見ると確かに、その人――朗らかに笑っている男性は、文香さんに視線を向けているようにも見えなくもない。


 けれど、いかんせん写真の状態がそれほど良くはないので、野乃が示したその男性が本当に文香さんに視線を向けているのかどうかは、渉には判断が難しかった。


〝ような気〟だから、男性の視線も傍目にはちゃんとカメラを向いているように見えるのだ。野乃を除く三人は、曖昧な表情で目を見合わせ合う。


「やっぱそうだよ。文香さん、帰ったらすぐにほかの写真も見てみてください。なるべくみんなで写っている写真がいいと思います。最近、みんなで撮った写真があるなら、それも。……もしかしたら、気づいていないのは文香さんのほうかもしれません」


 そう神妙に、けれど少しだけ口元を綻ばせて断言する野乃に、渉たちは数瞬、虚を突かれる。


 野乃の中で一体何が閃いているのだろうか。人の心の機微にひどく敏感な野乃だからこそ気づけた何かがそこにはあるのだろうけれど、渉にはさっぱりだ。


 すると、文香さんが「あっ!」と声を上げた。


「三月に集まったときにみんなで撮った写真なら、私のスマホにあります。一人のスマホで何枚か撮って、よく撮れているものをほかのメンバーにも転送したので」