次の日、騒がしさに目が覚めて寝ぼけ眼でテレビをつけた。
 テレビ画面からは「またも偽装。繰り返される悲劇」と大々的に報じていた。

 偽装ねぇ。最近、どこも多いよな。

 呑気なことを思い描いて洗面所へ向けかけた足を止めた。

「こちら桜下マンションです」

 目を見開いて凝視する。
 寝ぼけ眼は一気に覚醒して胸はドッドッドと不穏な音を奏でた。

 画面の中には本物の黄色のテープ『keep out』が張り巡らされたマンション。
 紛れもなく今、和人がいるマンションの外観が映し出されていた。

 その日から大きな渦に飲み込まれるようにそこから抜け出せなかった。
 いや、大きな渦に巻き込まれていたのにずっと気付かなかっただけなのかもしれない。