カチャカチャと小気味いい音を立てながら二人が飲んでいったカプチーノのカップに泡をかけつつ、渉は言う。
「野乃ちゃんのおかげだよ。野乃ちゃんが文香さんを追いかけてくれなかったら、上尾さんとは入れ違いになっていただろうし、文香さん本人でさえ気づいていなかった写真の秘密に気づいてくれたから、帰っていったときの文香さんの顔があんなに晴れやかだったんだと思う。文香さん、野乃ちゃんと元樹君に、ありがとうって伝えてくれって。感謝してるって。俺からもありがとう。野乃ちゃんのおかげで美味しいコーヒーが淹れられた」
「いえ、私は何も……」
野乃はそう言って恥ずかしそうに顔を俯かせるが、でも本当に野乃の力が大きい。
渉だけだったら、文香さんの本当の気持ちに気づけないまま送り出していただろうし、何杯淹れても心からカプチーノを美味しいとは思ってもらえなかっただろう。
「――さて。ちょっと遅くなっちゃったけど、これから晩ご飯にしようか。昨日おすそ分けでいただいた鰹、残りは佃煮風にしておいたんだ。春先にもらった菜の花の残りも茹でて冷凍庫に凍らせてあるし、からし和えにしたら立派におかずになるでしょ」
「野乃ちゃんのおかげだよ。野乃ちゃんが文香さんを追いかけてくれなかったら、上尾さんとは入れ違いになっていただろうし、文香さん本人でさえ気づいていなかった写真の秘密に気づいてくれたから、帰っていったときの文香さんの顔があんなに晴れやかだったんだと思う。文香さん、野乃ちゃんと元樹君に、ありがとうって伝えてくれって。感謝してるって。俺からもありがとう。野乃ちゃんのおかげで美味しいコーヒーが淹れられた」
「いえ、私は何も……」
野乃はそう言って恥ずかしそうに顔を俯かせるが、でも本当に野乃の力が大きい。
渉だけだったら、文香さんの本当の気持ちに気づけないまま送り出していただろうし、何杯淹れても心からカプチーノを美味しいとは思ってもらえなかっただろう。
「――さて。ちょっと遅くなっちゃったけど、これから晩ご飯にしようか。昨日おすそ分けでいただいた鰹、残りは佃煮風にしておいたんだ。春先にもらった菜の花の残りも茹でて冷凍庫に凍らせてあるし、からし和えにしたら立派におかずになるでしょ」