そして今まさに心配していたストーカーに付きまとわれている。
助け出し、今後のこと、せめて連絡先を聞けたら……。
「和人さん。いいんです」
「え……」
想像とかけ離れた紗香の言葉に愕然としてストーカー男につかみかかっていた手の力が抜けた。
男はその隙をついて和人の拘束から逃れてしまった。
「いいって、何が……」
紗香が何を考えているのか皆目検討がつかなかった。
和人は自分が正義の味方でヒロインを助けるポジションだとばかり……。
「私、彼とお付き合いしますので」
「は?」
呆気に取られて開いた口を閉じることができない。
格好つかない姿のまま二人を見続けて見送ることしかできなかった。
「行きましょう」
「あ、うん……」
ぎこちなく頷いた男の腕を引いて彼女は和人の前から立ち去った。
しばらく和人はその場から動けなかった。
真夏に差し掛かっている日差しは容赦なく和人を照りつけて心どころか体までもカラカラに干からびさせた。