彼女とエレベーターホールで別れ、エレベーターを待っている間に管理組合へ電話を入れた。

「先日、マンションのエントランス部分に穴が空いていると電話した高橋です。
 今日、見たら穴が大きくなっていました。
 早急に対応をお願いできないでしょうか。」

 役員はおじいちゃんなのか、いつもくぐもったハッキリしない返事しかくれない。

「そう。でもねぇ、ガラスっていったらそこだけ修復って難しいだろう?
 外壁にはめ込んであるガラスを全部外して付け替えってなったら費用も馬鹿にならないし」

 本当にこいつも同じ住民なのか。
 そもそも自分が住んでいるマンションの目立つ正面部分にあの黄色のテープを貼る神経を疑う。

 そして穴が大きくなったと訴えているのに心配するのは費用のこと。
 外観、安全、耐久性、耐震性。
 それらはどれもどうでもいいのかと物申したい。

 しかしこの理解しがたい人も隣人なのだ。
 出来れば穏便に済ませたかった。