「飲み終わったら、二階で荷物の整理をしてきたら? 先に宅急便で送ったものはもう届いてるし、学校の準備もあるでしょう。カウンター脇の階段から二階に上がってすぐの左の部屋が野乃ちゃんの部屋だから。バッグとキャリー、先に運んでおくね」
そう声をかけ、渉は野乃が手に持ってきた荷物を二階に運んでいく。
ドアの脇に荷物をまとめて一階に戻ると、野乃は「ごちそうさまでした」と丁寧に頭を下げ、「じゃあ、お言葉に甘えて」と渉と入れ違うようにして階段を上っていった。
渉の手元には、すっかり空になったカルピスソーダのグラス。中の氷がカランと涼しげに音を立て、残ったミントが氷のひとつに引っ付いている。
「きっと、どうにもならない恋をしたんだろうな……」
それを見つめながら、渉は二階に引き上げていった野乃の横顔を思った。
言葉ではうまく説明できないけれど、渉には感覚的にわかるのだ。それに渉は、不思議とそういうものを引き寄せる引力のようなものを持っている。
野乃もまた、渉の持つ不思議な引力に引き寄せられた人のひとりなのだろう。
グラスを洗いながら、渉は思う。
野乃にとって、ここが宿り木のような場所に早くなりますようにと。
そう声をかけ、渉は野乃が手に持ってきた荷物を二階に運んでいく。
ドアの脇に荷物をまとめて一階に戻ると、野乃は「ごちそうさまでした」と丁寧に頭を下げ、「じゃあ、お言葉に甘えて」と渉と入れ違うようにして階段を上っていった。
渉の手元には、すっかり空になったカルピスソーダのグラス。中の氷がカランと涼しげに音を立て、残ったミントが氷のひとつに引っ付いている。
「きっと、どうにもならない恋をしたんだろうな……」
それを見つめながら、渉は二階に引き上げていった野乃の横顔を思った。
言葉ではうまく説明できないけれど、渉には感覚的にわかるのだ。それに渉は、不思議とそういうものを引き寄せる引力のようなものを持っている。
野乃もまた、渉の持つ不思議な引力に引き寄せられた人のひとりなのだろう。
グラスを洗いながら、渉は思う。
野乃にとって、ここが宿り木のような場所に早くなりますようにと。