蒸し暑い昼下がり。

 寝溜めを決め込んで起きたのは午後一時。
 腹の虫が騒いで仕方なく布団から這い出てはみたものの、冷蔵庫は空っぽだ。
 怠い体を引きずってコンビニまで赴くことにした。

 外はまぶしい日差しが照りつけ、新緑の若葉が空に向かって伸びている。
 軽やかな初夏の匂いを運ぶ清々しい風が頬を撫でた。
 平日はいつも早くに家を出て遅くに帰宅する和人には縁のない風景。

「おーい。こっち! こっち!」

「よーし!」

 子ども達の元気な声も今はどうにも耳障りだ。

「あっ! ヤッベッ」

 子どもの息を飲んだ声を聞いて顔をそちらに向けると凄まじい勢いでボールが飛んできていた。

「……ッ」

 すんでのところで身を躱す。
 ボールは真っ直ぐに和人が今まさに出てきたばかりのマンションの外壁へ当たって跳ね返った。
 転がったボールは歩道の縁石沿いのところで止まった。

「おい! 危ないだろ!
 道路でボール遊びするな!」

 苛立ちが声に乗って子ども達を凍りつかせた。
 一瞬固まった後に「す、すみませんでした!」と謝罪を口にしボールを手にした。
 そして蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「……大人げなかったか」

 頭をかきながらまぶしい日差しから逃れるように街路樹の陰の下を歩いた。