「それでですね、昨日の今日だけど、誰がその管理人なのか分からないんですよ。家に帰ってから探ってはみたけど……」
「なるほど。しかしネットと言うのは、そうやって他人のプライバシーを簡単に書くことが出来るんですね」
「え? 今の時代、そんなの日常的じゃないですか」
「あぁ、すみません。どうにもパソコンやネットの類いが苦手でして」
そう言ってゼクスは苦笑いを浮かべた。聞いた一史は、苦手と言うよりも知らな過ぎるだろと思う。
「今やネット時代だって言うのに、知らないと色々不便でしょ? あ! だからこの店のことも検索に引っ掛からなかったんですね」
「確かに苦手なので、ホームページとやらはありません。それもありますが、この店にはあなたのように、見付けた人がたまに来るぐらいでいいんです」
ふーんと言って、そんなことでやっていけるのだろうか? とも思う。だがそこで、気になっていたことに納得が出来た。
「ずっとオワコンって言う、名前が気になってたんですよね。どう考えても、店の名前にするにはふさわしくないし。でもあなたが言ったことで分かりました」
オワコンとは、終わったコンテンツの略である。
一時は栄えていたが、現在では見捨てられてしまったこと。ブームが去って流行遅れになったことを意味する。
つまりそうやって関心を持つ人が少ない――と言うのと、訪れる人はほんの僅かでいいと言うことを掛けて、オワコンと名を付けたのだと一史なりに解釈したのだ。
「いい名前でしょう? 我ながら気に言ってるんです」
「はい。なかなか出来ない発想ですよね」
ゼクスと一史は笑い合う。どうにも話が噛み合ってない気はするが、ふたりに気付く様子はない。
「さて、本題に戻りますが、あなたの願いは管理人が誰かを探って欲しい。と言うことでよろしいでしょうか?」
「そうですね。それで正体が分かったら、そいつに仕返しをしてやりたい」
「仕返しとは?」
「えっと、それは決まっていません。誰か……が分かってから、決めるって言うのでもいいですか?」
「もちろんです」
にこっと笑って、ゼクスは一口紅茶を飲む。
「それでは、まず管理人の正体を明らかにします。その後で何らかの仕返しをする。と言う依頼内容でよろしいですね?」
「はい」
「ではこちらの手続きとして、契約書を読んで頂き、了承ならばサインをお願いします。ひとつ、注意点としまして、サインした時点で依頼は始まり、中断は認められません。ですから引き返す、やはり止めると言うのであれば、サインはしないで下さい」
分かりましたと一史が頷くと、エリーが契約書を机の上に置いた。ゼクスのカップに追加の紅茶が注がれる中、契約書を読む。
それ程時間は掛からずに、一史のサインは書かれた。
「ありがとうございます」
契約書を受け取り、ゼクスが微笑む。
「さっそく依頼を遂行していきますが、しばらく時間を頂くことにはなりますので、またこちらからご連絡させて頂きますね」
「はい。よろしくお願いします」
座りながら頭を下げ、入れられた紅茶を飲む。何だか初めて飲む味だなと思いながら、一史は立ち上がった。
ゼクスに見送られながら、低いドアベルの音が鳴る。扉が閉まりエリーとふたりになると、ゼクスははぁとため息を付いた。
「なるほど。しかしネットと言うのは、そうやって他人のプライバシーを簡単に書くことが出来るんですね」
「え? 今の時代、そんなの日常的じゃないですか」
「あぁ、すみません。どうにもパソコンやネットの類いが苦手でして」
そう言ってゼクスは苦笑いを浮かべた。聞いた一史は、苦手と言うよりも知らな過ぎるだろと思う。
「今やネット時代だって言うのに、知らないと色々不便でしょ? あ! だからこの店のことも検索に引っ掛からなかったんですね」
「確かに苦手なので、ホームページとやらはありません。それもありますが、この店にはあなたのように、見付けた人がたまに来るぐらいでいいんです」
ふーんと言って、そんなことでやっていけるのだろうか? とも思う。だがそこで、気になっていたことに納得が出来た。
「ずっとオワコンって言う、名前が気になってたんですよね。どう考えても、店の名前にするにはふさわしくないし。でもあなたが言ったことで分かりました」
オワコンとは、終わったコンテンツの略である。
一時は栄えていたが、現在では見捨てられてしまったこと。ブームが去って流行遅れになったことを意味する。
つまりそうやって関心を持つ人が少ない――と言うのと、訪れる人はほんの僅かでいいと言うことを掛けて、オワコンと名を付けたのだと一史なりに解釈したのだ。
「いい名前でしょう? 我ながら気に言ってるんです」
「はい。なかなか出来ない発想ですよね」
ゼクスと一史は笑い合う。どうにも話が噛み合ってない気はするが、ふたりに気付く様子はない。
「さて、本題に戻りますが、あなたの願いは管理人が誰かを探って欲しい。と言うことでよろしいでしょうか?」
「そうですね。それで正体が分かったら、そいつに仕返しをしてやりたい」
「仕返しとは?」
「えっと、それは決まっていません。誰か……が分かってから、決めるって言うのでもいいですか?」
「もちろんです」
にこっと笑って、ゼクスは一口紅茶を飲む。
「それでは、まず管理人の正体を明らかにします。その後で何らかの仕返しをする。と言う依頼内容でよろしいですね?」
「はい」
「ではこちらの手続きとして、契約書を読んで頂き、了承ならばサインをお願いします。ひとつ、注意点としまして、サインした時点で依頼は始まり、中断は認められません。ですから引き返す、やはり止めると言うのであれば、サインはしないで下さい」
分かりましたと一史が頷くと、エリーが契約書を机の上に置いた。ゼクスのカップに追加の紅茶が注がれる中、契約書を読む。
それ程時間は掛からずに、一史のサインは書かれた。
「ありがとうございます」
契約書を受け取り、ゼクスが微笑む。
「さっそく依頼を遂行していきますが、しばらく時間を頂くことにはなりますので、またこちらからご連絡させて頂きますね」
「はい。よろしくお願いします」
座りながら頭を下げ、入れられた紅茶を飲む。何だか初めて飲む味だなと思いながら、一史は立ち上がった。
ゼクスに見送られながら、低いドアベルの音が鳴る。扉が閉まりエリーとふたりになると、ゼクスははぁとため息を付いた。