「で、ベタな話なんですけど、担任に〝これから一緒に頑張ろう、応援するから〟って言われて心を入れ替えて、それからはバイト三昧です。自分で働いたお金で専門学校に通おうと思って。母は気にしないで好きな道に進めって言ってくれたし、担任も奨学金の制度がある学校をいくつも調べて資料を取り寄せたりしてくれたんですけど、私なりのケジメっていうんですかね。自分で働いたお金じゃないと意味がないと思ったんです」


「ご立派です」


「はは。でもまあ、そのおかげで食べていくためだけじゃない働く意義とか、仕事への向き合い方とか、大切なことをたくさん教わりました。美容師ってカットの技術も大事ですけど、接客業ですから。居酒屋とか販売系とか、とにかく接客のバイトをしました」


 それを機に、今まで付き合いのあった友達とは縁を切ったという。


 これもベタだけど、ということだったけれど、珠希さんはもともと、どこにも行き場のない気持ちを紛らわせたくて、ちょっとやんちゃの道に走ってしまったところがあったそうだ。


 最初、目標を持ってバイトをはじめた珠希さんを仲間たちは「頑張れ」と応援してくれたそうだけれど、だんだんと付き合いが減っていくと、彼らのほうからも自然と離れていき、今では何をしているのやら、という感じですっかり疎遠になってしまったらしい。