「今さら嘘はやめてくれ。
 お前は紗香さんの元交際相手で、元サヤに戻ったとか、そういうことだろう?」

 今度は矢代が目を丸くする番だった。
 それからまとわりつくような視線を浴びせられ、気持ちの悪い笑みを顔に浮かべた。

「お兄さんもボクと同じなんですね」

 肌をウジ虫に這われたような錯覚を覚えて「お前と一緒にするな」と低い声を出した。

「ボク、紗香さんのことが好きなんです」

 そりゃそうだろうな。
 ストーカーだからな。
 そう言い出しそうな言葉を飲み込んだ。

 矢代が言った「お兄さんもボクと同じ」に囚われて言えなかった。

 自分は目の前のこの気味の悪いストーカー男と同類なのだろうか。
 一方的に想いを寄せて恋人と思っていた男に詰め寄っている。
 自分の方がイタイ男なのではないか、と。

 和人が思い悩んで黙っていると矢代は饒舌に話し始めた。

「紗香さんも大変だ。
 あなたから逃げたい一心でボクを使って恋人のフリをしたんだから」

 そうなのか? その為に……。
 矢代の想像でしかない言葉に蝕まれいく。