「彼女の方もお願いできますか?」
「あ、あの。私は何も持っていなくて……」
「そう、ですか」
何をチェックしているのか。
和人も紗香もそれこそ穴が空くほど見てから「では、お気をつけてお帰りください」と解放された。
警官へ軽く会釈をしてからマンションへと足を向ける。
本当にマンションの住人なのか疑っているような警官の視線が背後に刺さるのを感じた。
「とにかくマンションに帰ろう」
紗香をいざなってマンションへと向かう。
人通りが少ないとはいえ、往来で突っ立っていてはあまりにも目立ったようだ。
警官に再び言いがかりをつけられる前に帰ろうと不自然にならない程度に急いだ。
言葉少なに二人並んでマンションまでの道のりを歩く。
オートロックを開け、エントランス部分に入ってやっと息をつけた。
「大丈夫?」
「……はい」
和人をストーカーと勘違いして、その上、警官に職務質問されたら、普通でいろと言う方が難しいだろう。