穴の前の植え込みに少年が置き去りにした木の棒が転がって哀愁さえ漂っているように感じた。 和人は胸の痛みを感じながら、それを植え込みの奥へ追いやった。 剥がれてしまった黄色のテープ。 マンションのエントランス側に回って貼り直してみる。 凄まじい粘着力に苦心したがなんとか再び穴を塞ぐことが出来た。 大人しそうな子がどうして悪戯なんてしていたのか。 深く考えてみれば何か違ったかもしれない。 しかしその時は、もう少し穏やかに叱ってやれば良かった。 そんなことしか思い浮かばなかった。