変わらぬ朝を迎える。
ゼクスは赤い表紙の本を読みながら、エリーが淹れた紅茶を飲む。付けっぱなしのテレビからニュースが流れているが、それを見ている様子は伺えない。聞いているのかも疑わしいところであり、変わらぬ朝の違いは、このテレビが付いていることだけだった。
珍しく、今日のゼクスはご機嫌だ。小さな声で鼻歌を歌っており、それを聴くエリーもふふふと笑みが零れる。自分用の紅茶を机に置いて、隣に座った。
「今日は何やら機嫌がよろしいですね。あ、昨日久し振りに食事が出来たからですか?」
「ん? まぁ確かに久し振りだったが、俺の食事は半年に1回で事足りるからな」
「じゃあ何があったんですか?」
すりっと腕に寄り添う。相変わらず色香纏うその行為は、普通の男ならば一瞬で心奪われるだろう。だがゼクスは振り払うことはなくとも、態度が変わることなもく、至っていつも通りに答えた。
「初めて客が来たからな」
店を構えて数ヶ月。ようやくの来訪に、嬉しくないはずがない。
これで少しは軌道に乗ればいい――。にんまりと笑みを浮かべた時、テレビから1件のニュースが流れた。
「本日早朝、女性の変死体が発見されました。通報者の話では、路地に寝ているように倒れていたと言うことです。警察が調べたところ、近くの空きビルの屋上に女性の物と思われる靴があり、事件自殺の両面から捜査を行う方針です」
先程まで全く興味を持っていなかったのに、ゼクスはこのニュースだけ食い入るように見始める。
「尚、身元は押尾美礼さんと確認されました」
名前が出た途端、満足したのか。にんまりしたままテレビを消す。これでいつもの朝が訪れ、腕にくっ付いたままエリーは、静かなふたりだけの空気に浸った。
――いつもなら、このままふたりだけで1日が過ぎる。
しかしそれを変えたのは、低い音のドアベルだった。
ゼクスは赤い表紙の本を読みながら、エリーが淹れた紅茶を飲む。付けっぱなしのテレビからニュースが流れているが、それを見ている様子は伺えない。聞いているのかも疑わしいところであり、変わらぬ朝の違いは、このテレビが付いていることだけだった。
珍しく、今日のゼクスはご機嫌だ。小さな声で鼻歌を歌っており、それを聴くエリーもふふふと笑みが零れる。自分用の紅茶を机に置いて、隣に座った。
「今日は何やら機嫌がよろしいですね。あ、昨日久し振りに食事が出来たからですか?」
「ん? まぁ確かに久し振りだったが、俺の食事は半年に1回で事足りるからな」
「じゃあ何があったんですか?」
すりっと腕に寄り添う。相変わらず色香纏うその行為は、普通の男ならば一瞬で心奪われるだろう。だがゼクスは振り払うことはなくとも、態度が変わることなもく、至っていつも通りに答えた。
「初めて客が来たからな」
店を構えて数ヶ月。ようやくの来訪に、嬉しくないはずがない。
これで少しは軌道に乗ればいい――。にんまりと笑みを浮かべた時、テレビから1件のニュースが流れた。
「本日早朝、女性の変死体が発見されました。通報者の話では、路地に寝ているように倒れていたと言うことです。警察が調べたところ、近くの空きビルの屋上に女性の物と思われる靴があり、事件自殺の両面から捜査を行う方針です」
先程まで全く興味を持っていなかったのに、ゼクスはこのニュースだけ食い入るように見始める。
「尚、身元は押尾美礼さんと確認されました」
名前が出た途端、満足したのか。にんまりしたままテレビを消す。これでいつもの朝が訪れ、腕にくっ付いたままエリーは、静かなふたりだけの空気に浸った。
――いつもなら、このままふたりだけで1日が過ぎる。
しかしそれを変えたのは、低い音のドアベルだった。