「シロアリなんてよく見つけたなぁ」
アスファルトにコンクリート。
土を見ることの方が珍しいような場所でシロアリを見かけることはなかった。
「うん、公園の隅に落ちた木が腐っててそこに。
シロアリは建物を食べちゃうんだって聞いて」
それでマンションを食べてもらおうと思ったのか。
しっかりしてそうな子だが、やはり考えることは子どもだ。外壁は食べない。
それにもし本当にシロアリが食べるようなことがあれば、それこそ彼の起こした行動はおおごとになってしまう。まだまだ子ども。
自分の行いがもたらす結果を全て把握できないのだ。
「マンションを壊すとか、シロアリに食べさせるとか、そういうのじゃなくて、他の方法で解決できないのか?」
和人が大人の顔を垣間見せると途端に彼は押し黙ってしまった。
正論なんて欲しくないんだ。
分かっている。