――都内の大学に通う美礼は、友達と呼べる者がいなかった。

 小中高と、少ないながらも友達はいた。それは周りから見れば地味なメンバーで、クラスの中心のギャルグループからは陰口を言われることもあったが、特に気にならなかった。

 しかし美礼が行く大学に友達は誰もいず、高校卒業と同時にひとりになる。
 大学でまた新たな友達が出来ると考えていたが、入学して2ヶ月を過ぎても、美礼はひとりぼっちのままだった。

 楽しそうにキャンパスを歩く人達。友達と笑いながら、恋人と一緒にいる姿は、キラキラ輝いていてやけに眩しく見えた。

 そんな光景を見ていたら、自分のことが惨めに思えた。
 夢を実現させる為に入った大学生活は、楽しいものだと想像していた。

 なのに現実は余りに掛け離れていて――次第に休みがちとなっていった。

 と言っても、親に学費を出してもらっている身。多少無理を言ったこともあり、退学なんてもっての外で、単位を落とさないよう、ギリギリで通っていた。
 だが悲しさは徐々に、美礼を蝕んでいった。


 利用する人が少ない、ひっそりとした裏庭。最近よく訪れては、ここで時間を潰す。
 今日も昼食を食べようとやって来て、お弁当箱を広げた。

 毎日母親が作ってくれるお弁当は彩り豊かで、豪華さと美味しさが伝わってくる。
 料理が得意な母親のお弁当なのに、食べても食べても味がしなかった。

 ぽろっ。自然と涙が滲み出てきて、頬を伝う。
 本当は美味しいはずなのに。

 ひとり寂しくお弁当を食べる自分が、惨めで情けなくて、とにかくただ悲しかった。