636.名シーンが伸びをしても手刀を切ってもレトリックに過ぎない

少し調べたいことがあるので確かめてハッキリしたことが分かったらお伝えしますとか
明日お時間ありますか?事件のことで直接会って話をして教えたいことがありますとか
気付いた事を刑事に電話しようとして通じる前に話し掛けたのは正に犯人だったりとか
着信に気付いた刑事が折り返しの電話を掛けるけれど犯人と話中で通じなかったりとか
何かを知ってしまった重要参考人や捜査対象者が寸前のところで手に落ちてしまうとか
連絡が取れなくなったり姿を消したりした後に十中八九殺され口封じされてしまうとか
仕事熱心は良い事ですが家族も大事にしないとと家族の事を知っていると脅したりとか
こちらの言う通りにすれば借りを全てチャラにして無かった事にしてやってもいいとか
ただしもしももしも言うことを聞かなかったとしたら家族がどうなるか分かるよなとか
QRコードを複数枚重ね合わせて読み取らなければ読み取りエラーになってしまうとか
振り子時計の振り子の裏に隠しても隠された物の重みで時間が遅れて気付かれたりとか
通話状態だったのに突然途切れてその身に異変が起こったとタイミング良く気付くとか
ドラマや小説のように劇的でドラマチックな起承転結が正確に起こるなんてことは無く


やっぱり君が疑われてしまっているからいざとなったら庇って身代わりになれるように
犯行現場に駆け付けてあるかもしれない繋がりを示す証拠が無いか隈無く探して隠滅し
その代わりにわざと証拠を残してアリバイ工作もしたのは正解で黒幕を欺くことに成功
犯行時刻を警察に誤認させるよう仕向けて君のアリバイを確保し私のアリバイは無くす
捜査を打ち切らせて更には再捜査に踏み切らせない為に真実に辿り着かないようにする
隠していることをちゃんと話してくれないと正しく庇えないから伸ばし開いたこの手に
躊躇わずに縋りついて欲しいだって捕まってしまったら服役して更生なんて道は無いし
世論も求刑も判決も死刑になってしまうから犠牲を生み続ける君の罪を全て被ってでも
判断する先は長いけれど着々と進み固着する奴を殺したら君は空っぽになって壊れてく
君を失いたくないから君には生きていて欲しいから君の分の二酸化窒素を担当するから
けれど捜査の過程で私のアリバイが証明されてしまって君の身代わりにはなれなかった
しかし同時に君が犯行時刻に犯行現場から○分以上かかる場所にいたことが確認されて
映っていない時間よりも犯行時間が長ければ犯行など不可能であるからアリバイが成立
君にもそもそも犯行は不可能だから犯人なら何故断言出来ない?と詰められる必要無し
完全犯罪を祝う爆弾‐ハナビ‐を打ち上げたとしても真犯人ではないから対応にも困る
心配そうにオロオロしている姿を晒し感動的を装う無知蒙昧の滑稽さなんてものも無く


五十音順にアルファベットの大文字と小文字を当てはめてZvVv
キーボードのローマ字入力とかな入力を利用してfyiy
フリック入力の向きを利用して6・0↑5←0↑
カタカナをローマ字に直して母音を一文字ずつ前にズラしてホ0ナノ0ニ⇉Ho0NaNo0Ni⇉HaN0NiN0
五十音順の縦にローマ字横に数字を書いてA5E9B4E9
携帯の電話機能を利用して6000055000

文字入れ替え法とか頭文字暗号とかシーザー暗号とか数字置き換え法とか懐かしのポケベルの変換表とか暗号の数字が26番までだからローマ字とか言葉を数字にして電話をかけて暗号として残すとか「はんにん」を何としても残すダイイングメッセージとか

なんて複雑さを使わずに啓蒙よろしくわざわざ詳しく書かれているのは対策として始末する罠であって
数字は嘘付かないけれども嘘付きは数字を使って科学は嘘付かないけれども科学を使う人間は嘘を付く
金の為に場所を荒らして修理を請け負ったり盗みに入ったけれど殺してはいないと犯行を一部否認して
現場に残されたレシート等から事件当日の状況や足取りが判明したから行動を整理してみようかなんて
褒めるべき事柄であっても別に褒めていない事実を言ったまでで永字八法の盗塁を極めるしか他ないと
捜査ならば状況に合わせて設定して演じられるけれども例えば驚くようなことがあっても無表情のまま
驚かないの?と二重に驚かれたとしても素晴らしい愛想笑いさえ出来ずに驚きすぎただけと誤魔化して
穴場スポットをSNSで見たから行こうよと言われてそれはもう穴場とは言わないからと真顔で返して
顔色が悪いようだから無理はしすぎないでと言われても心配いりません栄養ドリンクは準備済ですから
残念ながらバレバレで分かりやすいのは本人以外でその言葉で余計に心配させてしまう事に気付かない
仕事にしたりお金を稼ぐことが大変なのであって司法試験なんてものは勉強さえすれば誰でも通るから
言葉そのものの意味は理解出来てもそこに乗ってくる感情が感覚では分からないし感情は理屈でもない
しかし理屈で考えるしか理解出来る方法が分からなくて言語を分析し結び付けるしか方法が見当たらず
被害者被疑者の心情までをも考慮するのが裁判官であり心情を理解し利益を守るのが弁護士であるから
法律に則って判断出来る検事になったのは必然で判例の前例はあっても私の中に前例が存在しないから

637.シーリングスタンプの紙吹雪

君の雰囲気が変わったと感じる
もちろん良い意味で
カービングみたいな感じからホージングみたいな感じへ
纏う空気がふんわりと優しくなった気がするのは気の所為ではないだろう

君が自分から望んで何か行動することが少ないから
俺は嬉しくなって君の申し出を承諾してしまったけれど
君が足りなくて君が欲しくて君の中で果てたくて
気持ち良く無かったですか?なんて言われた時には理性の糸が切れそうになって
下からのアングルはクセになってハマってしまいそうで
柄にも無く浮かれていた俺はその理由を深く考えてはいなかった

初めに比べたらシンコペートも結構上手くなって
それはもう男の沽券に関わるぐらいに
だから離してくれなくて堪らず吐き出した欲を飲んだことに戸惑って驚いてしまった
その瞬間ピシッと君と君が纏う空気が凍ってごめんなさいと言って部屋を出て行った
遠ざかって途絶えた足音にハッとして混乱を片隅に追いやって駆け出す

吊り橋理論を利用して思いとどまらせて君のコンフォートゾーンとして気を許せる存在に
やっと寛解に近付いてきたと思っていたのに揺り戻してしまった
周りに人がいても解決出来ないから見届けるぐらいしか出来なくて手伝ってはくれたけれど
数値化して可視化して感覚で対処せずに全て終わらせれば楽になれると
語らず描かず闇雲に動いているように見せ掛けて真の目的を隠していたあの時の様に
オンビートとオフビートの様にセッションの濃淡はハッキリしていて
お返しなんてされたらもう会えなくなりそうでこれ以上好きになりたくないから
エディブルフラワーと化したいと俺が願ってしまうくらいに
キョトンとした表情で首を傾げ存命を切り捨てようとデフォルトで決めていたあの頃へ

追い掛けようとして部屋から出ると廊下の隅に小さく丸まっていて
動悸と荒くなった息を整えるように短く息を吐いてタオルケットを取ってくる
君にかけてそのまま包み込むとピクッと体が動いたけれど体育座りのまま顔を上げてはくれない
独りよがりで自分勝手な私が悪いだけで何でもありませんから
名前を呼んでも理由を尋ねても君の口からは謝る言葉しか出てこない
何でも無かったらこんな風には泣かないと思いますよ
問い詰めるような口調になってしまったかもしれないけれど
功を奏したようでポツリポツリと話し始めてくれる
おんぶにだっこのマグロだと思い込んで俺の為に頑張ろうとしてくれた
押し殺した低い吐息も一際気持ち良さげな顔もとても嬉しくて
調子に乗ってもうちょっとって思っていたら調子に乗り過ぎたということらしい

堰を切った暴走も感情の成長の一部であり対連合学習のアンダーパス
ダイジェストで考えても痒い所に手が届くような押しも押されもせぬ
仕事‐カストーディアル‐ぶりの君にしては乱雑で均整が取れていなくて珍しく
信頼出来る筋からでもなく相談出来るツテも無くネットでつぶさに見聞きした
得体の知れない先鋭で不確かな情報に頼って鵜呑みにして
いかなる時も油断大敵とそれでも提案に乗る事にした囲碁のツケ

誰もが夢見る‐ハシタナイ‐世界で自分だけが真実‐フシダラ‐を見ていると
経験者は語るとばかりに内部事情に詳しいのを装ってクレクレと揺さぶりをかけるように
ギスギスした貴賤で愚陋な荒らし行為‐コミュニティ‐
世間話から情報を吸い取る詐欺師の狩り場‐アポカリプスのブレーンストーミング‐
自分が自分の為に叶えられなくて出来なかった事を他人の事情を借りて憂さ晴らししてストレス発散
暴力では証言を認めさせたり否定したり出来ないのに出来なければ裏切り行為と見做し
それぞれお互いの立場で考え様々な対立を生んで無いはずの記憶と戦っている気がするスケール感

ダウンロードしてインストールしてログを解析して実装して
シュチュエーションの真似をしたのではなく学んで理論上出来ると
インクラインに沿うしか出来ないのは俯いている時に出会ったから
全てを終わらせて前を向き始めたと思えば離れてゆきそうだから
確証を持つことが出来ない情報で徒に混乱させるつもりはないと
それから先の話を断り話題を強制終了されなくて良かったけれど
情報が多いのも考えもので捜査網から溢れ出ないように精査しなければならない
何かトラブル?私のことはいいからとすぐに俺の予定を優先して
ガヤガヤもザワザワもザーもワーもどんな種類の雑音も耳に入らないぐらい
自分の気持ちよりも俺が喜ぶかどうか悲しまないかどうかだけを気にしている

導き出した推理が新たな疑念を呼び正しい答えが遠ざかる
安全に配慮しながら実施していますとか放送内容を一部変更してお送りしますとか
この時はまだ知らなかったのですとか会員制をいいことに
奇遇を装って意気投合して軸足で献酒を蹴り飛ばして象意さえシュリンク
失敗したら認めたっていい失敗を許せるようになればいい
失敗したとしても挑戦を取り上げられずに成功するまで続けられることこそ
君の良さは顔も知らない奴らの承認欲求‐ランドマーク‐と奴らの扁額‐イイネ‐では分からないし
一瞬を永遠に残したいとはいえ残るのが良いものだけとは限らないから
不確かな世界で生きて声を上げた人が苦しんだままにはさせないと
様々な影響を受けやすくて実行も出来てしまって純粋過ぎて危なっかしい
無関係でも同一でも首根っ子を押さえてヤキを入れたくなるのは君のことだから

感情が豊かになった分俺の機微に敏感になり優生思想になりセンシティブになった気もする
酷く心配そうな目で態度で君の側にいる自覚はあるけれども
そんなことで俺は離れたりしないしいくら忙しくても君といる時間くらい取ってみせる
俺ならここにいるから大丈夫だから側にいるから

同じあやふやな言葉ならばネットなんかの言葉よりも目の前に居る俺の言葉を信じてくれませんか

638.純粋な嫉妬と純真な焼きもち

遅いから様子を見に来たとか迎えに来たとか挨拶のハグとか言われて納得してしまう
やましい気持ちが見え透いて下心が見え見えなのに
人懐っこい外面で小憎らしいその笑顔が彼女の空間に密接‐フェードイン‐

仕事していたら忘れられる気がして根詰めてしまって
イラッとした八つ当たりをしてしまって
冷めた物言いに籠もった怒りを感じさせてしまって
私の事を避けていましたよね?私の事を嫌いになりましたか?と悩ませてしまって
自分が何かしたから怒っていると勘違いさせてしまって

けれど俺の言葉を信じて欲しいという言葉を信じてくれて
原因が分かってホッとして腕を掴んでいた彼女の手から力が抜けた
不機嫌が割とダダ漏れだったことに気付いて焦るのは結構すぐの話

挨拶のハグでも嫌だと言ってすぐに奴に伝えるあたり素直で
心の狭い彼氏だと奴が拗ねたら考えてみれば私も嫌だと思うから私も心が狭いようだと
彼女に言われて奴が実質的に剥奪‐フェードアウト‐するのはまだ少し先の話

彼女が意に介さなくて興味も無い対象には成傷器になり得る
俺はそれになり得ない優越感を抱くあたり俺も結構黒い感情を持っているようだ
気持ちに寄り添い過ぎて優しい人で終わってしまうか多少ぶつかり合っても本音を話せる人か
俺は終わりたくないし本音で話し合いたい
彼女には見せたくないのも本音だけれども
彼女の第一人者だと安牌を気取って失いたくないから

639.扇情的殺文句‐ドストライクトリガー‐

両想いになった途端異動の辞令が出て遠距離になってしまったけれど
いつものように週末には特権の合鍵を使って交代でお互いの家を行き来して
いつものように終電を逃さないように帰ったり帰したりしなくていい安堵感で
いつものように用意した夕食を食べて風呂に入ってリラックスタイムになるはずだった

付き合って初めてのクリスマスだといっても生い立ちから俺も彼女もそこまで興味が無かった
だからこそこの目の前の号外級の光景に対して
目眩がするように視界がグラリと揺れて頭が真っ白になって息を呑んで釘付けになる
心臓がドクンと大きく脈を打って急に鼓動が速くなったのは驚きすぎて動揺したせいかもなんて
そんな言い訳は通じないぐらいに色気がダダ漏れていてゴクリと唾を飲み込む

何も言わずに無言で立ち尽くしていたのが不安になったらしくこうなった原因を口にする
クリスマスとはいっても何をしていいのか分からなくて職場の人達に相談すれば
花形であるサンタクロースの格好なんてどうだろうかと勧められたらしい
趣味の異なる男性陣も満更でもないし嬉しいと言って喜ぶと思うと言って
女性陣はどう関係あるとか理由は問い詰めないひとえにクリスマスという雰囲気が大事だと
同意見と乗っかったのではなくたまたま主張が重なっただけだと言えばいいと
時の支配者を左右する影の実力者のような確信犯‐フルカウントプレゼンツ‐
俺をからかう意味も込められているとも思わずに誘惑しちゃえと嗾けられた感は否めない

心の準備も腹積もりもしていたつもりだったけれどやっぱり恥ずかしいやら唖然とされて悲しいやら
物凄く悩んで一大決心をしたのに迷惑だったかなみたいな顔で気を落とした雰囲気で
やはり似合いませんよねすみません着替えてき・・
彼女が居た堪れなくてくるりと背を向けて立ち去ろうとするから引き寄せて後ろから抱き締める
好きになったその先を考えたことも無かったと言っていた彼女が俺の為に考えてくれた
所謂バックハグであるこれも俺が初めてだと思うと自然とスイッチが入るのは当然
離してくださいともがく彼女も掻っ払うような抵抗はしていなくて本気で嫌がってはいない
俺の気持ちも行動も受け入れてくれているのだから見合わせも取り止めもさせる気は全く無い

俺を誘惑したかったんですか?
いつもより幾分か小さく低めにでも甘くなってしまう声で彼女の耳元で囁く
だってこうやって着てくれたってことはそういう事ですよね
自分の言動の意味をピンポイントで言われて焦る彼女にその理由に気付かないなんて天然ですね
そう言われて喜ぶ人はいませんと気が動転しつつも怒る彼女はやはり斯様に天然だろう
優しくしたいけれどほんのちょっとの意地悪もしたくなって構い倒したくてしょうがない
口元にある耳をはむはむと甘噛みすればジタバタしていたのに俺の腕を掴んだ手にキュッと力が入り
必死に抑えようとしても抑えきれていない声が彼女の口から漏れ聞こえる
それは反則だとそんなのズルいと言いたくなるような可愛過ぎる反応がたまらない
あんまり煽らないでと言っても理性が奪われて溶けて失って正気を保てるはずがない
俺の名前を呼んでいるだけなのに止めないでともっとしてと言われているみたいなASMR
物欲しそうに見えて柄にもなく俺が早くしたくてそう見えたのかもしれないけれど
こんな気持ちで手を出したらきっと手加減なんて出来ないけれどもう無理

彼女をお姫様抱っこでベッドへ包むようにして覆い被さる
すごく可愛いですよと言いながら改めてじっくりと全身を見ようとすれば
瞳を潤ませながら上目遣いに服の裾を引っ張って恥ずかしそうな仕草
褒めているのだからこういう時は堂々としていればいいのにと思う反面
職場では見ない俺にしか見せない顔だと思うと独占欲が満たされると同時に
焦らされているようで誘っているようにしか思えなくなってくる
行動を起こすキッカケも可愛過ぎて誰にも見せたくなくて渡したくなくて
どこか遠くに連れて行って誰も何も俺以外触れられないように閉じ込めておきたくなる
ごめんなさい今夜は優しくしてあげられないかもしれませんと先に謝っておこう
それに死なない‐ニゲナイ‐ように捕まえといてくださいと彼女が言ったのだから
揺るぎない意思ではなく譲らない意志を持って俺は余韻さえも離しはしませんよ
ですから観念して大人しく身を任せてくださいね

640.襲の色目‐ビオトープ‐

象嵌のように皺を刻み込んでいるあろう眉間を指で押さえながらほぐし
淀んでしまっている体中の空気を入れ替えようと深い溜息を吐いた

多忙を極めて疲れ切っていても家には裏打ちすら持ち帰りたくはないから
再起不能にならないのは帰れる場所という抜け道と彼女という逃げ道のおかげ

棲み分けられるのも太刀打ち出来るのも目地のように繋いで白湯のように染み込んで
波乱を退散させ変異と縁を切らせて盤石な組成で吉報を齎し掻き消してくれる秘訣

おかえりと出迎えてくれた彼女をただいまと言ってそのまま抱き締める
いまいち状況がよく掴めていなくて戸惑っているのが身体越しに伝わってくる

少しだけこのまま居させてくださいと体重をいくらか預ける形になりながら充電中
躊躇いはなくそれでいて慣れないぎこちない手つきで抱き締め返してくれる

彼女の温かく心地良い体温のぬくもりに張り詰めていた体も心も解れて力が抜けて
深呼吸をするようにゆっくり息を吐くと鼻腔を擽る彼女の匂いに思わず首筋に唇を寄せる

慣れませんか?
ビクッと体を震わせる彼女のいつまでも初々しいこの反応には悪戯がとても捗りそうだ

得られる安堵と満足感それと同時にもっと欲しくなる欠乏感の火種
触れてからその傾倒さ故に戻れないと知るのは暗黙裡だけれどもう戻れなくていい

641.羊の皮を着た狼の報せ

君の様子がおかしい
話しかけてもボーッとしている
仕事のことで何か悩んでいるならば
情報の保護の観点からあまり役には立てないけれど
そういう時は言えない理由を言ってくれるから
脳内のハドルを見つめ直す必要は無い

踏ん反り返ってオイシイ話を万能感を持って武勇伝を語り
当たるも八卦当たらぬも八卦と押し競饅頭を頻発
デモクラシーを蔑み宦官のエントロピーで晒す醜態
インプレッションのお零れには飽き足らず
利潤を追求する活力で鬱蒼とした群衆雪崩を引き起こした
非の打ち所が無いイメージアップと抜き打ちのイメージダウン

前例の無いことをやっているのだから瑕疵に周囲が敏感になるのは当然で
週刊誌などどこまで取材して裏付けしているか分かったものではない
事前にお約束の無いことには今はお取次ぎ出来かねます
説明している時間はない信託の出落ちに一刻を争う状況だ
お待ちくださいアテがあると勝手なことをされては困ります
カジュアルをフォーマルに変えて会話が成り立つ気配がないなんてことはあって良い訳がない

個人差はあるけれども大きく取ればそういう方向性で傾向がある
絶対とは言えないけれども我が子同然であり失敗と成長を見守る責任があるのが親
一つに固まると犠牲が多くなるから散らばることで蔓延を防ぐ意味合いもある
皆が教えてくれた理想を詰め込んで吐き出せる場所を探していく
何かがきっかけで人は罪を犯してしまうし逆に守ろうともするから
活動場所が違うから出会わないなんて言い訳はせずにスケジュールを押さえよう

初っ端からスリリングでサスペンス要素満載の大どんでん返しのミステリー展開
そんな複雑怪奇を捻り出す空想とは違いゲノムは燃費が良く肩透かしの現実
操られたからと開き直れる性格ではなく傷付けた自分を責めて出会え出会えと射程圏内
来たる時まで見ているしか出来ないから最後の最後まで見ていたかった
つまらないから遠くの席だったのではなく全体が見渡せる寧ろ特等席を最優先確保
エピデミックはオーダーメイドで交雑のオッズ比とは一概には言えない

サーチュイン遺伝子の縁起物をアールドヴィーヴル代わりに
帰ったら説教だってと言われて帰りたくないなと言ったらその通りに換わり
自衛の為に持っていた武器を取り出せば使いこなせずに取られて凶器に変わり
虫除けスプレーを目に噴射されたからブロマイドからペンションに場所が替わり
体の調子はどう?と聞いても会話は弾まないけれど馬乗りになって羽を伸ばせる
とてもシンプルで単純で分かりやすく真相とは実はこんなものな気がする

申告敬遠をした袖ビームで自切や疑死も厭わないぐらいギャンギレ豹変して凶暴化
結構なお手前でと事件が解決しててんやわんやのウェーブ
君の大切な人生を奴の為に使うのはもう止めませんかと車を回す
さめざめの悲壮感はタチが悪いのではなく頭が良い憑依型は嘘の無い演技をして
仇をなすことを望まず静穏を望むあまりマジックナンバーを減らし
吟遊詩人も木を隠すなら森の中と軽やかに飛び越えてロビンエッグブルー

聞かないと言われてもつまらないものですがと勝手に話し始める
その節はとんだご無礼をお詫びに伺った次第でとドラムロールを掻き鳴らす
謝って謝罪が欲しい訳ではなくどうしてという理由が知りたくて
外側が滅びると内側も全滅するからオフる優しさではなく生きる術で
少し傷付けたところで致命傷を与えた訳ではないから少しも悪くは無いなんて
何かが起きないと変わらないのだから何かを起こしに来ただけという文殊の知恵は猿知恵で

願って当たり前の普通のことをただの異物として排除処理
忘れ物は忘れていることに気付くまで分からなくて
寒い中で待っていたのは抱き付く理由が欲しかったからで
帰ろうと言えないのは君と過ごす時間が惜しくなったからで
何事かとプレミアムな野暮用は二人っきりのウェハー
夢みたいな話と君は笑ったけれど俺には夢ではなく当たり前に描く未来

性格が丸くなったとはいえ局所的で特異的な君
愛されてなんかいないのに一方的に愛する煙突効果
モテ期なんて碌なことが無かったけれど君にはモテたい
面目無いけれど常に実況中継し慎重な見方‐プレビュー‐をしていないと
日常的にトラブルを抱えているような都会の孤独で
すぐに興醒めして鼻白むターニングポイントになりかねない

けれど判で押したように何でもないですとしか言わなくて
直ることのない不審な言動はまた何かを隠している
関わるなとシャーシャー威嚇されたりそっとしといて欲しいと言われたり
言葉通りに信用して受け取って欲しければもう少し取り繕って欲しい
思いを汲むのはいいけれど行き過ぎは駄目だと言うお言葉には甘えられない
小さい頃の大きなキッカケで嘘と秘密で成り立つ君

大丈夫?と聞けば当然のように大丈夫としか返ってこない
どうしてそういうことを言うんですか?
何でそんな何回も確認されているのか分からないくらい大丈夫です
それのどこらへんが大丈夫って態度なんですか?
外的要因は無く事件性は認められなくて初心を思い出してしまったらと
君が大丈夫と言う度に膏盲に入ってしまったのではないかとどんどん不安になる

ぐるぐると変なことを堂々巡りなことを考えているでしょう?
君は呆れたように息を吐くあまり感じの良い溜息ではないことは確かで
何の事でしょうか?お答えしませんとお答えしましたよね
とぼけないでください態度ですぐに分かりますよ
君を見てきた俺を見くびらないでくれませんか
肌感覚の予断を持って話してくださいと言えば図星の直談判

口籠ったのは目撃情報ではなく目撃してしまったから
同僚といるところを自然に笑っているところを
自分といる時はあんな風には笑わないと疑念は膨らみ続けても
嫉妬するよりも離れていかないかどうかが不安になるばかりで
それでも心配かけたくなくて迷惑かけたくなくて思いとは本音とは逆の事を言ってしまう
機嫌なんか直りはしない本当の君がその奥にちゃんと居るのに

良い人をキャラにしていると周りが見る評価はそれが基準になって
ほんの少しでもその設定されたキャラから外れた言動をすると
積み上げてきた柔らかい対応も一瞬でナシ判定に落とされ
普段からぶっきらぼうというキャラを私物化‐リソース‐していれば
少しの良い事をするだけで意外と良いところがあるなんて
評価が上がるなんて正(まさ)しく良い人ぶったって損をするだけ

聖人のような清らかな心の持ち主の完璧な人格者なんてそうそう居ない
中身が無い単に上辺だけの優しさなんて誰からも見透かされるから
たまに愚痴を聞いてもらったり誰かの悪口を吐き出したり
そうしたくなるのは誰だって少しぐらいは心の内に持っている
本音なんて言おうものならストレートな物言いになってしまって
相手の気分を害して怒らせてしまったり火消し出来ずに対立関係になったり

だからスタンスは誰も傷つけないように誰にも嫌われないように
周囲に気を遣い過ぎるあまり考え過ぎて気さくに出来なくて
紛うことなき温和にしようとして身構えておもてなしをゴリ押ししてしまう
全く言えない本音でトライアンドエラーが土壺に嵌り意気消沈
ネガティブ発言も言い出し辛く一緒にいても窮屈に感じているのではないかと
関係が深まることが無いように生き証人ごと断捨離をスタンバイ

適度に上手くやっても表面上だけでぶつかり合ったりしないから心は通っていなくて
分かっている知っていることをぶつけ合って喧嘩が出来るのは対等だから
対等でなければ一方の主張だけが通りもう一方が引き下がって我慢するしかなくなる
気持ちにブレーキを掛かけて一つの嘘から分からなくなって疲弊して
悪態と共に愛情まで感情を吐き出して確かめるように本音の告白が漏れるなんてことはなく
楽しい思い出のカウントアップは確実なお別れへのカウントダウンとして反比例

このところ様子がおかしかったのはこのせい
弱音を吐かないのは凄いと思うけれど一人で抱え込みすぎ
頼りないかもしれないし頼りない姿を見せることもあるかもしれないけれど
何でもしてあげたいしせめて俺にだけはもっと甘えて欲しい
迷惑をかけてしまうと思っていること自体が迷惑で
元サヤになり得る三角関係にはなりはしないと言い含める

生い立ちと性格の合わせ技で一筋縄では行かなくて
過去を抱いて未来を奪わないで今を生きて欲しいから
けれども君は俺の言葉を信じてはくれなくて
見当違いに明後日の方向に悩まれて勝手な憶測で
訂正事項が積み上がり一つ一つ否定してもそれすら否定される
不自然な笑顔で苦しい表情で無理をさせているというのは聞き捨てならない

成る程そうくるわけですかよく分かりました君が何も分かっていないことが
そりゃあ自然だったのは君の話をしていたからに他ならないのに
君がいくら大丈夫だと言っても俺には耐えられない
無理をして欲しくないから私と居ない方がいいという同僚の方がお似合いという
一方的な主張を一向に止めない君を壁ドンして問い詰める
俺のことを思って言っているようでその実俺の気持ちはガン無視にされて気に食わない

俺がどれだけ我慢しているか分かってます?
こんなことぐらいは恋愛感情が無くても出来ますよ?
試しにその煩い口を黙らせてみせましょうか?
何で抵抗しないんですか?
好きでも無い男に迫られているんですよ?
そんなに体の関係になりたいんですか?

目線が合わないし合わせないけれどどうぞと言われようものならやりづらい
実感が湧かなくて騙してまで付き合いたいと思えるような人間ではないことは
自覚しているけれど俺が君を本当に好きなのか信じられず疑って
胸は貧素でモデル体型でもないし萎えることがあっても俺のせいじゃないし
駄目だったらすぐに言ってください私は大丈夫なのでと俺がシタイならすればいいと
言う方も言う方だけれど真に受ける方も真に受ける方かもしれない

法定速度を守る検察官だから無駄にそういう知識はあって
基本的に近寄って来ない人は警戒対象外で近寄って来る人の中で
最も警戒対象だったのは警戒するより引き離した方が楽だと言う人で
それでいいんですと言うだけでいいわけないだろ!と返ってくることは想定外
軽い気持ちでやったからといって罪が軽くなる訳ではないことは理解しているはずなのに
ヤレれば誰でもいいとか思っているのだろうと思ったらこれ以上は耐えられない

腕を引っ張って押し倒して組み敷いて抗議を遮るように動けないようベッドに縫い付ける
平静を装う冷静なフリなんてもう出来る余裕は無く我慢の限界だった
滅多に目にすることのないイラついていることが一目で分かる気性の荒い部分
押し込めて溜まっていた胸の火の感情が乱れて揺さぶられて溢れて
けれども隠す気なんか微塵もなくて堰を切ったようにまくし立てて
突然激しくなった俺の剣幕に君が言葉を失っているのかどうかもそれさえ分からない

一気に爆発した強過ぎる思いの丈をぶちまけてぶつけて声が大きく揺れても止まれない
許しを待っていた奪おうと思えばいくらでも奪える人がそうされたなら
抗わずに流されるだろうに受け入れて欲しいと請うていたのに
怒鳴って多大な衝動を剥き出しにしてからしまったと思えるどこか他人事の後悔
口に出した言葉はもう消えないし悪いのは俺だととっくに気付いているけれど
君へと向かう欲望が大きく膨らみすぎて理性では抑えられない抑えが効かない

君に受け入れられないかもしれないという不安から本音を隠して
驚かせることも圧迫感や不快感を与えないようにと恐れて
些細なことでも嫌われたくないからデートの場所や食事の好みも意見は最小限
熱い心は時に行動や言葉に現れてしまうから情熱を抑え込みクールな態度で
自分が迫るのでなく君の希望を叶えるのを最優先して
内心凄く動揺していても今までなんとか乗り切って来たのに

嬉しくて表情が崩れて取り繕えなくて頬が緩んでいるのを見られたくなくて
それを誤魔化す為にそっぽ向いたり不機嫌な顔になったり
口を手で覆いにやけたその口元ごと顔を逸らしたりしながら
切羽詰まった表情を浮かべたりそっけなくて冷たい態度に見えていたのは
酷く無茶苦茶にしたいという真っ黒な欲望を知られたくなかったから
一度触れてしまったら止まれなくなって決心が鈍りそうになってしまうから

握り込んだ自分の拳が震えないように拳に力を入れもう片方の手で押さえ込む
独占欲が止まらなくてそれでも執着して束縛して怖がらせたくはないし
小さい男だと思われて愛想を尽かされたくなくて紳士的に振る舞いたくて
自分の一方的などうしようもない欲なんかで君を制御したくなくて
思わず触れたいという気持ちも暴れだしそうな欲も煩悩を捨てろと必死に
抑制して自制してなんとか平常心を保とうと物分りの良い人で居ようとする葛藤の日々

大切にしたいから気持ちが追い付かないまま無理矢理したくない
君の心の準備が出来るまで合わせてゆっくり進めようと決めていた
痛い思いも苦しい思いも怖い思いもさせたくなくて傷付けたくなくて
煽られてとか自分の欲を押し付けるようなそんな風にはしたくない
焦って信用を失くしたくない他人も自分も信じない君だから
一歩引くのも想いが溢れるのも好きだから本当に大切であるから

取り乱し過ぎて荒くなった息遣いを強制的に終わらせるように溜め息を付く
ぐちゃぐちゃな気分で尚且つ結局傷付けることになってしまった自己嫌悪
ソファーで寝ますからベッドを使ってください今は近付かない方が良いので
ほとんど目を合わせることはなくいつもより早口で言って
足早に部屋を出て行こうとするとTシャツの裾を結構な力で引っ張られる
首元が締まって後ろに数歩下がらされて踏み止まらないといけないぐらいの勢いで

私が良いって言ったら良いってことですか?
喧嘩を売るような口調ではなく単純に疑問点を問い掛けるような雰囲気
これだけ言われてされて振るわれて今の今までの空気感がまるで無かったことみたい
それ意味を分かって言っているんですか?
もちろん分かって言っていますよ知識だけはたくさんありますから
だから、なんで、そうなる!?本当に君という人は!

目一杯優しく抱き締めて丁寧にキスをしてそっと寝かせるように
外身を見ているだけで随分期待させてしまっているみたいですけれど
中身を見た途端にガッカリして尻すぼみしないでくださいね
不安そうに言う姿に根深い問題なのだと僅かな怒りと少し呆れが入り混じる
あまり自分を卑下しないでください俺は君がちゃんと好きですよ
俺が好きなのまだ伝わりませんか?

そんなぎゅっと握り締めていたら傷が付きますから手を背中に回すか腕を掴んでください
爪を立てても大丈夫ですからと遠慮がちに開いたり閉じたりしている手を誘導する
何もかも初めてで理解していた頭も準備していた心も予想していた体も一杯一杯
受け入れてくれるのは嬉しいけれど一回イケばかなり疲れてぐったりしている
明白な様子で無理はさせたくないし痛くなるのも避けたいしまだ戻れるから
信じてもらえて落ち着きましたからここまでにしておきましょうと言ったのに

ゆっくりと体を離せば体温が遠くなったことに気が付いて
暫し俺を見て物凄く分かりやすいガチガチな反応を示している俺を心配したのか
続きしてください最後までしたいです駄目ですか?
なんて言われたら駄目なんて言える訳が無いと言葉に詰まっていると
わたしをあなたでいっぱいにしてほしいです
ああーもうっそんな言葉どこで覚えてくるんですか!

ちょ、ちょっと待って、これ以上は、あまりもたない
なんて言う暇も隙も与えてもらえなくて妥協のない修正を
君の為に見せた一番格好悪い姿が君にとっては一番格好良いのか
俺の記憶から消し去ってしまいたいのに君が思い出させる
気持ち良くて近付いては来るけれど離さないと抜くことは無くて許さないと締め付ける
痛くは無いしよく分かりませんけど一つになるってこんな気分になるんですねと

ふにゃっと力の抜けたとろけるような顔で笑うものだから
自分の意思で抱かれた君だけれど君の意思と共に抱いた俺の方がもらってばかり
愛しいというのが目に見える形になるならばこういう感じなのだろう
あなたとなら良いあなたが良い
あなただから余所見をせずに恋をして
あなたと共に自分も愛していく

642.聞く耳を持たないターニングポイント

先輩と先輩の同期は部署の二大巨頭だ
そんでもって共通言語でディスカッション出来る仲の良さ
ライバルっていうよりお互いの不足を補い合っている黄金比って感じで
付き合っているんじゃないかっていうイヤミス的な噂が流れるほど
本人達は否定しているし先輩の同期は恋人が居る時期もあるから
本気で信じ続ける人はおらず総ツッコミすら起きるからかいの逸話‐ネタ‐になって
今では名を上げる者同士ニコイチの推しのような扱いになっている

一方僕はというと人懐っこさで肉付けした可愛い後輩感を出してはいるものの
フィールドワークの着手からロールプレイも進展無しの動き無しで
プレスリリースのインフレートは白けて寧ろ山彦さえ沈静化
先輩しか見ていないから先輩の同期が何を言っても大して反応しないけれど
先輩が何気無く言う一言の言葉でも一喜一憂して
ウイニングランを連勝しても時には人知れず大ダメージを受けてしまう
反射的に否定の言葉を返すとクスクスと笑われ完全に翻弄されている

単純に家で飲み直しとか良いワインが手に入ったとか
近所からお裾分けをもらったとか手料理をご馳走するとか
手に汗握る映画を見るとか趣味のものを手に入れたとか
ペットを飼って見に来るとか家具の組み立てが分からないから手伝って欲しいとか
家から花火が見えるとかベランダからの夜景が綺麗だからとか
雨に濡れてこのままだと風邪を引いてしまうとかウチが近いからとか
そんなぞんざいな理由や念入りな口実で家に誘うのは男らしくないだろう
若気の至りで情欲‐ガツガツ‐とPRのし過ぎで距離感を間違えて
しつこくて重いと逆に反感を買っては無意味だから
それでも構って欲しくて出来るけれどおっちょこちょいな前途ある若者感
ちょっかいをかけたりイジったりイジられたりノリツッコミしたり
結構上手くいけているはずだけれど頭の中に嫌われるかもという意識が常にあるから
中枢に入り込みたくても大きくは出られずに間合いは測るばかり

シズル感のガチ勢を利用して誘う食事も恒例になってきた
先輩に誘われたからって無理してない?
なんてニコッと気遣ってくれる先輩にますます好きが増す
取引先に先輩の同期が褒められたとご機嫌で
お酒が入っているからかいつもより饒舌に先輩の同期を褒め始める
川上と川下が競るように成績の下位との差はとても小さく上位との差は途轍もなく大きい
それが先輩に対する先輩の同期と僕との力の差みたいにマッチアップで引き立たせて
後輩の自分は対象外だと出来てしまっている距離感を見せ付けられているようで

先輩の涙を止められるのは苦楽を共にしてきた先輩の同期が一番上手いかもしれない
けれども先輩の一番良い笑顔を引き出せるのは一番可愛がられているこの僕だ
先輩の同期が先輩を捨て置いているのならば僕はでっち上げた後輩感を御暇させよう
安売りして年甲斐もない名折れだと陰で言われているのは知っているけれど
寄って集った総出の大盤振る舞いで食い入れると流儀の気が変わった
今すぐに先輩を口説き落としてみせる

先輩の同期の話は止めませんか
他の男の話はしないでくださいよ
先輩は今僕といるんですから
先輩が好きです
後輩じゃなくて男として見て欲しいです
先輩の同期とは付き合ってないんですよね
他に恋人なんていないですよね
先輩の隣に居るのは僕でも良いですよね
僕じゃ駄目ですか?

気付いて欲しいから少し強引になってしまったのかもしれないけれど
ハテナマークが浮かんでいる先輩に積極的に迫ってみる
だけどそんな節操の無い急ピッチで足元が覚束無いのに上手くいくはずがない
先輩はたじろいで僕から距離を取るように後ろへ下がっていく
だから僕はトレンチの距離を埋めるように先輩に近付いていく
過信していた後輩として人となりは分かってもらえているから
それを足掛かりにねだれば例え駄々を捏ねたセールスが過剰でもイケるのだと

すぐに返事がもらえるなんて思っていない
ただ伝えたかった
知って欲しかった
なのになんで逃げるの?
なんで僕を拒否るの?
まるで僕が怖い存在みたい
ディビダークのようにバランスを取ろうとして先輩の背中は壁にぶつかる
先輩が先輩じゃないみたいで底抜けに可愛い先輩を取り戻したくて
手を伸ばしたら思いっきり振り払われて勢い良く倒れ込んで先輩はどこかへ駆け出す
擦り傷の痛みと拒絶のショックが一気に押し寄せるけれども
このまま放ってなんて置けないから兎に角先輩を追い掛けようと走り出した

先輩の姿すら無くて広がる暗闇には車のエンジンの始動音がどこからか響くだけ
連絡手段のスマホは振り払った時に落ちて僕が持っている先輩の鞄の中で
闇雲でもとりあえずもう少し範囲を広げて探そうとしたら衝突音が響き渡る
何故だか気になっていや寧ろ崖っぷちの嫌な予感しかしなくて音のした方へ向かう
見通しの良い小さな交差点で電柱に車が突っ込んで煙を上げている
救急車を呼ぼうとしてクローズアップされ目に映ったのは
道路に血を流して虫の息で横たわっている変わり果てた姿の先輩だった

投げ銭の小物感漂うストーカーのせいで男性不信になって
先輩に興味がない先輩の同期は一緒にいるのが楽だっただけ
幾重にも付けられた傷を必死に塞ごうとしながら生きている最中
振られたんじゃなくて捨てられたんじゃなくて替え玉でもなく対象外でもなく
そもそも引導を渡す対象すら存在していなかった
大丈夫何もしないからなんて
泣きべそをかいて言っても巻き返しを図っても
そんなつもりは全く無かったという誤解は解けなくて
自分で蒔いた種の落とし前すらつけられない
身に染みて喟いたところでもう信じてももらえない

643.ホールマークの隙を突く

兄貴と喧嘩したらしくプチ家出ついでに突撃しに来た君
手土産にしてはスパルタで寝酒にしては火に油を注ぐラインナップ
アール・デコ調の筐体と汗牛充棟のハーモニーで抑揚も面白味も無い部屋
君は気にしていないどころか寧ろ落ち着くとか言っていて精神年齢が昔から高い

両親が多忙で面倒見の良い兄貴
両親が亡くなってからは親代わりも兼ねた兄貴
彼女が出来ても君に何かあれば飛んでいった兄貴
いつだって君にフォーカスしていた兄貴

兄貴が自分の幸せや彼女を心置き無く追えるように
自分が幸せになることで兄貴を安心させることが出来ると思って彼氏を欲しがった君
彼氏が出来ても強面でシスコンの兄貴を怖がって
怖くないと力説すればする程に信用が無くなって別れてしまう

だから偶然再会した俺らの元担任に良い人を紹介して欲しいと
いくら焼きが回ったところで強面でそっち方面のお友達が多いからと
そういう人達なら兄貴を怖がらないし元担任の知り合いなら安心出来ると
絶好の機会が訪れたと思ったのに肝心の兄貴には駄目だと邪魔をされたらしい

持ってきた袋から中身を出しながら言い方は可愛いけれどプリプリと怒っている
原資を並べて準備万端で座れとばかりに隣の席をペチペチと軽く叩く
ハイハイと合いの手を入れて苦笑いしながら用意した食器と共に座る
しかし初頭効果が続く結果論としても兄貴の判断は正しい

元担任の協力は非常に強力すぎるから簡単に乗ってはならない
日和見な教師の中で異体字な担任はピリピリした空気の偽企画で周囲を包囲
インナーチャイルドにドスを突き付けて餞別とばかりにドゥードリング
攻撃して自己承認の回復を図る人達から助けてくれた親友‐ブロマンス‐な兄貴

真偽の程が定かではないことを同定可能性で流布してクリック音で故殺する
言い逃れする為にあえてそう行動した可能性を指摘されてパクっている?
いやいや同じ意見なだけで自分の足で立てないから人を助けることで満足感を得ていると
誰も彼もが完璧に近い人間だと自負しているけれどその実不完全なAIでしかない

毎日が解釈の違いに満ちていて一つ間違えると怒りを買ってしまうのではないかと
終始緊張している必要がある環境で没個性化現象を除け者へと集団思考
ミルグラム効果とルシファー効果の合せ技で傍観者効果を増幅
謙遜する必要は全く無い何故なら褒める人間なんか誰も露程も居ないから

天下人へ鋭利なグライドスロープでMSAWが響(どよめ)いて
ILSもDMEも聖地巡礼に不正アクセスでは計算が狂ってしまって失速
ダイヤルアップ接続でコンバートして応答願いますと願っても取っ払いでは
気付かないうちに兼ね合いを試されていたのならば帰参の一因になりはしない

意見の言えない性分だけれどその分人の意見を聞けるとカウンセラーに向いている
ポーターのように襷を繋げと無責任に力強く言ってくれた有難味は今だから分かる
被害者遺族と加害者家族の為に追悼の意を表する専門家が集まってチームを作って
コンプレックスを否定して自己肯定をしてくれる揺るがない存在でいられるから

心の中で反論しただけなのにまるでそれが聞こえていたかのような反応をすると
さすが分かっているとご機嫌にただの感謝だというのに酷く思わせぶり
そりゃずっと見てきましたから
お気になさらずにと存在感を消せば消すほど気になって増し増しになる

気持ちなどただの脳からの信号で自分に対して他人事だったのに
兄貴の後ろをポテポテと付いて回っていた小さな君が懐いてくれて
大切な者が関わる時の君自身の欲なんて行動に移す前にブレーキが働いて
あっさりと諦めるぐらいに危ない真似も厭わないぐらいに兄貴が大好き

成長を感じることで離れていく寂しさを感じつつ大人の厚みが増しても
可愛い可愛い妹のままでいつまで経っても隠れ家的で心配性な兄貴
君がかかっている時の兄貴は白眼視でマジで怖いから仕方がない
空より高く海より深い兄妹の愛情に物分かり良く分別のある行動を心掛ける

頭をポンポンとして撫でれば子供扱いしないでと
乗せた手を払われて頬をぷくーっと膨らせてプンスカと怒られてしまった
勢いそのままに負けたら勝った方の言うことを何でも一つ聞くこと
君は意気揚々と勝負の賭けを提案したけれど結局俺が勝って君は拗ねてしまう

俺も酒が入って大人気なかったとは思うけれど手加減をしたらしたで拗ねるから
君には歳上としては勿論男としても失望されたくないし良いところも見せたい
頼られると良い人でいたくて心が狭いだなんて思われたくなくて
いつもジルコンのように笑っていて欲しいから君のオネガイは断れない

守りきるか射止めるか熱意が通じるか奪っていくか
付き合ってなんて言えなくて考えさせてと言うしか有耶無耶にする術が無かった
飲むペース早くない?と度数が低いとはいえと思って問えば無礼講だと意味不明な返答で
しょうがないから酒を取り上げようとすれば取られまいとしてポカポカと殴られる

力は入っていないものの無遠慮だから地味に結構痛い
今夜は帰りたくないと言われて帰さないと言えたらどんなに良いだろう
俺に向けられるその言葉達には何の含みもないことは明らかだ
そうでなければノコノコと酔っ払ってこんな無防備にはならないから

飲みすぎたのか文句を吐き出してスッキリしたのか結局君は寝てしまった
毛布をかけてスヤスヤと寝息を立てているあまりにも無防備な寝顔に癒されていると
無意識に頭を撫でていて兄貴と間違えたのだろう寝ぼけてガシッと抱き付かれる
ずっと一緒に居たいと愛のある無視でひっつく腕に力を籠めるささやかな抵抗

息遣いや体温が鮮明に感じられるこの体勢は非常にまずい
背徳感を刺激され無茶苦茶にしたくてたまらないと湧き上がって来た衝動を堪える
何とか引き剥がすのに成功し距離を十分に取って壁に背中を預けズルズルと座り込む
理性を総動員で勢揃いさせて耐えた俺超偉いと自画自賛したくなるほどだ

勘弁してくれ
どさくさに紛れて寝込みを襲うなんてことは絶対にしたくない
想いの線引きをラインをキッチリ引いて一定の距離感を保ってきた
それでなくても親友として信用してくれている兄貴の妹に手を出して水の泡なんてお断りだ

喉から手が出るほどの猛烈な手の内を見せたら最後
この関係はきっと終わってしまうからこの想いはトップシークレット
誰かのモノを好きになったら厄介で返せと言われても困ることになるのは俺の方
当たって砕ける勇気は無くて関係が変わるのならばこのままで良い寧ろこのままが良い

けれど愚痴をこぼしに来るぐらいには頼られていると思っていいのだろうか
望みを完全に自覚してそれでもこのまま貫くことが本当に君にとって良いことなのか
俺のことだけを考えてと思ってしまうからそれを君がどう思うのかと迷いが生じて
君に求められていないから引いているだけで本音では俺を望んで欲しいと願っている

男を簡単に家に上げんな男の家に簡単に上がるなと
口を酸っぱくして言っていた兄貴も耳に胼胝が出来るほどに聞かされていた君も
一応俺も一人暮らしの男の部屋で君一人で来るようなところでもないのは明白なのに
ちょっとぐらい意識してくれてもいいんじゃないかと叫びたくなる

いや寧ろ少しは期待していいのか
兄貴を怖がらないのが条件なら俺はその条件にバッチリ当てはまる
誰かの手を取るのならば俺の手を取って欲しい
兄貴に迎えを頼む電話をすればきっと疑問を全部封じ込めたような返事が来るだろう

言い寄って来る奴等は片っ端から叩き潰しても君には傷一つ付けないし
参戦する責任なら全て取るから安心してと言えば兄貴は安心するだろうか
そんな物騒なことを言うなんてとてもじゃないけれど安心なんて出来ないと
仕方がなさそうにそれでもきっと笑いながら君は言ってくれるだろうか

君と恋をしたいけれど君に愛されたいけれど
君の彼氏になりたいけれど君を彼女にしたいけれど
君の夫と名乗りたいけれど君を妻と呼びたいけれど
俺は君とだけじゃなく兄貴ごと家族になりたい

644.重篤な脳内麻薬をアタッシュケースに閉じ込めても向かい風の離岸流で虚脱して応答ナシ

出色の奴と話している時の君は時折とても嬉しそうにはにかんで
喜んでいるようだとそう思ったら焦れったくギリと胸が締め付けられる
君への気持ちに気付いたと同時に君から奴への気持ちも気付いてしまって
奴が君に向ける鼻につく笑顔と君が奴に向けるエーデルなスマイルが
勝利を糧に敗北を踏み台に出来ずに繰り上げ当選でしらばっくれられずに
照れ隠しなんて可愛いものではなくどす黒い永久磁石‐ジャーナル‐として
俺の中に積み重なっていくのを心が折れそうになるからと認めたくない俺自身が居た

随分と仲が良いみたいだなお前にあいつを口説くなとは言わないけれども
自己満足の為に前後不覚に迫って困った事態を引き起こすようなことはするなよ
可愛い後輩が先輩の食い物にされて一悶着なんて事態になるのは避けたいからな
ストロークのイズムを一瞬で表情を取り繕って分かったような口で注意する
しかし奴は単に人当たりが良いだけで興味が無く所謂所詮君の片想いだ
しかしながら無論中長期で再認識する可能性もあり状況的に今のところはだ
奴は肯定の言葉を止めたけれど止めるだけでワンオーダーを否定はしなかった
君が傷付いたことは確実であるから君がそれでも好きなならず者の奴に
両雄並び立たずと苛立ちを感じて嫌いだと感じるのは至極当然だろう

君が何やら周りの様子を見回しコソコソとしているのを見掛けて様子を窺えば
私用の携帯電話の画面を見て薄明光線の如く目を細めて微笑んでいる
背丈差を利用して覗き見すれば奴の隠し撮り写真で悪魔が囁く声が聞こえた気がした
君を呼び出して説明を求めれば俺に伝わっていると知られてしまったと
微塵も思ってもいなかったことが君の反応で図星だと確信を持ったことには
驚愕して気息奄奄に焦っている君には分かりはしないだろう
何にせよ思わせぶりに情報を隠されて気にならない訳がないから
君の為と奴の為となんて免罪符で黙っている代わりにと要求を呑ませる

ファーストインプレッションから余力も含めて本気にさせた君が悪い
君は本当は許可していないけれど本気で止めようともしない
全部バラして関係をナシにするか黙っていて奴の側に居られる現状か
どちらでも選べ誰も幸せにならない真実なんて必要なのかと恩返しを問い
黙っていることを関係を続けることを選ばざるを得ない状況に追い込む
所望するタイミングは俺が握っていて悲しむ姿を見たくないと思う反面
もしバラすのならばどのような反応を示すのか見逃すわけにはいかないとも思う

しかし望むモノを手に入れる為に手合わせする対価は犠牲にしかならない
しかし犠牲を払ったとしても手に入れられるのは望んだモノとは限らない
両思いの奇跡など信じない力ずくでも君の周波数をもぎ取るだけ
嫉妬してイラついて頭にチラついて集中なんて出来ない狂い咲く嫉妬心
全部俺だけの君だったらいいのにという独占欲と自分に言い訳をして蓋をする

衝動に身を任せて刻み込むように君からの好意が無い行為を重ねて結ぶ儀式
愛撫して指で掻き回してピストンの為にぐるんと回せば凄く締まるし
感度が良過ぎてトロンとした顔や目は俺にだけ見せる表情俺にだけっていう特別感
少しは抵抗しろよと思いつつ無理難題も体を許した心も従順な態度の優越感
今この瞬間だけは俺のモノで俺が君を独り占め出来る唯一の時間だから
押し寄せる快感の波に身を任せると更に昂ぶって土壺に嵌まっているのは分かりきっている

悪名が無名に勝ると力に任せた乱暴な戦い方いや同列の戦いにすらなっていない
正攻法では手に入らないし勝つ為の最低条件すら俺には存在しない
勝てないことは最初から分かっていたから邪魔をするしかなかった
繋ぎ止める為には思いがけず握った弱味で脅してでも側に居たかった
見えるところにキスマークを見せ付けるようにして離れたくはなかった
ニアミス効果の不幸に気付かされた幸せにそんな風にしか繋ぎ止める方法がなかった
結婚したいのは何パーセントかそれがそのままその人の点数になるのならば
間違いなく君は俺にとって百パーセントでパーフェクトな無くてはならない存在だ
二人っきりの時はアクセルを踏みっぱなし会社ではサイドブレーキで調整してなんとか保つ
君からハッキリと関係の終わりを告げられたら俺は悩まずに済むのか
いや君が断れないようにして悩むなんて烏滸がましいのは他でもない俺自身で
俺にとっては奴が危険因子だけれども君にとっては俺以外には居ない
優良物件に射幸心ではブローホールでエンストになるのは理に適っている

御茶湯御政道なんて頭脳戦ではなく単純に君と居る時間を増やしたくて
高級レストランに連れて行って食前酒すら君は拒否をするから
君と統一感を持ちたくて俺に恥を掻かす気かと圧の有る含み笑いで飲ませることに成功
完封して良い気分の帰り道酔いが回って気持ち良く自分語りをしていたら
後ろからドサッという結構な音がして振り返ったら君が道路に倒れていた
体には力が入っていなくて顔は真っ白で一旦一回整理しようと言う暇も無く
意識を失った君に狼狽えて名前を何度も呼んでも反応が無いことにも狼狽えてしまった

体調が悪くて解熱剤を飲んでいたのにも関わらず酒を断れなかったから
いや体調に気付かず断る理由すら言わせずに一部の地域のその時代にしか通用しない
局所的に当てはまる俺だけの当然を君に押し付けてしまったからに過ぎない
しかも君は奴が好きでも片想いでもましてや両想いでも何でも無かった
浮気者とかでもなく似た人物なだけで似た様な他人を代わりにと補って
早くに死んでしまった兄を一途に思って似ている奴の姿を兄に重ねて見ていただけ
ただ盗撮であるから知られたくなかったからだから黙っていて欲しかっただけ
冷静に考えられずそんなことにも気付けずに俺は痴情のもつれと勘違い

ベッドで目覚めた君は病院だと説明する前に俺の姿を見て俺と目が合えば
その途端にごめんなさいと謝りながら言わないでと懇願しながらパニック状態
言わない言わないからと言って君を何とか落ち着かせようとするけれども
俺が怖いって全身で表現されれば恐怖の対象である俺に為す術はない
健全なお付き合いの真逆の行動の自動化によって刷り込まれた暴論でこの有様だ

封じ込めた勘違いの事実を解放して君が好きという真実を明らかにしても
君を傷付けるつもりは最初から無かった本当に違うと言ったとしても
今までの信頼が皆無だから信用してもらえないし許してもくれないだろう
君の為にしか生きられないのに君の心を殺すしか俺には能が無くて
拒否されて償えない気持ちは行き場を失くして罪悪感が溜まるだけ
君に届かなくても今以上に胸が痛くなったとしても君を愛し続けたいけれども
君が見付ける人生に泥濘になる俺は居ないどころか俺が存在してはならないだろう

645.変遷は改訂しながらも書き下ろしで

手を握るのも許可を得ようとするのだから
キスやその先もしたいなら許可を得ようとするはず

そりゃキスしたいけれど勿論その先だって
でも初めての人に無理させたくない


初デートでデートスポットの人の多さに
チャンスを逃さまいとして緊張しながらも
逸れないようにと繋いだ手を振り払われたから
駄目だったのなら何が駄目だったのか?
人目が多かったから?繋ぐ前に聞かなかったから?
原因を探して頭の中がグルグルしてしまって
グダグダになって大失敗をした経験があるから


そういう事に興味が無いと思っていた

興味が無い訳ないじゃないか


皆に優しく薄く毛布‐ブランケット‐を掛ける人になりたくない
優しいのは優しくしたいのは君だからで君以外にはしたくない
怒りたい時や泣きたい時は君を隠してあげたい
笑いたい時や喜びたい時は君と一緒にしたい
話したり出掛けたりお泊りしたり同じ時間を過ごしたい

私とキスしたいんですか?

僕がじゃなくて君がどうしたいか


言い聞かせるように優しい嘘を付くぐらい私のことを思ってくれている
誰と比べることなくゆっくり僕達の速度でいきましょうと言ってくれる
上から手を差し伸べるでもなく下から支えるでもなく横に並んでくれる


私はしたいですよ

キスして良いですか?


気にして意識しているのは僕だけかと思ったけれど
ボンッと顔から湯気が出るみたいに真っ赤な顔
それでいて嬉しそうに笑うものだから
そのまま顔を隠すように抱き締める


本当に無自覚ですね
もう少しだけこのまま落ち着くまで待ってもらえませんか?
今離したら襲ってしまいそうだから

646.蒸発潜熱‐フラッシュオーバー‐

土産屋で君が見ていたキーホルダー
「今日の記念に俺が買いますよ」と言うと
「いえ自分で買います」と返ってきた
「いや俺が買いたいんで」と待ったをかけて
押し問答を始める前にぶった斬って
ペアのキーホルダーを持ってレジへと向かう

会計を済ませてお揃いだと思いながら戻れば
「やっぱり払います」と君が言うものだから
その話には決着がついたのにと戸惑いを隠せない
「私が貴方の分を払えばいいんです」
ポンと手を打つように豆電球がピカッと光るように
その発想力は行動力は直進して閃く
「そうすれば貴方が私に買うことが出来て私が貴方に払うことも出来ます」
好意全開の笑顔での提案が斜め上
「これでバッチリです」
良い案で解決出来たとばかりに笑う君
一言の破壊力が凄まじいことには気付いていない

俺にプレゼントしたいって言っているのと同じ
俺からのプレゼントが嬉しいって言っているのと同じ
お互いにプレゼントを贈り合いたいって言っているのと同じ

フゥと小さく息を吐く
分かっていないよな
っていうか無自覚なだけか
君とのデートに思ったよりもはしゃいでいたのかもしれない
君にそんな反応をされたらますます止まらなくなる
本当に敵わないし勘弁して欲しい
分かってはいたつもりだったけれど我慢出来るかな俺

647.チュベローズに酔う

夢を見たとても幸せな夢

俺が好きになってもらえるように努力しますから
その結果君が俺を好きにならなくても
それは俺の努力不足なだけで君のせいじゃないから安心して
見返りとか利害とか何かを期待して一緒にいたいんじゃないから

君が自分でそう思えないのならば俺が言ってあげる
よく頑張りましたと
重かった気分をスッと持ち上げてくれたように
少し軽くなった気分の心地で
一緒に傷付いて怒って泣いてくれた
当事者の私よりも彼の方が当事者らしかった

過去は離れていき未来は近くなるけれども今だって無くなるわけじゃない
良いことも悪いことも全部生きた証だからと
止まってしまった私の時間の針を動かしたのは彼で
固執せず自分の幸せを最優先にしてと私に望んだのも彼で
私は彼の望み通りに固執せず生きることに決めた

彼の好意に甘えるのを卒業して
受け入れて浸透して私自身からも湧き出てきて
一緒に寝れば朝起きた時も一緒だったことに
安堵以外に嬉しさが込み上げてくる

そんな時に見た夢
彼との結婚式の夢
友達と同僚に祝福されている中で
初恋の人に彼を紹介する夢
私のせいで亡くなってしまった初恋の人が
誰よりも祝福してくれている夢
初恋の人に彼と出逢えて幸せだと笑顔で言えた夢

目が覚めれば現実ではあるけれども
初恋の人がいない世の中ではあるけれども
彼が隣にいる日常である

何やら寝言を言っていたようで
何の夢を見ていたの?と聞かれたけれど
彼に言うのが恥ずかしかったから
覚えていないと誤魔化したら
そうなんだと言ってそれ以上問い詰められはしなくて
喧嘩にもならなかったけれど
言い回しが下手で私でも察してしまう不機嫌さ

仕事中も隠しているつもりでも同僚達にはバレバレで
彼の直の先輩が気を使って彼を飲みに誘っていた



初恋の人の名前と幸せという寝言
初恋の人とデートでもしていたんだろうか
初恋の人は亡くなっているから
焼け木杭に火が付くなんてことは無いけれど
気持ちがぶり返すことはあるだろうと心配になる
だって死んだ人には敵わない
身代わりで消そうとすればする程
身代りの存在があることで本物の存在感が増していく
思いも考えも変わるけれども
届かなかった残る想いも含めて決して消えたりしない
帰らぬ人は去った人ではなく永遠に居座る人だから
君に何と言えば良いか分からなくて
この気持ちをぶつけたくはなくて
顔も合わせづらいから避けるように
やけ酒に愚痴に直の先輩を付き合わせて
一気飲みして怒られて取り上げられたけれど
ベロベロに酔っ払ってタクシーを断って
大丈夫大丈夫と繰り返して一人家に帰ったはず



夜中に呼び鈴が鳴る
こんな時間に誰だろうと考える前に
ピンポンピンポンと連打され名前を大声で叫ばれる
近所迷惑だと頭をかかえながら
玄関の扉を開ければドアノブに掛けた手を取られ
酔っ払いとは思えないほどの素早さで
鍵を掛け靴も脱いで完璧な装いで
部屋に連れ込まれて壁に押し付けられて
逃げ場もなく縫いとめられて
今朝の寝言の件を再度問い詰められる

言い淀めばと視界が陰り降ってきたのは口付けで
反射的に目を閉じればたやすく唇をこじ開けられ
深く唇を重ねつつも強引にねじ込まれる
普段の彼らしからぬ性急な動きに
苦しくて息を吸おうとするとすぐさま塞がれて
呼吸が満足に出来なくて酸素が十分に吸えなくて
息が上がって次第に頭がぼーっとしてくる
口内をたっぷりと堪能してようやく唇を離してくれた
私をベッドに押し倒した彼をぼんやりと見上げる

彼の顔が間近に迫ってきて床もベッドも軋む音がする
酔った勢いで暴走なんて彼は後悔しそうだなと
頭の片隅で思いながらも拒む気にはなれないから
私は理由の疑問をスルーしてされるがまま
遠慮がなくなったように快楽に浸る彼は無防備で幼い
素直で可愛い尻尾フリフリな大型犬が
ぴっちり被っていた仮面を脱ぎ捨てて
隠していた野性味を剥き出しにして
急に本性を現したような迫力のある笑みに
嬉しさを感じる私は悪い女だろうか

次の日彼は目覚めるとまるっと記憶がないようで
私の家に居る理由も私にしたことも
覚えているのは直の先輩と飲んで
店の前で別れて家に帰ろうとしたところまで

身体目的と思われて嫌われたら立ち直れないから
当面の間は接触禁止を徹底して証明する
君に良いって言われるまで指一本触れないから
せめてものお詫びだという宣言と謝罪をされたけれど

覚えてもいないことで謝られても仕方がないから
でも無理矢理だった
まあ強引だったけれど無理矢理ではないよ
嫌だったら本気で抵抗するから
しょげる彼を慰める私は完全に主導権を握っている

夢の話をすれば言いたくなかった理由を言えば
彼はまた笑ってくれて元の元気な彼に戻るだろうか
その前に当て外れで八つ当たりなんて最悪だと
落ち込んでしまうかもしれないね

648.藁半紙の欄干

俺は所謂お歴歴の金持ち階級で
御年の父親の威光で暮らしている
チャーターも貸し切りも
容易に出来るけれども
庶民の生活も嗜むということで
一般的な階級の小学校に通っていた

一流階級に誇りを持ち
それ以外の階級を見下す
そんな父親に母親も姉達も迎合する

姉達は年の離れた跡取りの俺に
プレッシャーの矛先から解放されて
金使いは荒いけれど俺のことは放置気味

母親は基本的に父親に付き従い
跡取りを産んでその重圧から解放されたから
甘やかされても愛情は感じない

父親は全ての決定権を委ねられた絶対君主
跡取り教育にも熱心で常に監視状態
自分のように完璧になれと解放されない圧力
手綱は奪われ鎖を譲らされる

父親が動かすベルトコンベアで
母親によってソーティング
姉達の分までコンテナに詰め込まれ
俺の人生はロストバゲージ

勉強も人付き合いもそつなく
それなりに出来たけれど
人の上に立たないと満足しない父親に
根性焼きのやせ我慢にも満たない
反抗すら出来ないストレスが溜まって
イジメるのが彼女だったのはただの偶然
はったりをかましたりして
嫌がる反応が面白かったから

学校全体でせーのと申し合わせて
当然のように全員でもみ消し
学校や教員には寄付金という名の示談金
生徒や保護者には教育費という名の慰謝料
彼女の両親にはそれらにプラスして
多額の口止め料が支払われたから
彼女以外には傷は付かなかった

忙中閑有りと参加した同窓会
小学校卒業以来十何年ぶりの再会だけれども
基本的には変わっていなくて
終始会場は和やかなムードだったけれど
彼女は遠巻きで誰一人話し掛けようとはしない
何故来ているのか分からなかったけれど
運動部で一番の人気者だった奴に
声を掛けられてからは奴の側にくっついている

付き合っている雰囲気でもないのにと
不思議に思っていると女子達のヒソヒソ声が耳に入る
学生時代モテまくって取っ替え引っ替え
女を侍らせて女たらしに成り下がっていたようで
可愛い系でも美人系でもなく化粧っ気も無いのに
存在感があって惹きつけられる彼女で
気を引いて遊ぶことにしたらしい

トイレに出た時にそのことを伝えようと
声を掛ければ至極当然なのだが冷たい態度で
話し始める前にあしらわれそうになる

もたつきながらもちょっと話がと言って
彼女の腕を掴めば離してと言われたけれども
待ってと言っても大人しくしてくれなくて
振り払うように怖がるように
離してと言われたから思わず離してしまった

反動でよろけて咄嗟に庇うなんて反射神経は無くて
結構な勢いで壁に頭がぶつかる音がする
血は出ていなくてもたんこぶぐらいは
出来そうだと予想が付くぐらいに

どうすればと思うのと同時に
人の声が聞こえてきて気が動転して
危惧を伝えることも
怪我の謝罪もせずに
彼女を置き去りに立ち去ってしまった

その後普通に会場に戻っていたから
彼女の姿を見てホッとした

同窓会から何日か経って
町中で奴と彼女が一緒にいるところを見掛け
気になって追い掛けて探すと
人目につかない場所で彼女の服は乱れていて
何を致していたかは一目瞭然の場面

見たことは内緒にしろよ
まあこっちは別に言ってもいいけれど
そっちは昔の事バレたらヤバいだろなんて
笑いながら脅されれば何も言えない

脅迫になっていないのは
告発なんてなっていないのは
彼女の両親が気にしていないからだ
訴えたところで事実無根と言い張れば
その主張がまかり通るから

被害者は彼女なのに
加害者は俺なのに
傍観者には奴も含まれるのに
償う気も無いあってはならない罪だから

彼女のことが奴との関係が気になって
頭から離れなくて歓楽街を彷徨っていれば
何やら男女が言い争う声が聞こえてきて
彼女のことを考えていたからか
その女の声は彼女に似ている気がして
見に行ってみれば正に彼女本人で
奴ではない見たことも無い男に
ラブホテルへ連れ込まれそうになっていて

火事場の馬鹿力並の力を
青筋を立てて発揮出来たのか撃退に成功
通り魔的犯行だったらしく
反撃されることもなく逃げていってホッとした
彼女に声を掛ければ俺を認識したのかしてないのか
安心したように笑って気を失ってしまった

俺ん家に連れて帰るわけにはいかず
かといって彼女の家も知らなくて
仕事帰りっぽい格好だけれども
見回したところでラブホテルしかないから
仕方が無く入ってベッドに寝かせ
誤解されたくもないから距離を取って座る

暫くして目覚めた彼女に状況を説明すれば
お礼と言って自分の服を脱ぎ始めようとするから
待ってそういうつもりじゃないと
慌てて否定すれば距離を詰めてきて
今度は俺の服を脱がそうとするから
引き離して十分に距離を取れば
脱がせたいタイプ?それとも脱ぎたいタイプ?
なんてそんな話はしていないと
全力で拒めばとりあえず止まってくれた

納得はしていないようだけれど
着崩した服を戻してホテル代と言って
彼女はベッドに金を置いた
はした金かもしれないけれど貸し借りは嫌だからと
奴の言っていたイジメのことは言わないから
とも言って一人で出て行ってしまった

いくらなんでも俺が連れ込んだのに
受け取れないから金を返そうと
ラブホテル付近で待ち伏せれば
簡単に会うことが出来た
最寄り駅から家へと帰る近道らしい
返金を固辞する彼女とは目が合わなくて
心なしかふらついていて
聞けば熱がある様子で放っておけなくて

昨日の今日でしかも熱があって
近道とはいえ女でなくても危険な道
家まで送ると無理矢理付いて行く
着けばそれはそれは質素なアパートで
金が無いのが一目で分かる雰囲気

彼女の父親は赤提灯御用達で酒癖が悪い上に
躾と称して性的なものも含めた暴力
彼女の母親は自分が逃れる為に見て見ぬ振りで
日々の鬱屈さの鬱憤を晴らすように散財
常に金欠な彼女の両親にとっては
娘がイジメられたおかげで金が入り渡りに船

彼女の両親はとっくの昔に
荼毘に付されていたけれども
男運が無くて女運も無いに等しくて
学生時代から社会人になった今も
場所が次々と変わるだけでどの時代にも関わらず
ワンストップのワンナイトをギャランティー
男に振り回され女には遠巻きに無視され続ける

恥ずかしがっているだけで
本当は自分のことが好きで
向こうが照れているのだから
こちらから近付いていかなければと
一方的に恋心を募らせてはスキミング

ショルダーハッキングでしゃしゃり出る
鳴り物入りのストーカーには遭うし
美人でも可愛くもないのに何故だかターゲット

駆け込んだ警察に相談したところで
襲われても彼女にも責はあるのではないかと
まともに取り合ってくれた試しがない
食事代やホテル代どころか生活費さえ払わされ
貢がされ続けるから金も無い
それでも死ぬのすら面倒くさくて
ただただ毎日を繰り返している

暴力のスタンプラリーはオールコンプリート
たわわに実った良し悪しを矯正して再建など
公証役場でも決め手に欠けて到底出来やしない
彼女にとっての人間関係はいつの時代も
ゼンマイがフルスロットルのダークパターン

熱に浮かされているからか
質問した訳でも相槌を打った訳でもないけれど
いつもの彼女なら押し黙ってしまうような
彼女の人生を滔滔と話してくれた

昔は彼女のことなんて何とも思わなかった
イジメる対象として常に側にいたから
卒業以降同窓会まで会わなかったけれど
特に会いたいとも何をしているのかとも
微塵も露程も思わなかったのに

彼女が俺のモノではないから?
彼女が俺を見てくれないから?
彼女の側に居るのが俺じゃないから?

守りたいと思ってしまうのに
守ろうとすればするほど逆転現象
薬は飲んで眠ってしまった彼女を
一人残しては帰れなくて
心配になって帰りたくなくて

結局朝まで彼女が目覚めるまで
ベッドの横に居ることしか出来なかったけれど
目覚めてくれてホッとして
彼女の顔からしんどさが少し抜けて
彼女がありがとうと言ってくれたことが
こんなにも嬉しいことだと初めて知った

しかし朝帰りを家族に咎められて
この間のようにフラフラされても困ると
そろそろ結婚して身を固めろと
どこぞのご令嬢との見合いを
勝手にセッティングされてしまった

父親の顔に泥を塗る訳にはいかないから
拙くても今までの傾向と対策を持って
あれこれ手は尽くしてみるけれども
頭の中を占めているのは彼女のことばかり

ご令嬢と彼女をいちいち比べて
彼女だったらどんな反応をしてくれるか
どんな顔をしてくれるか
どんな風に笑ってくれるか

そしてふと気付く
彼女の笑った顔は見たことがない
嫌がる顔も睨んでくる顔も
泣きそうな顔も怒った顔も
悲しそうな顔も諦めた顔も
表情が無くなってしまった顔も
負の感情はたくさん見てきたけれど

そして納得する
誰よりも純水な彼女の周りは
マイナスをもたらす負だらけで
俺が不倶戴天の筆頭だったんだから
そんなのは断トツで当たり前だと

勝手に想って
勝手に思い出して
勝手に落ち込んで

ご令嬢を置き去りに悪酔いして
気付けば彼女のアパートに来ていた
これじゃ俺がストーカーだと自嘲する

酔いが回って玄関の前で座り込んで
彼女に身勝手に会いたくて
迷惑だってことぐらい重々承知だ

好きだけど恋心を自覚したけれど
いつからとかもう思い出せない
お目が高いと自画自賛したいくらい
彼女は俺にとって存在が大きいガンギ車

帰ってきた彼女に声を掛けられる
何故居るのとか
風邪を引くとか
その声がとても優しくて
俺なんかに慈悲深くて

込み上げてきて泣き噦る
ごめん好きずっと好きだった
俺なんかが好きになってごめんなさい

649.醸成される色の恒常性の系譜など汽水域に書き替えられはしない

あの時ならば受け入れられたと感じていても
あの時から時間が経過したことで
手薬練引いていた気持ちに整理がついた
つけることが出来た今だからこそ言えることであって
あの時だったらあの時であっても
いやあの時だったからこそ受け入れられなかった

話を聞く準備なら出来ているから
試さなくても傍にいるから
二度と離れることなんてないから

君の語る救いがどんなに嬉しくても
今は全くもって違う気持ちで
あの時の心情とも事情とも違うから
今の私にとっては救いでも望みでもない

私の為に腕を磨いてきた君だけれども
その間に私だって成長しているから
その救いを求めて必要だったのは
何でもないから君の声が聞きたかっただけと
歯切れの悪い不安そうな声を出して
突然の電話で君を困らせていた昔の私だから
君にとっての私が昔のまま更新されていない

私自身で選択を積み重ねてきたから
君が居なくても君に頼らなくても
日々の中で得たものがあって
それは私にとって必要な過去だから

あの頃に戻ってもあの頃からやり直しても
私にとっても君にとっても同じにはならないし
望んだような都合の良い結果になるとも限らない
だってこの変化が無ければその記憶が無ければ
君の想いは受け入れられなかったから

しかし変化と記憶があったからこそ
立場的にも状況的にも許されなくなってしまった
君の想いを断りたくはないけれど
受け入れられたとしても受け取ることが出来ない

結局私の想いと君の想いは重なることはなく
残酷にどこの時点でも駄目なことには変わりない