「お前ら! いい加減にしろよ!
 前にも危ないって注意……した、よな」

 焦点はある一点に集中して言葉を詰まらせた。
 小学生に紛れて突っ立っている、紗香。

 いくら小柄でもさすがに小学生に混じっていると目立っていた。

 目が合った紗香は口早に言い訳を始めた。

「ごめんなさい。
 石蹴りだなんて懐かしくて。
 どこまで飛ばせるかなって競争してしまっていたんです」

「だって、飛ばした石は外壁に当たって……」

 自分があんなにも心を砕いて穴へ関心を寄せていたのに、紗香は何も考えていなかった。
 空回りしていただけの行動が痛々しくてやり切れない。

「つい夢中で……。本当にごめんさない」

 申し訳なさそうに謝られても虚しいだけだった。

 固まったままだった小学生達は和人と紗香のやり取りを傍観していたが、示し合わせたように声を揃えて頭を下げた。

「すみませんでした!」

 それだけ言うと逃げるように去っていく。
 残された二人は二人の間にある地面を見るともなく見つめた。

「……あの穴。
 テープ、貼ってもらえたんですね」

 初めて気付いたような口ぶりに辟易する。

 それでも穴の方へ歩み寄る紗香の後ろ姿を目で追った。
 自分の横を通り過ぎる時に香ったフローラルに胸が疼く。