彼が亡くなって二年だという。
珠希さんにとってその重みは今も少しも減っていないどころか、ますます重みが増しているのかもしれない。
それを思うと、いくら身内である野乃にだって、そう易々とこんなお客さんが来てね、なんて話せるわけがない。
「……」
なんとなく心配だな、と再度海を見ると、先ほどまでは晴れていたのに今は少し曇り気味だった。
そんな渉を野乃も心配そうに見ていたのだが、渉は気づかなかった。
翌日。
「あ、雨だ……」
一抹の不安にも似たもやもやした気持ちを抱えながら、開店前、店先の掃き掃除をしていると、鼻先に一つ、ぽつりと冷たい感覚があった。
今朝は晴れていたが、店内の掃除を先にやっているうちに雲行きが怪しくなっていたようだ。まるで開店に合わせて降ってきた雨に、渉は急いでホウキとちり取りを手に店内に避難する。
ものの十数秒で強くなったので、もう外の掃除ができなくなったのだ。
まだ途中だったが仕方がない。髪の毛に残る雨粒を払い落として【恋し浜珈琲店】の看板を軒下に出し、ドア横の【close】のプレートを【open】にひっくり返す。
珠希さんにとってその重みは今も少しも減っていないどころか、ますます重みが増しているのかもしれない。
それを思うと、いくら身内である野乃にだって、そう易々とこんなお客さんが来てね、なんて話せるわけがない。
「……」
なんとなく心配だな、と再度海を見ると、先ほどまでは晴れていたのに今は少し曇り気味だった。
そんな渉を野乃も心配そうに見ていたのだが、渉は気づかなかった。
翌日。
「あ、雨だ……」
一抹の不安にも似たもやもやした気持ちを抱えながら、開店前、店先の掃き掃除をしていると、鼻先に一つ、ぽつりと冷たい感覚があった。
今朝は晴れていたが、店内の掃除を先にやっているうちに雲行きが怪しくなっていたようだ。まるで開店に合わせて降ってきた雨に、渉は急いでホウキとちり取りを手に店内に避難する。
ものの十数秒で強くなったので、もう外の掃除ができなくなったのだ。
まだ途中だったが仕方がない。髪の毛に残る雨粒を払い落として【恋し浜珈琲店】の看板を軒下に出し、ドア横の【close】のプレートを【open】にひっくり返す。