「あれ、穴……大きくなってません?」

 紗香の一言は疼いた胸の鼓動を乱れさせた。

 大きく、なっているだって?

 常に気を配ってはいたものの、まさか穴が大きくなっているとは思わなかった。
 紗香の隣に駆け寄って外壁とガラスの繋ぎ目部分を凝視する。

 改めて注意深く観察してみると黄色のテープに隠された穴はかろうじてテープの端と端がガラスに貼り付いているだけだった。
 目立つ黄色に惑わされて穴自体をよく見ていなかった。

「どうして……こんなことに……」

 何かで砕かれたように穴が大きくなっている。

 まさか今の悪ガキどものせいで?
 いや、今じゃない。
 その証拠にガラスの破片はどこにも落ちていない。

 もしかして……。

 和人の頭の中にはいつの日かの少年が浮かんだ。
 か細い腕で必死に棒を突っ込んでいた……。

 それこそ違うだろう。

 剥がれたテープを貼り直した時に簡単に穴が空くような脆いガラスじゃないことくらい触ったのだから分かっている。
 例え触らなくても外壁にはめられたガラスだ。
 分厚くて頑丈なのは一目瞭然だ。

 それが、どうして。