会社とマンションとの往復。
 休日のたまの外出。
 代わり映えしないそんな日常がひょんなことから崩れていった。

 始まりは小さな穴だった。

 住んでいるマンションのエントランス部分に該当する外壁とガラスとの繋ぎ目が欠けて穴が空いていた。
 気がついたのは仕事を終え帰宅した時だった。

 道沿いに建っているマンション。
 壁を沿うように歩いて入り口に向かう道が和人の通勤経路だ。

 真っ直ぐ壁伝いに歩き、回り込んだマンション正面。
 植え込みの脇に割れ目が確認できた。
 それは見逃してしまいそうなほど小さな穴だった。

 自分もいい歳だ。
 マンションを買ってもいい頃かもしれない。
 そんな思いから中古の分譲マンションを購入した。

 住み始め、それほど日にちが経たないうちから壊れた箇所を見つけるとは些か気落ちした。
 契約する時は値段の割にいいマンションを購入できたと浮き足立っていたというのに。

 いつの日かの小学生の奴らの仕業か?

 あの日もあいつらが蹴ったボールが外壁に当たっていた。
 憤慨する気持ちで、まじまじと見てやろうと体を屈めて覗き込む。

 街灯の光に照らされてひび割れたガラスが乱反射した。