ナオミは俺を職員用トイレの前に連れて行く。二人きりで話をするときは、いつもここなんだよな。
 日曜日って、暇なんだよね? 予想外の言葉に俺は驚いたよ。それってデートの誘いか? 思ったままを口にする。
 バッカなこと言わないでよ!
 そういえばだけど、ケンジとは仲直りしたようじゃんか。
 俺は先日、学校の廊下でナオミがケンジと仲良く話している姿を目撃している。側にはユリちゃんもいて、三人共が笑顔だった。俺はまだ、そのことをケンジには尋ねていない。
 別に・・・・ あんたには関係ないでしょ?
 そんなことないだろ? 俺はお前たちが仲直りしてくれて嬉しいんだよ。これでもう、誰にも気を使わなくて済むだろ?
 あんたがなにに気を使っていたっていうの?
 さぁな・・・・ まぁ、色々だよ。で、ケンジはお前になんて言ったんだよ。まさか、付き合ってくれとか言ったのか?
 そんなはずないでしょ! あんた本当にケンジ君からなにも聞いてないの? 親友なんじゃないの?
 冗談言うなって。俺とケンジは親友なんかじゃないんだよ。友達でもないしな。何度も言っているだろ? 俺たちは家族なんだって。家族っていうのはさ、本音を言い合うことに遠慮はしないが、細かいことをいちいち説明することは少ないんだよ。
 なにそれ?
 俺たち五人はずっとそういう関係なんだよ。ナオミにいくら説明しても伝わりっこないんだよ。ナオミは一人っ子だしな。まぁ、現実の兄弟とはもっと会話が少ないのが現実なんだが、家族である気持ちはどっちも共通なんだよ。こんなこと普段は感じないが、兄貴のことを、俺は愛しているからな。直接は関わっていないが、兄貴の彼女のナオミが俺たちに協力してくれたからこそ、今の俺たちがあるんだよ。