偽装発覚から幾分経つと世間は別のニュースで持ちきりとなりマンションへ報道陣が来ることはなくなった。

 振り回される側の身にもなって欲しいものが、世間の注目の的からは外れたことは有り難かった。

 そんな世間からは忘れ去られた、ある晴れた日の昼下がり。
 足りない着替えを取りに戻るとあの日の少年と再会した。

 おとなしい少年。
 この子のことも少なからず心配だった。

 和人と同じように自分のしでかした行いの重大さに気付いて思い悩んでいないだろうか、と。
 しかし予想に反して彼の顔は晴れやかだった。

「お兄さん。あの日はどうもありがとう」

「いや、俺は、何も……」

 少年はマンションを壊してしまいたかった。
 偶然にもその願いが叶ったのだ。
 晴れやかな彼に安堵するような、複雑な気持ちになった。