凌とは同い年であったが、学部が違ったので、講義で一緒になることはなかった。
 しかし裏庭で会うようになり、昼食を共にする友達となる。時間的には1時間もなかったが、それでも美礼は嬉しかったし、何より楽しかった。

 大学に行くことが苦痛で仕方なかったのに、行きたいと思うようになる。凌の人柄に触れ、いつしか恋心を抱くようになった。

 でも今までまともに男の人を好きになったこともなく、ましてや彼氏もいなかったので、打ち明けることはなかった。
 それよりもこの関係を失う方が怖くて、胸に秘めたままでいいと思った。

 しかしお昼に会うだけの関係は、ある日変わる。
 その日もいつも通り昼食を食べていると、突然凌が切り出した。


「――美礼のことが好きなんだ」

 嬉しかった。夢じゃないかと思った。

 美礼に断る理由はなく、ふたりの関係はこの日から恋人へと変わった。


 それからと言うのも、大学に行くことが更に楽しくなる。凌の友達に彼女だと紹介してもらえ、裏庭だけでなく、校内でも待ち合わせするようになった。
 もちろん大学内だけでなく、放課後や休日はデートに出掛けた。

 美礼は凌に全てを捧げた。身体も心も。
 そうして凌のことをどんどん好きになっていき、もっと愛してもらう為、ファッションや見た目にも磨きを掛けていった。
 高校の友達が見れば、その変わりように驚いたことだろう。

 彼に抱かれる度、幸せだと感じた。
 この人に出会えて良かったと思った。


 ――しかし美礼の幸せは、虚像に過ぎなかった。