身体が重い。十数年慣れ親しんだはずの『立つ』というだけの事すらままならない。身体中は穴だらけでこの身を動かす鉄の味の燃料はとっくに底を突いていた。

辛うじて開かれている瞳の中にはハイエナ共を強大な力を以て統括する邪悪な獣が佇んでいる。敵は遍く万物を貫く矛を持つ。
俺には勝つ事など万に一つも有り得ないだろう。そら、結果は見ての通りだ。
無理もない。この俺には人であれば必ず備わっている機能が無いのだから。

それでもこの身から力は抜かせない。俺には夢がある。まだやり足りない事が山のように残っている。
今の俺を突き動かすのはその思いと気力だけしかない。だがアレを倒すのならそれだけで十分だ。

拳を握る。手に持つ盾を杖にして生まれたてのキリンみたいにフラフラ震えながらみっともなく立ち上がる。

この時が自らの終わりではないと俺は本気で信じていた。正真正銘この俺という存在は幕を閉じる運命でしかないと言うのに。