四人掛けのテーブル席には、壁際に文香さんと野乃が座り、カウンターに背中を向ける格好で渉と元樹君が座る、という形になった。


 先ほどは渉はカウンターの中の定位置で文香さんの話を聞いていたが、今はこちらのほうがいいだろう。


 営業中は二階に引っ込んでいる野乃が店の中にいる。


 それに、せっかくこうして濃密に関わることになったのだから、渉だけカウンターの中というのも、いささか変な話だ。


「すみません、何度もお店に足を運んでしまって……」


 カプチーノに一口、口をつけると、まず文香さんがそう謝った。


「それに、野乃ちゃんにも元樹君にも迷惑かけちゃって」


「いえいえ。ここにいる誰も、文香さんのことを迷惑になんて思っていませんよ。ただ心配なだけなんです。本当はどう思っていらっしゃるのか、お聞かせいただけませんか?」


 渉がそう切り出すと、文香さんは、首を振って否定している野乃や元樹君を見てありがとうと笑い、カップの中に目を落とした。


「本当は、まだ全然諦めきれていないんです」