それからの文香さんの話は、諦めようとしているが気持ちが追いつかない、という話に終始した。
野乃と話し込んでいる間もそのような話をしていたそうで、思いきって写真を海に投げたら恋心ごと忘れられるんじゃないかと本当に海に投げたところ、野乃が横から飛び出して海水に濡れたそれを拾ってくれたのだという。
「大事そうに眺めていたのにどうして捨てるの、って野乃ちゃんに怒られました。あと、海の中の生き物たちの迷惑になるから、そういうのやめて、って」
「……あのときはすみません」
お互いにそのときの場面を思い出しているのだろう、文香さんはおかしそうにクスリと笑い、野乃は申し訳なさそうに顔を俯かせる。
野乃の向かいの元樹君は、野乃がそういうことをするタイプだとは思っていなかったようで、目を瞠っている。
でも渉は、話を聞きながら、野乃ならそうするだろうなと妙に納得したようなところがあった。
他人《ひと》の大切なものを自分のことのように大切に思えるのが野乃なのだ。
野乃と話し込んでいる間もそのような話をしていたそうで、思いきって写真を海に投げたら恋心ごと忘れられるんじゃないかと本当に海に投げたところ、野乃が横から飛び出して海水に濡れたそれを拾ってくれたのだという。
「大事そうに眺めていたのにどうして捨てるの、って野乃ちゃんに怒られました。あと、海の中の生き物たちの迷惑になるから、そういうのやめて、って」
「……あのときはすみません」
お互いにそのときの場面を思い出しているのだろう、文香さんはおかしそうにクスリと笑い、野乃は申し訳なさそうに顔を俯かせる。
野乃の向かいの元樹君は、野乃がそういうことをするタイプだとは思っていなかったようで、目を瞠っている。
でも渉は、話を聞きながら、野乃ならそうするだろうなと妙に納得したようなところがあった。
他人《ひと》の大切なものを自分のことのように大切に思えるのが野乃なのだ。