その日の大学終わり。書店に行き噂の漫画を購入した。最新13巻まで出ているのを一気に大人買いする。経済的に余裕があるのは、アルバイトをしているから、ではなかった。
一史はひとり暮らしをする中、家賃も生活費の全て、学費さえも親に出してもらっている。その上毎月お小遣いまで振り込まれているのには、父親が大手会社の社長だからだった。
母親も個人経営のオーナーを勤めており、いわゆる金持ちの家柄。だが両親はいつも仕事で忙しく、家族で出掛けると言った思い出は少ない。その為、悲しい思いをさせてはいけないと、その分を "お金" に還元してきた。
事ある毎に高価なプレゼントをあげ、たまの旅行には贅沢の限りを尽くし、欲しい物は全て与えた。ひとりっ子と言うことも作用し、一史はこれまで何不自由のない生活を送ってきた。
こんな家庭環境の下ならば、少しくらいひねくれそうなものである。しかし幸いにも多少はワガママになるものの、社交的で人当たりの良い性格になった。
大量の本が入った紙袋はずっしりと重い。でもそれを抱える一史は、楽しそうな顔をしている。
大通りでタクシーを捕まえるとそれに乗り込み、家へと帰った。
――翌日。さっそく漫画の話を皆にする。最新までは読み進めなかったが、半分以上を徹夜して読み、一史も漫画のファンになっていた。
「全巻買い揃えたのかよ」
次の授業の移動をしながら、その中で昇が苦笑する。
「だってちまちま買いに行くの、面倒じゃん」
「でももし面白くなかったらどうすんだよ?」
「その時は売りに行けばいいし」
まぁそうだけどなと言った隣では、今日も相変わらず眠そうな篤が大きなあくびをした。
「昨日も深夜バイトだったのか?」
聡太が話を振ると、篤はうんと頷く。
「5時まで入ってた」
「うわー、それキツ。そんで今日は1講目からだから、全然寝れてないんじゃねーの?」
「んー……。1時間半くらい」
「今日の授業分かってるから、シフト調節すればよかったのに」
一史が間に入れば、篤は表情を変えずに言った。
「奨学金の返済があるから」
「あ、俺、次の授業抜けるわ」
ここで急に会話に参加せず、ずっとスマホを触っていた隆介が声を上げる。
「彼女の次の授業休校になったみたいだから、行ってくるわ」
「おー」
「出席だけよろしくな」
返事をした聡太に言って、隆介は踵を返して行った。
「同じ大学内での彼女かー。いいよなぁ。ってか俺も彼女欲しいわー」
聡太が羨ましそうに呟いたのを聞いて、一史はははと笑う。止まっていた足を再び進ませた時、前方からふたりの女が歩いてきた。
やがて顔が見えてきた頃、ふたりはこちらに手を振った。
一史はひとり暮らしをする中、家賃も生活費の全て、学費さえも親に出してもらっている。その上毎月お小遣いまで振り込まれているのには、父親が大手会社の社長だからだった。
母親も個人経営のオーナーを勤めており、いわゆる金持ちの家柄。だが両親はいつも仕事で忙しく、家族で出掛けると言った思い出は少ない。その為、悲しい思いをさせてはいけないと、その分を "お金" に還元してきた。
事ある毎に高価なプレゼントをあげ、たまの旅行には贅沢の限りを尽くし、欲しい物は全て与えた。ひとりっ子と言うことも作用し、一史はこれまで何不自由のない生活を送ってきた。
こんな家庭環境の下ならば、少しくらいひねくれそうなものである。しかし幸いにも多少はワガママになるものの、社交的で人当たりの良い性格になった。
大量の本が入った紙袋はずっしりと重い。でもそれを抱える一史は、楽しそうな顔をしている。
大通りでタクシーを捕まえるとそれに乗り込み、家へと帰った。
――翌日。さっそく漫画の話を皆にする。最新までは読み進めなかったが、半分以上を徹夜して読み、一史も漫画のファンになっていた。
「全巻買い揃えたのかよ」
次の授業の移動をしながら、その中で昇が苦笑する。
「だってちまちま買いに行くの、面倒じゃん」
「でももし面白くなかったらどうすんだよ?」
「その時は売りに行けばいいし」
まぁそうだけどなと言った隣では、今日も相変わらず眠そうな篤が大きなあくびをした。
「昨日も深夜バイトだったのか?」
聡太が話を振ると、篤はうんと頷く。
「5時まで入ってた」
「うわー、それキツ。そんで今日は1講目からだから、全然寝れてないんじゃねーの?」
「んー……。1時間半くらい」
「今日の授業分かってるから、シフト調節すればよかったのに」
一史が間に入れば、篤は表情を変えずに言った。
「奨学金の返済があるから」
「あ、俺、次の授業抜けるわ」
ここで急に会話に参加せず、ずっとスマホを触っていた隆介が声を上げる。
「彼女の次の授業休校になったみたいだから、行ってくるわ」
「おー」
「出席だけよろしくな」
返事をした聡太に言って、隆介は踵を返して行った。
「同じ大学内での彼女かー。いいよなぁ。ってか俺も彼女欲しいわー」
聡太が羨ましそうに呟いたのを聞いて、一史はははと笑う。止まっていた足を再び進ませた時、前方からふたりの女が歩いてきた。
やがて顔が見えてきた頃、ふたりはこちらに手を振った。
