しかし彼女は感心さえしてくれた。
「小さくても異変を見つけるのは早い方がいいに決まっています。
あなたみたいな方が住んでいらっしゃって良かった」
風がそよぐように微笑む彼女からそう言われると自分がひどく高等な人間に思えた。
「そうだね。おおごとになる前に管理会社へ連絡しておこう。
せっかくのオートロックでもこの穴が大きくなっては元も子もない」
彼女はどこか守ってやりたくなる雰囲気を醸し出していた。
彼女のような女性が住んでいるのなら危険因子は早期の段階で取り除かなければと思えた。
先ほどまでは小さな男だと思われたくなかったくせに、今では細やかな部分にまで気を配れる気遣いのできる男を装いたかった。
自分でもなんとも現金な性格だと思うのだが、花のように笑う彼女を目の当たりにすれば男なら誰しもそうなるだろう。