店に戻る道すがらに尋ねると、文香さんは幸い、まだ電車の時間に余裕があるそうだ。


 聞けば隣県から旅行に来ているそうで、遅くとも明日の始発にさえ乗れれば仕事には間に合うという。


 話が長くなるようなら店に泊めてもいいと渉は考える。店舗兼住宅には野乃もいることだし、そのへんは特に警戒はされないだろう。


 といっても、文香さんさえよければ、という話だけれど、その場合はケースバイケースとしよう。


 元樹君のほうも、嫌がる野乃と並んで店に戻る途中に、今日は遅くなる旨を家に連絡していた。


 引き留める形になってしまったのはこちらなので、遅くなるようなら晩ご飯と、遠慮するかもしれないけれど、あとで家まで送ってあげようと思う。


「お待たせいたしました、カプチーノです。野乃ちゃんと元樹君にはアイスコーヒーね。砂糖とミルクはテーブルに備え付けのがあるから、いい味に調整してね」


「ありがとうございます」


「ごちそうになります」


「いただきます」


 三人でテーブルについている文香さんたちの前に、それぞれカップとグラスを置く。


 めいめいに礼を言う三人に目を細めると、渉も自分用に淹れたブレンド手に元樹君の隣に腰を落ち着ける。