穴が空いたことから外壁の基礎部分が露出した。
 そこから疑念を抱いた人物が調べてみると構造上重要な鉄筋の数が足りないというのだ。

 住んでいることも危険かもしれないと、代替えの賃貸マンションが急遽用意され、散り散りに移り住んだ。
 用意されたのは家具が付いているタイプのマンションで最小限の荷物で引っ越しは済んだ。

 とはいえ、本格的に住めないとなれば随時対応していかなければならないだろう。

 まさか小さな穴からこんな事態に巻き込まれるとは思いもよらなかった。
 知らずに住んでいた方が幸せだったのか……。
 いや、地震が来たらとんでもない。

 新築で買った夫婦だろう。
 マンションの前で泣き崩れている人を見かけて心が痛んだ。

「ローン……。だって、うぅ……」

 声にならない不安に胸が抉られる思いがした。

 あのシロアリで住民が騒いで今回の発覚に至ったようだった。
 少年が放ったと知っていながら放置した和人は罪の意識に苛まれていた。