「人間の男程、容易いものはないわね」

 くすりとエリーが笑ったところで、ゼクスがやって来た。自分が注文した紅茶を手にして、エリーの隣に座る。

「エリー。色々訊いてくれ」
「はい。横井、サイトについて知っていることを全て話しなさい。まずはサイトの管理者は誰なの?」
「サイトの管理者は……根岸(ねぎし)隆介……」

 感情のない表情から、また感情の籠らない声で呟かれる。エリーの術により分かった管理者の名を聞いて、ゼクスの眉がぴくりと動く。

「隆介……? エリー続けてくれ」
「はい。管理者の他に共犯者は? いるなら全員の名を言いなさい」
「共犯者は……他に……田上(たがみ)昇、溝口(みぞぐち)篤……。後は俺です……」
「なるほどな。横井、下の名前を教えてくれ」

 ゼクスが言った後にエリーが命令すると、横井は自分の名前を告げた。

「俺は……横井聡太です……」
「もういい。エリーありがとう」

 分かりましたと言って、術を解く。すると糸で吊るされていたかのように、ぷつんと横井の体から力が抜け、机の上に突っ伏すように倒れた。
 意識はなく気絶している。エリーの術を掛けられた相手は、術が解かれた後しばらく力を失うのだ。

「たまたま目を付けた相手が、友人でラッキーだと思ったんだが……」

 はぁとゼクスはため息を付いた。

「何故、玉川一史を陥れることをしたかも訊こうと思ったが、お前達の名が分かれば嫌でも分かった。くだらんな」

 不機嫌に倒れる姿を見ながら言う。持って来ていたストレートティを飲み干し、立ち上がった。

「やはり人間界の紅茶はまずい。エリー、帰って紅茶を淹れてくれ。口直しをしたい」

 かしこまりました。エリーは嬉しそうに答えて、ふたりで店を出た。