「とにかく今日はもう遅いし、こんなことをして怒られるのは馬鹿らしいだろう?
家へお帰りよ」
「……うん」
シロアリ入りのスコップを持ち上げた少年を正した。
「シロアリは置いていきな」
「……いいの?」
「良くはないけど、持って帰っても困るだろう?」
少年は肯首してスコップに乗っているシロアリを下ろすとスコップを二、三振ってからマンションの方へ駆けて行った。
彼が去って行ったのを見つめ続けてから、穴の方を改めて顧みる。
気色の悪いシロアリが元気に動き回っていた。
「シロアリまでも出たとなればいい加減、修繕が進むだろ」
短絡的で楽観的な考えで特に何もせずに疲れ切った体を自分の部屋へと移動させた。