「――しかし今日も、絶賛暇だなぁ」

 そう言って読んでいる本を持ちながら、大きく伸びをした。古びた赤いソファがギシリと鳴る。
 同時に大きなあくびも出ると、眼帯をしていない左目に涙が滲んだ。

 目が隠れるギリギリの長い黒髪の男。見える左目は輝くような黄金色。くわぁと開いたところからは八重歯が見える。

「ゼクス様、お茶はいかがですか?」

 そこに澄んだ声がし、目の前にある机の上にティーカップが置かれた。

「さすが気が利くな、エリー。ちょうど飲みたいと思っていたんだ」
「ふふ。お褒め頂いて光栄です」

 胸まである長い金色の髪は、ゆるゆるとパーマが掛かっている。赤い瞳を細め、エリーと呼ばれた女は微笑んだ。


 白色の無地ではあるがアンティークのカップを手にし、ゼクスは一口飲む。ゆっくりと味わって、閉じていた目を開いた。

「やはりエリーが淹れるお茶が一番うまいな」

 味だけではなく、口に含んだ時の匂いも味わう。が、ふた口目で全てを飲み干し、カップをソーサーの上に戻した。
 きっちり締めていたネクタイを緩め、黒いシャツのボタンを開ける。そうして細身でありながらも、鍛え抜かれた胸元が露になった。

「いいんですか? 服装を崩してしまって。見た目は大事だといつも仰っているのに」
「もう誰も来ないだろう。と言っても、今日も、来ないと言ったが正しいがな」

 少しふてくされたような言い方をして、組んでいた長い足を机に乗せる。はぁと天井を仰ぐと、エリーが隣に座った。

「でも私は、誰も来ない方がいいです。ゼクス様とふたりっきりですもの」

 ぴとりと寄り添うと、魅惑的な豊満な胸をむにゅりと腕に押し当てた。ゼクスはいわゆる、サラリーマンのシャツ姿でカチリとしているが、エリーは赤いチャイナドレスのような服装。

 スリットは股下すぐ下まで入っており、胸元部分も大胆に空いている。その為どこのラインもきわきわである、何ともエロい格好だ。