「正直言って、当時からめちゃくちゃ好きでした。私の周りから友達が減っていって、さすがにヘコんでたときも、彼だけは〝俺は珠希がちゃんと夢を叶えるまで応援する、だって初めて持てた目標なんだろ〟って何度も励ましてくれたんですよ。ベタだろうが何だろうが、好きにならないわけがないじゃないですか。それがなかったら、今こうして美容師になれてなかったと思うし、またやんちゃしてたかもしれません」
それから珠希さんは、「このシガレットケース、彼のものなんですよ」と再び鞄から先ほどの茶革製のケースを取り出し、表面を愛おしそうに撫でた。
女性が持つにしては渋いケースだと思っていたが、どうやら理由はこういうことだったらしい。
「でも彼、私が美容師の国家試験に合格する前に……海で死んでしまったんですよね」
「――えっ?」
「サーフィンが好きで、海辺の小さなサーフショップ兼軽食も出すカフェで楽しそうに仕事をしたり、休みの日は一日中、海に入っていたり……将来は自分でもサーフショップを開くんだとか言って、インストラクターの資格を取るための勉強もしてたし、オーナーみたいに軽食も出したいからって調理師の勉強もしてて」
それから。
それから珠希さんは、「このシガレットケース、彼のものなんですよ」と再び鞄から先ほどの茶革製のケースを取り出し、表面を愛おしそうに撫でた。
女性が持つにしては渋いケースだと思っていたが、どうやら理由はこういうことだったらしい。
「でも彼、私が美容師の国家試験に合格する前に……海で死んでしまったんですよね」
「――えっ?」
「サーフィンが好きで、海辺の小さなサーフショップ兼軽食も出すカフェで楽しそうに仕事をしたり、休みの日は一日中、海に入っていたり……将来は自分でもサーフショップを開くんだとか言って、インストラクターの資格を取るための勉強もしてたし、オーナーみたいに軽食も出したいからって調理師の勉強もしてて」
それから。