マンションの部屋自体は1LDKから2LDKがあり、夫婦や小さな子どものいる親子が多く住んでいた。
 独身の入居者に出会ったのは初めだ。
 転勤する人も多いようでそれなりに出入りも多いと聞いた。

 前の入居者も急の転勤にマンションを手放したらしい。
 駅がほど近く、その為中古でもすぐ売れるようだったし、それが故に転勤がある家族も売ればいいと購入を決めるようだった。

 和人は帰りがけに買ったコンビニの袋を持ったままの手でエレベーターのボタンを押した。

 ふと、今から宅飲みしませんか? と、誘えば良かっただろうか。という思いが過ぎった。
 けれど頭を振ってそれを否定する。

 どれだけガッついてるんだよって話。

 心の中で一人ツッコミを済ませても顔がにやけて仕方がない。

 代わり映えしない日常が紗香の登場によって華やいでいく予感がしていた。