「そうだよ。迎えに来てもらわなくても、ちゃんと帰れるんだから」
「はぁ? お前、こっちがどれだけ心配したと思って」
「汐崎《しおざき》君に心配してもらう筋合いなんてないもん」
「なっ……!」
野乃のあまりの素っ気なさに元樹君が言葉を失う。
ちなみに、元樹君の名字は汐崎だ。汐崎元樹――源蔵さんの船の名前は『元気丸』。
元樹くんが生まれたときに船と船の名前を一新し、それから十七年間、その船とともに海に出ている。
「まあまあ、野乃ちゃんも元樹君も。お客様の前なんだから、それくらいにしておこう」
渉が割って入ると、野乃と元樹君は渋々と口を噤んだ。けれど目はまだまだお互いに言い足りないと主張し合っていて、口元もへの字に曲がっている。
店に戻ったら、やいやい言い合うかもしれないな、なんて思いつつ、渉は文香さんへ視線を向けた。
野乃にとって元樹君の存在は良くも悪くも刺激になっているようだ。
願わくば、プラスのほうに向いてくれたら、渉も野乃の保護者として少しは叔父夫婦に面目が立つのだけれど。
それはともかく。
「はぁ? お前、こっちがどれだけ心配したと思って」
「汐崎《しおざき》君に心配してもらう筋合いなんてないもん」
「なっ……!」
野乃のあまりの素っ気なさに元樹君が言葉を失う。
ちなみに、元樹君の名字は汐崎だ。汐崎元樹――源蔵さんの船の名前は『元気丸』。
元樹くんが生まれたときに船と船の名前を一新し、それから十七年間、その船とともに海に出ている。
「まあまあ、野乃ちゃんも元樹君も。お客様の前なんだから、それくらいにしておこう」
渉が割って入ると、野乃と元樹君は渋々と口を噤んだ。けれど目はまだまだお互いに言い足りないと主張し合っていて、口元もへの字に曲がっている。
店に戻ったら、やいやい言い合うかもしれないな、なんて思いつつ、渉は文香さんへ視線を向けた。
野乃にとって元樹君の存在は良くも悪くも刺激になっているようだ。
願わくば、プラスのほうに向いてくれたら、渉も野乃の保護者として少しは叔父夫婦に面目が立つのだけれど。
それはともかく。