「……笑ってたけど、大丈夫かな」
空になったカップを洗いながら、たまらず渉は海のほうを見やる。
珠希さんの好きだった人は海で亡くなったという。自分の想いを告げる前に彼の命を奪った海が憎くないはずがないのだ。
嫌いになりきれないから困っている――それは本当だろうけれど……。
と。
「ただいま帰りました」
「おじゃましまーす」
「……ああ、おかえり。野乃ちゃん、元樹君。何か飲む?」
リンリンとドアベルが鳴り、今日も野乃と元樹君が揃って帰ってきた。渉は、はっと我に返るといつものように笑って二人を出迎える。
野乃が「渉さん、汐崎君をあんまり甘やかさないでください」と言うと、元樹君が「今日はちゃんとお金払うし」と間髪入れずに返す。
それからも二人は「……ほんとかな」「マジだって」などと仲良く(野乃はそう思っていないが渉には仲良く見える)会話をしつつ、適当な席に向かい合う。
こういうところが仲が良く見えることに果たして野乃は気づいているのか、どうなのか……。
空になったカップを洗いながら、たまらず渉は海のほうを見やる。
珠希さんの好きだった人は海で亡くなったという。自分の想いを告げる前に彼の命を奪った海が憎くないはずがないのだ。
嫌いになりきれないから困っている――それは本当だろうけれど……。
と。
「ただいま帰りました」
「おじゃましまーす」
「……ああ、おかえり。野乃ちゃん、元樹君。何か飲む?」
リンリンとドアベルが鳴り、今日も野乃と元樹君が揃って帰ってきた。渉は、はっと我に返るといつものように笑って二人を出迎える。
野乃が「渉さん、汐崎君をあんまり甘やかさないでください」と言うと、元樹君が「今日はちゃんとお金払うし」と間髪入れずに返す。
それからも二人は「……ほんとかな」「マジだって」などと仲良く(野乃はそう思っていないが渉には仲良く見える)会話をしつつ、適当な席に向かい合う。
こういうところが仲が良く見えることに果たして野乃は気づいているのか、どうなのか……。