彼女を待っている日が増えていき会いたいなら言えばいいと優しい彼女は言ってくれそうだけれど会いに来たら既婚者である俺に気を遣いすぐに帰ってしまうから会いたくないという矛盾を抱えながらも癒やしを投与して衛生管理が整い勇気も貰ったからきっと明日まで頑張れる
そうパンケーキシンドロームを騙して誤魔化せるのももう限界で度牒からバードウォッチングされた生育不良な活動弁士の事例には誰も気付かなくて質疑応答すらテンパってままならないから妻に離婚を吐き捨て前室に置き去りにして華道からも妻からも逃げたくてサブウーファーで増強されたあの空間の何もかもから離れたくて降り出した強めの雨の中で速度を早めながら彼女の家に初めて向かう
未明近くの時間帯に加えて全身ずぶ濡れな俺に驚く彼女を抱き締めて抱きたいと言えば彼女は何も言わずに寒くないのに震える俺の身体を抱き締め返してくれて玉の緒の蒸練‐ハーバー‐に浸り明け方近くに目が覚めれば彼女は朝食の用意をしていて謝って済む問題ではないよなと言ったら出来るなら謝って済まして欲しいと困っているようで仕方がなさそうに笑ってくれた
帰らなければならない頃になっても雨はまだ降っていたから差していってとビニール傘を彼女に貸してもらってタイムスリップしたようなアーシーな雰囲気がおしくらまんじゅうで噴霧されて触れ回っている中を一人歩けば自然とかしめになってくれた彼女と離れ難い気持ちが強くなる
食べ比べされる家‐アイランド‐へ帰らなければならないけれどもそこに一番近い歩道橋から白む街並みを眺め一息ついて茶摘みの機を待つのは夢のまた夢と思うのをもう止めて枯渇した棋風を踏ざんしても目が黒いうちにと今一度覚悟の決意を固くして節理をボロカスにして破談の絶妙手にて新たな一歩を踏み出そう
『侘び寂びで風流な華燭の典を彼女と』
しかし彼は帰りたくなかった家に帰ることはなく踏み出そうとしたその一歩すら地面につくこともなく人気のない歩道橋の階段から転げ落ちてそのまま亡くなり争った形跡も無く雨で滑ってしまった不運な事故死だと警察が結論付けたけれども雨で流されてしまったのか碌な証拠が無かったせいとも言える
それから数年後にとある事件が起きて捜査一課に配属されていた彼女は彼を失った宗家一族と相見することになりその事件を解決することが彼の事故死の真相を解き明かすことに繋がるとは彼女はもちろん関係者の誰も思いはしなかった
事件を調べていく内に彼女と宗家一族の次男に接点があることが判明してしまい捜査員達から説明を求められてしまう
彼女と次男との出会いはエビングハウスの忘却曲線よりも早く彼の為の盛大なお葬式に気付かれないようにと遠くからではあるもののじっと見ていた彼女を次男が覚えていて産婦人科から出てきた彼女と鉢合わせたからでハッキリと断られたにも関わらず未婚の母‐シングルマザー‐となってしまった彼女を今まで支えてきたのは惚れた弱みが大部分を占めるからかもしれないと兄貴を抜けなかったけれども今のところ他の誰にも抜かれていないと笑う次男は年齢を重ねたこともあって彼にそっくりでとても良く似ている
次男は今回の事件以前から彼の死に疑問を抱いていて彼女にも伝えたけれども記録を見ても不可思議な点は無く彼に何があったのか必ず見付け出すと強く言えなかったのは事故だと信じている自分自身に彼が誰かに殺されてしまったと言うのと同じだからでそうは思いたくなかったからでそれでも事件が解決に向かう為には彼の事故死を調べることは必要不可欠だった
自分を端女以下だと言わんばかりの彼の言動に屈辱的な恥辱を受けたのだからそれ相応の行動に出るのは当たり前でこの生活を続けれないのならば白河夜船の交易が出来なくなるのならば彼なんて不要だから真後ろに人の気配があるとも気付かずに支えるどころか背中を押して突き落とされるとも知らずにケーススタディばりに前へ進もうとした彼を担架やストレッチャーさえ不必要になる事態を今回の事件も含めて引き起こしたことは仕方が無いことだと開き直る
あまりにも身勝手な理由だったからか残りの宗家一族へ次男が今までのことを諭せばオーソドックスはスタンダードではないと受け入れる姿勢を示してくれて泥棒猫と詰っていた人物が居なくなったお陰で彼女のことも認めてくれて驟雨な事件は幕を閉じた
因みに次男の勧めでDNA鑑定を受けて関係性を明らかにしたことで死後認知が認められて戸籍に父親つまり彼の名前が記載され彼の遺志と生きた証に彼女が流したのは彼と出会って見送ったあの日から初めての涙だった
◆
695.脱却の岐路
◆
貴方は姉が好きだと思っていた
家業を継ぐのは姉だと強く推していたから
貴方が姉に向ける視線はとても大切な人を見る目だから
でも幼い頃から見てきた舎弟として慕っているだけだった
すぐには信じられない私に貴方は見たことがないぐらい慌てていて
叶わない恋と思っていたのはお互い様だったんだね
◆
696.折り紙を開いて広げればそれはきっと千代紙
◆
とある組織に乗り込んで逃げ惑う奴等ごと壊滅させたけれどもコンビナートの盲点から振り下ろされた何かを寸前で躱して蹴り飛ばせばジャストミートして角材と一緒に女を吹っ飛ばしてしまった
しまったやり過ぎたと思ったけれど倒れ込んだ女はフラフラとしながら静止するように言っても聞かずに今度は鉄パイプを振りかぶりながら向かってくるから無理矢理気絶させるしかなかった
彼女は組織の構成員ではなく組織が乗っ取った工場の元々の持ち主の娘で長年組織下にいたことで自我をブレインウォッシングされてしまい侵入者つまり乗り込んだ俺達を排除しろという命令を受けて遂行していただけで彼女自身には全く敵意が無かった
敵意は無いことが分かったもののブレインウォッシングが深く入り込み過ぎていて彼女と意思の疎通があまり取ることが出来ずにこちらを見てくれることも少ないし気が付けばそっぽを向かれている
ある日病室に行けば居るはずの彼女が居なくて逃げ出したのかと思って仲間と探せば中庭に一人佇んでいて何をしているのかと思えば空を見上げていて視線を辿ればそこには虹が出ていた
ああそうか彼女はこちらを見たくない訳でもそっぽを向いている訳でもなく病室の窓から見える空を見ていたのだと理解して少し肌寒いから風邪を引かないようにとしばらくの後に声をかけて病室へと戻る
しかしながら別件で追っている今回とは別の組織が使った爆弾を作ったのが彼女であった為に暴騰した技術力をその組織だけではなく他の組織にも狙われる可能性を考慮して監視という名の保護を目的として俺達と一緒に住むことになった
あれから少し経った今では表情はまだまだ変わらないものの俺達の言うことを聞いてくれたり返事を返してくれたり俺が料理をする過程を興味深く前のめりにじっと見るまでに感情や動作が俺達の目に見える形で出てきてくれているのはとても良い傾向である
◆
697.画風の演目を新装にしなくとも
◆
彼の新人時代子供だった私は事件に巻き込まれ家族を失って塞ぎ込んでしまう
彼は仕事の一環だったのだろうけれど彼に助けてもらって持ち直したのは事実
写実の画壇をカッコいいと憧れもあって画商に挙手して彼と同じ職業に就いた
事件は未解決のままだし銘柄は見切り席の動議だけれどもグロース株のPER
いつか解決出来る日を願って住む世界‐エンブレム‐が違っていても峠を越す
彼と同じ職場に異動することが決まった時は荷が重そうよりも嬉しさが勝った
彼が私のことを覚えていないのはポーリングメディウムのように当然であって
シングルファザーでもディフェンシブ株のようにしっかりとしたレジデンスで
洗練されたファビュラスなフォレストを築き上げていて私には良いこと尽くし
家族の事件が掘り起こされて解決まで自分の手で捜査出来るとは思わなかった
そしてあまつさえ家庭がある彼が私を好きになってくれるなんて思いもしない
みすみす共食いのデットヒートにもならないからこそ自信を持って負けられる
無血のコネクションを繋げられたのは案ずる必要は無いという子供達の差し金
ワープも搬入も立役者の決を採るまでも無く理屈上手の商い下手へ顕在が決済
私も彼も彼の子供も彼の妻もお互いが大好きなら往々にしてそれは家族である
◆
698.双胴船‐インタラクティブ‐を根ざす
◆
旧家の家人が残した秘湯へ刀匠の検認はバーナム効果で寝付きをデッサンし感涙
太陽系の占星術へのお使いはグラディエーターとなって双方向の操舵で行き違う
確証を得られないまま戦隊は健常からオサラバしてアーレンシンドロームに立腹
しかしながら怪しさ満点の動きだったのはフルイドとして操られてしまったから
疑われる要因となった変な時期の異動に関しては人材補給が目的ではあるけれど
直隠しにしたかった急速な希望を以前からしていた理由は力になりたかったから
概略さえ無事では済まないけれどもナンセンスな俗名には追認して方を付けよう
◆
699.無知の知の環状
◆
文化部の健脚な記者はレコメンドな取材の途中で目抜き通りにて一人の刑事と出会う
捜査一課所属なのにも関わらず無為な変わり者だと言われていて一癖あるその刑事は
歴史あるお家はんと栄えある御寮人が節季払を多用し過当競争する芸達者なこの街で
検知‐センサー‐と技法‐シアター‐を持ち独特のアンジュレーションを築いている
専横な風来坊のように所在不明をエスコートするような交わらない取材と事件なのに
流氷のように眉目麗しいフィールドサインに寄港するのと同じような小気味よい甘露
フリー素材のように出会う回数が増えていき仲良くなるのにそう時間は掛からなくて
フォーリーのクエッションはインバルブメントをカラーリングし淡い想いを抱かせる
吟ずる世界観や一説の憧憬は史実や公記の再興より引き込まれるのは無きにしも非ず
愛他性の有効射程距離が広すぎて自滅しかねない刑事へ色違いのクラシカルな御守を
容姿端麗な夜鷹と一夜の夢の色事も良妻賢母の後家と密通の夜伽も水揚げを猫騙しで
しまりのない顔で戸別訪問して粉をかけ品評してはハシゴして連チャンで買い叩いて
空前絶後にして嗜好の名器を湯通しの身請けで接収ししたり顔で素気無く収得すれば
低迷する身代は左前で物乞いの占有屋には際物を謀反の矮小な禿には収容して折檻を
告知事項ありと伝来し課金を補強させ開かずの間の誕生秘話の専売‐ネタ‐を追って
ごめんくださいと支持勢力の情報筋へインタビュアーとして接近し突端の核心に迫り
難関と目される政財官の軍資金の立証責任を果たすべく負けじと奮い起こす成立要件
要職にある暴君からの圧力では無く貪欲な悪童が忖度しただけで捉え方の違いなだけ
金の亡者である与野党へシームレスに配慮したら政争の具はメリハリのある複雑さに
新興勢力と絡まり合ってウォークイン帝国の勢力図がぶつかり合ってウォークスルー
隆起した岩礁を掘削し瓦礫の中から採掘して宝物庫の出銭である助成金の関門を突破
一席設けた団欒はフットインザドアのフランクリン効果にて筆が乗って焚書をREC
停戦へ譲る気がないならば断念さえ奪うまでと鉄砲玉へ前金で策を打ち袋叩きで排撃
疑いようのない事故と出来すぎた話で暗礁に乗り上げても白旗は上げず気を取り直し
追い剥ぎによる厄災から難を逃れられる救命ボートと脱出ポッドはリンクが欠如した
むくつけな看守の居る保安検査場を擦抜けたお揃いの傍証が制札の特記事項の矛と盾
馬酔木の布教‐ネタバラシ‐を奉納して鎖状に鎖錠を重ねて念には念を入れた委任状
逆襲の配陣は協働にて歴史的な背景がある環濠な防護壁に抜け穴‐ポットホール‐を
地殻変動並みの砲撃にも正念場と頷ける提議を推進して予備軍にさえ警鐘を勧告する
群を抜いた切れ者の弁護士を通じて関係各所と連携を取りつつ総合的に判断した上で
慎重にお答えすることを検討させていただこうと周知の事実にも関わらず色めき立つ
リベンジマッチに嘶いて齧り付いたトレイルは裏拍を感知した親身‐ホットライン‐
カットバックのスイッチャーによる棋譜の航路図は現地集合の解散でホワイトナイト
クリフハンガーで緞帳を下ろすことなど床上げに際した比喩話法の漫談よりできまい
耳を凝らす刑事は寂声の奏法にて豪傑な技巧‐ヴィルトゥオーゾ‐一択である記者へ
波打ち際の臨界で復位の帰途に着いたファーレとファビュラスな音程で端唄の合奏を
◆
700.風説の流布‐バッシング‐の相場操縦‐ハルシネーション‐にて定跡を算定‐ラウンドアバウト‐
◆
「何か用?」
第一声‐イントロ‐からフレンドリーの欠片も無いヘルシーな声で出れるのは、相手が誰か分かっているから出来ることなので、ナンバー・ディスプレイも五十間道のようによりけりだ。
「特段、用というわけではありませんが・・・」
「大した用も無いのに掛けてこないでよね。ってゆーか、まさかそこに彼はいないよね?」
「・・・いませんが。」
捜査一課の刑事である彼の事件現場へ、異色で特例な立場を活かして情報数理の散瞳剤‐ダウンウォッシュ‐と化している友達。
「管轄でもない捜査に捜査権が無いのにも関わらず首を突っ込んで、お気に入りのベストセラーな小説家気取り?そんなこと繰り返していたら、あの人に目を付けられて部下の人みたいに、懲らしめる為のスキャンダラスめいた左遷になるよ?あの人、友達がいない上に、融通が効かないとか頭が硬いとか小っ酷く言われているみたいだし。真面目なんだからもっと不真面目になればいいのにね。まあ、その前にあんな希薄な器量の人とは絶縁した方が良いかもね。それと鈍(なまくら)にならないでさ、訓練だって必要なことなんだから。逆上せ上がって無精にならずに、桜の代紋を背負っているんだからね。ちゃらんぽらんに身が入らない姿じゃなくて、ちょっとはハードボイルドな動態を印象付けて見せてよ。ってか、こんな一進一退のセールスマンみたいな問答はいいのよ。これから忙しいんだからもう掛けてこないでよ。分かった?」
爆上がりした突然変異‐ボルテージ‐そのままにガチャ切りした後、拒絶するように電源を切る。随分な言われようですね。と強張った顔の友達が、相身互いな部下に言われていることを私は知らなくていい。
「いつもと大分雰囲気が違うようだけれど?」
「それのせいで興奮したのかもしれませんね。まあ、内々の潜在に溜まっていたものがとうとう出ただけの話ですから。」
今日この頃にご起立くださいと言われるのと同じように突き付けられたそれは、癖の強い言語の経済性をひしひしと、投影‐ボリューム‐を上げて熟睡‐コールドスリープ‐の定住へ一押し。
「あれだけ言ったんで、当分掛けてこないと思いますけど。何が目的ですか?」
「話が早くて助かるけど、落ち着き払っていて手放しで喜べないな。」
「慣れている訳ではないですよ。社是の延発にぼられるのが嫌になっただけです。」
異次元‐アジリティ‐で流行り病‐ソナー‐な友達、そこに左遷されてきた門下生‐ボビングヘッド‐のフリをした部下、入れ墨‐インフェルノ‐を飛散させていくトンチキの監察官、大口を叩いて母国の登竜門を先陣‐ノーチェック‐で切る彼。
頭と尻尾はくれてやれとか辛抱する木に金がなるとか言葉はあるけれど、もうちょっと上昇志向とか出世欲とかがないものかと、ちょっとやそっと爆増してもなんちゃってグルーヴでは、夢オチのお値打ちの美貌‐メランコリー‐。
白熱した区画‐リーグ‐で鎬を削って可処分所得の昇段‐ベースアップ‐って、高望みっぽいし名品‐アップグレード‐なんてどだい無理な話だから、しがない平はシュワーベの法則に当てはまらず不作‐アウトレット‐では、おまんまにも困ってタジタジと飢餓真っしぐら。
ユーモアな花魁にも精通した女郎にもなれずに、大門を打つ上得意へ揚屋や引手茶屋からの花魁道中をお歯黒な河岸見世から良うござんすねと眺めるだけだし、左遷でくよくよ悩まれるのもあれだけれども、下火になった入れ物の納屋から舞台袖で、捜査会議を傍聴して神出鬼没に家計簿の隅をつつくような習性は、パラパラ漫画の疑問手をパレートの法則でそれきり甘んじているのも、ね。
「性に合わない額縁‐レイライン‐は、常若の思想で黄金期‐イノベーション‐するのが一番。託児所‐パラダイス‐を拡大コピーに縮小コピーして、そのモデルケースとなるのでしょう?」
ゲインロス効果からのポジティブサンドイッチでそう問えば、答えは明白で行きたいところがあるとMVP‐ハネムーン‐のような足取り。
監察対象との対局に限らず、悪ふざけすら厳重注意を超えた屋内測位並の精度で、事前審査‐インスペクション‐と精緻で沈着な友達をなくす手‐ベンチマーク‐と、株式公開買付けの時報‐ペカット‐を鳴らしても、ビギナーにもアマチュアにもなれやしない機外‐ライフスタイル‐だから、監察官としての熟達した高名な威力‐コシ‐の力量不足。
揉み手の言うがままにつゆだく‐ウィット‐を効かせた代替案や献策を出しながら、不正の一つや二つリスナーから見逃して、カチッサー効果で世相を味方に付けて、腐食を撹拌するだけの技量が無くて、限定効果の無力感はカルチャーショックを生む。
「誘拐してその失態を押し付けようとしたけど、まさか仲間になってくれるとはね。あいつの顔を想像すると笑い転げたい気分だ。」
庇を貸して母屋を取られるとも知らないでと、バイオフィルムにしてやられる監察官を思い描いて、うしうしとリズミカルに奴は言う。
しっかり内見‐ロケハン‐した寂れて生痕‐オンボロ‐で放ったらかしにされたテーマパークの御用品‐アスレチック‐は、顔パス並みの付き合いのある私が裏切る手筈の意表を突いた詐取‐レボリューション‐を樹立したから、誘拐の監禁場所‐マリーナ‐から誘き出して始末する為の緞通‐ティスティング‐場所へと変えられた。
ここならセコい諸藩な番所も無いし見間違いも無く、混線皆無で好き放題に送電配電‐ストーリーテリング‐出来て、堰堤‐センターコンソール‐へ車幅‐パックス‐を遠因‐コネクティブ‐すれば、遠浅の運河からの三叉路の土塁にて混戦しなくても、小高い見附から天孫降臨の氏神にて皇祖神に即位出来る。
これからアップセルを狙う主力の席主である奴のスートのシンボルは、ハートにクラブを加えてスペードにすればダイヤが手に入るから、サミットのブースティングをここから始めよう。
「さあ、箱推し‐ファイナリスト‐のご到着だ。」
ゴールデンピリオドになるとは思いもしないから、仮眠‐カロリー‐すら寝る間も惜しんで駆け付けたのは、目の前に並んだ友達と部下と監察官。
犯人の確保より人質の保護を優先する人達であるから、配慮すべき表現が一部含まれるけれどもオリジナリティーを尊重しそのまま放送してみせて、真しやかな唐衣としましょうか。
「見切り千両、損切り万両って言うでしょ?一度ヤッてみたかったんだ。」
互角以上になれるそれを手渡して貰って、見たり聞いたりしてきたモノの肩慣らしの腕試しとして、流鏑馬‐コンシール‐の成功体験を重ねることにしよう。
斜め手前に居る監察官と部下を横切り、渦列の一番後ろに居る友達にだんだん近付くことで、ナイーブに外す確率を軽減して、弾丸を引き付けることで最初に狙うは、ユニットの豆知識‐ボーカル‐である友達。
「確実に、一発で、仕留めなくちゃ、ね?」
心臓の音‐スピードメーター‐が引っ切り無しに加速する。
「多分他の武器は持っていないっ!!」
「よっしゃぁ!!」
「なっ?!」
奴の背後から現れた三人組の内の一人は彼で、絶命へと導く弾着などいらないし空撃ちさえ不要だから、しゃがみ込んで頭の上で握り締めたままになっている拳銃の暴発を防ぐ。
「これ、どうすれば良かったっけ?」
「こうすれば。もう、大丈夫です。」
友達は固まったままの私の手から拳銃を受け取り、安全装置‐セーフティ‐をかけて「預かります。」と言って力強く頷きながら笑ってくれた。
部下と監察官は私を守るように盾になり、彼らを援護出来るように矛となり、連携を持って奴を逮捕出来たのは、何もアメージングなミラクルなどではない。
原木の榾木に濛々した切れ端をトッピングして葺けば、風味が増してそれらしい構図が見えるから、心証の雪崩現象が発生してラベリング効果の朝三暮四‐トリックショット‐なんて、出廷‐ハザードマップ‐より想定していないから。
殿堂入り‐ライセンス‐内の持っている知識‐ターミナル‐の中で、織元である奴の図案に当てはまるものを提示しただけで、得を取るか損を防ぐかしか考えていないのだから、夜光塗料‐フリンジ‐であるそれが私の正解とは限らないのに、勝利を確信して繁栄に油断した瞬間に、感光体‐ディーラー‐を見誤った奴は、友達達‐メーリングリスト‐に敗北したのだ。
「これはどういうことだ!?」
押さえ込まれながらも大声で喚いて、嵌められたことに今更ながら気付いたのだろう。
友達になったのはチャリティだとか、監察官だから近付いたのだとか、とりわけ引っ掛けられたことにムキになって、明け透けに監察官を罵って、どうしても自分が優位に他人を見下したいのだろうか。
同じ年齢で同じ職種で同じ部署で同期なのに、恋愛のABCすら分からないような奴に、格別‐タイトル・ロール‐であり重畳‐ヘッドハンティング‐される側の自分が負け組‐ペレット‐な訳が無いと思っているらしい。
一言半句を踏み倒して一言一句に寄与させる船を漕いだままの奸雄な画法は、譬えなくともなんて驕傲な高札場なんだろうか。
実際に起きた出来事をもとに手織りを制作して、隈取な誤植を識字の賢人に託した暗号を解いてもらって、拳銃を手渡してもらえるように仕向けて、奴の後ろに彼がいることを確認して、尚且つ悟られないように友達に近付きながら逆に奴から遠ざかる。
確実に一発で仕留められたもとい逮捕出来たのは、取り計らった八方睨みの抗戦が先行逃げ切り型の精算だったから。
友達は迷惑がられて悪目立ちしているけれども抜からないことは認められているし、部下は左遷を路肩だと思って仕切り直し入念に肩を温めているし、彼は猟虎の皮なところがあるけれど所管は鉄扇だし、監察官は靡かないところこそ折り紙付きなんだし。
王冠の中敷き‐ライフラフト‐が満座の魔鏡‐インソール‐だなんて百害あって一利なしで、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえと同じぐらいにお呼びでない。
出世なんか誰も望んでいないし、監察のお世話になる事態なんか皆分かっていてやっているし、処分だってせいぜい懲戒免職だし、あれもこれも言いたいことは4モーラよりも山程あるけれど、とりあえず一言だけ。
「私の友達を馬鹿にしないで。」
一つの事実にも幾人かの真実があるように、彼らの正義が許容出来る祭典だから、私と私の周りへの影響を最小限にしようとしてくれているから、だからこそ私は捜査情報を聞くことは無く、命が関わらなければ多少の無茶をしてもらしいとしか思わない。
そして私は一見の価値ありな聖人君子などでは無く、私は私の正義を貫徹‐ベット‐して動いているだけだから。
「さすが、私の友達。」
「声色がいつもと違いましたし、彼がいないことを確かめていましたからね。それで何かあったのだろうと。」
確かに友達に電話をしてかつ彼に用事がある時、彼が友達の側にいるかどうかを確認する。
それは友達が彼の分野に首を突っ込んでいることが多いからで、彼に電話をかけ直すよりも早いし、お互いに聞かれて困る話なんてしないから。
聞かれて困るのは彼ではなく、私の問いに答えてくれたから確信が持てた、友達との会話を他に聞いている人間が居るのを奴に勘付かれるのを防ぐ意味もあった。
「捜査権が無いのは権利が無い、つまり脅されている。ベストセラーな小説家はお気に入りではありませんが、陸の孤島を題材にしています。島流しのこの部署ともとれますが、孤独や味方が周りに居ないという意味なら、犯人と一対一であるということ。あの人に目を付けられるのあの人は監察官のことでしょうが、監察官はこちらで一緒に居ましたから、おそらく人物ではなく役職の方。でしたら、目を付けられる人物は奴一人だけ。懲らしめる対象は部下ではなく監察官の方で、未来形ならば失態を招かれる可能性がある。左遷は強制的な異動のことですから、どこかに連れていかれそうになっている。あの人に友達がいないのならば、確認出来る範囲には奴一人しかいない。小っ酷く言われているのを知っているのならば、言っている人に心当たりがあるということで、奴のことを指している。不真面目とは性格のこと以外ならば、不真面目になるには罪を犯せばいい。脅しが情報の類でなければ、何かしらの武器を持って脅されていることになる。希薄な器量と絶縁ですから、抵抗出来ないとか逃げ出せないとかで、孤立しているということですかね。鈍(なまくら)にならないで訓練だって必要ということは、脅している武器は刃物ではなく拳銃の可能性が高い。ちゃらんぽらんに身が入らない姿やハードボイルドは、ぞんざいに扱い暴力的な行為も辞さない雰囲気である。動態を印象付けるというのは、その場から動くような仕草を見せている。一進一退のセールスマンの問答とは、行くところがあったけれども奴に脅されて行けなくなってしまった。しかし行くところの通り道であるその場所は、職場に聞けば分かることを伝えようとした。これから忙しいのは、やはりどこかに行くから。もう掛けてこないでは、拒絶でないとしたら、掛かってきてはマズいか掛けられないかのどちらか。電源が切られてしまうから、GPSが使えなくなるとか。案の定、位置情報が追えませんでした。」
私が咄嗟に考えた暗号の数々に監察官と部下も友達同様に、肝が太いと敬服してくれるけれど、彼だけは自身に解けない小難しい暗号なんか寄越すなと言いたげだ。
「前から気になっていたんだけど、監察官とどうして友達になったんだい?」
部下が不思議そうに聞いてきたけれど、そんな理由‐モノ‐一つに決まっている。
「監察官に友達がいないと言われたから、だけど?」
「え?!それだけ?」
「そうだよ。」
何やら全員驚いているけれど、何も難しいことなんてない。
友達になりたいから友達になった、それだけの話だ。
「でも、声をかけてくださいましたよね、あの時。何故ですか?」
立場的にも性別的にも世間的にも、秘めなければならなかった関係と想い。
事件に遭い終えた生涯と閉ざされた未来に、現在進行形で思いを馳せていた時。
掛けられた声は高くて若くて、幼さが残る顔立ちだった。
「ああ、それは。写真を見ている顔が、父親が母親の写真を見ている顔にそっくりだったから、つい。監察官だって言われてびっくりしたんだよね。」
「お前、もし危ない奴だったらどーするつもりだったんだよ。」
「危ない人じゃなかったからいいじゃない。」
「そういう問題じゃねーだろ。」
悪戯っ子のように笑って彼と言い合っている姿を見ながら、監察官は思い出した。
最初にかけられた一言が「大切な人なんですね。」だったことを。
671.カレイドスコープ
◆
夢を見た
なんてことない昔の夢だ
優秀だと言って連れて来られて白衣を着た奴等が俺に実験をさせる
誰もやったことがないことは失敗のしようがないんだとか
失敗かどうかも分からないから繰り返すんだとか
君の全てを知っているのは世界に僕等だけなんだとか
僕等の中の君を永遠にする為に殺したくなるんだとか
気色悪い戯言を聞きながら天狗になる暇もなく
ただムシャクシャする時があったから毎日毎日喧嘩をしていたけれど
もう今はしなくなったのは全て諦めたから
そんでもって何の実験かももう忘れた
どんな理由でもどんな実験でも
俺がやらされるのだから考えるだけ無駄だ
夢を見る
何度も何度も同じ夢
研究所だか研究者だかを壊滅させたのは
モルモットにされていた実験対象の大元の誰かさんらしい
その大元の誰かさんは俺にも怒りを向けて今ここで絶賛入院生活というわけだが
別に罪悪感も謝罪も必要ない
ただ無になっただけだ
なのに
夢を見てしまう
何度も何度も白衣を着た奴等との実験風景
息が苦しくてぼんやり目を開ける
空気が澄んでいてまた夢かと視線を彷徨わせたら
目の端に白衣が居て
驚いて反射的に能力で吹き飛ばしたら壁に何かが打ちつける音がした
胸を抑えて荒く呼吸していると
物音を聞いたのかドタバタと駆け込んで来たのは
見舞いに来たらしい実験対象の最終個体と保護者を自称する警察官
落ち着けと言われても取り乱してはいない
ここまでになるまでに何で何も言ってくれなかったとか
自分達には言う必要が無いからかとか
怒鳴り声がやけに遠くに聞こえる
最終個体は俺を見てオロオロとしているが
警察官は壁に吹っ飛ばした何かに声をかけている
「ああ、大丈夫ですよ。大きな物音でびっくりさせて申し訳ありませんね。」
立ち上がったのは俺の主治医
点滴台と一緒に吹っ飛ばしてしまったのは白衣を着た俺の主治医だったらしい
「脈を測りたいのだけれど、いい?」
なんともなさそうに近付いて来てしゃがんで俺の脈を測る
「まだ落ち着かないか。嫌な夢でも見た?」
淡々としているけれど目線を合わせてゆっくり問いかける声に
答えることは出来ないけれど次第に呼吸が落ち着いてくる
騒ぎを聞きつけて他の看護師達もやって来た
「イルリガードル台の交換と診察の予定変更をお願いできますか。流石に利き腕が骨折していたら外来の診察は出来ないので。」
至極問題無さそうに軽めのトーンで言う俺の主治医
確かに利き腕はダランとしていて力が入っていないように見える
脈を測る時も点滴台を動かそうとしている今も
利き腕とは逆の方しか動かしていない
俺が吹っ飛ばしてしまった時に腕が壁と点滴台に挟まれてしまったようだ
「ごめん。」
「ん?ああ、予備ならあるから気にしなくていいよ。」
「そ、それもそうだけど、それだけじゃなくて・・・」
「ん?」
「腕、ごめん、俺・・・」
悪いことをしたと思った
点滴台を壊したことも骨折させてしまったことも
けれどどうすればいいのか分からない
目が見れなくて俯いて握った手の震えが全身に伝わって
ごめんと繰り返すことしか出来ない
「何を怖がっているのか分からないけれど、ここは安全な場所だよ。」
しゃがんで言い聞かせるように
「治療して元気になる場所だから。」
優しく頭を撫でる
「怖いことはない。」
いつも無表情で小さいガキに対してしか笑わない
俺の主治医の優しく笑った顔を初めて見た
「医者って自分で自分を治せないのが難点ですね。
でも大先生はとても凄い先生なので大丈夫ですよ。
医者の不養生ですね、気を付けます。」
外来の診察に来たガキ連中にそう言って笑いかける主治医は
師匠的な先輩である大先生を得意気に自慢する主治医は
俺の主治医だ
どこまでドライブしてもブレーキ痕を付けてもベイエリアをレーシング
焼き入れで奥行きのある合金にならされた俺の性質は変わらないだろう
最終個体を守ろうとは決めたけれどそのやり方に違いはあまりない
最強の最恐じゃなくなっても俺の主治医は俺の主治医だ
いや最強の最恐じゃなくなったからこそ俺の主治医になったんだけど
夢は見る
同じ夢だ
けれどこれはもう夢だと夢の中で思える
この夢は過去だ
消せない過去だけれど
夢‐ここ‐には俺の主治医が居ないから
捕らわれて囚われる必要はない
取られたくない大事なものが出来て初めて命というものに執着が生まれた
行ってらっしゃいとまた戻って来るよなと見送るだけだったのに
行ってきますと待っているからと見送られるのも何だか良いもので
俺の主治医から俺だけの主治医になって欲しいと言ったら
どんな顔をするのだろうか受け入れてくれるのだろうか
そんなことを考えられるようになれたのは現実‐ここ‐に俺の主治医が居るから
◆
672.終わりにしたいのなら忘れてあげる
◆
捜査のために近付いて仲良くなった少し気弱い彼女がクロであると判明
彼女に自分の本当の身分と近付いた理由の起源が知られてしまうことに
仕事とはいえ世の中のためとはいえ感じてしまう活性化したこの悲しさ
ターンテーブルがスクランブルされて煮え切らない心持ちのせいなのか
特殊簡易公衆電話やルーレット式おみくじ器なんかの小物が置いてある
レトロ調を売りとしている店にガサ入れしても悪びれる様子もない奴等
レコードがかかった店内で御当地の書付を入れ込んだプチパースを探す
ふと視線を感じそちらに向けば彼女と目が合ったけれど逸らしてしまう
この期に及んで後悔先に立たずであるならこの仕事に向いていないのか
答えの出ている自問自答に落ち着きなさいと言う捜査員の声が重なって
その方向へと振り向けば彼女がカッターナイフの刃先を捜査員の一人に
向けながら持っているその手は大きく震えていて私が全部やったのだと
奴等の罪を全て被るようなことを言ってちんちくりんな注目を集めれば
だってさ刑事さん俺達は全く悪くないさあいつが全部悪いんだからさと
奴等はニヤニヤと笑いながら自供した彼女に全てを押し付けようとする
そんな逃げ得などはさせないと思っているのは自分だけではないけれど
しかし彼女の興奮は収まらないからとりあえず彼女の言葉を肯定すれば
彼女はホッとした様子を見せて手の震えも止まり緊迫した空気も和らぎ
カッターナイフをこちらへと渡してもらえるように手を伸ばそうとした
その瞬間に彼女の手が動いた先には会心の一撃でも痛恨の一撃でもない
今まで負った上に付けた傷は隠し通し隠し通したかった言葉のすべてか
彼女はなんの躊躇いもなく自分の白い首をカッターナイフで切り裂いた
ディフューザー薫り慌ただしい中で彼女が流した涙の意味はもう闇の現
◆
673.ヒートショックは誰のせい?
◆
彼が奴を人質にし再現をして
駆け込み寺の貴女に撃たれた
復讐を果たした彼は満足気で
助け出された奴は被害者面で
追われる事後処理ランウェイ
私は貴女へと銃を突き付けて
訪れる静寂の中暴露するのは
彼とあの人は昔からの親友で
私と二人はと古い知り合いで
私とあの人とは公認の恋人で
奴を守る為にあの人を貴女が
私の眼の前で射殺してしまう
彼はあの人の復讐の炎を灯し
貴女に近付いて誓った計画を
惜しみなく全て実行し続けて
あの時と同じ結末を選ぶ貴女
彼はあの人と同じ最期を迎え
今現在に至るわけだけれども
あの人は乱暴された私の為に
単純に奴を殺そうとしただけ
貴女は人質の生命を最優先し
安全を守った仕事をしただけ
彼は殺されたあの人の復讐を
死を持ち果たそうとしただけ
あの人も彼も貴女も何もかも
原因の私に巻き込まれただけ
◆
674.ナンデというハッキリクッキリしたリユウなんてナイこともある
◆
いつから付き合っていたかなんて言う必要性が全く見付からない
報告は必要でしたかと質問すれば必要ないと返答をもらったので
無視を決め込もうと興味津々に聞かれても冷めた目線を送るけど
あんな朴訥な人を何で好きになったんだとか散々纏わり付かれて
デレデレベタベタとボディタッチを繰り返され鬱陶しかったから
そっちの恋愛遍歴を産まれてから今日までを語ってくれるのなら
こっちも包み隠さず言ってもいいと言ったらサッと表情が変わり
途端に湯冷めしたように狼狽えてどこかへ消えて行ってしまった
◆
675.意外性の無いくだりで登壇するドアノッカー
◆
受話口からはコマ撮りの衝撃音
途端に通話が途切れるクランプ
緊急連絡が入ったと騒いで主流
状況はニアリーイコールで派生
松竹梅の千成瓢箪で押し掛けて
フカして執り成した僻地の垣内
選出されダシに使われた居留地
穴の開くほど見るFossil
押し掛け女房でも打ち解ければ
その気にさせて身重に狂喜乱舞
入知恵の灌漑にディスペンサー
かさ増しの替え玉は打って付け
試練かもしれんファイトマネー
書生に免許皆伝はミドルネーム
色々な出来事を元手に因数分解
都合の良い部分だけを継ぎ接ぎ
繋げて貼り付けペレストロイカ
小町算のストーリーを作り上げ
獅子舞に幸せになればなるほど
消えない罪の重さを実感すれば
バタフライクラッチ並の苦しさ
罰になってもバイオメカニクス
変わっていく誰かを置き去りに
思い残すことはないとばかりに
ジュークボックスに詰め込んで
皆どんどん先へホワイトアウト
誰かは皆とずっと一緒に居たい
前までみたいに今までみたいに
楽しい事をして過ごしたいのに
涙を堪えて歯を食いしばっても
名付けて頭を垂れる希死念慮で
誰かだけはこの先もここに居る
ヘコむ誰かのせいにしたいのか
誰かさんならやりかねないのか
誰かなら何とかしてくれるから
ウトウトとしてそう思ったのか
それやこれやどれでもないのか
地上波などレイク・エフェクト
旅籠は最早ペーパーカンパニー
遊覧船は廃線と化すペンネーム
パンフレットかリーフレットか
公訴時効のテイストで締め括り
秘密裏に任務を実行部隊が遂行
でっち上げたモノに審判が下る
実るほど頭を垂れる稲穂かなと
震撼した続報で万事休すなのか
漁火さえ天使のささやきの花弁
硝煙の臭いか起爆装置の雑音か
オリジナルのフォトグラメトリ
続きは不通になった向こう側で
◆
676.家主が去っても草木は生き続けるから。
◆
事件の捜査で関係者として元カノに会った。
背が高くてイケメンだったから付き合ったけれども、真面目過ぎてつまらないと一方的に捨てられた。
仲間に囃し立てられても彼女は素知らぬ顔で。
傷付けたいわけではないけれど嫉妬の片鱗も可愛いヤキモチも見せてくれないから、少々意地悪もしたくなる。
当て付けに元カノの言動に付き合ったけれど、ワガママな買い物に振り回されただけで。
結局ストーカーはでっち上げらしく、嘘を付かれたからと喧嘩を切り上げて元カノから離れた。
それから少し経って彼女が非番の日、身を潜めていたストーカーに元カノが襲われているところにたまたま居合わせて、持っていた鞄で振り回された刃物から庇ってくれた。
幸い彼女にも元カノにも大した怪我は無く、ストーカーも無事逮捕出来た。
ストーカーは本物で本当だったのに信じてもらえなかったと、ぶつくさ切れ切れにふてぶてしい態度で鞄ぐらいと言った元カノに、この鞄は彼女の母親の形見だと反射的に怒鳴ってしまう。
廊下まで響いていた大声にどうしたの?と、不思議そうな彼女に説明を兼ねて謝れば。
父親が母親に結婚記念日のプレゼントとして贈った鞄だから、母親の形見か父親の形見か難しいところだけれど、どちらにしても守ってくれたみたいで良かった、と。
◆
677.ししおどしの雨宿り
◆
猫なで声で俺しかいないとか甘い声で助かるとか、あの手この手の熱狂的な密命の千三つ、良き頃合いに事あるごとの手拍子、有り余る王道パターンのよくできた話。
いつでも相談してとニュートラルな立場で出向き、やっかみも流線型で優雅に、洒落臭く声を掛けて、勇ましく自腹を切って就任、いそいそと引き受けてしまうグレートな雑務。
大漁旗で落ち合い、建て付けを通り過ぎ、ひと煮立ちで渡り歩き、集大成もお目通しも鎹、連結した話の流れで、無造作に渡り合う、トンネル微気圧波の空気鉄砲は、兵(つわもの)の士気。
ゴッドハンド並に頼られているっていうよりは、いいように利用されて使われていることは、ショボい俺の頭であっても手に取るように、負けが込んだ見込み違いであると、いくらなんでも分かりきっている。
けれども、男たるもの女の子のお願いならば何事も謹んで受けて、鉢巻巻いて稼働を躍動して、約束を果たすのが鉄則であり、表彰ものの名場面のスピーチが出鱈目でも、きゃあきゃあ言われて悪い気はしない。
そんな下心見え見えの場面を彼女に確と見られているとも知らず、同僚がデレデレ鼻の下を伸ばしてと怒り心頭の鬼の形相で、ぐうの音も出ないコテンパンな苦情を言っても、頼られているのは良いことだと、人間関係を円滑にするのは大事なことだと、本人が楽しそうなのだからいいのだと、俺の経歴に傷を付けないように、彼女が宥めていたことも知らないまま。
五十日(ごとうび)に踏ん切りをしようとするのっけから、いっちょかみのタスクシェアを起点として、破局することなく伐採してもすぐに投入されて復縁の門出、ちょっぴりどころか壮大に膨れ上がる、体感的にも広範囲なムーブメントで、行きがかり上もサービスも含めた、世も末な残業。
そんな時に限って部署の都合上いつも俺より残業が多い彼女が早上がり、送られてきたメールに気付かないまま、彼女は待っていてくれたのかうたた寝をして、真心を込め腕に縒りを掛けてくれた、俺の好物ばかりの料理は冷めきっていて。
風邪を引くといけないからと起こして謝れば、そんなことは構わないから食事か風呂かと聞いてくれて、優しくスローインしてくれる彼女に、それ以上言えなくなって、無下に出来なくて、食べるとしか言えなかった。
家宅捜索の応援とか、在宅起訴の裏取りとか、違法水商売の摘発とか、デジタルタトゥーの保全とか、有識者風情の仲裁とか、オンエアのリハーサルとか、虐待サバイバーのすり合わせとか、経済効果の試みとか、世紀の大発見の汚染とか、反乱分子の身の潔白とか、射掛けたルーキーへのご祝儀とか、閻魔帳の深堀りとか、けちょんけちょんなトップニュースの倹約とか、企業秘密の遮蔽措置とか、御霊信仰の史料探しとか、悪どい拠点の内偵とか、廃墟化した別荘の封鎖とか、チェックインの延期とか、不届き者を削ぎ落とすとか、コテージを彷徨く奴の阻止とか、仇討ちする間取りのベッドメイキングとか、討ち入りの解任とか、ブランドの名刀が怨霊になってしまったという相談とか、秘境の警備とか、駐在の赴任とか、プレ体験の滞在とか、武力行使の無力化とか、抵当の清算とか、トライアルの訪問とか、邸宅への案内とか、古文書の抜粋とか、特需の図面を描くとか、経費精算の下地とか、スタジアムの忘れ物をフロントに届けるとか、天下分け目の戦いの両成敗とか、縁起を担ぐテーマを決めるとか、里帰りする要人の警護とか、ハプニングの応急処置とか、押収品の整理とか。
彼女と付き合う前からの八方美人ぶりは相変わらずで、俺のネイティブな日課みたいなもので、彼女を待たせてしまっても何も言わないから、言われないから、あるがままのナチュラルな俺の肩を持ってくれていると、勝手に思い込んで毒されていた。
そんなことが三度(みたび)続けば、こまめな連絡を取り合っていたのに、メールのやり取りは徐々に続かなくなって、それでも彼女は拗らせずに、俺の帰りを待っていてくれた。
ある日、帰れば食事の支度がしてあって、仕事が入ったからと置き手紙がおいてあって、夜郎自大に染み渡る冷たい静寂と温かい食事、その挟み撃ちは堪ったもんじゃない。
有難味に浸っていれば、そこからはお互いに忙しくなって、俺の方が落ち着いても彼女の方は忙しいままで、仕事柄こんなスムーズに経過が順調なのは珍しいのに、今まで以上にすれ違って法雨の刃紋が毟り取られていく。
そのせいでただでさえ短い彼女との時間が、めっきりくっきり減っていることに、部屋に明かりの付いている回数が負け越していることに、彼女と会えない寂しさに今更ながら気付いて。
加速度的に後味の悪い、成れの果てに成り果てたくはないから。
気が早いかもしれないけれど、いつもの河岸に誘うよりはリフレッシュとリラックスを兼ねて、二人三脚の一石二鳥に出掛けようと、彼女の非番に合わせて休みを取って、寝坊しないようにと準備を整える。
そして待ち焦がれた非番の日、久々に会えた彼女とのデートに俺は浮かれていて、ランキング上位の名物を食べ、ギャラリーを回り、出店で目利きを楽しみ、逸材のライブペインティングを鑑賞、湖畔からの眺望を堪能、鉦でバラードを奏で、逸品のティータイムと、立て続けのアウトプットは左手法の多彩な爆走。
煽りを受けさせてしまった彼女との時間の空白を埋めるかのように、熾烈な還元‐カムバック‐を滑り込ませても、特殊な生業だから丈夫だと、サドンデスの警報‐タイムアウト‐を感知しても、オールインした最終コーナーさえ、通例としてシカトしてしまったようで。
要は彼女が疲れていることに、具合が悪いことに、すってんてんと倒れるまで、気付かなかった、気付けなかった、服毒させてしまった過労の輪郭に、気付きたくなかったのかもしれない。
何で言ってくれなかったのと言えば、頼られるのはいいけれど残業はセーブしないととか、俺がデートを楽しみにしているからとか、裸一貫さえ爪弾きにして全体像をクリアにしたところで、その配合は俺のことばかり。
戦斧でのっこみのあの子達にとっては、俺なんて満場一致で逆転サヨナラを狙える、大勢の中の一人でしかないけれども、腹心の片腕のように圧勝で、俺にとっては代わりがいない、誰の代わりでもない彼女だから。
危殆に瀕する彼女の譜面のコンプライアンスは、俺が然る可き可変をして自決すればいいから、ここが天王山と発奮してトライ、ロータス効果のミックスを狙った、彼女の加湿器‐スタイリスト‐になろう。
今度からはちゃんと彼女のことを見るよと言えば、特に変わり映えしないし今更見るところなんてないと、なんて可愛いことを言ってくれるけれど、俺がしっかりと丹念に見なければならないのは、容姿でも体面でもなくて、ハザードに敬礼してしまうような体調だ。
どこにもいかせないから、彼女を死に追いやるスベテノモノを取り除き、郭清する為に闘い続ける。
お詫びにといってはなんだが何でも言ってと言ったら、視線を彷徨わせ少しの間の後、手を繋ぎたいと言われて、繋いではみたけれどもなんだか違う気がして、本当に何でも言ってともう一度言えば、今度はそのまま動かないでと言われて。
ソファーに座ったまま固まって成り行きを見守っていたら、膝に跨るようにして座ってそのまま抱き締められた。
顔が近すぎて照れくさい上に、この体勢はそうでなくとも理性が揺らいで、か細い糸がプツンと切れてしまいそうになるから、ラストストローを腐敗させないように、ガッチリと団結させてバッチリと化粧直し。
抱き締め返していいものか分からなかったけれど、取り敢えず包み込むようにすれば、あったかいと言って暫くしたらそのまま寝てしまった。
手は冷たくなかったけれども寒かったのかとか、そりゃ生きているのだから温かいだろうとか、思ったところで気付く、というかこんな簡単なことにも気付かなかった。
直々に身につまされる動きを止めた心電計は、御神木を以ってしてもはみ出してしまって、ストレッチャーさえ時差無く差し強る。
彼女の周りを経由する巡り合せは、寸分違わず冷たいだらけだったことに、成仏出来なくてももう体温さえ持ち去られて無いから、寄る辺無く命拾いして生長らえてきた、ヌードな心の筥にお悔やみだけが残って逝く。
押っ被さる殺伐は次元を超えて、粋がる発狂は未公開のラベリングで、厳正に一線を画してきた彼女が欲しいモノは、金でも物でも地位でも名誉でもない。
ギョッとするような、魂消るような、度肝を抜くような、鳥肌が立つような、バチバチとしてドスの効いた、そんな硬質なモノではない。
彼女の望みが命だったことに、生きていて欲しかったことに、風通しの良い吹き抜けで、泣く泣く手元に残るのは、天邪鬼に屈曲した存生。
彼女自らインストにした彼女の本望は、傍らに共存共栄する人のぬくもりだけ。
◆
678.果報は寝て待てなど程なく死に至らしめることだろう
◆
よそはよそうちはうちの習わしの掟の後遺症
そう言うなら高低差ありまくりの周りと比べんなや
好都合な隣接した近況報告だけ死ぬ気で取り出して
マブダチと絶好調で選抜したオンオフの話を広げ
部外者を入札して終売の告知は屯する集中豪雨
趣旨は言ったもん勝ちのイヤらしいオーディション
大台に乗った売れ筋の配列はハイテクな品揃え
リストアップしたコレクションはこの場を借りて
エッジの効いた屈指の最先端な社交場で即時披露
別条の僅差な差異をあーだこーだあきまへんと
下戸の晩酌は噛み応えのあるお品書きで角打ちの分布は
不適格に極度の落ちこぼれとシバくカットイン
歯ごたえのあるダメ出しの付箋をペタペタ貼りまくり
取り柄はアイデンティティの書き直し‐リニューアル‐
歴とした国際原子時にうるう秒で協定世界時の
肉眼の本編ではトップバッターになれないから
直訳し考案した自分達のみの基準の天文時で
凝ったパラレルワールドを妄想するしかない
つかこっちを比べる前にお前らはどうなんだよ
周りと比べれば赤点にすらならない内申の引責
自分達に都合の良いことは当てはめて前半戦に着陸
自分達に都合の悪いことは受け流して後半戦に離陸
結局自分達の思い通りの道楽にしているってだけ
こっちのことなんかこれっぽっちも考えていない
リスキリングのパシリで残留する老朽化に合掌
在るのはその手が有ると間口の広いお手軽な僭称の体現
自分達が受ける世間体自分達の変えない常識自分達が得る幸せ
◆
679.昨日の敵は今日の友
◆
貴方はくん付けであの人はちゃん付けで
貴方があの人の代わりを演じていて
あの人だと思っている貴方をちゃん付けで私が呼んでいて
貴方の存在は奉安して無かったことになっていて
一瞬で激変したのに一夜漬けにもならない貴方の役作りは
銀幕のスターよりもナイスショットと完璧で脱帽するよ
気付かないまま終わらせられたらどんなに楽だっただろうか
深刻で緊密なデブリを弱腰にもたもた風化させることなく
なんのなんのと舌の根の乾かぬうちに引っ括めて寸断させた悪路
手を取り合い執り行った死に目すら全部思い出したから
舗装されていない山道を杣人の居ない獣道をぼちぼちと進む
しくしくと梢が渡りはためく露払いのバリア
尾根を一望出来る憩いの場の御敷地に灯る龕灯
私を襲ったあの人と私を助けた貴方のダイアリー
あの人が眠る山頂で白いあの人を抱いて胸を詰まらせ
降りしきる雪を羽織って円やかな眠りに就こう
◆
680.オペラグラスにぐい呑みを双眼鏡にお猪口を
◆
奥が深い御料地の道の奥は陸奥で未知の苦(みちのく)の記紀であるかもしれない
燃え尽き症候群でも我慢してきたからこの日を迎えることが出来たのかもしれない
幸せの虎の巻が売っているとしても売っている物ではスカッと満足などしないから
幸せを取り込むのではなく幸せに取り込まれるある種の闇取引なのかもしれなくて
今この瞬間とても幸せでこのままこの幸せのまま終われたら良いなと思ってしまう
◆
681.真面目な不謹慎には猛反発を
◆
私はあの子を助けたかっただけと一念発起しただけだと
あの子が助かれば私はどうなってもいいって言うけれど
自分を犠牲にしている感をおいおいと出しているけれど
その行いの相手にとって全くもってどうでもいい訳ない
これまでにやってきた小癪な摩擦の負のスパイラルにも
これからやろうとしている空気が一変する大捕り物にも
その行いの相手にはまるきり関係のないことなのだから
◆
682.注意も指導もそこに感情が伴えばそれはもう自己中心的な自己満足でしかない
◆
臨機応変を求めるならばどんな結果であろうとも受け入れなければならない
自分の思い描いた結果通りにならないからといって否定してはならない
原因や説明を求めてはならない
それが出来ないならば
する気もないのならば
自分の思い描いた通りの結果になるように事細かに指示を出さなければならない
自分が完璧な指示が出来ないのに他人に完璧を求めてはならない
自分の言ったことも忘れるのに他人に言ったか言わないかを求めてはならない
自分が間違っている証拠を他人が示せないからといって自分が正しいとは限らない
他人が正しいことを認めなければならない
自分が間違っていることを認めなければならない
◆
683.君という名のスパイス
◆
君は僕の父親の無実を信じてくれた
君は僕が言うなら無実だと信じると
君が卑劣なストーカーに遭ってしまった時も
君が思い出してしまいパニックになった時も
誰も信じてくれないと言った君の言葉を僕は信じるよ
変わり種と言われる僕だけれど君だから頼ってくれた
だからかな
ホームパーティでも店でも自宅でもどこでも
どんな料理でも自分好みの味付けにしたくて
マイ調味料を持参しいつでも使えるようにしているけれど
君の作ってくれる料理ならどんなものも美味しく感じるよ
◆
684.相対するのはウォーミングアップ、想定外からが本番なのだから
◆
君にヤキモキ色々言われたところで、この関係が壊れるなんてことはない
嘘をつかれるよりも、秘密を暴かれるよりも、本当を信じてもらえない方が嫌だから
ダムのように堰き止めていないで、むしろ心の内を思いっきり見せて欲しい
これからも末永く心躍って、一緒にいるためにはどうしていけばいいか
簡単過ぎず難し過ぎずが、簡単なようで難しいけれども
話し合いながら生き方を尊重した上で、寄り添っていきたいと思っている
◆
685.原状回復の死活問題‐コード・ブルー‐
◆
私には姉がいる
血の繋がらない姉の家は所謂危険にカテゴリーされる家業を営んでいて
姉の祖父と数人の弟子達と一緒に住んでいる
私の母が早くに亡くなり男で一つで私を育ててきた父は
家業の弟子とその敵対する人達が起こした諍いを止めようとして巻き込まれて
私の眼の前で亡くなってしまった
身寄りの無くなってしまった私を姉の祖父は引き取り育ててくれた
だから私は姉をお嬢ではなくお姉ちゃんと呼んで
門前の小僧習わぬ経を読むかの如く怒らせると一番怖いとカテゴライズされるまでになった
姉は一人娘だったけれども夢があって姉の祖父を含めた家業全員が応援してくれていて勿論私も応援していて
だから姉は家業を継がないことは皆知っているから
私は出来るならば私が継ぎたいと思っている
こんなことでは恩返しにはならないだろうけれども
骨を埋めたいと思わせてくれた家族以上の家族だから
怪我を頻繁にしてくる弟子達の為に医者になりたいけれども
進学するお金よりも二足のわらじは到底無理だから
私が決められない継ぐ継がないは別にして進路を家業の手伝いに決めた
だけど捨てたはずのパンフレットを見られてしまって
お金は出すと言うけれど家業のことは考えなくていいと言うけれど
本音で医者になるより家業を継ぎたいと言っても隆盛な遠慮だと思われてしまう
「実の姉妹ではないのだから」
姉が滑らかに言った言葉に気が立っていたその場は静まり返る
きっと血が繋がっていないのだから家業のことは気にしないでという良い意味なのだろう
けれどその切り口は今の私にとって悪い意味にしか聞こえず額面通りに受け取ってしまう
「そうですねお嬢」
久しぶりにというか初対面以来口にした敬語とお嬢という敬称
ごもっともであって併呑する好悪なんてものはないけれど
姉ではない家族でもない世継ぎにもなれない私の真価は値崩れたただの居候
次の日口を噤む気まずい朝食を終えて学校も終えて足取り重く公園のベンチに座って
ぼんやりしていたら気付いた時には暗くなってしまっていた
帰ろうと思って立ち上がってふと思う
「どこに帰る?」
どこに帰ればいいのだろうか
郷里なんてものはとっくにない
勝手知ったるシュプールはかき消えて
思考はドミノ倒しで座礁する
私の帰りたい場所はどこにもなくなった
帰る場所も辿り着く先もないお手上げ状態の当ての無い旅
痛切に活路を見出して向かった先は両親が眠る遺構の野辺
人っ子一人いない空間で傍らに座ってもたれ掛かり一緒に眠りにつこう
◆
686.優しい人の落とし穴
◆
例えば体調不良の時
無理しないで休んで良いよとか明日すればいいから早く寝なとか言ってくれる人はとても優しい人だ
だけど言うだけ言ってその人はいつも通りではないか?
いつも通り何もしないでオヤスミと寝てしまわないか?
しかも食事に至っては代案で簡単なモノで良いと言っても作らせて自分では何一つやらず片付けず
寧ろ簡単なモノで済ませた自分偉いとか相手を気遣える自分優しいとか自画自賛のオンパレードではないか?
相手を気遣うように見せてその実治ってからで構わないから全部やってもらう前提ではないか?
優しい言葉を言ってくれるだけで十分?
相手が自分の思い通りに動いてくれるのを期待するのではなくして欲しいことがあればちゃんと言葉にして伝えた方がいい?
家事ややることが溜まってしまっていてもそう言える?
しんどくても治っても元気でも結局全て自分がしなければならないんだよ?
仕事なら残業続きに大変だねと言いながら仕事を積み上げて先に帰るようなもの
口ではいくらでも綺麗な言葉で寄り添えるよね
言うだけの口先ばかりで行動が伴わない人はこちらが期待も何もしなくても言いっ放しがストレス
因みにその人が体調不良の時は優しい言葉をかければ鬱陶しがり気遣って行動してもお礼も言わない
察してと言っているわけではない
ただ自分ならば相手の為に何かしたいとか何か出来ないかとか思わないのだろうかと思うだけだ
今の体調は?
何か変化は?
水分はとれているか?
食べられるものは?
汗はかいていないか?
着替えは必要か?
室温は適温か?
薬は?
病院は?
仕事場には連絡したか?
優しいだけの人ではなく思いやりのある人は相手の立場になって行動しようとする人
顔面蒼白のグロッキー状態では慰めにも励ましにもならない
言葉の顔ぶれは変わらず行動には移さない
溝を埋めるどころか蟠りを未来永劫広げる一方
柔らかな風合いのイメージに騙されるな
全くもって似て非なるものだ
結局はどれだけしてもらえるのかということかもしれないけれども
してもらえなかったのに自分が相手にしてあげたいとも思えない
何故ならそういう時に人間の本質が出るからだ
人に優しい言葉を掛けれるのは素晴らしいことだけれど
的外れが怖いなら聞けばいいから
相手の負担を減らしたり肩代わりしたり
どうすればいいかと行動出来る人であって欲しい
◆
687.オリジナルブレンド
◆
はみ出た毛色の規格を認めてくれないから
由々しき事態だと受け入れてくれないなら
玉手箱は真空パックして自ら外に作るまで
戦意喪失‐アゲインスト‐の輩を悟っても
私を度外視して二人だけの世界へ逝こうと
慰謝を手早くゲリラを興起した訳ではない
オーラルな他人の意見に流される柔軟性で
手荒に扱われ撃墜させられ偏重した風聞に
幽閉‐クリーニング‐されるぐらいならば
三人にとっては好き勝手にルビを振られる
この粘着質な世界はただのトランジットで
過去を責める必要も未来を嘆く必要も無い
違和感を我慢して軛の歪みが生まれる前に
私を引率し招致すれば未知数でも練り直し
風向きが変わって手厚い市民権を得られる
激アツな闘志を燃やして風の噂にも総力戦
超絶稀覯本の孤立効果をリカバリーすれば
天寿を全うしなくても併記してリスタート
べらぼうな利器で興じる人殺と言われても
扱いやすい遜色な引き立て役と言われても
相対ズケズケといちゃもんをつけられても
二人が愛し合っていて完全無欠だったこと
私しか知らないから私が貫き通した手記を
認めて(したためて)創刊し伝えなくては
本当は私も後追いしたかったのではないか
いや私なら分かってくれると掛目を考えた
だから何も言わずとも一足先に逝っただけ
二人の幸せそうな死顔が最期に見れたから
土被り道草途中の束の間の別れなのだから
心中お察しせず悲しくはない寂しくもない
誰も信じてくれないと荒み怒りがわくのに
涙が止まらない理由が分からず仕舞いでも
怯むことなくサブリミナルなシンパシーを
込み入った入江にかまくら風の秘密基地は
懐石料理が並ぶ宴会の宴席にガンを飛ばし
粒ぞろいである二人の親友で居て良かった
術中にはまったように惹きつけてやまない
沸き立った雨音の子守唄‐リサイタル‐は
雑念が削がれるほど根強くインフィニート
赤い糸を手編みでペアリングへ結んだ二人
画廊には去り際のカット割の絵面が出展し
刃毀れした偏愛の功罪が混在する死屍累々
門外漢な通説は天敵であり廃絶に止を刺す
賽の河原に良心の呵責など愚にも付かない
点描の不法投棄で失踪宣告‐ミッシング‐
◆
688.晴間の乱気流+波間の乱反射=体内時計は規則正しく
◆
お正月
バレンタインデー
ホワイトデー
春休み
ゴールデンウィーク
七夕
夏休み
お盆
夏祭り
花火大会
ハロウィン
シルバーウィーク
冬休み
クリスマス
大晦日
誕生日
入学式
卒業式
成人式
結婚式
新婚旅行
結婚記念日
出産
子育て
陽気な予期でせっかちハイペースに増えていき
イベントや記念日には貴方の仕事は忙しくなる
出来ることならば貴方と一緒に居たいのは山々
けれども同じ時間を過ごせないのは仕方がない
ダイエットでスレンダーになりイメチェンして
人相のアップデートと体形のアップロードは済
プロテウス効果でパーソナリティはリバウンド
出入り業者に注意を引き付け現生を荒業で盗品
ワイドショーはゴージャスな設備のお立ち台で
しゃがれ声をハスキーボイスとしてピットイン
ガタがきている形態模写であっけらかんと出題
コンテンツのキャッシュは行列していい気味と
焼け太りを連取したらハイソな栄華で人心掌握
たんまりと再開発されて株価は急落して御用命
たたき上げの屋号はエリートより現役の手捌き
蜘蛛の子を散らす様でも昔取った杵柄の離れ業
出オチからチェーンソー片手に確信に迫る寸劇
陣頭指揮のシュミレーションは完璧な御一行様
その時期に貴方と一緒に居られるということは
事なきを得て世の中が平和だということだから
望んだ幸せをあげられないと先般来悩む貴方へ
少しの嘘と多くの誠のアシンメトリーでよろし
一日だけの記念日より一時だけのイベントより
毎日貴方のこの手がこの身体が温かい方が良い
◆
689.氷瀑の焚き火
◆
転けそうになった女性を助けようとして
奇しくも抱き締める形になってしまった
そんな姿をバッチリ君に見られてしまった
女性とともに慌てて事情を説明したけれど
君は表情の一切を変えることはなく
そうですかの一言だけで済まされた
モラルのデューディリジェンスは社会の窓みたく迂闊なハメ手のフィニッシュで
情夫‐イロ‐を彷彿とさせるダブルブッキングな状況‐デモンストレーション‐
怒っているかどうかなんて確かめる勇気もなく
怒っているだろうからと謝るタイミングもなく
恐る恐る怒っているよねごめんと謝れば
なんのことですか?と一糸乱れぬ表情で
あの時の件だとあの時以上にドギマギしながら言えば
助けただけですよね?あの時そう言いましたよね?と
文学的なレポートのような教育が行き届いた返答
レジリエンスなどではない別段変わらない表情だ
それはそうだけれど・・・それをそのまま信じてくれたの?
なんで貴方の言った言葉を疑う必要性があるの?と相見える
革新的なトリビアやオリエントなジンクスまでを
何事も疑うことを仕事にしているのにも関わらず
モダンに嫉妬をするわけでもコンサバに浮気を疑うわけでもこれしきと陳情するわけでもない
鶴の一声のように俺の言った言葉を君が疑わずに信じてくれたことに一目散に歓呼したくなる
◆
690.黄金株は一日の長を気取り大黒柱である秘仏を衛視する
◆
そろそろ終わる頃かと思って
出迎えに行けば酷く驚いた顔
迎えの約束なんてしていないと言われたけれど
約束なんてしていなくても迎えくらい来ますよ
私が祓い屋になった理由は特に無い
窶れて辞めたいと思ったことも無い
強いて言うなら彼が祓い屋を生業にしていたからかもしれない
誘われて傍に居たくて彼の為に祓い屋になったのかもしれない
遊び駒を活用し浮き駒に手ありの邪魔駒を弾き出して
離れ駒を引き寄せ不動駒をくすねて死に駒を虜にする
一樹の陰一河の流れも他生の縁でも祓うのは仕事で妖とは対等
彼から私への暗号資産ほどの手解きから私から彼へは温故知新
憎むことが戒めであり警策であるから決して馴れ合わない
世代交代の目安には刺客や賂(まいない)の拍子木が伴う
のらりくらりと嘘を信じ込ませることは得意だけれど
いざ真の本当を信じてもらうことは不得意で滅法弱い
本当のことを言っても端から信じてもらえないなら
最初から嘘でも嘘から出た実でも構わないと諦めて
相手によって態度を変えているのではなく
相手に合わせて態度を変化させているだけ
見る方向によっていくらでも別人に見えてしまうのは
囮となり相手の罠に嵌まらなければ誘き出せないから
人から信じてもらえないから人を信じなくなって
けれど信じてもらって初めて信じることが出来る
縁を作って掟を守って契を引き渡して後はよろしくしよしと託せる人がいるから
見えなくなって先駆けて廃業に追い込まれても報復に怯えずに千切って散蒔こう
彼が祓い屋でいる限り祓い屋は私の天職だから私にその能力があって良かった
実証実験のような獅子奮迅の能力提供の対価を頂けるとしたら彼が居ればいい
私が彼を好きでも彼から私と同じ気持ちが返ってくるとは限らないと分かっている
一門の為にヒトリで全てを背負う当主の彼は私の想いには応えられないだろうから
破る可能性があるような約束なんてものは彼とはしたくなくて
そのように決めたということだけは格言的に決まっているから
彼と約束なんてしないし彼と約束などしていなくても
私は彼の傍に居ますからと彼の緊張をほぐすかように
それではまるで彼のことが好きみたいだと確信を持たれたとしても
そうですよといくらなんでも好きではない人に好きなんて言わない
年の瀬にぎゅうぎゅう詰めにした特典に釣られてしまうような
沿道の往来の人垣で判断するようなそんな不誠実ではないから
私が彼を想っているだけだから
私が彼の傍に居たいだけだから
◆
691.癒合剤の分泌‐プラットフォーム‐
◆
彼へ恋人っぽいことをしたいと思ってバイト仲間に相談すれば
内緒でサプライズプレゼントをあげたらいいと提案してくれた
誰かにましてや恋人にプレゼントをあげるなんて初めてのことだから
選ぶのを手伝って欲しいと言えばトラディショナルだけれども
ステップアップにアミューズがバージョンアップする私を喜んでくれる
たくさん悩んでバイト仲間を付き合わせて買ったプレゼントを
彼に見付からないように隠して催すその時を待っていれば
得も言われぬ感情が増殖してバレないようにと気を引き締める
彼が帰って来て開口一番に今日何をしていたのか問われてしまう
まさか複合して態度に出てしまっていたのかと思ったけれども
サプライズだからと思い直してバイトをしていたと嘘を付いた
短時間のバイトをしてからバイト仲間と落ち合ったので完全な嘘でもない
それなのに彼は確信を持っているかのように壁際へと迫られて
取り調べのように追い詰められて普段の彼とは別人のようで
エキサイティングしていく彼に怖さを感じて振り払い出て来てしまった
必要が無いから退化したのか不必要を削ぎ落としたから進化したのか
そんな暗い箱庭の中で光を探して歩き続けることも諦めて
差し込む光が無いまま一生が終わると思っていたのに彼が現れてくれた
迷惑でも厄介でもないけれどあんな箱庭へは帰りたがっていないのに
忌み枝を白い目で見るような人のところへ探していたとしても帰せない
未来に前に進みたくても過去が足に絡まって重くてもつれて
結局現在に留まるしかないのに勇気ある後戻りは前進だという
正しいことをするなら本当のことを知るしかないから
正直になってもらわないと守れないとホーダーの銃口を
人質になった私から自分に向けて字面さえ限定させる
手柄だって損せぬ人に儲けなしと利点にはならない
闇の世界に居て散々迷惑かけて勝手だけれど無理矢理は嫌だと思った
出会ってから今まで私のことをアーケードのように守ってくれたけれど
アメニティに心地良く寝転んで永久指名を望んでしまったから
気宇壮大‐アナキズム‐な彼も呆れてしまったのだろう
同棲していたけれど帰りたくはなかったしこれ以上彼に甘えるのは
きょうだい児に半球睡眠させてエクイティを望むに等しい
彼が居ない仕事の時間を見計らって置いていた私物をすべて引き払う
すべてと言っても中型のキャリーケース一つ分で元々持ってきたものが多い
そして分化する前のアンフォラな固有‐ルーツ‐へと戻る
合鍵を持ってきてしまったのはプレゼントをどうするか決め兼ねているから
私からのプレゼントなんて迷惑なだけだと分かっている
けれど彼の為のものだからあげないまま捨てる気にはなれなかった
ホテルの清掃のバイトをしていたらホテルから出てきた彼と鉢合わせ
見知らぬ女と居るようで邪魔しては悪いと思い知らないフリをして
タイミング良くバイト仲間が私を呼ぶからその場を立ち去ることが出来た
彼の元へ行ってから接触の無かった闇の世界のメッセンジャー
情報‐ドキュメント‐をホワイトペーパーのようにしなければ
基本的に表の世界や裏の世界には非干渉で放置してくれる
たとえ知らずに開削して領域を侵したとしても悪質でなければ
駄弁るようなサテライトでクロージングを貫いてくれる
私に会いに来たということはそうとは出来ない事態らしい
どうやらある女が首を突っ込むどころかあまつさえ利用しようと
ゴミ屋敷はオールマイティなゴミ捨て場ではないのにも関わらず
簡単すぎるとつまらないし難しすぎるとやる気にならないと反復し
借金をチャラに出来なくても置きに行って完済してもお釣りがくる
まるで歩行者天国のように犇めく移民を格安で隊列を組ませ縦断
人の行く裏に道あり花の山のセルフスターターを気取り画策して
戦わざる者は勝たずと高飛び込みさせて無用で不要な苦難を生む
おっと合点承知の助とはいかないけれどもノータッチというわけにもいかない
しかもその女が彼と共にホテルで鉢合わせした彼の同僚だったら尚更
彼が担当している事件の裏で糸を引いている黒幕が同僚の女でもあるから
岩肌のアトラクションにぞっこんでドットのフレイルに気付かない
見慣れ過ぎていて感じ取れないということを指の関節を鳴らして
ガルウィングのスライス並ではあるものの警告する為に
カーボンニュートラルのミストを買って出て事件解決のお手伝い
彼は私が介入していたことに驚いていたけれど事件は無事に解決して
同僚の女にも卵は一つのカゴに盛るなということは伝わっただろうから
プライスレスなファンファーレの区切りもつけないといけないだろう
日の目を見たプレゼントといらなかったら捨ててという置き手紙を残して
お揃いのチャームごと合鍵を返して再びスリップストリームでも始めようか
キャリーケースを引きながら今晩の宿を探していると
人気のない裏路地にも関わらずヒールの甲高い足音が足早に
振り返ると同時に勢い良くフェンスに押し付けられ
あんたのせいでと逆ギレした香油香る同僚の女に刺されたようで
どうやらカンペのようにナイスシュートとはならなかったらしい
指紋の付いた凶器も放り投げてそのままに逃げてしまったから
闇の世界のメッセンジャーに連絡をして通話記録などからは辿れないように
デバイスのコールドウォレットをパスコードでデイトレードする
病院で意識を取り戻せば知り合いの裏の人間が通りかかって
意識を失って血塗れの私を見付けて救急車を呼んでくれたらしい
彼にも連絡したようで病室に居るけれど経緯を聞いている間も
気まずそうに視線をあっちこっちに向けるだけで終始無言の状態
おやおや随分と賑やかでと闇の世界のメッセンジャーが現れる
災難でしたねとお茶目に感情をシャッフルして喧嘩を売る話し方
知り合いの裏の人間よりも先に彼が飛び出しそうだったから
手で制しながら後始末に手を貸さなくてもいいのかと聞けば
後処理と後片付けはこちらでするのでゆっくりとお休みください
知り合いの裏の人間と彼の分のケーキをお見舞いとして置いて帰って行った
あの話しぶりなら同僚の女は消されることが決定したようだ
命だけではなく世の中からその存在‐バーコード‐ごと消される
バリアフリーの導火線を持ち合わせている闇の世界はそれだけ恐ろしい
見向きもしないなら見向きもされないなら何をしたって構わないだろう
などと考えてはいけないそっくりそのまま返されるどころではなく
外戚の機構‐パビリオン‐なんかよりもドキュメンタリーはノーミス
ケーキの数を見てもどこから情報を得ているか分からないのにノミネート
お礼とケーキを差し上げて知り合いの裏の人間は帰り彼にも帰ることを促す
帰るどころか置いてきたプレゼントを差し出されてやはりと
わざわざ返しに持ってきてくれたのかと思って受け取り
そのままゴミ箱に捨てれば彼は慌てて取り出して謝られる
プレゼントであるネクタイを嬉しそうに楽しそうに選んで
見知らぬ男もといバイト仲間と笑っているところを見てしまい
誰なのかと聞くつもりで問いただせば嘘を付かれて
答えになっていなくて否定もしてくれなくて
嘘が分かるということは本当が分かるということで
火花を散らす嫉妬で迫って滅茶苦茶にしてしまいたくて
そんな感情がリバイバルしながら焙煎‐キャラメリゼ‐
同僚の女にホテルに誘われてよさないかとも思ったけれど
心細いならと絶対に大丈夫だからと寄り添ってくれて
無責任でも一番欲しい言葉をくれるから思い余ってしまって
あの場面がちらついて離れれば楽になれると思ったけれども
自身の息子は役立たずで所謂朝チュンにはならなくて
もっと好きになるだけでそれを自覚するだけだった
事件が解決して家に帰れば机に置かれたプレゼントと手紙
理由が分かって目から鱗が落ちながら誤解が解ければ
周りを見渡す余裕が出たのかキャリーケースごと私の私物が無くなっていることに気付いて
急いで探しに出たのはいいけれど行くところが分からなくて
あちらこちら走り回っていれば知り合いの裏の人間から連絡が来て
病院に直行して経緯を説明されて現在に至るようだ
警察や探偵でもないから犯された罪を暴く必要はない
ただこちらのちょっとしたお願いをきいてくれるだけでいい
なんてリテラシーを利用するだけ利用する語呂合わせ
都合の良い玩具にしたいから強引な引き止めもする
転換性障害へ心を込めて嘘を付かなければならなくなるのは
思い通りになってはくれない自分の心へ思い通りにする為
ガラスのハートが粉々に砕け散って破片が更に傷付けても
命じられれば何でもするからと言って続けたいと打診したのに
拒否出来ない立場だからこそ自由にしたくて解雇したのはそっちと
用心深い子が懐くなら見ず知らずでも信用にたる人物で
支えていると思っていたら背中を押されていたようだ
俺の傍に居てくれてありがとう
貴方が傍に居させてくれたから
私はここに居てもいい?
俺がどこにも行かせない
◆
692.お先真っ暗の塩梅は木漏れ日の蓄光‐ホリゾント‐
◆
遠距離恋愛で今週末も会う予定だったのに運悪く風邪をひいてしまった
伝染ってしまったらいけないし言えば心配をかけてしまうから
用事が出来たからと言って会えないことをメールで伝えるしかなかった
上がっていく熱に浮かされながら会いたかったなと呟かずにはいられない
気が付けばいつの間にか眠っていたようで時計を見ればもうすぐ昼になろうとしていた
食欲なんてあまりないけれど薬の為にも何か食べなければと
働かない頭で体を起こせばリビングからカタっと音がした気がして
扉を開ければ居ないはずの彼女が居るからああこれは夢なんだろうと思い至る
こんな都合の良い夢を見れているならば現実には出来ないことをしたい
もっとベタベタと引っ付いていたいけれどそんなことを言って引かれたらと思うと
そんなのは絶対に嫌だから言えなくてもちろん態度にも出せなくて
スキンシップに対して非常に淡白であると思われている現状
格好悪いと思われるような情けないと思われるようなそんな欲望も
自分が見るだけの夢の中ならば思いっきり甘えてもいいだろうと飛びついた
パァッと花が咲いたような笑顔のまま抱き付けば会いたかった寂しかったと零れ落ちる本音
受け止めてくれて抱き締め返してくれて優しく背中も撫でてくれる
温かいお粥を作ってくれていて少しでも食べられますかなんて
子供みたいに食べさせてと我儘を言えば食べさせてくれる至れり尽くせり
誰も居ない人恋しく寒々しい空間に彼女が居るだけでこんなにも暖かい
水分をとって薬も飲んで眠りにつけば現実に戻っても我慢出来るだろう
目を開ければ日が傾き始めていて熱は下がったし現実にも戻ってきたようだ
起き上がろうとしてふらついた拍子に時計にぶつかり落としてしまう
大きな音と増えてしまった動作に溜息を付いて仕方がないと拾おうとすれば
扉を開けて現れた居るはずのない彼女とばっちり目が合って
なんでと驚き過ぎて固まってしまった俺に彼女は少し言いにくそうに
用事なんかではなく浮気ではないかと疑った同僚が面白がって
溜まった有給を消化していいと上司まで許可を出したから
断りきれなくてというか最早上司命令でこちらに来たらしい
用事が出来たわけでも浮気していたわけでもなく俺が風邪だったから結果的に来て良かったと
おでこに手を当てて熱は下がっていそうですねお粥まだありますけど食べられますかなんて
まだという単語に加えて夢の中と同じ聞き方をされて夢は夢ではなかったことに我に返る
色々変なことを言ったと思いますけど風邪のせいですから忘れてください
なんて女々しいことを言って蒸し返すことも出来ずに食べられますと返事しか出来なかった
それからというもの彼女からチラチラと視線を感じることが増えた
気になって尋ねてみても何でもないと気にしないでと繰り返すから
俺には相談出来ないことですかと聞けば仕事のことだからと言葉を濁される
普段仕事のことであればはっきりと断ってくるから彼女らしくない
俺からの視線を十二分に気にしつつも彼女からは本音を隠した言葉の数々
やっぱり風邪で弱っていたとはいえ熱に浮かされていたことを差し引いても
あり得ない夢の続きだと勘違いして我を忘れた態度に引いてしまったに違いない
このままの状態は精神衛生上よろしくないからきっちり鎮火しなければならない
気持ち悪いと言われるのを覚悟して言えば気にしていませんからなんて気遣い
全くもって気にしていないと言い張りながら醸し出す雰囲気はすごく気にしていて
繕うことに失敗してしまったと動揺していることが手に取るように分かる姿に
こっちまで動揺してしまって語気が強くなって言い合い寸前
黙ってしまった彼女は言葉を探すように無言のまま視線を巡らせる
視線を落として小さく言われたのはあの時みたいに笑って欲しい笑いかけて欲しいと
どうやら夢だと勘違いした時に会えた嬉しさを爆発させたあの笑顔のことらしい
彼女への言葉が足りない俺と俺への気持ちに鈍感な彼女
お互いにもう少し甘えて寄り掛かってもいいのかもしれない
◆
693.執念がブール・ノワゼット
◆
私と約束した貴方とあの人
あの人をサポートするという名の目的を阻止する為に貴方が作った部署に異動する
キャリア組の彼の経歴に傷が付かないように巻き添えになって累が及ばないように
同じキャリア組でありながら仕事には理解がありながら不満なんて無いに等しいのに
仕事仕事で家庭を顧みなくなって結婚生活が破綻してしまったと嘘を付いて
対外的には降格処分の異動となってしまうからその前に切り出して彼とは別れた
あの人の暴走を止められない貴方に依頼された関連する事件が発生して
秘密裏に部署から離れて行動していたら捜査をする中で彼が負傷して輸血が必要に
何も知らされていない部署の仲間から緊急を要すると何十件も留守電が入っていた
急いで病院に向かって看護師に同じ型だから問題ないと言って最大限に輸血を
驚く仲間は彼と私が夫婦だったことも幼馴染であることもまったく知らない
小さい頃に白血病なった私へ彼から骨髄移植を受けたことさえ話したことはない
輸血が済んで彼の容体が安定したら目覚める前に仲間と会うことなく消える
その足で捜査本部へ彼の上司にあたる指揮官に前もって準備していた退職届を提出
懐かしい写真が並ぶ捜査資料を横目に説明することなく立ち去ろうとすれば
「貴女は何を知っているの?」と背中に問いかけられても「私は何も」と言うしかない
「何も知らされなかったから」あの人に約束をさせてしまったのは小さな私だ
鬼退治をした桃太郎はクーデターでも反逆者でもなく私にとってはヒーローだから
キャンピングカーを乗り回して延焼させながらの鬼退治は私が願ってしまったこと
保管員を油断させ気絶させて保管庫から拳銃を持ち出してあの人の下へと向かう
庫裏へと乗り込めば捜査の別働隊として動いていた仲間の一人が撃たれていて
あの人に銃口を向ける私に大丈夫だからと宥めるようにもう一人の仲間が言っている
仲間を撃ったのはあの人ではなくあの人と争っていた事件の渦中にある鬼だ
脈々とマンスプレイニングする鬼を逮捕したのは駆け付けた部署の他の仲間と捜査員
貴方はあの人を庇い私に撃たせないようにするけれど私は銃口をあの人から決して逸らさない
良い家族になれるかなと抱かれた疑問に良いか悪いかは私が証明になるよと抱いた希望
私から家族を奪った悪い奴を絶対に捕まえてと私が言ったから貴方もあの人も約束してくれた
法を守らせる人が法を犯してでも証拠を捏造してでもあの人は逮捕することを優先してしまった
貴方は私のせいではないと言ってあの人は自分のせいだから私に殺してもらえることを願う
それでも向けた銃口が震えて引き金を引けずに撃つことが出来ない理由は何よりも簡単明瞭である
◆
694.ほろ苦くも芳醇な浸透圧
◆
俺は華道の宗家の長男でたとえ構想を練ることもなくやっつけにしたとしても副産物並に数々の賞を取ってしまって天才的な才能だと釣り広告同様の健筆に持て囃されてはいるものの順にいては逆を忘れず逆にいては己を捨てずと出来栄えのフィット感の差別化が日進月歩したところで俺自身は華道というものがそもそも好きにはなれなかった
冒頭から改定も改修も無い歴史にしがみついて凝り固まったプライドの塊である宗家とイケメンでありモテてメディア受けする弁舌とプロデュース力があるものの華道の才能そのものが無い次男と華道の才能はそこそこあるものの努力はしないし伸び代も興味も無い気触れて金食い虫の三男では腹の中が見れないならば外側に見えるものだけを信じていればいいなんて思えない
周囲の期待に応える為に溢れ出す気持ちを押し殺して稽古や修行に励んで応えようとし続けて政略結婚じみたお見合い結婚をして数年は良かったものの金を取るなんてがめついと文句を言うのにタダでしてもらう厚かましさには都合良く気付かず口だけは出すお嬢様な妻の奔放ぶりと日に日に増してかけられる跡継ぎの繁殖‐プレッシャー‐が段々と重荷になって有症を言い出せないのにハッキリと拒む勇気もなくて妻とはそういう気持ちにならないのに仕事を言い訳にして避ける回数が増えていく
そんな折に肩を回すコミューターの息抜きと称して型破りに対抗意識を燃やすお稽古場の超低周波な監視から抜け出して着流しのままの散歩の途中で自動販売機に寄り掛かって帰りたくないと座り込んでいたところへ声を掛けられたのが私服ではあるけれども警察官だというハイグレードな厚情を持った一品一様である彼女との出会い
それから時々話をするようになったけれども決して浮気などではなくあくまでも散歩のついでに東屋に立ち寄るだけで意味のない他愛ない話でも俺にとっては意味はあるから彼女と過ごす時間に意味があるから味方になってくれていると思えたからこそ普段素直に感情を態度に表したり出来なくてこぼせない愚痴を言えたのかもしれなくて俺が求めているのは安息の地で自分を理解してくれる特別な存在なのだろうか
周りの誰かにとっては立ち止まって見えていても貴方の中では高い壁や長い坂を登っているのだから引っ張ることは出来ていないかもしれないけれど慕われていることは分かりますから自分を卑下しないでくださいと疲れて果てている時に干渉されすぎると口煩いと感じてしまうからこそ聞き役に回ってそっと寄り添ってくれる彼女には何もかも取っ払った本音を話しやすい
会えば時間がくれば別れてしまうから嫌だけれど会いたいから彼女を待っている日が増えていき会いたいなら言えばいいと優しい彼女は言ってくれそうだけれど会いに来たら既婚者である俺に気を遣いすぐに帰ってしまうから会いたくないという矛盾を抱えながらも癒やしを投与して衛生管理が整い勇気も貰ったからきっと明日まで頑張れる
そうパンケーキシンドロームを騙して誤魔化せるのももう限界で度牒からバードウォッチングされた生育不良な活動弁士の事例には誰も気付かなくて質疑応答すらテンパってままならないから妻に離婚を吐き捨て前室に置き去りにして華道からも妻からも逃げたくてサブウーファーで増強されたあの空間の何もかもから離れたくて降り出した強めの雨の中で速度を早めながら彼女の家に初めて向かう
未明近くの時間帯に加えて全身ずぶ濡れな俺に驚く彼女を抱き締めて抱きたいと言えば彼女は何も言わずに寒くないのに震える俺の身体を抱き締め返してくれて玉の緒の蒸練‐ハーバー‐に浸り明け方近くに目が覚めれば彼女は朝食の用意をしていて謝って済む問題ではないよなと言ったら出来るなら謝って済まして欲しいと困っているようで仕方がなさそうに笑ってくれた
帰らなければならない頃になっても雨はまだ降っていたから差していってとビニール傘を彼女に貸してもらってタイムスリップしたようなアーシーな雰囲気がおしくらまんじゅうで噴霧されて触れ回っている中を一人歩けば自然とかしめになってくれた彼女と離れ難い気持ちが強くなる
食べ比べされる家‐アイランド‐へ帰らなければならないけれどもそこに一番近い歩道橋から白む街並みを眺め一息ついて茶摘みの機を待つのは夢のまた夢と思うのをもう止めて枯渇した棋風を踏ざんしても目が黒いうちにと今一度覚悟の決意を固くして節理をボロカスにして破談の絶妙手にて新たな一歩を踏み出そう
『侘び寂びで風流な華燭の典を彼女と』
しかし彼は帰りたくなかった家に帰ることはなく踏み出そうとしたその一歩すら地面につくこともなく人気のない歩道橋の階段から転げ落ちてそのまま亡くなり争った形跡も無く雨で滑ってしまった不運な事故死だと警察が結論付けたけれども雨で流されてしまったのか碌な証拠が無かったせいとも言える
それから数年後にとある事件が起きて捜査一課に配属されていた彼女は彼を失った宗家一族と相見することになりその事件を解決することが彼の事故死の真相を解き明かすことに繋がるとは彼女はもちろん関係者の誰も思いはしなかった
事件を調べていく内に彼女と宗家一族の次男に接点があることが判明してしまい捜査員達から説明を求められてしまう
彼女と次男との出会いはエビングハウスの忘却曲線よりも早く彼の為の盛大なお葬式に気付かれないようにと遠くからではあるもののじっと見ていた彼女を次男が覚えていて産婦人科から出てきた彼女と鉢合わせたからでハッキリと断られたにも関わらず未婚の母‐シングルマザー‐となってしまった彼女を今まで支えてきたのは惚れた弱みが大部分を占めるからかもしれないと兄貴を抜けなかったけれども今のところ他の誰にも抜かれていないと笑う次男は年齢を重ねたこともあって彼にそっくりでとても良く似ている
次男は今回の事件以前から彼の死に疑問を抱いていて彼女にも伝えたけれども記録を見ても不可思議な点は無く彼に何があったのか必ず見付け出すと強く言えなかったのは事故だと信じている自分自身に彼が誰かに殺されてしまったと言うのと同じだからでそうは思いたくなかったからでそれでも事件が解決に向かう為には彼の事故死を調べることは必要不可欠だった
自分を端女以下だと言わんばかりの彼の言動に屈辱的な恥辱を受けたのだからそれ相応の行動に出るのは当たり前でこの生活を続けれないのならば白河夜船の交易が出来なくなるのならば彼なんて不要だから真後ろに人の気配があるとも気付かずに支えるどころか背中を押して突き落とされるとも知らずにケーススタディばりに前へ進もうとした彼を担架やストレッチャーさえ不必要になる事態を今回の事件も含めて引き起こしたことは仕方が無いことだと開き直る
あまりにも身勝手な理由だったからか残りの宗家一族へ次男が今までのことを諭せばオーソドックスはスタンダードではないと受け入れる姿勢を示してくれて泥棒猫と詰っていた人物が居なくなったお陰で彼女のことも認めてくれて驟雨な事件は幕を閉じた
因みに次男の勧めでDNA鑑定を受けて関係性を明らかにしたことで死後認知が認められて戸籍に父親つまり彼の名前が記載され彼の遺志と生きた証に彼女が流したのは彼と出会って見送ったあの日から初めての涙だった
◆
695.脱却の岐路
◆
貴方は姉が好きだと思っていた
家業を継ぐのは姉だと強く推していたから
貴方が姉に向ける視線はとても大切な人を見る目だから
でも幼い頃から見てきた舎弟として慕っているだけだった
すぐには信じられない私に貴方は見たことがないぐらい慌てていて
叶わない恋と思っていたのはお互い様だったんだね
◆
696.折り紙を開いて広げればそれはきっと千代紙
◆
とある組織に乗り込んで逃げ惑う奴等ごと壊滅させたけれどもコンビナートの盲点から振り下ろされた何かを寸前で躱して蹴り飛ばせばジャストミートして角材と一緒に女を吹っ飛ばしてしまった
しまったやり過ぎたと思ったけれど倒れ込んだ女はフラフラとしながら静止するように言っても聞かずに今度は鉄パイプを振りかぶりながら向かってくるから無理矢理気絶させるしかなかった
彼女は組織の構成員ではなく組織が乗っ取った工場の元々の持ち主の娘で長年組織下にいたことで自我をブレインウォッシングされてしまい侵入者つまり乗り込んだ俺達を排除しろという命令を受けて遂行していただけで彼女自身には全く敵意が無かった
敵意は無いことが分かったもののブレインウォッシングが深く入り込み過ぎていて彼女と意思の疎通があまり取ることが出来ずにこちらを見てくれることも少ないし気が付けばそっぽを向かれている
ある日病室に行けば居るはずの彼女が居なくて逃げ出したのかと思って仲間と探せば中庭に一人佇んでいて何をしているのかと思えば空を見上げていて視線を辿ればそこには虹が出ていた
ああそうか彼女はこちらを見たくない訳でもそっぽを向いている訳でもなく病室の窓から見える空を見ていたのだと理解して少し肌寒いから風邪を引かないようにとしばらくの後に声をかけて病室へと戻る
しかしながら別件で追っている今回とは別の組織が使った爆弾を作ったのが彼女であった為に暴騰した技術力をその組織だけではなく他の組織にも狙われる可能性を考慮して監視という名の保護を目的として俺達と一緒に住むことになった
あれから少し経った今では表情はまだまだ変わらないものの俺達の言うことを聞いてくれたり返事を返してくれたり俺が料理をする過程を興味深く前のめりにじっと見るまでに感情や動作が俺達の目に見える形で出てきてくれているのはとても良い傾向である
◆
697.画風の演目を新装にしなくとも
◆
彼の新人時代子供だった私は事件に巻き込まれ家族を失って塞ぎ込んでしまう
彼は仕事の一環だったのだろうけれど彼に助けてもらって持ち直したのは事実
写実の画壇をカッコいいと憧れもあって画商に挙手して彼と同じ職業に就いた
事件は未解決のままだし銘柄は見切り席の動議だけれどもグロース株のPER
いつか解決出来る日を願って住む世界‐エンブレム‐が違っていても峠を越す
彼と同じ職場に異動することが決まった時は荷が重そうよりも嬉しさが勝った
彼が私のことを覚えていないのはポーリングメディウムのように当然であって
シングルファザーでもディフェンシブ株のようにしっかりとしたレジデンスで
洗練されたファビュラスなフォレストを築き上げていて私には良いこと尽くし
家族の事件が掘り起こされて解決まで自分の手で捜査出来るとは思わなかった
そしてあまつさえ家庭がある彼が私を好きになってくれるなんて思いもしない
みすみす共食いのデットヒートにもならないからこそ自信を持って負けられる
無血のコネクションを繋げられたのは案ずる必要は無いという子供達の差し金
ワープも搬入も立役者の決を採るまでも無く理屈上手の商い下手へ顕在が決済
私も彼も彼の子供も彼の妻もお互いが大好きなら往々にしてそれは家族である
◆
698.双胴船‐インタラクティブ‐を根ざす
◆
旧家の家人が残した秘湯へ刀匠の検認はバーナム効果で寝付きをデッサンし感涙
太陽系の占星術へのお使いはグラディエーターとなって双方向の操舵で行き違う
確証を得られないまま戦隊は健常からオサラバしてアーレンシンドロームに立腹
しかしながら怪しさ満点の動きだったのはフルイドとして操られてしまったから
疑われる要因となった変な時期の異動に関しては人材補給が目的ではあるけれど
直隠しにしたかった急速な希望を以前からしていた理由は力になりたかったから
概略さえ無事では済まないけれどもナンセンスな俗名には追認して方を付けよう
◆
699.無知の知の環状
◆
文化部の健脚な記者はレコメンドな取材の途中で目抜き通りにて一人の刑事と出会う
捜査一課所属なのにも関わらず無為な変わり者だと言われていて一癖あるその刑事は
歴史あるお家はんと栄えある御寮人が節季払を多用し過当競争する芸達者なこの街で
検知‐センサー‐と技法‐シアター‐を持ち独特のアンジュレーションを築いている
専横な風来坊のように所在不明をエスコートするような交わらない取材と事件なのに
流氷のように眉目麗しいフィールドサインに寄港するのと同じような小気味よい甘露
フリー素材のように出会う回数が増えていき仲良くなるのにそう時間は掛からなくて
フォーリーのクエッションはインバルブメントをカラーリングし淡い想いを抱かせる
吟ずる世界観や一説の憧憬は史実や公記の再興より引き込まれるのは無きにしも非ず
愛他性の有効射程距離が広すぎて自滅しかねない刑事へ色違いのクラシカルな御守を
容姿端麗な夜鷹と一夜の夢の色事も良妻賢母の後家と密通の夜伽も水揚げを猫騙しで
しまりのない顔で戸別訪問して粉をかけ品評してはハシゴして連チャンで買い叩いて
空前絶後にして嗜好の名器を湯通しの身請けで接収ししたり顔で素気無く収得すれば
低迷する身代は左前で物乞いの占有屋には際物を謀反の矮小な禿には収容して折檻を
告知事項ありと伝来し課金を補強させ開かずの間の誕生秘話の専売‐ネタ‐を追って
ごめんくださいと支持勢力の情報筋へインタビュアーとして接近し突端の核心に迫り
難関と目される政財官の軍資金の立証責任を果たすべく負けじと奮い起こす成立要件
要職にある暴君からの圧力では無く貪欲な悪童が忖度しただけで捉え方の違いなだけ
金の亡者である与野党へシームレスに配慮したら政争の具はメリハリのある複雑さに
新興勢力と絡まり合ってウォークイン帝国の勢力図がぶつかり合ってウォークスルー
隆起した岩礁を掘削し瓦礫の中から採掘して宝物庫の出銭である助成金の関門を突破
一席設けた団欒はフットインザドアのフランクリン効果にて筆が乗って焚書をREC
停戦へ譲る気がないならば断念さえ奪うまでと鉄砲玉へ前金で策を打ち袋叩きで排撃
疑いようのない事故と出来すぎた話で暗礁に乗り上げても白旗は上げず気を取り直し
追い剥ぎによる厄災から難を逃れられる救命ボートと脱出ポッドはリンクが欠如した
むくつけな看守の居る保安検査場を擦抜けたお揃いの傍証が制札の特記事項の矛と盾
馬酔木の布教‐ネタバラシ‐を奉納して鎖状に鎖錠を重ねて念には念を入れた委任状
逆襲の配陣は協働にて歴史的な背景がある環濠な防護壁に抜け穴‐ポットホール‐を
地殻変動並みの砲撃にも正念場と頷ける提議を推進して予備軍にさえ警鐘を勧告する
群を抜いた切れ者の弁護士を通じて関係各所と連携を取りつつ総合的に判断した上で
慎重にお答えすることを検討させていただこうと周知の事実にも関わらず色めき立つ
リベンジマッチに嘶いて齧り付いたトレイルは裏拍を感知した親身‐ホットライン‐
カットバックのスイッチャーによる棋譜の航路図は現地集合の解散でホワイトナイト
クリフハンガーで緞帳を下ろすことなど床上げに際した比喩話法の漫談よりできまい
耳を凝らす刑事は寂声の奏法にて豪傑な技巧‐ヴィルトゥオーゾ‐一択である記者へ
波打ち際の臨界で復位の帰途に着いたファーレとファビュラスな音程で端唄の合奏を
◆
700.風説の流布‐バッシング‐の相場操縦‐ハルシネーション‐にて定跡を算定‐ラウンドアバウト‐
◆
「何か用?」
第一声‐イントロ‐からフレンドリーの欠片も無いヘルシーな声で出れるのは、相手が誰か分かっているから出来ることなので、ナンバー・ディスプレイも五十間道のようによりけりだ。
「特段、用というわけではありませんが・・・」
「大した用も無いのに掛けてこないでよね。ってゆーか、まさかそこに彼はいないよね?」
「・・・いませんが。」
捜査一課の刑事である彼の事件現場へ、異色で特例な立場を活かして情報数理の散瞳剤‐ダウンウォッシュ‐と化している友達。
「管轄でもない捜査に捜査権が無いのにも関わらず首を突っ込んで、お気に入りのベストセラーな小説家気取り?そんなこと繰り返していたら、あの人に目を付けられて部下の人みたいに、懲らしめる為のスキャンダラスめいた左遷になるよ?あの人、友達がいない上に、融通が効かないとか頭が硬いとか小っ酷く言われているみたいだし。真面目なんだからもっと不真面目になればいいのにね。まあ、その前にあんな希薄な器量の人とは絶縁した方が良いかもね。それと鈍(なまくら)にならないでさ、訓練だって必要なことなんだから。逆上せ上がって無精にならずに、桜の代紋を背負っているんだからね。ちゃらんぽらんに身が入らない姿じゃなくて、ちょっとはハードボイルドな動態を印象付けて見せてよ。ってか、こんな一進一退のセールスマンみたいな問答はいいのよ。これから忙しいんだからもう掛けてこないでよ。分かった?」
爆上がりした突然変異‐ボルテージ‐そのままにガチャ切りした後、拒絶するように電源を切る。随分な言われようですね。と強張った顔の友達が、相身互いな部下に言われていることを私は知らなくていい。
「いつもと大分雰囲気が違うようだけれど?」
「それのせいで興奮したのかもしれませんね。まあ、内々の潜在に溜まっていたものがとうとう出ただけの話ですから。」
今日この頃にご起立くださいと言われるのと同じように突き付けられたそれは、癖の強い言語の経済性をひしひしと、投影‐ボリューム‐を上げて熟睡‐コールドスリープ‐の定住へ一押し。
「あれだけ言ったんで、当分掛けてこないと思いますけど。何が目的ですか?」
「話が早くて助かるけど、落ち着き払っていて手放しで喜べないな。」
「慣れている訳ではないですよ。社是の延発にぼられるのが嫌になっただけです。」
異次元‐アジリティ‐で流行り病‐ソナー‐な友達、そこに左遷されてきた門下生‐ボビングヘッド‐のフリをした部下、入れ墨‐インフェルノ‐を飛散させていくトンチキの監察官、大口を叩いて母国の登竜門を先陣‐ノーチェック‐で切る彼。
頭と尻尾はくれてやれとか辛抱する木に金がなるとか言葉はあるけれど、もうちょっと上昇志向とか出世欲とかがないものかと、ちょっとやそっと爆増してもなんちゃってグルーヴでは、夢オチのお値打ちの美貌‐メランコリー‐。
白熱した区画‐リーグ‐で鎬を削って可処分所得の昇段‐ベースアップ‐って、高望みっぽいし名品‐アップグレード‐なんてどだい無理な話だから、しがない平はシュワーベの法則に当てはまらず不作‐アウトレット‐では、おまんまにも困ってタジタジと飢餓真っしぐら。
ユーモアな花魁にも精通した女郎にもなれずに、大門を打つ上得意へ揚屋や引手茶屋からの花魁道中をお歯黒な河岸見世から良うござんすねと眺めるだけだし、左遷でくよくよ悩まれるのもあれだけれども、下火になった入れ物の納屋から舞台袖で、捜査会議を傍聴して神出鬼没に家計簿の隅をつつくような習性は、パラパラ漫画の疑問手をパレートの法則でそれきり甘んじているのも、ね。
「性に合わない額縁‐レイライン‐は、常若の思想で黄金期‐イノベーション‐するのが一番。託児所‐パラダイス‐を拡大コピーに縮小コピーして、そのモデルケースとなるのでしょう?」
ゲインロス効果からのポジティブサンドイッチでそう問えば、答えは明白で行きたいところがあるとMVP‐ハネムーン‐のような足取り。
監察対象との対局に限らず、悪ふざけすら厳重注意を超えた屋内測位並の精度で、事前審査‐インスペクション‐と精緻で沈着な友達をなくす手‐ベンチマーク‐と、株式公開買付けの時報‐ペカット‐を鳴らしても、ビギナーにもアマチュアにもなれやしない機外‐ライフスタイル‐だから、監察官としての熟達した高名な威力‐コシ‐の力量不足。
揉み手の言うがままにつゆだく‐ウィット‐を効かせた代替案や献策を出しながら、不正の一つや二つリスナーから見逃して、カチッサー効果で世相を味方に付けて、腐食を撹拌するだけの技量が無くて、限定効果の無力感はカルチャーショックを生む。
「誘拐してその失態を押し付けようとしたけど、まさか仲間になってくれるとはね。あいつの顔を想像すると笑い転げたい気分だ。」
庇を貸して母屋を取られるとも知らないでと、バイオフィルムにしてやられる監察官を思い描いて、うしうしとリズミカルに奴は言う。
しっかり内見‐ロケハン‐した寂れて生痕‐オンボロ‐で放ったらかしにされたテーマパークの御用品‐アスレチック‐は、顔パス並みの付き合いのある私が裏切る手筈の意表を突いた詐取‐レボリューション‐を樹立したから、誘拐の監禁場所‐マリーナ‐から誘き出して始末する為の緞通‐ティスティング‐場所へと変えられた。
ここならセコい諸藩な番所も無いし見間違いも無く、混線皆無で好き放題に送電配電‐ストーリーテリング‐出来て、堰堤‐センターコンソール‐へ車幅‐パックス‐を遠因‐コネクティブ‐すれば、遠浅の運河からの三叉路の土塁にて混戦しなくても、小高い見附から天孫降臨の氏神にて皇祖神に即位出来る。
これからアップセルを狙う主力の席主である奴のスートのシンボルは、ハートにクラブを加えてスペードにすればダイヤが手に入るから、サミットのブースティングをここから始めよう。
「さあ、箱推し‐ファイナリスト‐のご到着だ。」
ゴールデンピリオドになるとは思いもしないから、仮眠‐カロリー‐すら寝る間も惜しんで駆け付けたのは、目の前に並んだ友達と部下と監察官。
犯人の確保より人質の保護を優先する人達であるから、配慮すべき表現が一部含まれるけれどもオリジナリティーを尊重しそのまま放送してみせて、真しやかな唐衣としましょうか。
「見切り千両、損切り万両って言うでしょ?一度ヤッてみたかったんだ。」
互角以上になれるそれを手渡して貰って、見たり聞いたりしてきたモノの肩慣らしの腕試しとして、流鏑馬‐コンシール‐の成功体験を重ねることにしよう。
斜め手前に居る監察官と部下を横切り、渦列の一番後ろに居る友達にだんだん近付くことで、ナイーブに外す確率を軽減して、弾丸を引き付けることで最初に狙うは、ユニットの豆知識‐ボーカル‐である友達。
「確実に、一発で、仕留めなくちゃ、ね?」
心臓の音‐スピードメーター‐が引っ切り無しに加速する。
「多分他の武器は持っていないっ!!」
「よっしゃぁ!!」
「なっ?!」
奴の背後から現れた三人組の内の一人は彼で、絶命へと導く弾着などいらないし空撃ちさえ不要だから、しゃがみ込んで頭の上で握り締めたままになっている拳銃の暴発を防ぐ。
「これ、どうすれば良かったっけ?」
「こうすれば。もう、大丈夫です。」
友達は固まったままの私の手から拳銃を受け取り、安全装置‐セーフティ‐をかけて「預かります。」と言って力強く頷きながら笑ってくれた。
部下と監察官は私を守るように盾になり、彼らを援護出来るように矛となり、連携を持って奴を逮捕出来たのは、何もアメージングなミラクルなどではない。
原木の榾木に濛々した切れ端をトッピングして葺けば、風味が増してそれらしい構図が見えるから、心証の雪崩現象が発生してラベリング効果の朝三暮四‐トリックショット‐なんて、出廷‐ハザードマップ‐より想定していないから。
殿堂入り‐ライセンス‐内の持っている知識‐ターミナル‐の中で、織元である奴の図案に当てはまるものを提示しただけで、得を取るか損を防ぐかしか考えていないのだから、夜光塗料‐フリンジ‐であるそれが私の正解とは限らないのに、勝利を確信して繁栄に油断した瞬間に、感光体‐ディーラー‐を見誤った奴は、友達達‐メーリングリスト‐に敗北したのだ。
「これはどういうことだ!?」
押さえ込まれながらも大声で喚いて、嵌められたことに今更ながら気付いたのだろう。
友達になったのはチャリティだとか、監察官だから近付いたのだとか、とりわけ引っ掛けられたことにムキになって、明け透けに監察官を罵って、どうしても自分が優位に他人を見下したいのだろうか。
同じ年齢で同じ職種で同じ部署で同期なのに、恋愛のABCすら分からないような奴に、格別‐タイトル・ロール‐であり重畳‐ヘッドハンティング‐される側の自分が負け組‐ペレット‐な訳が無いと思っているらしい。
一言半句を踏み倒して一言一句に寄与させる船を漕いだままの奸雄な画法は、譬えなくともなんて驕傲な高札場なんだろうか。
実際に起きた出来事をもとに手織りを制作して、隈取な誤植を識字の賢人に託した暗号を解いてもらって、拳銃を手渡してもらえるように仕向けて、奴の後ろに彼がいることを確認して、尚且つ悟られないように友達に近付きながら逆に奴から遠ざかる。
確実に一発で仕留められたもとい逮捕出来たのは、取り計らった八方睨みの抗戦が先行逃げ切り型の精算だったから。
友達は迷惑がられて悪目立ちしているけれども抜からないことは認められているし、部下は左遷を路肩だと思って仕切り直し入念に肩を温めているし、彼は猟虎の皮なところがあるけれど所管は鉄扇だし、監察官は靡かないところこそ折り紙付きなんだし。
王冠の中敷き‐ライフラフト‐が満座の魔鏡‐インソール‐だなんて百害あって一利なしで、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえと同じぐらいにお呼びでない。
出世なんか誰も望んでいないし、監察のお世話になる事態なんか皆分かっていてやっているし、処分だってせいぜい懲戒免職だし、あれもこれも言いたいことは4モーラよりも山程あるけれど、とりあえず一言だけ。
「私の友達を馬鹿にしないで。」
一つの事実にも幾人かの真実があるように、彼らの正義が許容出来る祭典だから、私と私の周りへの影響を最小限にしようとしてくれているから、だからこそ私は捜査情報を聞くことは無く、命が関わらなければ多少の無茶をしてもらしいとしか思わない。
そして私は一見の価値ありな聖人君子などでは無く、私は私の正義を貫徹‐ベット‐して動いているだけだから。
「さすが、私の友達。」
「声色がいつもと違いましたし、彼がいないことを確かめていましたからね。それで何かあったのだろうと。」
確かに友達に電話をしてかつ彼に用事がある時、彼が友達の側にいるかどうかを確認する。
それは友達が彼の分野に首を突っ込んでいることが多いからで、彼に電話をかけ直すよりも早いし、お互いに聞かれて困る話なんてしないから。
聞かれて困るのは彼ではなく、私の問いに答えてくれたから確信が持てた、友達との会話を他に聞いている人間が居るのを奴に勘付かれるのを防ぐ意味もあった。
「捜査権が無いのは権利が無い、つまり脅されている。ベストセラーな小説家はお気に入りではありませんが、陸の孤島を題材にしています。島流しのこの部署ともとれますが、孤独や味方が周りに居ないという意味なら、犯人と一対一であるということ。あの人に目を付けられるのあの人は監察官のことでしょうが、監察官はこちらで一緒に居ましたから、おそらく人物ではなく役職の方。でしたら、目を付けられる人物は奴一人だけ。懲らしめる対象は部下ではなく監察官の方で、未来形ならば失態を招かれる可能性がある。左遷は強制的な異動のことですから、どこかに連れていかれそうになっている。あの人に友達がいないのならば、確認出来る範囲には奴一人しかいない。小っ酷く言われているのを知っているのならば、言っている人に心当たりがあるということで、奴のことを指している。不真面目とは性格のこと以外ならば、不真面目になるには罪を犯せばいい。脅しが情報の類でなければ、何かしらの武器を持って脅されていることになる。希薄な器量と絶縁ですから、抵抗出来ないとか逃げ出せないとかで、孤立しているということですかね。鈍(なまくら)にならないで訓練だって必要ということは、脅している武器は刃物ではなく拳銃の可能性が高い。ちゃらんぽらんに身が入らない姿やハードボイルドは、ぞんざいに扱い暴力的な行為も辞さない雰囲気である。動態を印象付けるというのは、その場から動くような仕草を見せている。一進一退のセールスマンの問答とは、行くところがあったけれども奴に脅されて行けなくなってしまった。しかし行くところの通り道であるその場所は、職場に聞けば分かることを伝えようとした。これから忙しいのは、やはりどこかに行くから。もう掛けてこないでは、拒絶でないとしたら、掛かってきてはマズいか掛けられないかのどちらか。電源が切られてしまうから、GPSが使えなくなるとか。案の定、位置情報が追えませんでした。」
私が咄嗟に考えた暗号の数々に監察官と部下も友達同様に、肝が太いと敬服してくれるけれど、彼だけは自身に解けない小難しい暗号なんか寄越すなと言いたげだ。
「前から気になっていたんだけど、監察官とどうして友達になったんだい?」
部下が不思議そうに聞いてきたけれど、そんな理由‐モノ‐一つに決まっている。
「監察官に友達がいないと言われたから、だけど?」
「え?!それだけ?」
「そうだよ。」
何やら全員驚いているけれど、何も難しいことなんてない。
友達になりたいから友達になった、それだけの話だ。
「でも、声をかけてくださいましたよね、あの時。何故ですか?」
立場的にも性別的にも世間的にも、秘めなければならなかった関係と想い。
事件に遭い終えた生涯と閉ざされた未来に、現在進行形で思いを馳せていた時。
掛けられた声は高くて若くて、幼さが残る顔立ちだった。
「ああ、それは。写真を見ている顔が、父親が母親の写真を見ている顔にそっくりだったから、つい。監察官だって言われてびっくりしたんだよね。」
「お前、もし危ない奴だったらどーするつもりだったんだよ。」
「危ない人じゃなかったからいいじゃない。」
「そういう問題じゃねーだろ。」
悪戯っ子のように笑って彼と言い合っている姿を見ながら、監察官は思い出した。
最初にかけられた一言が「大切な人なんですね。」だったことを。



