照りつける太陽が容赦なく和人へ降り注ぐ。
 暑さからの汗なのか冷や汗なのか分からない額の雫を拭って和人はその場を立ち去った。

 二度と偽装が起こらないことを祈って。
 そして、自殺する人が二度と現れないことも祈りつつ。

 遠くの方から子ども達の元気な声が聞こえて、それらが自分を置き去りにして、別の世界で起きていることのように思えた。
 例え、いつの日かの小学生が悪いことをしていても今なら寛大な気持ちで通り過ぎることが出来そうだった。

 大通りに出るとすれ違った人混みの中から、彼女から香ったフローラルの同じ匂いがした。
 爽やかでほのかに甘いそんな匂いだ。
 振り返って彼女を探そうかと思ったが和人は振り返らなかった。

 大塚紗香がどこかで生きていて、これからは心穏やかに過ごせていればいい。
 ただそれだけだ。

 彼女の花が綻ぶように笑う姿へ想いを馳せて、どうかこの世から憎しみが消えますように。と願った。