「なんだか気味悪いわよね。
 パトロールして欲しいってお願いしてもやってくれるかどうか……」

 修繕工事をお願いした時の管理組合の対応を思い出して、あんな感じじゃやらないだろうなと、期待できないと嘆く主婦の意見に普段なら同意したかった。
 パトロールは管理組合の仕事ではないだろうが、どこも腰が重いのは同じだろう。と。

 しかし実際は自身が職務質問された身。

 ちゃんとパトロールは強化されていますよ。と、教えてあげれば安心するだろうか。

 それにしても……。
『閑静な住宅街で静かな落ち着いたところ』
 契約した時の不動産会社の売り文句を恨めしく思った。

「しかもさぁ。知ってる?」

 とっておきの話が出てくる前触れを感じて別のテーブルの和人も唾を飲み込んだ。

「どこの誰かも分からないおじさんに怒鳴られたらしいのよ。うちの子」

 ガックリきて、カフェを出る決心がついた。
 悪いのはお宅のお子さんですよ。
 と、告げる勇気はない。
 それこそ不審者扱いされ兼ねないだろう。

 いまどきは子どもに注意しても悪者扱いか。
 脱力する思いで噂話はあてにならないという当たり前の教訓が思い浮かんだ。

 それでも……。
 紗香からも聞いた、つけられている。という話。
 こればかりは軽視できない。

 それに誰がやったのかガラスの穴。

 いつになったら平穏な日々が戻ってくるだろうかと嘆息した。