「修繕には理事会役員の承諾が必要なんですよね?
招集をかけていただいて、とにかく早急に……」
「分かってますよ。
こちらも善処してるんですから」
「そう、ですか。
では……引き続きよろしくお願いします」
電話は切れ、消化不良の気持ちを残した。
なんでこっちが苛立った言い草をされなきゃいけないんだ。
こっちは声を荒げて「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと修繕工事を依頼しろよ!」と、言ってやりたいのを我慢したっていうのに。
嘆息すると恨めしげにエントランス隅の黄色のテープを目の端にとらえた。
こちらからは見えない穴が嘲笑っているような気がしてならなかった。